気まぐれ神様の物語 真剣恋Ver.   作:ジーザスルージュ

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42話

 九鬼のヘリにて本部にまで運ばれた後、待ち構えていた報道陣達による勝利者インタビューに軽く答えた。

 色々と野暮ったい質問やコアな質問が多かったが、粗スル―。

 賞金の使い道を尋ねられてKOSで破損した建造物に対して一部充て、残りは全額何らかの形で寄付する事を明言した。

 富をと、思うが考えても見て欲しい。個人が後ろ盾も無く500億近くの大金を持っていても百害あって漸く一理だろう。

 そもそも、使い道が限られ過ぎている上にどう足掻いても厄介事しか招かないのは目に見えている。

 初めは九鬼に、とも思ったが主催者にともなれば下手な噂が立ちかねないのでこれも没。

 また、参加者の方も独自で治したと言って、その通りだった為に驚かれた。

 

 インタビューもあらかた終わり、記者達から離れて身を隠して移動。

 行き先の目的地といえば清楚達がいる救護テント――――

 

 だったのだが――――

 

「申し訳ありませんが、九鬼で無い者を通す訳には参りません」

 

「あぁ、うむ。全くもって正論であるな」

 

 と、事情を知ったのかクラウディオに突き返され、携帯に連絡してみるも音信不通。

 恐らく電源を切っているのだろう。メールだけ送ってその場を後にした。

 

 圏境を使って透明化し、記者を躱すのはデフォルトだ。

 

 

 

 

 

 ――――夜。

 

 現在は元我が家、現売り家の筱宮宅。

 母が死んで以降は売り家に出されているものだが、ちょいちょいっと所有する不動産業の記憶を混濁させ、売り家でありながら実質空き家と化した元の家にいる。

 

 ちなみに、法に照らすと現在、住居侵入罪 刑法130条。

 正当な理由無く他人の住居などに侵入した場合、三年以下の懲役、または十万円以下の罰金に処する。

 

 窃盗罪 刑法235条。

 他人の財物を断り無く使用、接収した場合、十年以下の懲役、または50万円以下の罰金に処せられる――――などが適応するので、本来やってはいけない事であり、言い逃れの出来ない犯罪者だ。

 

 態々犯罪を犯してまで何をやっているかといえば

 

「今日はみな1日お疲れさまでした。各々の働きを労って、乾杯!」

 

 ――――乾杯!

 

 宴である。

 それはもう見事なまでに宴だ。それも酒宴。

 予め作ってあった料理は出来て直ぐ蔵に入れてあったため、出来たてホカホカ同然。少し普段よりも豪勢な料理と神酒、狛さんのところの川神水が主なメニューだ。

 

 豪快に全員酒、或いは川神水、或いは緑茶を煽る。

 中でも酔花はやはり飲みっぷりが良い。見るからに美味しそうに飲む姿はこちらもツイツイ手が伸びそうになってしまう。

 

「いやー途中までは兎も角、最後は楽しい祭りだったねぇ。ハムっ、ん~、うまッ」

 

「えぇ、我もそこそこ楽しめました。兄さま、どうぞ」

 

「有難う、シキ」

 

 横にいるシキから料理を装ってくれた小皿を受け取る。嬉しそうにはにかむ姿に釣られるかのように微笑む。

 料理を摘み、川神水を流し込んだ。芳醇な香りが口から鼻に抜け、何とも心地よい気分を齎す。

 ほい、と酌をしてくる酔花に、返礼として注ぎ、盃に並々に入ったソレを一気に煽る。

 お互い、息をついて余韻を楽しむ。

 楽しく飲み食いしながら話題は今日のKOS。

 

「それにしても、流石は不敗の流派ってだけあって総代は強かったねぇ。あの金髪執事もだけど、本当に歳よりか、って何度言いたくなった事か」

 

 中でも楽しく語るのは酔花。

 最後の鉄心殿とヒュームとの戦いの余韻が冷め止まぬのか、満面の笑みで酒を飲みつつ語る。

 それに賛同するのは隣にいるシキ。

 何だかんだで好戦的な(元)妹は、釈迦堂さんと鍋島正との戦いが楽しめたようだ。顔は幾分スッキリと清々しい表情を浮かべている。

 

「特にあの釈迦堂という人物との戦いは心躍るモノでした。機会があれば是非とももう一度戦いたいものです」

 

「呵々、それまたの機会にな」

 

 言葉と共にシキを抱き寄せ、優しく頭を撫でる。

 

「に、兄さまぁ……あぅ」

 

 恥ずかし気に顔を赤らめるも、撥ね退けようとはしないシキ。やがて、羞恥心を吹っ切ったのか、子犬が甘える様に鼻を鳴らし、抱き寄せた胸にすり寄る。

 

「にいさま、にいさま……」

 

「完全に甘え状態となってしまいましたね」

 

 膝の上で子猫状態話しかけてきたのは珠百合。

 手渡して料理を食み、チミチミと置いてある目の前に酒を飲んでいる姿はまさしく猫そのもの。普段はしないが、時折こうした方法で甘えてくる時がある。

 

「こうなると、シキは長いですから」

 

 舐める様にして酒を飲みながら語るのはディズィー。料理は食べられないが、酒は全て燃料になるので料理には一切手を付けず静かに盃を煽っている。

 

「普段と違って微笑ましい限りです。こういうのを世間ではギャップ萌え、というのでしょうか」

 

「相違ないが、何処(いずこ)で学んだのだディズ?」

 

「ヒ・ミ・ツ・です。お館さま」

 

 時折謎めいている。

 むー、と横で唸る声が聞こえる。誰か、といえば雪花だ、と答える。

 その視線はシキとこちらを交互に行き来しており、顔は不満げだ。

 

「どうかしたか、雪花?」

 

「シキの姿は可愛らしい。しかし同時に羨ましい」

 

「なら雪花も言えばいいじゃないか、甘えさせておくれってさ」

 

 野次を飛ばす酔花。横ではディズィーも首肯で同意しているのが目に映る。

 言われた雪花はその名に恥じぬ白い肌を赤らめ、もじもじと恥ずかしそうにしている。

 

「だって、なんだか思春期の乙女みたいで……は、恥ずかしいではないか…」

 

 答える事すら羞恥であるかのように、ソッポを向いてこちらの肩に額を乗せて顔を背ける雪花。

 酔花は大笑い。

 可笑しくてしようがないと膝を叩く。

 

「アハッハッハッハ! ひ、人前で口は吸えるのに、なんで変な所で恥ずかしがるんだか」

 

「あ、アレは愛情表現以上にマーキングの意味合いが強いからな! しかし、こう……面と向かってっていうのは些か気恥かしいではないか」

 

 今の言葉と恥じらい顔を伏せる雪花の仕種に、胸からふつふつと愛おしさが湧いてくる。

 思わず片手でのみだがギュー、と抱き寄せ頭を優しく撫で、頬ずりしてしまう。

 すると普段の凛とした感じが一変、シキの様にあうあう、と狼狽しながらも擦り寄ってくる雪花。

 

「あぁ、もう。そういうところが愛おしゅうてならぬなぁ雪花は」

 

「うぅ……あぅぅ…」

 

「幸せそうだねぇ、シキも雪花も。ふむ、どれアタシも失礼するよ」

 

「ではディズィーも」

 

 言葉と共に立ち上がり、2人が背中に枝垂れ掛ってくる。2人が2人ともふぅ、と心地気に嘆息し寛ぐ。

 ちょっとしたおしくら饅頭状態だが、身体の随所にかかる他者の重みと温もり、身体に伝わる息遣いがとても安らぐものだ。

 

「やっぱ、ノルンの側は落ち着くねぇ」

 

「そうか?」

 

「あぁ、妙な心地いい安心感があるんだよ」

 

「納得です」

 

「ディズィーも同じ意見です」

 

 酔花の発言に珠百合とディズィーが賛同。後の2人は言葉はいらないと言わんばかりにベッタリだ。

 全員より一層身体を預けてくる。

 暫く各々幸せに浸っていると雪花の呼吸が荒くなっている事に気付く。名を呼ばれて顔を上げた雪花の瞳は潤んでおり紅玉の様な紅い眼が怪しい色を湛え、ハァ、ハァ、と酸欠しているような息遣いは苦しげながらも何処か引き寄せられる雰囲気を醸し出す。

 早い話が欲情しているということ。

 

「なぁ、ノルン……ごほうび、ちょうだい…」

 

「……呵々、あぁ、どうぞ存分に、だ」

 

 着物を裾を肌蹴させ下の素肌を露わにする。雪花は顔を首筋に埋め、舌で一舐めし

 

「アハッ……」

 

 ――――思いっきり歯を突きたてる。

 

 ブチリ、と肉を噛み切る音を立て、湧き立つ赤い命の雫を喉を鳴らして飲み込む。

 ゴクリ、ゴクリと、それは美味しそうに。鼻声を上げ、喉を1度鳴らす度に身体が震え、軽く痙攣させている。

 更に右肩、右胸にも同質の痛み。

 酔花とシキが雪花と同じ様に肉を噛み切り、血を啜る音が響く。

 

「主……」

 

「大事ないさ、珠百合。何度も見ておるだろう?」

 

 それはそうですが、と言いつつも何処か心配そうに見つめる珠百合。

 顔は見れないがディズィーも似たような心境らしい。

 しかし、この行為は性交に次ぐ3人の愛情表現の表れなのだ。

 

 彼女達は鬼である。

 

 混血、純血問わず大なり小なり血肉を喰らう事も当たり前の様に行う種族である。彼女達に限らず食人の属性を持つ者にとって対象への愛情が深い程こういった事は顕著に表れるのだ。

 最初は酔花以外は忌避していたが、堪える必要はないと、受け入れてからはこうして欲求を抑えられない時はガブリ、と喰らい付いてくる。

 珠百合は山猫の猫又とはいえ、本人気質からか血肉を好まず、またディズィーに到っては固形物を食さない。

 なので、妖怪としての本質を理解しても行動にまでは理解には到らないそうだ。

 

 己としては与えられる痛みすら相手から愛情表現と思うと可愛く思える。

 行為の最中は無我夢中の半ば忘我状態、一心不乱に啜る姿がとても愛らしい。

 分かっていながらそれでも心配してくれる辺り出来た子達だ。

 とはいえ、そろそろやめさせないと失血多量で倒れかねない。

 雪花とシキの頭をポンポン、と叩き合図する。

 

「んッ……んんッ――――――――」

 

「ふぅ……ううぅぅぅ~~~~~~ッ」

 

 その軽い衝撃すら堪らないと言わんばかりに全身を強張らせ、ふるふると身体を痙攣させる。その時、勢い余って2人ともブチブチ、と肉を噛み千切ってしまう。

 そのまま息をついて、噛み切ってしまった事に思わず、といった具合で顔を上げるも恍惚の表情で呆然としており、口の端から一筋の血の跡が妙な寒気と色気を放っている。

 続いて酔花にも止める様にと伝え、口を離す酔花。手で口元を豪快に拭い、バツの悪い顔をし、しかし雪花達と同じく顔どころか全身を紅潮させて色っぽい。

 

「あぁ~……スマン、スマン。ちっと吸い過ぎたねぇ、れる、れる、ちゅ」

 

「んっ、構わぬよ」

 

 己が噛み付いた後を舐める酔花。他の傷は未だ動けない2人に変わって珠百合とディズィーが舐める。

 どちらも労わる様な舌使いがとても心地よい。

 ただ、舐めている内に段々と珠百合達も顔が赤くなって興奮し出した様子。他の3人の様に息遣いが荒い。

 漸く快楽の波がひと段落ついたのか未だ情欲を湛えた瞳に僅かながら理性の光が宿る雪花。

 ちなみにシキはまだ忘我状態である。

 

「ノルン……」

 

「あぁ、そうだな」

 

 みなまでいわずとも何を言いたいかは察せる。

 周りもみな一様にその気の様で、服を脱ぎ出す。

 

「……ヤルよ」

 

 雪花の宣言と共に、色々と液体塗れになりながら朝を迎えた。

 

「はぁ……はぁ……」

 

「……」

 

「に、にいしゃま……逞しすぎまふ」

 

「あー、腰がだるい……気持ち良かったけどさ」

 

「あ、相変わらず、この方面は……5人掛かりでも、勝てそうにないな…」

 

 

 

 

 

 

 

 ――――翌朝。

 

 色々と付いたものを庭で術を使い洗い流す。朝食は無し。

 制服へと着替え学校へ向かった。

 川神学園では夏休みの間、受け持ちが違う教師の受講を受けられると言うシステムがあるらしい。佐々木との1件があり、夏休みが始まって最初の月曜からあるらしく学校へ向かった。

 

 多馬大橋には未だ昨日戦いの傷跡として斬られた鉄骨や、川の中にその残骸がちらほら窺える。

 振り返ってみれば、佐々木との戦場は多馬大橋近辺に留めていた。余裕が無かったとはいえ、よく個々に留めた、と内心自画自賛。

 他所の場所に移していたらと思うとぞっとしない。

 言うまでもなく確実に広範囲に渡って被害が出ていただろう。

 

 橋を歩いていると、前方から見慣れた姿。

 

「あ、ノルン」

 

「やぁ、ワン子。今日も欠かさず鍛錬か?」

 

 鍛錬の為か、ランニング程度の速度で走ってきたワン子。

 息が上がっていないところをみると始めたばかりか。

 

「えぇ、1日でも欠かす訳にはいかないわ。KOSはあんまり闘わないで失格になっちゃったし」

 

 耳が痛い話だ。

 言った事に気付いて慌てて訂正を入れてくるワン子。

 

「べ、別にノルンを責めてる訳じゃないのよ!?」

 

「心得ておる。有難う、ワン子」

 

「えへへ、どういたしまして」

 

 その返しは何か違う気がするがスルーしよう。

 話題はこちらへと移る。

 

「ノルンはなんで学生服なんか着てるのよ?」

 

「いや、夏休みの強化補修なるものを受けようと思うてな」

 

「え?」

 

「え?」

 

 奇妙な間が発生する。

 何か可笑しなことを言ってしまったらしい。

 ワン子はえーと、と考え、やがて言い辛そうに口を開く。

 

「えーと、確かじーちゃんが朝礼でも言ってたと思うんだけど、強化補修は31日からよ」

 

「あ? あー……あぁ!!」

 

 ポン、と手を打ち、自身のうっかりさに思わず膝をついてしまう。

 所謂 OTZ 状態という奴だ。

 大丈夫かと尋ねてきたワン子に無言で首肯。

 

 佐々木の事で頭が一杯だったとはいえ、思い返せば確かに言っていた。

 そもそも、KOSは本来27日から29日まで行われる予定であり、それを迅速に終わらせたのは他ならぬ己だ。

 そして、終わったからと言って大会開催された昨日今日である筈は無い。

 1日休むので今日はどの道必然的に休みだろう。

 ようは無駄足だったと言う訳だ。

 何と言う間の抜けた話か。

 

 誤魔化す様に笑いながら立ち上がる。

 

「ワン子、良ければ修行に付き合ってもよいか?」

 

「良いわよ、寧ろ大歓迎だわ」

 

 タイヤいるかと尋ねてくるワン子に無用だ、と言って身体を動かし筋を伸ばす。

 偶には走るのも悪くない。

 決して己の失態を誤魔化す為ではない。断じてない。

 

「それで、今日は何処(いずこ)まで?」

 

「浜名湖!」

 

「それはまた……まぁ、良いか。では参ろう」

 

「うん!」

 

 2人して駆けだす。

 目指すはお隣の静岡県。

 

「ユーオーマイシン!」

 

「ユーオーマイシン!」

 

 暑さに負けずに走る走る。

 今日は日照りが強いので熱中症への対策へも抜かりはない。

 

 

 ある程度進んで早めに水分補給とインターバル。

 

「ほら、特性ドリンクだ。こちらをまず飲んでおけ」

 

「いいの? ありがとー」

 

 最早、何処から出したのか、とか、なんで持ってるんだ、というツッコミすら無くなったのは少し切ない。

 十分な休息も取り終え、再び走りだす。

 

「まだまだ、勇往邁進よ!」

 

「おー!」

 

 休憩を小まめに挟みつつ、昼過ぎには静岡に着き、少し観光。

 

「うなぎパイ美味しいわね」

 

「ちなみに、うなぎパイはうなぎの中骨を砕いて粉末状にしたうなぎパウダーをパイ生地に練り込んで焼いている。覚えておく様に」

 

「ハーイ」

 

 良い返事だ。

 食べ物関係なので滅多なことでは忘れないと思う。

 ちょっとした小旅行感覚で浜名湖周辺を楽しみ、その日の内へ川神へ戻る。

 

 出会った多馬大橋に戻る頃には日は傾き、黄金色だった。

 隣では息を上げているワン子。

 流石に静岡を半日で往復では意気も上がって当然だ。咳き込むワン子の背を撫でる。

 

「あ、ありがとう……」

 

「なんのなんの。お疲れさまワン子」

 

 ふぅ、と息を整え、良しとワン子は一歩を踏み出す。その時、おーい、と遠くから呼ぶ声が聞こえた。

 視線を向けてみると近付く影。圏境を高めるまでもない慣れた気配。

 

「あ、お姉様!」

 

「おー、帰って来たかワン子。――――と、ノルン!?」

 

「や」

 

 駆け寄るワン子を抱きとめ、こちらに視線を向けると何故か驚く相棒さん。

 手を上げて返事をするものの、夕陽の光がさしてなお分かるぐらいに顔を真っ赤に染め上げている。

 

「ど、どうしてお前がワン子と一緒に?」

 

 何やら狼狽えているが、何だというのだろうか。

 取りあえずスルーしてワン子の鍛錬に付き合った事を告げる。

 

「わ、ワン子の鍛錬にか。それはまため、珍しいな」

 

「なんだかお姉様顔が赤いけど大丈夫?」

 

「だ、大丈夫だとも! 日差しが強かったからな、日焼けでもしたんじゃないか!?」

 

 何故狼狽えているのかと。

 気にはなったがスルーした方が良いと心眼が告げている為、スルー。

 なにやらこちらを意識しているようだ。雪花に言われた事でも気にしているのかと思う。

 雪花にも尋ねてみたが、結局情事の時でさえ漏らさなかった。曰く、モモの問題らしいので後は野となれ山となれ、だそうで。

 

「まぁ、何故鍛錬に付き合ったのかといえば――――」

 

 朝の出来事説明する。

 

「あはははははは! け、KOSの覇者の1人が随分とマヌケな事をしたなー!」

 

 抱腹絶倒。

 腹を抱えて大爆笑された。

 反論の余地が無い為笑われっぱなしである。

 ひとしきり笑った後で余裕ができたのか、いきなり真剣な表情に変わるモモ。

 

「事情、義経ちゃん達から聞いたぞ」

 

「そうか……」

 

「???」

 

 頭にハテナを浮かべているワン子を置き去りにしての沈黙。

 数瞬間を置いて、徐にモモが尋ねてきた。

 

「お前、宿とかどうしてるんだ?」

 

「抜かりはない。きちんと見繕っておる」

 

「嘘だな」

 

 正解。

 筱宮の家を使ったのは暫定的な者に過ぎない。今夜は川辺でもと思っていたので充ては無かった。

 よもや一発で言い切られるとは思わなかったので苦し紛れに根拠を聞いてみると――――

 

「感だ」

 

 その一言に、思わず笑ってしまった。

 ある意味お株を奪われた形だ。少し悔しい。

 

「どうだ? お前が良ければ今日のところは家に来ないか?」

 

「川神院に、か?」

 

 首肯で返してくるモモ。眼差しは真剣そのもの。

 なんでも鉄心殿も事情を聴き、既に了承をしているらしい。

 どうしたものか、と悩んだが

 

「困ってる時は遠慮なく頼れよ、相棒」

 

「……お邪魔します」

 

 モモの一言で厄介になる事を決めたのだった。

 

「よし! じ、じゃあ早速こい!」

 

 モモの顔はやはり真っ赤だった。

 

 それにしても、厄介になる事決めた時に心眼が警鐘を鳴らしたのは何故だろう。

 加えて、それが不利益にはならないとも告げている。

 あべこべな直感を内心で訝しみながらも川神院で世話になるのだった。

 

 

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