気まぐれ神様の物語 真剣恋Ver.   作:ジーザスルージュ

68 / 71
大変お待たせしてすいません……


65話

 赤、青、白、色とりどりの光が視界を染める。耳に入るのは銃声のようなモノだったり、或いはファンシーな印象を抱かせるモノだったり、打撃音だったり、流行りの音楽だったりもしたが一番多いのは人そのものが紡ぐ声そのものか。

 

 

「ここがゲーセンか。人がわんさかといるな……」

 

「思ったより迫力があって、義経はちょっと驚いている」

 

 

 其処は金柳街周辺にあるゲームセンター。よくモロが学友と入り浸っている店なのだが、ここにいる理由は一重に単純な話で食事を終えて店を後にした時に次はどこに行くかを決める時にモロが半分冗談で提案したのが採用されたからだった。

 突発的な発言ではあったが以外にも申し子達の喰いつきはよく、それもその筈で九鬼に居る以上は大抵の事は叶うといっても過言ではないが、やはり実地でないと味わえないものは多々あるものである。

 ゲームセンターもまたしかりで、従者部隊の娯楽の一環としてアーケードゲーム。俗に言う箱型のゲーム台はあっても精々数台だった。

 知識はあっても島育ちのプランの申し子達。なかでも興味を示した義経が行ってみたいと言ったのに周りも否もなかった為にこうして訪れたのだ。

 

 入口付近で屯するのもなんなので、全員で中へと入る。極彩色ともとれる光とそれなりに大きな音に包まれる中で代表するようにキャップが問う。

 

 

「さて、なにで遊ぶかねぇ」

 

「あぁ、私達は何分初心だからねぇ」

 

「そうだな義経達はみんなの動きに合わせようと思うが、いいだろうか」

 

「うん。みんなにお任せするよ」

 

「俺も一向に構わないぜ」

 

「なら、一通り巡ってみようぜ。折角の初体験だから一回ずつ軽くやっていけばゲーセンの楽しみ方も……まぁ、分かるだろう」

 

「軍師の意見にさんせーい!」

 

 

 大和の提案に概ね賛成してひとつずつゲームをしてまわる事に。まずはじめになにをするかを相談。意見はバラけていたが、まずはオーソドックスの箱型からということになって移動。

 

 

「それじゃ、はじめるよ」

 

「よろしくお願いする」

 

「モロ、程良い感じにな」

 

「分かってるよ。じゃあまずはキャラを選択してみようか」

 

 

 最初に選んだのは人気の対戦格闘ゲーム。動物をモチーフにしたキャラクターと格ゲーのコラボという一風変わっているゲーム。限りなくリアルな動物の絵で人の様に二足歩行で戦っている姿はシュールの一言に尽きた。思いついた人間は中々のセンスだ。

 モロはレスラーパンダ。義経はマーシャルアーツの兎を選択しての勝負が始まる。

 

 

「よっ、むっ、な、なかなか難しい、なッ」

 

「おお? けど筋いいよ!」

 

 

 画面では一進一退の勝負。手加減しているとはいえ初めてやったとは思えないほどの奮戦ぶりを見せる。格闘というジャンルが義経と相性がよかったのか驚く程上達していき2セット先取一本勝負は最後までもつれこみ、最後は本気を出したモロによって敢え無く敗れるのだった。実に大人気ない。

 

 

「モロェ……」

 

「モロェ……」

 

「え、えっと……モロェ……?」

 

「分かってたけど総スカンだね!? 後、ワン子は無理に真似する必要無いから!」

 

 

 ファミリー達のモロ弄り――もとい戯れを脇に反対側では義経が僅かに肩を落としていた。ゲームといえど根が純粋な彼女にとってはやはり負けたのは悔しかったようで弁慶と清楚が励ます。

 

 

「うぅ、負けてしまった」

 

「ドンマイだよ義経ちゃん」

 

「そうそうナイスファイトだったさ」

 

 

 その後は対戦を弁慶と清楚というゲーセン初心組でやってみた。揃って元々のスペックの高さで義経の後ろで見て覚えた様でスムーズに遊べた。次に与一の番という流れだったが彼は実のところ箱型の経験者で、島の方でもちょくちょくひとりでやっていたり、ノルンと一緒にやったりとした事がある。専ら義経達がいないときに、だが。ともあれ、そういった理由もあってここは遠慮すると辞退を表明。たらい回し、というのも変な話だが必然残るふたりがゲーム台に座るのだった。

 

 弁慶と清楚の勝負は以外にもこれまた接戦。ゲームに多少程度は経験がある弁慶と飲み込みが異様に早い清楚。サブミッションを得意とするレスラーパンダの対になる様な酔いどれクマと最後は前2人と変わらない白熱したバトルを繰り広げた結果、僅かに弁慶に軍杯があがる結果になった。

 

 

「あー、負けちゃったねぇ……けど結構楽しかったなっ」

 

「勝った……けど、ダルイ」

 

「なんで勝った方のテンションが低いんだろうね?」

 

「ゲームは結構集中力を使うからじゃね?」

 

 

 ゲームの結果と現実の結果があべこべではあるが、ある程度は双方楽しんだのは間違いない筈。きっと。めいびー。グダグダな流れだが次へと進む。

 選んだのは銃型コントローラー、一般的な通称でガンコンを用いたシューティングゲーム。先程よりも大きな箱型は画面が大きく、映像にも迫力があって騒音の中にあるといってもいいゲーセンないでもやはり目立つ。

 

 

「…………」

 

「大丈夫、義経?」

 

 

 そのゲームを前にして義経は身を強張らせていた。目敏く見つける弁慶は心配そうに声を掛ける――――が、何故だかその表情は案ずるものではなく可愛いものを愛でるソレ。

 声を掛けられた義経は「だ、ダイジョウブだッ……」とやはり硬い声。様子の変化に敏感に気付いた大和も声を掛ける。

 

 

「義経はどうしたんだ? なんか顔が強張ってるけど」

 

「あぁ、まぁなんと申したものか……所謂――――」

 

「の、ノルン君! それ以上は――――」

 

 

 義経の言葉を遮る様に、と言うほど大きくはないがそれなりの音がゲームから鳴り渡る。獣じみた声ならぬ声はどこか生理的な嫌悪感を催す声にピクン、と義経の肩が跳ね、言葉も同時に止む。

 その様子にノルンは肩を優しく叩いて、弁慶は頭を撫でて、清楚は後ろから背をさすり、まるでぐずる子を宥めるかのように振舞う。

 

 

「単純な話でな、義経はこういう類(・・・・・)が全般的に苦手なのだよ」

 

「あぁ、ナルホド。まぁ、苦手な人はどうあっても苦手だよな」

 

 

 言葉を濁す様に迂遠に言いながら大和とノルンは画面を見つめる。その先には身体が欠損し、どうみても正気どころか生きているとは思えない人間の大群が挙ってこちら側へと向かってくるシーンが映る。このシューティングゲーム、ゾンビが出てくる所謂ホラーモノだった。

 とはいえ、義経は同じホラーでもこういうスプラッタものよりは純怪談系のほうが圧倒的に苦手である。この手のモノは後者に比べれば幾ばくか平気ではあるのだがやはり苦手なモノは苦手。怯えはしないがどうしても固まってしまう。

 

 

「うぅ……義経は義経として恥ずかしい……」

 

「はっ、まぁ義経がビビリっていうのは確かに格好が悪い――――グフォッ!」

 

「主に追い打ちしてどうする馬鹿者が!」

 

 

 恥じいる義経に小馬鹿にするようにいった与一へ加えられる弁慶の制裁。沈められた与一の姿にノルンは最早手がつけられぬよなぁ、これは……、と心でゴチた。何せ与一の迂闊な発言ときたら彼が知る限りでも中学時代から多々見られているのだ。厨二の有無に関係なくこれが与一自身の個性とすら思えるほどの失言ぶり。義経の後ろでその一部始終を見てた清楚と眼が合い、ノルンは共に苦笑いを浮かべるのだった。

 

 

「そう恥じいることはあるまいて。逆にその方が魅力的に見えるぞ」

 

「そう……だろうか?」

 

「いや、相棒の言うとおり! 今の義経ちゃんメラカワユス」

 

「そうそう! 気にするこたぁねえって!」

 

「うんうん! その方が魅力的だよ主の場合は」

 

「ハッ、結局ビビりってのは変わ――――グフォッ!?」

 

 

 周りのフォローもあって何とか義経も宥められ、ゲーム再開。与一が蹲っているが気にも留めない。流石に今の発言がOUTだったのは明白なので、気に掛ける事すらしないだけだが。清楚ですらめっ、なんて言いながら放置を決め込んでいる。ノルンは蹲る与一を見て、彼の迂闊な発言は最早個性なのだろうと改めて思う。何せ厨二(こう)なる前から口を滑らせては沈められている。マゾでも無い限りは避けるのが普通だろうに、と頭を抱えながらもそっと水のペットを差し出すのだった。

 

 気を取り直してゲームに挑む。とはいえ、先程の格ゲーに体力を消耗した弁慶がパスを決め込み、義経はやはりこの手のものは苦手と言う事で弁慶の隣で見学。何故隣に行ったのかは敢えてツッコんではいけない。

 与一は少し休憩している為ので必然的に清楚がプレイする事に。その際に清楚当人からノルンに対して「一緒にやろうよ」と誘いを持ちかけた。

 

 

「私、か……」

 

「うん。駄目かな?」

 

「いや、構わぬぞ」

 

 

 一見して普通のやりとり。しかし、清楚には何故だか乗り気ではない様に見えて不思議に思う。シューティングゲームは2人プレイ可能なものであるので、出来ない訳ではないのは幾らこういうのが初心者でも理解はできる。だが渋る理由はなんだろう、という疑問は至極当然である。

 よく見てみると、彼を見る周り視線、特にモモを始めとしたファミリーの中でも昔馴染み組の目が奇異なものなのに彼女は気付く。なんというのだろう――――強いて言うならば苦笑、とかそんなニュアンスが強い、言語化すれば「あーあ」と言ったところか。しかし、その多くの視線にはどこか期待の様なものも含まれるのも引っ掛かっている。

 

 

「どうしたのかな? なんだかみんな様子が……」

 

「あー、やれば解りますよ先輩」

 

 

 昨今(?)珍しい与一からの言葉は、清楚にとって動じるものでは無い。珍しいなー、位だった。言葉のな髪の方が大いに気になるところだったがやれば解るというならやってみる事にした。

 

 そしてその理由を直ぐに思い知ったのだった。それはもう盛大に。

 この手のゲームには通常残機と呼ばれる攻撃を受けられる回数制限があるが、これを全て無くなるまで攻撃を喰らえば当然ゲームオーバーだ。接近してくる敵を如何に速やかに排除するかがこのゲームの鍵なのだ。

 ゲームオーバーになれば当然そこでプレイ終了。しかし、制限時間約10秒以内に再び規定の貨幣――場所如何で100円だったり200円だったりピンキリだがここは100円――を投入すれば再度挑戦が出来る。何故こんな基本的な説明がいるかと言えば

 

 

「…………」

 

「…………」

 

「…………」

 

「…………」

 

 

 始って時をさほど置かずにゲームオーバーを示すカウントが流れている為だった。場の沈黙が一点に集められる。清楚の隣で銃型のコントローラー、通称ガンコンを画面に向けたままで固まっているノルンへと。彼にとっては沈黙より主に古参のファミリー達の顔が痛かった。それはもう致命的なレベルで。何せ笑いをこらえる様にして見ているのだからそれは痛い筈である。隣でプレイ中の清楚もこの結果に思わず手が止まってしまったのを誰が責められるだろうか。

 

 

「えっと、ノルン君?」

 

「や、面目ない」

 

「う、ううん。それはいいんだけど……」

 

 

 言い辛そうにしてチラ見する清楚の視線にも居た堪れなかった。しかし居た堪れないからといってこのままコントローラー置くのは何か違う気がするも、だからといってこのままするのもなー、と陳腐な葛藤がノルンの思考を埋め尽くす。云々と詰まらない考えを巡らせているので、傍からはバツの悪い顔で固まったままだ。

 

 

「いやー相変わらずの下手っぷりですなぁー」

 

「…………」

 

「――――あべしッ!?」

 

 

 顔を寄せて来たガクトのそのあまりにも腹立たしい表情についつい手が伸びてしまったのは致し方ない事だった。腹に手を押さえて蹲っているのも自業自得。苦笑いしながら「藪蛇だったねガクト」とモロとか、大丈夫だろうかと心配している義経を放っておいていいよと諭す弁慶とかは気にならない。ならないったらならない。

 閑話休題。

 事ここに到って最早説明の必要はないだろう。ノルンと言う人間はこの類のシューティングゲームが壊滅的なレベルで下手だった。今し方のも態とではないかと思いたくなる程神懸かり的に外していた。傍から見ればなにも特別変わった事をやっている訳でも無く、ただ真っ当なやり方で遊んでいるのだが丁度標的に当たるかどうかという場所を彼は打ち抜き、結果として倒すよりも攻撃される機会が多くダメージを喰らってゲームオーバーとなるのが何時もだ。武術とはやり込んだ年月が文字通り桁違いなので、一概に比べるのはアレだが武術以上に才能が皆無とそう思えてしまう。

 その下手さをファミリー達はよく知っているからこその先程清楚が訝しんでいた彼らの反応。ついでに島の生活でも与一とプレイした事があるので彼も吉の光景で、よくノルンは突っ込まれている。

 

 溜息ひとつ。彼にしては珍しく僅かに肩を落とし、哀愁漂う姿はとてもではないが武神に勝ち続けている人間の姿には見えない。尤もその武神は腹を抱えて爆笑しているが。

 ノルンの肩をポン、と手を置く感触が伝わってくる。当人の圏境でソレが誰かは把握しているので振り向く事はしない。唯一言彼は言う。

 

 

「後は任せた」

 

「ハッ、造作もねぇな。そこで見てな」

 

 

 入れ替わる様にノルンは彼、那須与一へと託し、後ろへと引きさがるのだった。清楚の謝罪は忘れない。ついでに硬貨を入れる事も。色々と締まらないことこの上ない。

 線無い事だと半ば思考を断ち切って、見学にまわったノルンの腕を自然な動作でとって抱く弁慶。反対側には義経が位置取る。

 

 

「お前にも苦手なモノってあったんだな」

 

「義経も少し驚いている。何でもそつなくこなすと思っていたから」

 

「いやはや、昔からこの手のゲームは如何とも上達せぬでな……からかわれてばかりだよ。与一にも手解きをして貰ったが早々に諦めた方がよいと言われた」

 

「へぇー、与一に手解き受けたってのも何気に驚きだ」

 

「御覧の通り、与一はこの手のゲームはかなり上手いぞ」

 

 

 ノルンの言葉に釣られる様にふたりは視線を向ける。既にファミリー達はノルンを弄るのも忘れて与一のプレイに盛大に盛り上がっていた。与一は鋭い眼光で画面を見据え、迫る敵を迅速に狙い撃つだけでなく、過不足無く弾丸を打ち込んでいき次々と屠るさまは誰もが見惚れてしまうほどの業だ。先程のプレイと殆ど変らない速度で、しかしあっというまに第一ステージをクリアして魅せた与一への称賛の声は益々うなぎ昇りに上がっていく。彼、那須与一は間違いなく輝いていた。ゲームで、だけども。

 

 

「ヒュ~♪ やるなぁ~、流石天下五弓ってところか」

 

「ホント、ビックリの腕前だったよ」

 

「与一△!」

 

「凄かったぞ与一! 義経はとてもとても感動したっ!」

 

 

 彼の腕前が天下五弓という世界で弓技に優れた五人に与えられる称号とこのゲームの結果を比べていいのかは甚だ疑問は尽きないが、少なくともこの場においてはそんな無粋とも言える指摘をするものはいない。それだけ彼の披露した腕前が凄かったことの証左だ。

 周りが称える声の中でも義経は尤もはしゃいでいる。元々根の素直な彼女であるが故に称賛の仕方も大仰ながら、愛らしさが溢れんばかりの反応だが向けられた当人は(厨二)らしく素っ気無く振舞う。横からの弁慶の視線を敏感に感じ取って震えもしたが、そこは瑣末なことなので割愛しよう。

 

 

「そ、それにしても先輩も上手かったな。初めてとは思えない腕前だったぜ」

 

「ありがとう与一君。でも本当に初めてだよ」

 

 

 与一の言葉の通り、実際に清楚の腕前は最初のぎこちなさからみるみる内に上達していき、あっというまに与一に追従できるレベルまで上がっているのだから彼女のスペックの高さが窺えた。

 

 

「尚更それは凄いと自分は思うぞ」

 

「まぁその前の人の散々な結果を見てるだけ余計にねー」

 

 

 与一や清楚に向けたソレとは大凡真逆のニュアンスを含んだ視線が多く、一点を貫く。にやにやと実に意地の悪い笑顔付きで。対して向けられた方は特に反応はせずに――――否、無表情のままに腕を組んで目線をツイ、と横にズラす。

 

 

「…………悪かったな、どうせこの手のゲームは不得意だとも。解りきっておる癖に其方等は何時だってそういう視線で私を見る。誰にだって得手不得手は多々あろうに何故(なにゆえ)こういう時に限って……これ見よがしといじりおってからに――――」

 

 

 自分に対して弁解するかのような独白をブツブツと呟き、やがてプイ、と顔を逸らすノルン。誰がどう見ても拗ねてるようにしか見えない姿は彼にしては極めてといっても過言ではない。

 それが証拠に隣で彼の腕を組んでいた弁慶や、弁慶にしがみ付いてゲームの恐怖と内心で戦っていた義経もこれには眼を丸くしている。ふたりだけでなく、ゲームをプレイしている筈の清楚すら前2人と同じようなリアクションをとっている。3人とも食い入るように思わず見てしまっている辺り、5年近い付き合いのある彼女等をしてどれだけレアな光景かが窺えると言うものだ。

 

 

「相変わらず、コレに関してはモノ珍しい反応してくれるよな」

 

「……やかましい……」

 

「相棒をゲーセンにつれてきたら、これをやらせないとなぁ! ノルンの拗ねた顔なんてこんな時でも無いと拝めないぞ」

 

「ふん、すまなんだな愛想があらぬ身で」

 

「でも、やっぱり何度見ても新鮮よね」

 

「確かに犬の言う通りだな」

 

 

 やいのやいのと茶化す周り。それだけノルンの今の反応は物珍しい、という言葉すら霞むほどに稀な光景だ。何をしても、何を見ても彼が動じる様子など恐らくは古参のメンバーはおろか最も付き合いの古いであるモモですら此処以外で(・・・・・)は見たことは無いだろう。それ位に落ち着いているのに飄々としているという一風変わった振る舞いをするノルンが本気で拗ねている光景はレア中のレア、SR(スーパーレア)だ。

 ならばこそのこの周りの反応は至極当然と言えるだろう。

 それが特に顕著なのは武士道プランの申し子達の女性陣だった。

 

 

「なんだか義経はとても不思議な心地だ。ノルン君が可愛く見えてしまう」

 

「いやいや、その感覚は間違ってないよ主。これが所謂"ギャップ萌え"って奴だね」

 

「うんうん、義経ちゃんと弁慶ちゃんの言ってること何となく分かるよ」

 

 

 義経が宛ら子供を見るかのように微笑ましく見てきたり、弁慶がうりうりとソッポを向いている彼の頬を指で小突いたり、清楚はその名の通りの雰囲気を崩さず、しかしどこか悪戯っ子の様な笑顔で見ていたり。

 まさしくこれみよがしと、こぞってからかう様に――極一部に限っては純粋に本心から――言ってくる友達。それらを払うかの様にノルンは咳払いをひとつして

 

 

「そろそろ次へ参ろうか。まだまだやっておらぬし。うむ、そうとなれば早速場を移そうではないか」

 

 

 なんて捲し立てながら足早にその場を後にするのだった。組んだ腕を離そうとしなかった弁慶と、彼女の腕を同じく離さない義経も一緒に。その後をゆっくりと追い掛ける清楚と、めんどくさそうに動く与一。

 後に残るのはその背中を見て堪え切れず爆笑が響く様子だけだった。

 

 ノルン達の後に続く様に場を移した先にあったのはアクリルの窓で仕切られた箱台。外から中が見通す事ができ、箱の内側の天井にある機械仕掛けの簡単なアームが特徴的で中には色々なぬいぐるみやアニメキャラのフィギュアが大量に置かれている。

 ゲームセンター等には絶対と言っていいほど欠かせない老若男女誰もが遊べるのがこのクレーンゲームだ。

 

 

「うわあぁ、可愛いぬいぐるみが一杯だ! あ、ほら見てみろ弁慶。さっきのゲームで弁慶の使っていたキャラじゃないか?」

 

「本当だ、ご丁寧にデフォルメされてる」

 

「寧ろデフォルメしないとただの憎たらしい酔いどれクマだからね。でもそこが良いとかでフィギュア派かぬいぐるみ派かは未だに賛否両論だよ。ちなみに僕はぬいぐるみ派だね」

 

「流石モロ。この手のものには強い」

 

「おおーこっちのもカワイイな! ああっ、あっちも!」

 

「クリ吉はマイペースやな」

 

 

 クレーン台はひとつのみならず、キャラクターの元となっている作品ごとにある程度別個の台に置かれている。クリスなどはそこかしこを目移りしながら回っており宛らネズミみたいな印象を禁じ得ない。

 ともあれ、何時までも義経やクリスの見ていても話は進まないので取りあえずチャレンジしてみよう、と言う流れで先程と同じくプレイしてみる事に。

 だがしかし、この手の景品ゲームのお約束と言えばいいのか、誰ひとりとして取れる者はいなかった。幾度チャレンジしても惜しい所までは行くもののやはりというべきか、アームは景品を持ち上げても運ぶには至らない。

 

 

「うー、結構難しいな。後一歩なのだが」

 

「私もなかなか取れないよ」

 

「別に欲しいって訳じゃないのに取れないと癪だ」

 

 

 申し子達の言葉には大なり小なり歯痒さの様な色が見え隠れしていた。落ちては課金しての繰り返しはのこのゲームの醍醐味とも言えるだろう。尤も本筋はあくまで景品の方であり、ソコのところを好んで味わいたいと思う人間はかなり稀少な部類だ。だがいなくはないだろう、きっと。

 

 

「ゲーセンで一番お金を使う場所だからね。ハマると加速度的に浪費するよ」

 

「あーッ! ま、また落ちた……後ちょっとだったのにッ! えぇい次こそはっ!!」

 

「極一部スゲー手遅れっぽいけどな」

 

「クリスェ……」

 

 

 手遅れの言葉通り、既にどっぷり漬かっていたクリス。落としては硬貨を入れてを繰り返すその姿は完全にハマっていた。動かしては落として硬貨を入れを繰り返しは色々と考えさせられる光景だった。

 京辺りはとても生温かい目で見守っている。しかし、止めようとはしない辺りなかなかにSと言える。クリスの小遣いは十分か。

 あと少しで取れると言う所で興奮のあまりアクリル板を叩き、景品を落とすのはお約束だ。喚く彼女をどうどう、なんて言いながら京はなだめる。

 

 

「と、アレが典型的なのめり込み過ぎな例なので程々で楽しみましょう」

 

 

 大和の締め括りに、全員ハーイ、と声を揃えて全員遊戯に勤しむ。

 全員とは言っても実際にプレイしているのは主にモロ、クリス、武士道プラン組で他は思い思いにそれらを覗きこんでいる形だ。

 その後も各々やってはいるが、何れも成果は芳しくはない。モロは4回のトライで目当てのフィギュアを手に入れることが適ったが、クリスと武士道プラン組は白星ひとつなく、散々な結果と言えた。

 

 芳しくないその様子を周りも見ていた訳ではない。ちゃんとアームを落とす位置を指示したりとしているがそれでも今一歩の結果に終わるのだった。

 500円6回分を2サイクルして現在1000円の出費。クレーンゲームの平均的な――別段確りとした第三者機関で図っている訳ではないが――範囲とはいえ取れない事が悔しくない訳がない。

 特に義経は悔しがっている。何せ武士道プラン組の方は途中から殆ど彼女しかやっていないのだから。

 

 

「取れない…………」

 

「元気出して義経ちゃん! ほら、次も頑張ってみようよ」

 

「そんなにあの酔いどれクマが欲しいの?(向きになっている主もカワイイ)」

 

 弁慶の問いに頷く義経。彼女が狙っているのは先程話題に挙がった格ゲーのキャラのデフォルメ人形だ。

 

「折角遊んだ記念にと思って義経は狙っているのだが……かなり手強い」

 

 

 実際のところこの人形、初心者が狙うには少し難易度が高い。寸胴な身体に酒瓶抱えた姿は眼に見えてアームを引っ掛ける場所が見あたらず、僅かに酒瓶と腕の隙間狙わないといけないが現状のぬいぐるみの体制上非常にシビアな有り様だ。

 うー、と唸りながら肩を落とす彼女に見兼ねた大和がひとつの提案を出す。

 

 

「本当にそのぬいぐるみが欲しいなら。最終手段としてノルンを頼ればいいよ。あっという間だからさ。な?」

 

「うむ、お任せあれ、だ」

 

「ノルン君はこれが得意なの?」

 

 

 指でさしながら問う清楚に問われた側のノルンは首肯で以って応える。

 今から約3年ほど前の事。離島から一端川神に戻ってきて久しぶりに遊んだ際に他ならぬここで名付けられた名前だった。

 突端はモロがアニメのフィギュアを獲得しようと四苦八苦しているところに、からかい半分で見ていたガクト達に欲しいものが取れないストレスでモロが「じゃあガクト達なら取れるってのっ?」と、少しキレ気味に言ったのが始まり。自信満々に挑むも、ガクトを始め面白そうと参じたキャップ、バトンタッチの様な流れで大和やワン子、京、モモとファミリー達の挑戦をそのクレーンゲームは一蹴に返したのだ。

 当然と言えば当然の成り行きで静観していたノルンにもお鉢が回って来た訳だが、全員が全員苦労していたのをあっさりと取ってみせた。

 おぉー、と驚嘆して褒めるなかサラリと取れた事に対抗心を刺激されたのか、はたまた冗談半分だったのかガクトがまぐれかもしれないと言ってアレなら取れるか、と別のフィギュアを指定。ノルンはやはりというのも可笑しな話だがヒョイ、と取ってみせる。

 その様に意固地をみせたガクトが次々と指定するもどれもこれもが300円――つまり3回――で取ってみせるのだからこれも流石になにも言えなくなったガクト。

 ――――が、ここで終わらないのが風間ファミリーのクオリティというべきか。

 見ていた他のメンバーも面白がってあれこれと指定して、実益を兼ねた戯れを始めるのだった。

 

 

「懐かしい話だよね。調子に乗ってたのもあって結局気付けば店の景品、殆ど取っちゃったからさ」

 

「あぁ、足元がぬいぐるみやらフィギュアやらで埋まってしまったんだよな」

 

「どんだけだよ……」

 

 モロとモモの語りを聞いて呆れ返る与一。多分そのリアクションは正しい判断だ。

 

「それは凄い! 義経もやっているから分かるが、とてもではないが真似できない」

 

「なに、そう難しいことではあらぬ。やっておる事は普段の圏境による空間把握と」

 

 

 キラキラした眼でみる義経に対して変わらず振舞うノルン。

 その横で懐かしむ様な顔で声を出さずに笑っている大和はまるで茶化す様にノルンを見ながら「流石クレーン侍だな」と語るのだった。

 大和との言葉にオウム返しの様に「クレーン侍?」と横で聞いていた清楚に遊んでいた義経と弁慶が口にする。その単語を耳にしてノルンは何ともいえないような苦笑いを浮かべて応じた。

 

 

「皆がつけたあだ名だよ。常に和装ゆえ、な。生憎と、ギターの類は持ち合わせておらぬが」

 

「なんでギターなのだろう?」

 

「そういやちょっと前にそう言う芸人がいたね。最近は見掛けないけど」

 

 

 弁慶の指摘通りで、名前の由来は当時人気だったお笑い芸人の芸名からだ。

 それなりにファミリー達の間でもブームだったのもあって名付けられたクレーン侍の名前は、しかしネタをパロディれるほどのモノも無くなんとも中途半端になってしまったという締まらない結果に終わったが、それはこの場においては些細なことだった。

 

 クレーン侍の発端の話を聞いていた弁慶はふと浮かんだ疑問をそのまま零す。

 

 

「にしてもノルンらしくないね。目立つのは好きじゃないのにそんなことしたら凄い目立っただろ?」

 

「如何にも。大変であった……」

 

 

 弁慶の指摘に頷くノルン。

 実際のところファミリー達以上に周り集まっていたギャラリーには当時は困ったモノだと思いだす。唯でさえ容姿と服装によって悪目立ちしやすい外見も相俟って店内はちょっとしたパニックだったが、そこは普段からモモの路上試合で観客の整理に慣れていた大和達の奮闘もあって何とかことなきを得たのだった。

 

 

「私は基本的に身内とみなした者からの頼みには弱い。それがからかい半分であろうと好意的なものであらば応えずにはおれぬ。無論その時に手隙であればだが、な」

 

 

 ノルンの忌憚ない感想に、聞いていた者全員があー、なんて声を揃える。

 言われてみればと心当たりが大いにあるとみんな言わざるを得ないものだ。仲間内での頼み事を、用事が入っていないときなど以外は大抵答えていたなと各々思い返す。

 

 大和は今までノルンが頼まれたことに対して出来る事は多少無茶に見えても応じていたな、と振り返って思う。

 義経ys与一は弁慶と彼のやり取りを思い出して、何だかんだ言いながら酔い潰れるまで付き合い、そしてアフターケアまでする事を。

 清楚は一緒に読書をしたり、料理を教わったり、果ては覇王状態での付き合いも頼んで断ったためしがない事を。

 そしてモモに到っても、用事が挟まない限り自分との仕合を一度も、仕様がないなぁ、みたいに多少苦笑しても『やりたくない』などの極めて個人的な理由では断った事がないな、と気付く。

 みんながみんなどれもこれもノルンの感想には成程、と思わずにはいられない。なにより当の方人が迷惑そうな素振りも気配も見せないところをみれば本当に本心から応えたいという意思でやっているのは十二分に伝わってくる。

 

 

「それでどうする義経? このまま続けるか、それとも私が出張るか」

 

 

 言葉と共に、無言のまま義経はクレーン台の中を見て、次にノルンの方を見る。視線が首ごと交互に行き交うこと数回。形の整った眉を8の字に歪めて少し困った様な顔を作ったまま、やがて彼女は静かにポツリと一言。

 

 

「義経はお願いする……」

 

「呵々、任された」

 

 

 真面目な彼女の彼女らしい葛藤があったことをノルンは的確に見抜いて苦笑を浮かべながら了承。

 普段ならば努力を怠らない義経だが、やればやる程に金銭を消耗していくがために出来るようになるまで頑張って金銭をつぎ込む事と、幾ら彼女が慕う相手だからと頼ってしまうが、金銭の浪費は避けられる事の二つを天秤に図った上での選択だったのは義経の、至らないと語っている顔を見れば一目瞭然だ。何せ、未熟だ、と肩を落として弁慶に励まされているのだから。

 無論、至らなさとは別に取れなかった悔しさもあるだろう。

 成長をして落ち着きを大分みせる様になったが、こういう些細なものにでも一喜一憂する所は性分なのであろうな、とクレーンに向きあいながらノルンはそんな感想を抱く。

 

 

(まぁ、其処が愛らしくもあるが)

 

 

 視線を移せば、主と臣下の微笑ましいやり取りが映る。何となく、ほっこりさせる光景だった。

 ちなみに、圏境による探知で把握しているので視線は外れても的は外さない。他所見をしながらサラリと景品を取る手並みに見ていたものは軽い感動と戦慄を覚えたのはどうでもいい話だ。

 ショーケースに視線を戻したところで唐突に後ろの方で見ていたモモが絡んできた。

 覆いかぶさる姿勢で先程弁慶が引っ付いていたところを占拠。うりうり、と頬っぺたをつついてじゃれつき始める。しかし、相手はノルン。慣れ親しんだ光景故に極々普通になんだ、と返す。

 返された側は先程のシューティングとはうって変わっての態度にも動じない。それだけの付き合いと言う事だ。それ自体に何も含むところが無い訳でもないが、最早今更である。

 

 

「殊勝な事を言ったがそれにしては、お前。この間の公式戦、私を思いっきり殺そうとしなかったか? 私が言うのもなんだが、私に対して信頼していたとは言えらしくないじゃないか」

 

 

 モモの疑問もある意味尤もだろう。

 若獅子を終えて間もなく、といっても良い時分に行われたふたりの試合。記憶に新しいこの試合の最中に彼は間違いなく友である筈の彼に間違いなく心臓と背骨を砕かれている。

 

 無論、一番古い付き合いである彼女には今の彼の発言も、先の試合での行動も嘘偽り無いものだと心得てはいる。何せ、生半な付き合い、というか突き合いをしてはいないのだ。

 脳筋的で、かつ彼女の主観的な話ではあるが、拳を交える事での語り合いはそれなりのものだと言う考えがある。

 だからこそ、理解できる相手、特に身内や仲間を重んじる彼の言動や行動。

 だからこそ、疑問を抱く。

 

 ――――何故、彼はあの時自分を殺し得る一撃を放ったのか。

 

 これについてはその場で言及もしているし、実際信頼あり気で、事実その通りの流れではあったがそれで納得はしても疑問を抱くのとは別問題。

 対して彼女が相棒と呼ぶ彼は一切動きを乱さなず、眼だけを横に動かす。

 一瞬だけ交わったそれは直ぐにケースの方に戻され、そして何事も無いかのように、極々自然にこういう。

 

 

「そんなもの、他ならぬモモが心より強く願ったが故に、だ」

 

 

 それ以外になにがある。

 と、そんな視線で見慣れた苦笑をみせた。

 

 

「――――――――」

 

 

 対して固まったのは彼女の方だ。

 凄まじい爆弾投下も良いところである。幸いと言うべきかどうかは知らないが、顔を寄せていたので周りには聞こえなかったが、幾らなんでも問いに対する答えとしては、らしくもなく本気だった、とか。或いは日頃の行いに対してのお灸だった、とかと予想していたからこれはあまりに予想外。

 いや、後者に対してはツッコミ所満載だが、この際置いておくとして。

 モモは言われた言葉を頭の中で反芻して、直ぐ様口を開こうとする。

 が、それらは悉くのどに詰まるばかりで出てこない。

 最近よくあるなぁ、とか頭の片隅に過るがこれもどうでもいい。

 

 言われて彼女は考える。何時の間にか肩にまわした腕すら説いて。

 

 ――――あぁ、そうだ確かに私は望んだ。こいつとの全身全霊の勝負を。

 

 だがそれは、果たしてどういうものだっただろうか。

 技と技、力と力のぶつかり合いか。

 確かにそうだと頷ける。

 だがそれは、どこまでのレベルだったか。

 

 ――――ああ、この■であいつの■を■■■■までに■シタイホド

 

 

「そら、取れたぞ義経」

 

「ありがとうノルン君! 義経は大事にするっ!」

 

「良かったね、義経」

 

「うんっ!」

 

 

 ハッ、となって気付けば後ろを振り返って取った人形を渡しているノルンの姿。義経達に柔らかく微笑む姿は常通りだった。

 何かが頭を過っていたが、胸に巣食う気持ち悪さに軽く頭を振って追い出すモモ。

 それは触れてはいけないモノだと、無意識で行った本能的な反応だった。それ故に彼女がそれに気付くことはない。

 本当に最近の彼女にはよく湧いてくるな、と奇妙な焦燥感が胸を掻き毟られつつそのまま背を向ける相棒に声を掛けるモモ。

 

 

「おいノルン、今の――――」

 

 

 しかし、それは吐きだされる事は無かった。

 彼女が出せなかった訳では無く、外から聞こえる人の喧騒によって。

 ゲームセンターの騒々しいなかに於いてそれはとても際立っており、ゲームを眺めていた側も夢中だった側もみんな外に聞き耳を立てる程と言えば騒ぎの規模も窺えるというものだ。

 

 

「どうしたんだろう?」

 

「ただ事では無いないようですが……」

 

「何か事件だろうか?」

 

 清楚、まゆっち、クリスが反応する中、最も早く動いたのは――――

 

「面白そうだ、行ってみようぜーー!」

 

 こういう騒動にいの一番に喰いつくファミリーのリーダーであるキャップ。

 止める間も無く、その名の如く風の様にゲーセンを飛び出して行ったのだった。

 あまりの行動に付き合いの浅い武士道プランの申し子達やクリス、まゆっち、特に前者はあまりの行動の速さにポカンとしている。

 

 相変わらず、と古参メンバーも呆れてはいるがある意味平常運転な光景は、やはり肩をすくめる程度で終わる。そんなかいち早く大和が携帯を器用に手早く情報収集に取り掛り始めた。

 

 

「取りあえず、キャップの後を追った方が良くない?」

 

「だな。放っておくと何しでかすかわかんねぇぞ」

 

 

 京のガクトの言葉通り、というのも変な話だがキャップのやることなす事は基本的に突拍子もないのが常だ。基本的には仲間内での遊びに適用されるモノだが、極々稀にこういう騒動に首を突っ込んで事態を悪化させる事がある。

 稀なことだが、起こった時は大抵碌でもない事が発生していしまう。一番ひどかったのはリンチの現場で飛び入りで助けに入ったらヤのつく自由業な方々まで引っ張って来た事とか。

 

 ソレを抜きにしてもやはりこの騒動は気になるところだった。

 何せパトカーらしきサイレンの音までも響いてきたのだからただ事ではない。駅前にあるここ金柳街である事も騒動の大きさに拍車を掛けているだろうがパトカーの様な公僕まで出張ってきている以上はややこしい事態に違い無いという発想は、この場も誰もが思った事だ。

 一行はそのままゲーセンを後にして飛び出していったキャップの後を追う。

 

 

「――――チッ」

 

如何(いかが)した? 舌打ちなんぞして」

 

「何でもないっ! ほら、いいから行くぞ」

 

 

 明らかに不機嫌そうなモモの様子に、ノルンは首を傾げるばかり。何に対しての苛立ちか当人が理解できていないようだが、心眼は欲求不満にも似た感情だと持ち主に伝えてくる。しかし、その原因も皆目見当もつかず、これ以上の追求は無理と思いそのままにしておいとかざるを得ず、結局そのまま話す事はなかった。

 

 金柳街の一角にある所にできた人だかり。

 既に到着していた警察官数名によって現場は区切られており、人ごみの中でポツンと一部の空間を広く、取り囲む様に配置している事から、なにかしらの強盗などが人質を取った類の事件である事をノルンは即座に察する。

 

 

「おのれ、人質とは卑劣なっ!」

 

「義経も同感だ。何とかして助けないと……」

 

「けど、僕たちが出来る事ってある、のかな? 既に警察も出張って来たんだし」

 

 

 憤るクリスとなんとかせねばと前のめりな義経に対するモロの言い分はズバリではあった。

 どれだけ能力が優れていようと所詮は学生身分。どれだけ動こうとしても社会的な立場で言えばまず間違いなく門前払いを受けるのは火を見るより明らかだ。

 実際そのことが頭に入っている面々は静観の姿勢を崩していないのだから。

 

 事態を野次馬と同じに見守っているなかで大和が声を上げる。情報がまとまったらしい。

 詳しく聞いてみると、どうにも物取りの類では無く通り魔的な行動の様だった。エプロン姿の女性に拳銃片手に突然襲い掛かり、何をするかと思えば警察を呼べと来た。しかも周りには動かない様に襲いかかった女性と周囲の人間すら人質にして。

 警察が到着後は周囲の人間は警察が無事保護したが、最初に襲い掛かられた女性はそのままだった。しかし、最初の奇行ゆえに瞬く間に広がりこうなったらしい。

 場所が100mをゆうに超えたところで起こった事では流石のノルンも気付けなかったが、しかし当然の様に疑問が湧く。

 胸に生じた疑問を晴らすべく、彼は唐突に口を開いた。

 

 

「して、事の詳細は当然把握しておるのか桐山?」

 

「はい、ノルン様」

 

「うおっ!? ビ、ビックリしたー……!」

 

 

 スっ、と現れる中性的な顔立ち。執事服を纏った桐山は、気配を絶って基本的に行動する為、慣れて無いものは大抵大なり小なり驚く。

 ガクトやモロ達の反応は一端脇に置いてノルンは事情を聴く。何せ武士道プランの投入実行に基いて川神市内は従者部隊によって治安維持を目的としたクリーン作戦なるモノで守られている。

 その発案者にして責任者は他ならぬこの桐山だった。

 ノルンはこのクリーン作戦には直接的には関与していないが、プランの申し子達の日常における身辺警護は彼が進んで名乗り出したが故に、マープルから従者部隊側の責任者として全権をゆだねらている桐山とはかなり話す機会が多い。

 彼は従者部隊達の街での行動は逐一頭に入れてある為、圏境による探知もあって即座に桐山に声を掛けたのだ。

 

 

「概ね、そちらの直江大和君の仰る通りです。現在は拳銃片手に通り魔は襲いかかった女性に膝をつかせた状態で路上の真ん中で警察と膠着状態です」

 

「なんか、ホントお前の周りは騒動が多いよなぁ」

 

 

 ある意味慣れた事態であるのだが、それでもモモはノルンの運の無さに呆れた言葉を投げる。言われた側は当然の如くスルーして言葉を続けた。

 

 

「して、相手の要求は?」

 

 

 人質などと言う状況を作り出し、あまつさえ警察まで呼び付けさせたのだ。何某かの要求はあってこそなのは誰もが理解できる事。

 それについて問われた桐山は、何故だか顔を曇らせる。

 眉を顰め、視線を横に流し、言葉を選ぼうとしているのか言い淀んでいる姿はかなり珍しい。

 しかし、その態度はある意味答えを出しているも同然だ。

 

 

「その犯人の要求ってのは、ノルンに関しての事って訳か……」

 

「与一の申す通りであろうな」

 

「どういうこと?」

 

「従者部隊が従うべきコイツの質問に答えを迷っただ。必然、言えばノルンの身を危険に晒しかねない要求だってことだよ」

 

 

 与一の指摘通り、基本的に使えるべき雇い主の家族であるノルンの問いに答えを選ぶということは詰まる所犯人の目的が最低でも九鬼に関わる事だろう。

 そして、それは恐らく問うた彼自身にまつわる事なのは、やはりノルンに対して答えを渋った段階でこれも明白だ。家族にまつわる事ならば、桐山ならばそれを伝えるだろうというノルン個人の分析による予測だが。

 

 やれやれ、とノルンが思うのは無理からぬことだ。当に自覚し、慣れた事で今更あたふたする様な事では無いので焦りはないし、気負いなんてものはそれこそ彼には無縁。

 だがそれでも己の厄介さに疲労感を覚えるのを誰が責められようか。

 見計らったかのように喚き散らす犯人と思しき怒声が、疲労感に拍車を掛けてくる。馬鹿なのか、馬鹿なのだろうなぁ、なんて内心で罵る。

 

 

「ノルン様」

 

「お呼びとあらば、と言う奴だ。出張らねばなるまいて」

 

「義経達も一緒に行くぞっ!」

 

「自分もなッ!」

 

 

 義経とクリスがいの一番に同行に名乗りを上げるが、ノルンは何れも素気無く無用だ、と(かぶり)を振ってやんわりと、嗜めるかのように断る。

 無論、義に厚いふたりの性格上真っ先に何故と問い詰めるのは当然の成り行きだ。しかし、問われた側はこの非常事態に関わらず苦笑いを崩さず、自然な構えで答えた。

 

 

「なに、私が目的ならば何であれ私が治めるが道理であろう?」

 

「それはそうかもしれないが……」

 

「加えて、この状況下では多勢の方が不利。私ひとりの方が都合がよい」

 

 

 確かに、と大和は彼の言葉を静かに肯定を口に出す。

 犯人の周りは完全に野次馬と警察に囲まれており、大勢で挑もうにも挑めず自分達が社会的には子供と言う立場もあって手出しの仕様がない。

 そう語る大和だが、しかしやはり幾らなんでも無茶だと言う。それは友を案じるが故の言葉。

 

 人質が取られ、手には銃器、頭の回る彼は物理的に取られている人質以上に、野次馬達の方がその実半ば人質に近い事を理解していた。

 今は問題なくても3秒先にどうなっているかなんて分かったモノでは無いのだ。警察によってかなり距離が入っているとはいえこの狭い商店街、流れ弾が跳弾を起こして周りに当たらないとは限らない。

 大和の考えはKOSにて銃器を振りまわしていた参加者を実際に見て、肌で感じてのものだ。己の姉気分の様によく見ていれば銃口から射線をある程度予測できなくはなかった彼にとって直接跳んで来るよりも壁などに反射して弾筋が読めなくなる方が恐ろしかったという記憶は未だ新しい。絶対に色褪せる事はないだろう。

 

 しかし、大和のその思考をノルンはまるで読んでいるかのように心得ておる、と返す。

 視線は人垣と警察による規制線の向こう側へ。千里眼はあっても透視能力など持ち合わせていない彼には直接見えている訳ではない。

 だが、状況自体は既に把握している。

 

 

「大丈夫、なのだなノルン君」

 

「無論だよ義経」

 

「そうか、義経は心得た。ならここはノルン君に任せよう」

 

 

 先程とは打って変った義経の反応。

 前のめりだった姿勢は嘘のように落ち着きを取り戻し、ノルンとの言葉少ないやり取りで本当に得心行ったかのようで静かに佇む。

 彼女だけでなく成り行きを見ていたモモ、清楚のふたりもあぁ、成程、と言わんばかりの奇妙な納得を見せ、周りの混乱に拍車を掛けていく。

 これも当然の如く3人に詰め寄る他の面々に義経、清楚、モモは示し合わせたのかと勘繰りたくなる程綺麗に口を揃えて

 

 ――――ノルンだから。

 

 と、語るのだから混乱は混沌に変わるのも止む無しというものだろう。

 聞く側はなんのこっちゃ、とツッコミを入れるのは無理からぬことだ。

 

 

「まぁ、なんて言うのか……私の場合、散々拳を交えたから分かる、とでも言えばいいのかな?」

 

「そうだねぇー……モモちゃんの言う通り、だよね。私もノルン君の力は良く知っているからそれだけで分かっちゃう、って言えばいいのかな」

 

「えっと、義経もなんと言っていいのか難しいのだが……うん、概ねふたりと同じだ」

 

「むー、何なのだと言うのだ一体! 自分にも分かる様に言って欲しいっ!」

 

 

 クリスの言い分は間違いなくこの場にいるもの全員の大弁だ。

 ノルンは曖昧な、しかし的確でもある3人の表現に、より形を与えるべく「詰まる所……」で区切り

 

 ――――ここは私の間合いということだ。

 

 と、言葉の続きを紡ぎながら腕を徐に横へと振りかぶる。

 

 

 

 

 

「武器を捨て、人質を解放せよ。貴様は完全に包囲されている」

 

「うるっせえぞ! さっさと九鬼ノルンを連れてこいッ!!」

 

 

 男はがなりながら、手に持つ凶器を前に突き出し威嚇するように見せつける。

 言動から察せる通り、彼の興奮は宛ら燃えたぎる火の如く冷める様子は見られず腕の中で膝を突いた状態で後ろから羽交い締めされた人質も相俟って警察は迂闊に動けずにいた。

 更に犯人の要求とておいそれと呑めるものでも無い。何せ世界に誇る大財閥の次男、特にこの川神市内に於いてKOSの覇者、武道四天王のひとり、武神を超える者と名高い(当人無関心)有名人を連れてこいとか、警察的にも川神市の住人的にも目の前の輩には頭おかしいだろ、総ツッコミものだった。

 ここだけ見るとギャグ的だが状況は芳しくない。

 

 一方の男とてそれは同じ事。

 男は復讐のために目的の人物を血祭り上げるのだと、銃器に手を染めて息巻いて九鬼の本社に最初は向かったものの、執事だかメイドだかに阻まれて門前払い。

 ならば登下校を狙おうとすれば変な糸に気付かない内に雁字搦めにされて街の外にボッシュート。

 その後も悉く彼の目論見は外され、気付けば彼はこんな凶行に奔っていた。

 

 

「まぁまぁ、そうカリカリせずに」

 

「人質は黙ってろッ!!」

 

 

 この非常時に於いて人質に取られたこの妙齢の和服女性こそが一番落ち着いていると言えよう。後ろから急に襲われ、事態を把握できないままにこうして虜となりながら彼女は冷静だった。

 冷静なその態度が元々堪え性があるとは言えない男の神経を逆撫でていたが女性はそれすら意に介さず朗々と語る。

 

 

「彼が貴方に何をしてどれだけ恨んでいるかは知りませんが――――」

 

「そうだよ、元はと言えばアイツがあんな! 勝負すらしないままに俺を負かしたからッ! お、おれ、俺はこんなに落ちぶれたんだッ! 地元で負け知らずだったのを……アイツのせいでッ!」

 

 

 前後が繋がっていない要領の得ない言葉の羅列。

 会話と言う意味でその体を為していない中で彼女は気にも留めず静かに一言もらし

 

 

「――――この状況を看過できない程度には善人なんですよ?」

 

 

 尤も、当人は笑って否定するでしょうけど、と続ける。

 何処までも自然な振る舞いは男の怒りを煽らせ怒鳴り散らしながら警官側に向けた銃を彼女の米神に当てようとして

 

 しかし、其処には銃身部分が綺麗に消えたかつて銃と呼ばれたナニカ。

 

 見るも無残とはまさにこの事か、目の前の光景に男は理解が追いつかない。

 腕の中の女性が「ほらね、そら見たことですか」なんてころころ笑っているのすら意識の外側。

 

 

「や、全く以って貴方には敵いませぬ」

 

 

 鈴のような軽やかな声が突然間近から聞こえるが、男は反応できない。

 忽然と男の目の前に現れたノルンは参之太刀 逆月を以って人の垣根を無視して銃を破壊し、そのせいで絶賛混乱中なのを理解したうえで男の顔を容赦なく鷲掴み。掴んだ手と同じ側の足を思い切り踏み砕くかのような震脚と、同時に少しだけ曲げられた肘を、掴んだ顔ごとやや上に打ち出し、男を中空に浮かされる。

 八極拳はオリジナルの技、絶昭 臥竜によって発生した衝撃は我が力、武を交えず(暗器暗武)によって四肢の根元から先へ。

 筋肉や外皮では無く骨、それも肩、股関節から手足の先の指に到る各部関節へと伝播し、カコン、という子君良い音を立てて外されてしまった。

 

 ブリキの玩具よろしく、手足を完全にぐにゃぐにゃされた男はポイ、と復讐を誓った相手――逆恨みも同然――に哀れにも投げ捨てられた。

 しかもやった張本人はそちらに目もくれず人質となった女性の身を案じて話しかける。

 何せ身近な知り合いなのだから。

 

 

「お怪我はありませぬか? 倖さん」

 

「はいはい。この通り、私は元気ですとも。助けていただいてどうもね、ノルンさん」

 

「いえ、こちらこそ巻き込んでしまった様で申し訳ない」

 

 

 申し訳なさ気に頭を下げる。犯人自身の目的からしても報復の類と読んでいた彼にとって、こういう可能性は常に頭に入っているのだが、何処まで言っても出来る事と出来ない事はある。

 結果が今回の様な事件。既に叩経験しているとはいえ、予見できるものではない以上はこういう事は起き得る。それ故の謝罪だ。

 しかし、目の前の女性、仲見世通り老舗の和菓子店を経営しているノルンの友人、倖はころころと銃を向けられた時と変わらぬ笑みで許してくれた。

 実際責められても然るべきにも関わらず、直ぐに駆けつけると信じていましたから、と言う。武術の心得がある訳でもない一般人な筈なのにこの肝の据わり方は凄まじい。

 

 

「この、お前えぇッ!!」

 

 

 怒声に振り返れば事態をどうにか呑み込めた警察によって取り押さえられている(必要があるかはわからんが)彼が喚いていた。

 取り押さえられながら男は文字通り身を振って言葉になっていない恨み節を吐き出している。

 男の顔に、ノルンは見覚えがあった。というのも、丁度義経達が倖さんと初めて会ったその日に来た地元負け知らず(自負していたかは忘れた)の格闘家だ。

 良く聞いてみてもお前のせいで、とかお前があんな負かし方をしたから、と聞くだけでは要領を得ないがなんとなしに、負けた事から地元からかなりの冷遇があったことは想像に難くはない。

 結局のところ、そういうものよなぁ、と何時も通り(・・・・・)と言える感想を内に留めて、一言、ノルンは呟く。

 羨ましいなお前、と。

 

 

「は? だ、誰のせいで俺がこんな目にッ――――」

 

「戯け、お前の事情なぞ与り知らぬわ。私が羨ましいと申したは負け方程度で、その後の周りの対応程度で相手を恨める余裕のある生き方が出来ておる事が、だ」

 

 ――――負けた原因に疑問を向けぬのか、其方(そなた)は。

 

「っ……、……ッ……、……」

 

 

 パクパクと、陸に上がった魚みたく口を動かしているが、言葉は喉に詰まりでる事はない。

 ノルンはソレを告げて関心すら失い、倖さんが無事で何よりだったと、安堵しながら彼女へと向き直り、その場を後にした。認識阻害を使って。

 早い話が従者部隊にまるっとジャーマンしたというわけである。

 大騒ぎになった割には出張って1分と少しのスピード解決だった。

 

 事を終えて改めて彼女と話して念の為にと、倖に医者に見せた方が良い、と言ったがこれから店での仕込みがありますから、と未だに作り手としても職人である彼女は頑として聞かず、結局のところ異変があれば九鬼の力を使って全力で診させて欲しい、と自身に一報知らせて貰えるよう携帯の番号を渡す事で何とか折り合いをつけたのだった。

 

 

「あらあら、まさか若い男の子から番号聞けちゃうだなんて、おばあちゃん柄にもなくはしゃいじゃいそうだわ」

 

「……呵々、まこと敵わぬなぁ」

 

 

 本当に、色々と。

 閑話休題。

 それから彼女と何かを語るまでも無くお店に急がないと、と小走りで、しかし優雅に去っていく彼女の背を見送って友の元へと戻るのだった……のだが。

 

 

「はーなーせーよッ!」

 

「駄目だって言ってるだろ!」

 

「大人しくしてろってキャップ!」

 

「何事だ、これは」

 

「あ、お帰りノルン君!」

 

「お疲れー」

 

「怪我はなさそうで良かったよ」

 

 

 子犬よろしく駆け寄ってくる義経、ぬるっと寄ってきた弁慶、胸を撫でおろしながら前2人に続いてきた清楚にただいま、と返す。

 3人から改めて目の前の光景に視線を戻すと、やはり唖然としてしまった。キャップがガクトに羽交い締めにされて大和とガクトに止められている構図。固まらずに済むにはあまりにも突拍子が無さ過ぎだ。

 ノルンの固まった様子に察しがついた清楚が説明を入れてくれる。

 彼が出張った後、呆けるのも何だったのか、それとも何かが働いたのかキャップを見つけようという大和に従って行動しようとし、そして間もなく見つける。

 妙に助走を付けて人ごみ目指して駆け抜けようとしているキャップを。

 慌てて止めに掛る大和と、走しりだしたキャップは前者の方が僅かに早かった。その名の如く、と言う訳でもないが、一般人としては破格な身軽さを誇る彼。やることが破天荒な彼がやろうとしている事は、恐らく状況的に碌でもない事だという考えに基づいて大和はガクトに指示。

 捕えた後に聞き出せば、人混みを足場に犯人目掛けて飛び蹴りをかまそうとしていたのだった。キャップが走り出した位置からならば犯人の背後だったのが理由だそうだが、聞いた大和達は自分達に思わずGJしたとか。

 

 

「それがこの構図か」

 

「あぁ、終わったか兄弟。もう離していいぞガクト」

 

 言葉に従って拘束を解いたガクトから抜け出すキャップ。その顔は何処となく拗ねた子供の様であった。

 

「ちぇー、もう終わらせたのかよノルン。折角ヒーロー参上ってな感じで出るところだったのに」

 

「もの凄い止められていたけどねキャップ」

 

「むしろヒーロー惨状じゃNE?」

 

 

 モロと松風のツッコミは容赦がなかった。平常運転そうでなによりである。

 何はともあれ事態は従者部隊に預け、拘束されてはかなわない、と自分達はこの場を離れる提案が満場一致で可決されてひとまずその場を離れるのだった。

 

 

「にしても、慣れてはいるが今日は結構酷い方だよな、慣れてるけど」

 

何故(なにゆえ)、二度申したモモ?」

 

「でも、本当に凄い巻き込まれ方ですよね」

 

「飲食店の強盗未遂に人質、恐喝事件? でいいのかな? 本当にノルンの側では騒動が絶えない」

 

「これでもマシになった方なのだよ京」

 

「全然そうは思えないよね……ここまで来ると何かに憑かれてるの? って感じだ」

 

「うえぇっ!?」

 

「主、物の例えだよ、例え」

 

 

 冗談めかしなモロの言葉に、過剰反応してしまった義経に笑いが起こり、当人は顔を赤くして俯いてしまった。

 主の姿にイイ、とテンション上げている従者は他所に、ただの不運なのだがな、と苦笑で返すノルン。

 横で「やっぱりコイツも特異点か? 見極める必要があるな……」なんて言葉は聞こえない。

 

 

「不運にしてはブッ飛びすぎよね、今更ながら思ったわ」

 

「全くだ」

 

「あ、だからノルン君の行動って鮮やかに見えたのかな? 対処に慣れているというか、躊躇いも一切見えなかったし」

 

 清楚にしては遠慮を知らない言葉に、ちょっとしたSッ気を刺激されたノルンは少しだけ眉と肩を落とし。

 

「当人は不本意この上ないのだが、な」

 

「あ、ご、ゴメンねッ。私、そう言うつもりじゃ……ッ」

 

 

 落ち込んでいる風に見えたノルンに、流石に失言だったと慌てて謝る清楚。

 あたふたする様子に、満足そうに打って変ってにこやかに心得ておるよ、と語るノルンを見て謀られたんだと理解して彼女は唇を尖らせて少しだけソッポを向く。

 その姿に触発されて「カーワーユーイー!」と奇声を上げて抱きつき、更に顔を赤くする清楚。

 結局何時通りだなあ、とグダグダな形に帰結した事を代弁するかのようにひとり零す大和。並べて世は事も無し、と言わんばかりだ。

 此処ほど似つかわしくない言葉である。

 

 閑話休題。

 余計な邪魔が入ったが、時間はまだある。次は何をしようか、と全員で頭を捻らせる。

 

 

「もし、よろしいですかな?」

 

 

 呼び止める様な言葉に反応して、声の方を向いてみると何処か胡散臭い占い師の様な壮年の男性がいた。

 

 




スランプキツいです……
何しても筆が進まない……これもシューティング下りを書いて一月と少しから再度書き始めたもので、リハビリを兼ねたせいか長い。

そして、自分の文章を読んでどんなものだったのか感覚がつかめない始末。
まだスランプも抜けておりませんので、次の更新も不定期です。
本当にごめんなさい。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。