気まぐれ神様の物語 真剣恋Ver.   作:ジーザスルージュ

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4話

 多馬川。

 川神市内を流れる大きな河川であり、様々な生き物が生息している。

 時にアザラシの類も出るとか、果ては河童も実は生息しているなど噂には事欠かない。

 その多摩川の河川敷は広い原っぱや土手と言った、これぞ河川敷と言える光景であり、景観が良い為部活や趣味での運動に勤しむモノや、子供達のちょっとした遊び場に成っている。

 そんな河川敷目指して歩を進める3人。

 

「よいな、断じてやり過ぎるで無いぞモモ」

 

「わーかーったっての!全くしつこいぞノルン!」

 

「そう言い含めておきながら、上級生相手に加減を間違えて説教を喰らったのを忘れたか?」

 

「だーいじょーぶ!今度こそ!」

 

「そういって加減できた試しが、はてあったか?」

 

(……ひょっとして、頼む相手をまちがえた?)

 

 2人で言い合ってる言葉に大和は腕を組んで先行きが別の意味であやぶまれたりしているが、3人はそのまま目的地を目指す。

 元より、少年の頼み込んだ相手とはそういう次元の相手なのだ。

 武に於いて、並み居る猛者を打倒しうる川神院の次代の武神候補川神百代と、その実力は広く知られてなくも最低でも百代に引けを取らないと言う認識を周りから持たれているのだ筱宮ノルンは。

 やがて目的地付近まで行くと、4人の少年少女の姿が目に留まる。

 

「大和、あれがお前の?」

 

「そうだよ、モモ先輩」

 

 描写を省いてしまったが、大和はモモの事を先輩と呼ぶようになった。彼がモモの呼び方を決めかねてるとモモがそう呼べと言いだしたのだ。

 ちなみに、こちらの事は普通にノルンと呼ばせている。呼ぶのも下の名前を呼び捨てだ。

 

「おーい!みんなー!」

 

「あ、やまとー!!」

 

 声と手で気付き、こちらにいの一番に反応したのはポニーテールの少女だ。何処となく犬っぽい。

 こちらに駆け寄ってくる。

 少女に声に反応してバンダナの少年、1人体格の良い少年、影の薄そうな少年の3人は少女の後を追いかけてこちらに駆け寄ってくる。

 

「やまとー!えんぐんは呼んできたって―――」

 

 笑顔だった少女の顔が此方に目を向けた途端、凍りつく

 

「ぎゃー!!オバケーー!!」

 

「ブっ!?(言ったー!思ってたけど!)」

 

「プはっ!」

 

 まさかのお化け発言である。

 そのモノ言いに横に居たモモと大和は同時に噴き出す。

 しかし、その後のリアクションは対照的で、片や焦った顔をし、片やそのまま腹を抱えて笑いだす。

 余程ツボに入ったのだろうか、大笑いと言える気持ちのいい笑いっぷりだ。

 笑い過ぎだと思う。

 

「お、おば…プフー!だ、だめ…おかし…」

 

「わ、ワン子。そんなこと言うもんじゃ―――」

 

「どしたーワン子?って、うぉ!?白いお化け!?」

 

「なにいってんのさ、ガクト。ってうわ!妖怪!?」

 

「うはっ!助っ人にお化けを呼んでくるとは、流石うちの軍師だぜ!」

 

「ちょ、ぶっ、ククっ…ヒー、ヒー、お腹、イタイ…」

 

「……誰が収拾付けるのだ、これは?」

 

 お化けと叫んで混乱する3人に逆に感心するバンダナ少年。

 そんなリアクションに笑い過ぎて酸欠手前で涙を浮かべるモモとその惨状を収めようと右往左往する大和。

 ツッコミを入れる間もない程の目まぐるしい展開で置いてけぼりを喰らった自分。

 まさしくカオスである。寧ろカオス以外のなにものでもない。

 一頻り騒いで全員落ち着く。

 

「ん、んんっ。じゃあみんな、あらためて自己紹介を」

 

「おう!俺の名前は風間翔一だ。みんなのリーダーで、キャップって呼ばれてるぜ。なぁ、ホントにユーレイじゃないのか?」

 

「違うな」

 

「キャップ、そのネタはいいから。ほら、つぎはワン子」

 

「あ、アタシ?アタシの名前は岡本一子!みんなからワン子って呼ばれてるわ。さっきはお化けなんて言ってごめんなさい」

 

「構わない。この顔では、な」

 

「うー…ホントにごめんなさい」

 

「次」

 

「さっきは悪かったな。俺様は島津岳人だ。気軽にガクトって呼んでくれ。にしてもヒョロいなお前。こんな奴たよりになんのかよ」

 

「よ、よしなって岳人。ぼ、ぼくの名前は師岡卓也。みんなからはモロって呼ばれてる。よろしく…」

 

「で、改めて俺は直江大和。あだ名は軍師だ」

 

「うむ。お化け改め、筱宮ノルン。学年はみなと同じ2年だ。よろしく頼む」

 

「あぁー笑った笑った。私は3年の川神百代だ。よろしくな。」

 

 そうして無事自己紹介を終えたところで、以後の詳細を簡潔に説明される。

 曰く、今の時間から約10分くらいの頃にこの場所でもう一度リベンジするそうだ。

 嬲られた後とは思えない程の啖呵である。

 風間に耳の安否を聞いても大丈夫と答えられた。

 しかし、だからといって全員賛成かと言えばそうではなく、一子と卓也の2人はやはり、乗り気ではないようだ。

 それはそうだろう。

 向こうは元から数の差で有利、加えて上級生ともなれば怖がってしかるべきである。

 

「やっぱり、無茶なんじゃないかな…?助っ人が来ても相手の数はハンパないし…」

 

「そ、そうよね…」

 

「でもなー、おまえらだってやられっぱなしで悔しいだろ?」

 

「そうだぜ。まえは油断したが今度はそういかね―!オレ様のパワーを見せやる!」

 

「フっ、血気盛んだな。まぁ、俺もそういうのは嫌いじゃないがな」

 

「そのアニメっぽい台詞はなんとかならんのかねー」

 

「なんか突然キャラが変わったぞコイツ、どうしたんだ?」

 

「気にせずともよいモモ。些か早いが男子特有の"お年頃"の1つと言うモノだ」

 

 別名、廚二病とも言う。

 男なら誰しもヒロイック的なモノやニヒルなモノに憧れるモノである。

 女が何かに付けて恋愛に結び付けたがるのと同じだ。

 長く生きていれば当然自分にもある。技の名前もそういうノリで付けた所もあるのだし。ただ、物理的な騒動には事欠かなかったが為に、彼ほどヒドくは無かった――筈だ。きっと。

 今、おまえの口調も同じだろと思った奴、これは生まれつきである。私の武の師のモノが移ったモノで、他意は無い。

 

「さて、時間も無いし、後戻りも出来ない。援軍もきたので作戦を説明するぞ」

 

「頼むぜ、軍師」

 

「2人も良いか?」

 

「構わないぞ」

 

「此方も構わぬ」

 

「正直今回は策と呼べる策は無い。ぶっちゃけて力押しだ。

まず、モモ先輩とノルンのどっちかがキャップと岳人とで不良を相手にし、もう片方がワン子とモロを

守ってほしい」

 

「人質に対する予防か。おまえは何処に付くんだ大和」

 

「俺は前の三人に交じって色々嫌がらせしたりするさ。腕っ節は無いけど無いなりにやりようはある」

 

「ふむ、ならば私とモモのどちらが前と後ろに付くかだが―――」

 

「当然私が前だ」

 

「だろうな」

 

「ちょっと待てよ。このヒョロい身体で2人を守れんのか?」

 

「その辺については助っ人1号の私が保証する。ノルンは強いぞ」

 

 そう言って此方を見つめてくる。

 

(力をみせよ、と?)

 

(いえーす)

 

 大きく足を振り上げて、地面に勢いよく振りおろす。

 地面を割らない様に気を配りつつ、かつ文字どおりにインパクトを保つ。

 音も無く、大地が凄まじく揺らぐ。時間にして3秒程。

 震脚とばれる中国武術の技法で、本来は攻撃の際に震脚で練り上げた力を利用する。激しい局地的揺れで、キャップとモモ以外は体勢を崩して尻もちをついてしまった。

 みんなに謝りながら最も近かったモロと一子子に手を差し伸べて身体を起こす。

 

「と、まぁこの様な感じで如何(いかが)か?」

 

「お、おぉぅ…だ、大丈夫だな」

 

「足で地面揺らすとかスゲーな!」

 

「はぅぅ…」

 

「大丈夫、ワン子?」

 

 そんなこんなで話はまとまり、相手を待つのであった。

 

 

 

 

 

「いようーホントにいるとはなー風間」

 

「生意気なやつがしょうこりもなく」

 

「なにこいつら、ばかなのしぬの?」

 

「ぼっこぼこにしてやんよ」

 

 程なくして現れた上級生組。

 精々キャップ達元々の人数5人の倍くらいと思ったが、よもや10倍の50人とは思わなかった。

 どんだけだよと言いたくなる人数である。

 見渡す限りの人、人、人。各々の表情はどれも嘲笑と取れるものなのだが、いかんせん立ち込める雰囲気はまさしく子供がイキがっているにしか見えない。世紀末よろしくな前衛的な髪形をしている人物は見掛けないが。

 

「たかだか5人相手にこれだけ数を揃えるとは、見上げたクズっぷりだなお前達」

 

「そう言うてやるなモモ。元より下級生を嬲るどころか、人質まで取るような輩だぞ?肝の大きさなど、多寡が知れておるというもの」

 

「あぁー?んだおめぇら!」

 

「って、オイ待て!なんで百代がいんだよ!?」

 

「ちょ、マジで?」

 

 モモの姿だけで怯みだした上級生組。

 まぁ、モモ自身この中では上級生の部類ではあるし、なにより今までの騒動は専らモモの学年の者達が多かった。

 だから、モモの腕っ節の強さも当然知れている。

 しかし今回は数が今までの比では無いのだ。

 集団心理とは怖いモノで、普段出来ないと思っている事も誰か一人が言いだしたら自分もと伝染していってしまうもの。

 

 「は、百代がなんだってんだ!今の俺らの数なら負けねえ!」

 

 「そ、そうだよな!」

 

 「むしろチャンスだろ。今なら生意気なあの女もやれる!」

 

 「は!逆にぼっこぼこにしてやんよ」

 

 と、こんな具合にである。実にチョろい。

 尤もそうでなくとも子供でこの数の差はそう思わせるだけはあるが。

 普通の手合いなら通じただろう――――普通であったなら。

 駄菓子菓子、此処に居る2人は

 

「さぁ、いくぞ!」

 

 ―――普通ではない。

 

 

 それはあまりに非現実的な光景であった。

 誰が思うだろう、拳の一振りで8人が宙を舞うなどと。

 

 "圧倒的"。

 

 そんな言葉すら生易しい。

 

「はっはっはー!絶・好・調!」

 

「楽しそうだな、モモ」

 

 素晴らしい笑みである。顔だけならば。

 

「こ、コイツやべぇぞ!?」

 

「び、ビビるんじゃねぇ!こいつだけを狙う必要はねぇんだ!」

 

 7人程標的をモモから此方に変えてきた。成程、兵法も弱い所から狙うのは常道といえる。

 

「然れど甘い」

 

 先程落ちていた木の棒を剣に見立てて振るい、7人同時に倒す。

 こういう時、掠り当たりでも昏倒が可能なのが己の武術の利点だ。と言っても、打ち込みを加減し、身体を一時的にマヒさせるに留めているが。

 今の技は闇夜剣弐之太刀『霞月』。

 モモとの試合で見せた壱之太刀『弧月』が打点と力点を伸ばして遠間まで斬撃軌道を伸ばすものならば、霞月は打点と力点を分散させて複数同時に斬撃を繰り出す代物。

 弧月に比べて高度な空間攻撃であり、相手の横や後ろからも攻撃ができる。

 

「おい、こいつもなんかヤベェぞ!?」

 

「クソッ!なんなんだよ!」

 

「よーし!敵はひるんでるぞ、反撃開始だ!」

 

「おりゃー!」

 

「いくぜー!」

 

 最早その後は一方的過ぎた。

 モモを避けるためにその後ろに踏み込んだのが仇となり、前門の虎、後門の狼状態。

 ならばと左右に広がるも、岳人や翔一によって迎え討たれ、大和が辛子を玉にしてパチンコでぶつけられ無力化されて敢え無く鎮圧。

 更に隙間を縫って残りの2人を狙おうとすれば、即座にそれを叩いて昏倒させる。

 僅か2分経たずで上級生は1人も立ってる者はいなかった。

 

「なんだよ、大口を叩いてこの程度か…」

 

 死屍累々。

 これほど今の現状に相応しい言葉は無い。

 

「ほゎー…凄い」

 

「ほんと、凄いとしか言えないよね」

 

「全くだぜ、オレ様達結局ほとんど出番無かったし」

 

「ふっ、それでもみな、自分なりに良くやれたほうではないかな?」

 

「だから、大和のそのアニメっぽい台詞はやめろよな。

なぁなぁ、それよりさ、2人に提案があるんだけど」

 

「む?」

 

「なんだ」

 

「モモ先輩もノルンも俺達の仲間にならねぇ?」

 

 突然の申し出に少し驚いた。

 幾ら共に戦ったとはいえ、これだけの惨状を見てその発想が出るとは正直思わなかった。

 彼は大物だと確信する。

 

「いいのか?私は学年も違うんだぞ?」

 

「いいって!2人を仲間に入れたらなんか面白そうだし!」

 

「それはいいな。オレ様は賛成!」

 

「あたしもー!」

 

「僕も…かな」

 

「ふっ、戦いを通じて友へか。ありきたりだが悪くない」

 

「な?みんなこう言ってるし、仲間に入ろうぜ!」

 

 そのまま隣同士でで見つめ合い、やがてどちらとも無く笑った。

 

「「よろこんで!」」

 

 こうして、後の風間ファミリーの一員になったのだ。

 

 

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