(大丈夫かな……)
目をつぶって、強制転移が終わるのを待っていると、リザに手を引かれた。
慌てて魔素とのラインを繋ぎなおす。
いつの間にか空間の違和感もなくなっていた。
まわりを見渡すと岩の洞窟で、リザたちも不安そうにまわりを警戒している。
サトゥーは虚空を見つめていたが、何かに気付いたようでこっちに向き直る。
「オレはサトゥー。行商人だ」
「ねこ~」
「犬なのです」
「蜥蜴です」
(ここで、答えるべきか? よく考えれば、ボクがいたらこのまま置いていかれる可能性も)
流石に5歳児を置いていかないと思うけど、レベル的に出た後の厄介ごとに巻き込まれないように、途中で別れてそのまま……とかはあり得そう。
ポチ達も頼むとか言われたら、土下座案件だ……ボクが。
入り口はかなり厳重に見張られていると思うし、ボクだけならともかく、ポチ達まで一緒に出るのは難しい。
「狐、出てきてください」
リザに手を引かれる。
「狐です」
迷彩や隠蔽を全部解除して、反射的にそういった。
(ここで出なかったら、置いていかれるどころの話じゃない)
サトゥーを見つめ続けながら思考を巡らせる。
サトゥーは、目を少し開いて驚いているようだ。
サトゥーを驚かせるようなことが多すぎて、何に驚いているかはわからない。
横目でポチたちを見る。
ポチはこっちを見て驚いていてこっちに話しかけようとしていたけど、タマに肩を叩かれてサトゥーのほうに向き直った。
「……それは名前なのか?」
「あい」
「はいなのです」
「はい」
「えっと……」
ポチ達は瞬間的に答えをかえす。
その姿はまるでプロの奴隷だった。
「今までの主人からもそう呼ばれていたのかな?」
「あい」
「はいなのです」
「はい」
「他に名前はないのか?」
「ない~」
「ないなのです」
「〇〇〇〇と、昔呼ばれていました」
レスポンスが早すぎる。
なんて言おうか考えている内に、会話が進んでいく。
命令じゃなくて目を合わせて戸惑っているみたいだけど、それでも即答している。
「……もう一度言ってもらえるか?」
「呼びにくいようでしたら、若旦那様の呼びやすい名前で呼んでください。犬と猫にも不安があるようなら、そうしてもらって結構です」
「……狐さんは?」
何も言わないボクを見かねたのか、サトゥーがしゃがんで話しかけてきた。
「えっと、ヒナタと言って呼ばれてました」
技能隠蔽は、その名の通りスキルしか隠せない。
すでにバレているなら、正直に言ったほうがいいだろう。
「それじゃあ、右からポチ、タマ、リザ、ヒナって呼ばせてもらうね」
地味に一文字カットされた。