ソードアートオンラインオルタナティブ イモータルブラッド 作:さくやそん
俺は薄暗い通路で敵と剣を打ち合っていた。
敵は人に良く似た姿のニンジャ型モンスター、«シャドウエッジ»。
刀に近い形状の片手剣を使う。
対して俺は、刀身がおよそ20センチ程の小さな短剣を使っている。
当然ながらリーチという点では負けるであろう。
だが、何も遠くから剣を当てられるなど、小さなアドバンテージに過ぎない。
短剣には他のどの武器にも無い圧倒的なアドバンテージがある。
それは連撃数だ。
小回りがきくために、剣を振り、手元に戻す動作がとても速い。
そして、この世界では連撃数はとても大切になってくる。
手元の赤い炎を模した短剣が青く輝く。
直後、12発もの攻撃がパーティクルを散らしつつシャドウエッジを襲った。
短剣用ソードスキル«アクセルレイド»
ソードスキル、それはこの世界のシステムアシストにより、攻撃に一際強い威力をもたらす技である。
再び手元の剣が、今度は赤に光り、重い一撃がシャドウエッジのHPを0にした。
そして、シャドウエッジはポリゴン片となり爆散した。
一発一発の威力が低い短剣にしては珍しい、超火力単発技«アーマーピアース»
それがこの世界に存在する命の一つを絶った。
目的を果たしたこともあり、俺は主街区へ戻ることにした。
帰途、ふと俺は、全てが始まったあの日のことを思い出していた。
2022年、人類はついに完全なる仮想空間を手に入れた。
そして、その世界に初めてのVRMMORPGが発表された。
«ソードアートオンライン»
初のVRMMORPGだったこともあり、βテストは凄まじい倍率を記録し、人々の間に瞬く間に広まった。
発売日には老若男女問わず、長い行列を作ったという。
ソードアートオンラインは初回の1万本がすぐになくなった。
制作者は茅場 晶彦。
仮想空間を実現したヘッドギア型の機械«ナーブギア»の制作も行ったことから、彼はまさにVRの一時代を築いた。
ソードアートオンラインは何の問題もなく、無事にサービスが開始された。
そして今、サービス開始に十秒と遅れずログインした俺、«イザヨイ»は必要なものを買い集めると、すぐにフィールドへ出た。
辺りは草原で、イノシシ型モンスターが多くPOPしている。
その内の一匹へ攻撃を仕掛ける。
どんどんと攻撃していき、ついにイノシシのHPが3割を切ったとき、俺の手が動き、ソードスキルのモーションに構える。
すると、短剣はオレンジに輝き、単発技«サイドバイト»がヒットする。
そして、イノシシのHPは0になり、爆散した。
俺だって元βテスターだ。
勘を取り戻しつつ、イノシシを倒していく。
ある程度、勘が戻ったところでウィンドウを開き、アイテム整理をしようとする。
しかし、何か違和感があった。
何か、と考えることおよそ一秒。
最も大切なものが無いことに気がついた。
そう、ログアウトボタンである。
ログアウトボタンが無くては現実に戻れない。
辺りでは、ログアウトと言ってみる人々も居るが、ログアウト出来ていない。
バグだとは思うがあまりにも致命的だ。
そこで俺らプレイヤーが光に包まれた。
目を開けると、そこは最初の街の転移門広場だった。
どうやら全プレイヤーが揃っているようだ。
そこへ、ローブを纏ったGM風の人物が空中に現れた。
その人物はあってはならないことを言った。
曰く、ログアウト不可は仕様であり、ログアウト方法はこの世界のクリア。
そして、この世界での死は、現実での死であること。
ソードアートオンラインの舞台、浮遊城アインクラッドは百層から成っている。
このゲームのクリアには百層まで行く必要がある。
それを不可能だと考え、自暴自棄になったやつらは外周から投身自殺した。
かつてリスポーン地点だった黒鉄宮には、全プレイヤーの名前が刻まれ、死亡時刻と原因が分かるようになっている石碑があった。
その石碑の、自殺した者の名前には次々と横線が引かれ、その数は増え続けた。
しかし、人間とは成長する生き物である。
犠牲者はどんどん減っていき、層も着々と進められていった。
現在の最前線は48層、生存者はおよそ7000人だ。