ソードアートオンラインオルタナティブ イモータルブラッド 作:さくやそん
48層ボス戦の後、俺は49層の転移門の有効化をヒースクリフに任せ、攻略組に居る数少ない友人の元へ向かった。
エニグマ。
今回のボス戦で数多くの人を守った両手斧使い。
「どうした?」
「あぁ、お前と少し話したくてな」
エニグマは49層へは向かわず、主街区に戻るところだった。
俺も丁度戻りたかったので、同行することにした。
「ところで、ラストアタックボーナスは何取ったんだ?」
そう、ボスごとにラストアタックを決めた者に報酬として、強力なアイテムが送られる。
今回は、短剣、曲刀、片手棍の中から一つ選べた。
「曲刀にしたよ」
「あいつにプレゼントするんだな?」
俺が使用武器でない曲刀を選んだ理由など一つと知っているエニグマは、からかうように訪ねてくる。
「まあな」
エニグマの言う、あいつとは、攻略組ほどのレベルは無いものの、中層クラスではトップの実力を持つ女、トモエのことを言っている。
トモエとは一応いまだにパートナーを組んでおり時折一緒にクエストをする仲である。
「でもよ、短剣にしなくて良かったのか?」
そう、本来ならラストアタックボーナスを人にあげることなどあり得ない。
たとえ、使用武器でなくとも、売るだのして金を稼げば、戦力の補強になる。
それに、ラストアタックボーナスは、基本的にその層以降10層近くは使える性能だ。
なのに、プレゼントする理由、それは
「金には困ってないしな。それに今回の短剣は今のより弱かった」
「おいおい、化け物かよ。その短剣どこで手に入れた?」
俺の愛用している炎を模した短剣は、25層にてつい最近出現した、ボス級モンスター«ザ·フレア·フェニックス»がドロップした短剣だ。
この短剣の大きな特徴はただ一つ、武器ごとに定められている耐久値が自動回復するのだ。
つまり、よっぽどのことがなければ壊れない。
「化け物じゃないよ。ただのボスドロップだ」
「うへぇ。じゃあ今度33層に出現したボスの討伐手伝ってくれよ」
「なんだ?お前もラストアタックボーナスより強い武器を手に入れたいのか?」
少しからかいつつ言う。
「そりゃそうだ。そんな強いのあったら攻略ペースは格段に上がる。だから頼む」
攻略ペースが上がるなら手伝っても良いか、と考え、了承の意味を込めた頷きで返す。
その後も二人で駄弁りつつ、ようやく迷宮区を抜ける、というところで、不意に視界が地面に叩きつけられた。
倒れた、ということに気付き、HPバーの横を見る。
予想通りの状態異常アイコンがあった。
麻痺毒。
文字通り、麻痺させ動けなくする毒である。
だが、この迷宮区には麻痺を使うmobは居ないはずだ。
つまり、それが意味するのは、プレイヤーによる意図的なもの。
プレイヤーにはカーソル、というものがあり、通常で緑、犯罪を犯すとオレンジとなる。
そして、今まさに目の前に現れた、二人のプレイヤーはオレンジカーソルだった。
ならばこれは、麻痺を使ったPK行為に他ならない。
俺の全身に悪寒が走り、死、という結末が脳を恐怖で埋め尽くす。
そこへ、殺人鬼の嘲笑が響く。
「おいおい、エニグマだけで良かったのに、紫の暴風もセットか!こりゃすげぇ収穫だな!」
甲高い声を発しているのは、PKギルド«ラフィン·コフィン»の幹部、ジョニーブラック。
「生きてて良かったよ。私以外に殺されてたらどうしようかと思ってたよ、イザヨイ君」
俺に話しかけて来るのは、同じくラフィン·コフィンのメンバー、かつての恋人、ベルセポネ。
しかし、何故今日ここで待ち伏せが出来た?
本来なら今日は探索の予定だった。
なのに、ボスを倒すというのは予測出来ても、確信は得られないはずだ。
いや、内通者が居れば、あの内通者が教えれば、ここで待ち伏せも出来る。
「へっ!残念だが、お前は少しイレギュラー過ぎるんでな、先に死んでもらうぜ」
ジョニーの声に合わせ、ベルセポネが俺に迫る。
圧倒的質量を持つ、死、が俺にゆっくりと、だが確実に迫ってきている。
俺は少しずつ動く腕でウィンドウを開き操作する。
「解毒アイテムもポーチに入ってねぇのか?情けねぇなぁ!」
言葉と共にジョニーの蹴りが脇腹に刺さる。
「ぐはっ!」
だが、少しながらも時間が出来た。
今出来る、ありったけの力を使い操作していく。
「さようなら、イザヨイ君。それと、ゴメンね?」
ベルセポネの両手剣に赤い光が灯り、重い一撃が俺のHPを一瞬で0にした。
俺は、ポリゴン片となり爆散した。
すなわち、俺は、死んだ。