ソードアートオンラインオルタナティブ イモータルブラッド 作:さくやそん
ラフコフに襲われた、次の朝。
俺は、フレンドからのメッセージを確認していた。
やがて、下の方に行くにつれて、緊張感が高まる。
今、最も気になる人物から来ているか、それが怖いのだ。
その人物の新着メッセージは、ある。
俺は、歓喜した。
急いでそのメッセージを読み始める。
文はたった一文、『48層、主街区北、ネペントの出る森に11時』だけだった。
今は7時。
つまり、あと四時間でベルとのコミュニケーションの場がてにはいる。
当然、危険もある。
この文が俺をおびき寄せる罠かもしれない。
だが、俺の敏捷があれば、例え罠だったとしても逃げ切れる。
ならば、行かない手はない。
若干の不安を感じつつ、宿屋の一階へ降りていく。
下では、すでにエニグマが待っていた。
「悪い、今日は用事が入った。だから、49層へは一人で行ってくれ」
幸い、エニグマは訝しげに思うこともなく、了承してくれた。
「でもよぉ、用事ってのは何なんだ?まさか、ベルセポネ関連か?」
「あぁ。メッセージでネペントの出る森に集合だそうだ」
「森って、圏外じゃねぇか。危ないだろ?」
確かに怪しいとも思う。
だが、ベルとのコミュニケーションが取れるだけで、俺にとっては大きな進歩に繋がる。
「そうかもしれないが、せっかくだし行きたいよ」
「分かった。だけどな、死ぬなよ?」
死ぬ?
俺は鳳凰剣のおかげでまだ死なないのだ。
二回の命があれば倒すことすらできる。
その後、時間はあっという間に過ぎ去り、約束の時間になった。
集合の場所へ行くと、そこに、すでにベルは居た。
ただし、昨日とは明らかに違うことがあった。
プレイヤーカーソルが、犯罪者を示すオレンジから、緑に戻っていたのだ。
「ベル、カーソルが元に?」
「えぇ。カルマクエストも案外楽で良かったよ」
聞く話によると、カーソルを元に戻す、カルマクエストはその罪が重いほど困難になり、五人殺すと、戻るのは不可能と言われている。
そして、さっきの楽だった、という発言から、やはりベルは人を殺していないことが分かった。
「なぁ、ベルはどうしてオレンジになったんだ?」
「麻痺させる担当だったよ。でも、殺したようなものだよね」
いや、それは違う。
少なくとも、好き好んでPKをするやつよりは百倍ましだ。
「自分からやってたのか?」
「ううん。ジョニーに脅されて、麻痺担当にさせられたの」
「ならば、ベルに罪はないよ。今ならまだ引き返せる。戻って来ないか?」
ベルは迷ったように俯き、頭を抱える。
「あのね、今日は、私のお願いを聞いて欲しくてきてもらったの」
「お願い?」
正直意外だ。
俺の知ってるベルは何でも自分でやろうとするタイプの人だ。
「うん。私、もうね、ラフコフを………………」
言葉はそこで途切れた。
ベルの目が、信じられないという風に、見開かれる。
直後、ベルは崩れ落ちた。
「イッツ·ショウタイム」
ベルに牙を向いた男の嘲笑うかのような声が、森にこだまし、殺人鬼の接近を知らせた。
ベルの首もとには恐らく、麻痺毒つきの、ナイフが刺さっていた。
「始めようぜ、紫の暴風。異端者同士の殺人ゲームをよぉ」
この世界最強の殺人鬼が俺にナイフを向け、笑う。
俺の耳には、ただ殺人鬼の笑い声だけが渦巻いていた。