NINJAの末裔がまかり通るようです。   作:Soul Pride

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欲望を叫べ!!!!

 結界内に残った、子蛇。その口から、巻物を吐き出して広げた。

 巻物に書かれた内容は毛筆で書かれた、古式かつ独自で作り上げられた難解な術式言語。

 唯一理解出来る点は、中央に“人”の字が書かれていることのみ。

 

 ──逆口寄せの術!

 

「……さて。もう一度聞くが……喧嘩の相手は誰だ?」

 

 子蛇と入れ替わるように、ナッツが現れる。

 その姿は変身魔法を使った青年の姿へと変わっている。

 完全戦闘態勢となった、ナッツ・ドライバーの全力。もう我慢が利かないと、噴き出る魔力が荒ぶっている。

 

「……わかったよ。やろう」

 

 なのはたちも、覚悟を決めた。

 高町なのは、フェイト・T・ハラオウン、スバル・ナカジマ、ティアナ・ランスター。そしてナッツがいない間に合流したエリオ・モンディアルとキャロ・ル・ルシエ。

 以上六名が、ナッツの喧嘩相手──伝説の部隊、機動六課の前線メンバーが、前に出た。

 

「訓練場があるから、そこでやろう」

「重ねてもう一度言うが、愚昧極まってるなコラ。何で罠があるところでやらなきゃならねえ」

「あのね。場所を用意してるの私なんですけど。そこまで言われると流石に黙っていられないんですけど」

 

 人も、機会も、そして場所も用意してもらっておいて、罠であると断定する。そんな態度を取り続けられるとルーテシアも、流石に怒る。

 

「俺はまだ人間辞めてねえんだ。毒で死ぬし、殴れば死ぬ。()()も未完成だ」

「いや、それは当然……細胞?」

「……まあいいさ。死ぬならそれで。案内しろよ」

 

 目に浮かぶは、諦め。自分の命の執着を捨てている。

 死んでもいい。ただ、喧嘩だけはしたい。

 それだけ、戦いというものに憑りつかれている。

 ……案内されるまま、訓練場へと行く。

 少女たちと引率のノーヴェは川遊びへ。喧嘩の決着を見守ろうともしたが、なのはとノーヴェが“折角の合宿なのだから楽しんできなさい”といって押し切った。

 ナッツの要望、そしてノーヴェの心残り。その全てを清算するために。

 

 

 

 

 

 

 訓練場に着き、全員がバリアジャケットを纏う。

 戦闘態勢は整い、いつでも始められるようになっている。

 

「ルールは──」

「要るかんなモン。喧嘩だぞ」

「じゃあ、どうやって決着を付けるの。それに、誰からやるっていうのも」

 

 ただでさえ、五対一。その上で、練度の差は歴然である。

 喧嘩というからには、一対一でやるものとティアナは思っている。

 

「決着?誰から?寝ぼけてんなどいつもこいつも──」

 

 これで市民を守る管理局の魔導師だというのだから、笑わせる。

 路上の常識、喧嘩の作法を知らなすぎる。

 眼の周囲の血管が、隆起する。

 魔眼“白眼”の真の力。それをここに、見せつける。

 

「──くたばった方が、負けだ」

「えっ」

 

 ……喧嘩に、よーいドンは要らない。

 

「──“八卦空壁掌”!」

 

 両手で押し出すように、彼らへの方と掌底で空気を叩きつける。

 人を容易に吹き飛ばす大風圧。目も開けられない程の衝撃波は、ダメージを与えるというよりも視覚を封じて一時的な隙を作り上げることを目的にしている。

 

「“ウイングロード”!」

 

 吹き飛ばされながらもなのはとフェイトは飛行魔法で空中で踏みとどまり、スバルは魔法ウイングロードを発動し、魔力で道を作り上げて自分とエリオとキャロはそこへと着地する。

 ティアナもまた、ウイングロードの上へと立って態勢を整えようとするが──。

 

「──ようこそ、俺の“八卦”の領域へ」

 

 ──ナッツは、既に構えている。ティアナの背後に……身体活性化魔法“瞬身”による高速移動によって、間合いは詰められていた。

 そこは、既に日向流の必殺の間合い。入った者は、誰であろうと無事では済まない。

 全てが暗転した視界をティアナは幻視した。地には太極図……その周囲に(ケン)(コン)(シン)(ソン)(カン)()(ゴン)()からなる八卦の文句が並べられている。

 

「“八卦二掌”!」

 

 振り向きざまに拳銃型デバイス“クロスミラージュ”を向けたが、もう遅く。

 ナッツからの突きを食らった瞬間に、トリガーを引いても魔力弾は発射されなくなっていた。

 

「“四掌”、“八掌”、“十六掌”──“三十二掌”────“六十四掌”!」

 

 防御も回避も許さない、神速の連打。針のように鋭く、一撃一撃が骨と内臓に響く。

 瞬く間に六十四の打突を打ち終わると同時に、ティアナは崩れ落ちた。バリアジャケットは解除され、完全な戦闘不能状態へと追い込まれた。

 これぞ日向流柔拳法“八卦六十四掌”。ナッツの得意技であり、対人戦において最も信用に値する技である。

 間髪入れず、倒れたティアナを邪魔だと言わんばかりに蹴り飛ばした。

 

「ティア!」

「こんのっ!」

『Sonic move』

 

 蹴り飛ばされたティアナをスバルが受け止め、エリオは高速移動でナッツの背後へ強襲。

 不意を打ったのなら、不意を打たれても文句は言わせない。エリオのスピードで死角から攻められれば、そんじょそこらの喧嘩自慢ではどうにもならない。

 ──不幸なのは、ナッツはそんじょそこらの喧嘩自慢では済まされないレベルにあったことだ。

 まるで後ろに目があるかのように屈んで回避し、躱されて驚くエリオと目が合う。

 

「──よう」

「っ」

 

 カウンターで、そのままエリオの顎を蹴り上げた。

 脳は揺れたが、意識は飛ばなかった。威力よりも、吹き飛ばすことを主眼に置いた一発。

 歪む視界でどうにかナッツを探そうとするが、見当たらない。

 

「……エリオ、後ろ!」

 

 吹き飛ばされるエリオの背に、ぴったりとナッツは追尾していた。

 これぞ“影舞踊”。そしてここから繋がる体技は、人体の限界に臨む体術奥義。

 それを独自に日向流でアレンジした、ナッツの独自奥義(オリジナル)

 

「“八卦六十四──蓮華掌”!」

 

 先と同じ六十四の打突に加え、止めに宙で風車の如き縦回転を入れて勢いを加えての、脳天からのパワーボム。

 地面に頭が埋まるほどの一撃をくらい、エリオが無事で済むわけがない。

 死にはしないよう魔力ダメージにして抑えたが、元となった技は殺人術だ。三時間は意識を取り戻すことはないだろう。

 

「……さて、と」

 

 コキリと首の骨を鳴らし、目を閉じた。いつもの喧嘩では出せない派手な技を出せて、気分が良い。

 ……目は閉じていても、真上から強襲するフェイトには気付いている。

 手には大剣形態(ザンバーフォーム)の“バルディッシュ”。振り下ろされる剣を前に、ナッツは悠々とそれを迎え入れる。

 ──両断されたナッツは丸太へと姿を変え、それが偽物であったと気づくには数瞬の時を要した。

 

「一分足らずで二匹くたばったんだが。もっとしゃんとしろよ、ガッツ出せ」

 

 ビルを模したレイヤー建造物の壁に、ナッツは垂直に立っていた。

 最初からトップギア。ブレーキは利かない。使える技、使いたかった技、全部使う。

 ぶっ壊れるまでやる。ナッツ・ドライバーには、これが、最後なのだ。

 

「不完全燃焼で終わってみろ……()()()()()()?」

 

 ────お前らの“大切”を、ぶち壊すぞ。

 それは、彼女たちにとって言ってはならない引き金だった。

 醜い喧嘩を、見せたくはないと子供たちには遠ざけた。

 だが、その凶気があの子たちにも向くというのならば──。

 

「──ブラスター!」

「──ソニック!」

「──ギア・エクセリオン!」

「──ヴォルテール!」

 

 ──これは既にもう、喧嘩の名を借りた、戦争だ。

 

「……最初っからそうしとけバーカ」

 

 悪態を吐きながら、獰猛な笑みを浮かべた。ここまで効果があったのなら、最初からそう言っておけば良かったと思う程に。

 両手両足に巻いてある包帯を全て取っ払い、隠れてあった数々の傷やその治療痕……呪印や魔術的儀礼痕、蛇の鱗などが露になる。

 その全てが、力を求めたナッツの軌跡。同時に、ナッツの全戦力であり全装備。

 それらをここで全部、使い潰す。

 

「──口寄せの術!」

 

 キャロの召喚した真龍ヴォルテールに対抗するように、ナッツもまた全長三十メートルはある巨大な大蛇を召喚。

 煙と共に現れた大蛇は、四体。建造物を倒しながら跋扈し、その内の一体の頭の上にナッツは着地した。

 

「……最後に聞くよ。ここで止めるつもりはないの?」

「寝てんのかタコ。首を落として晒すぞ」

 

 最後通牒を切って捨てられ、なのはは一瞬悲壮の表情を浮かべるが、振り払って覚悟を決めた。

 これより始まるは不毛な喧嘩。何も生まず、何もならない。

 ただ一人、喧嘩屋のみは狂い笑う。これこそが我が望み、我が理想であると、心底より信じているが故に。

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