Fate/kaleid liner -mistake EMIYA-   作:だだだ

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5話目

 龍子はめっちゃ弱かった。ただ投げた時の受け身の才能だけは認めてやらんでもない。完全に衝撃を殺して痛くないようにしていたし。あれは立派な天賦の才の一つである。

 

(小さな女の子を投げるなど紳士としてあるまじき行いだ。一体どこで教育を間違えたのか・・・)

(ごめんて。ちゃんと謝って許してもらったし・・・)

 

 負けた龍子は始めこそ号泣したが、イリヤたちに励まされてすぐに立ち直った。そして俺を正式にライバル認定した後、「すぐに追い抜いてやるー!」と意気込みを叫んだのだった。

 うん、頑張れよ。俺は努力する武人は好きだ。

 

(やはり少人数だけで修業をしていた影響なのだろうな、君のそれは。私も全く気付かなかったのが悔やまれる)

(人の短所みたいに語るのやめて?)

 

 むしろ俺からその部分取ったら何も残らないと思うの。

 

 それと、担任の先生は大河先生だった。まあ、予定調和だ。

 

「なにー!?私のクラスで早速喧嘩ぁ!?御剣ぃ、どこだ御剣とやらは!であえいであえい!」

 

 謎の掛け声と共に頭をむんずとつかまれて、龍子と一緒に怒られたのは今ではいい思い出・・・なのだろうか。

 その後は体育館に移動の後、始業式が始まり校長先生のやたら長い話だとかを終えて帰る事になった。

 

「もー、龍子ちゃんもめっ」

「御剣君ももうあんな事しちゃダメなんだからね!」

 

「「はーい」」

 

「本当に分かってんのかこいつらは・・・」

「いつか絶対またやるに一票」

 

 帰宅途中も美々とイリアにも怒られた。そこまで怒る事なのだろうか。もう前世の記憶だから自信ないけど、小学5年生ってもっと喧嘩して当たり前の存在だったような気が・・・違う?

 聞きたかったけど、聞いたらさらに呆れられそうだったのでやめた。それに空気が読める男がいい男の秘訣だってエミヤが言ってた。

 

(それは君・・・いや、なんでもない)

 

 無論責任転嫁である。

 

 それにしても、女三人寄れば姦しいとはよく言うが、この5人の中に男一人だけだといささか肩がせまい気がする。気も休まらないし、とっとと帰るか。

 

「そういえば、御剣君はこの街に来たばっかりなんだよね?案内してあげた方がいいんじゃないかなぁ」

「あー、いや、良いよ別に。自分で見て回るから」

「え?なんで?別にいいじゃん」

 

 美々がそう提案してきたのを拒否しようとすると、後ろから雀花が美々の提案に前向きな発言を。意外すぎて振り返る。

 

「お、街案内かー。どうせ今日はこのまま暇だし、午後から皆で集まって御剣歓迎送迎ツアーでもやる?」

「いや、そこまでされると恐縮っていうか」

「おー!いいなそれ!遊びいこうぜ!海とか!」

「案内っつってんのが聞こえてないのかこやつは!」

「というか、今の時期で海とか絶対凍え死ぬだろ!」

「あの・・・」

 

 俺は困ってイリヤの方を見た。

 

「うーん・・・」

 

 イリヤは俺の顔色を見て何かを察した様に首を傾げた。イリヤまじイリヤ。俺はこの瞬間、イリヤ教に入信する事を決意する。美人でかわいくてさらに気遣いもできるとかほんとイリヤは最高だぜ。

 

「御剣君、午後は暇でしょ?折角だからいこうよ!」

「あっはい」

 

 イリヤは悪い子。

 

(君ね。人の好意にそんな事を思っていては何時か大切なものを失うぞ)

(はい・・・)

 

 だけどねエミヤ。正直コミュ障の俺にとって、美少女揃いの5人組に紛れ込んでいくっていうのはとても辛い事なんだ。お前には分からないとは思うが。お前には分からないとは思うが。

 

(何故二回言った・・・!?)

 

 その後たくさん街を見て回った。

 

 

 

 

 

 

 

 心頭滅却すれば火もまた涼し。火照った身体をそのままに、俺は何度も何度も刀を振るう。無心状態で、何千何万と繰り返された型を無意識下までもってきて、ひたすら素振りする。

 

「ふー・・・今日は疲れたなぁ・・・」

(やっと本音が出たか)

 

 俺の一言にエミヤが反応した。

 

(なんだよ、今は寝てる時間じゃなかったのか?)

(私は英霊だ。本来は眠る必要すらない。君の中にいるのならなおさらだ)

 

 へー。そこまで興味の無い内容だったので生返事を返す。

 

(ふっ・・・彼女たちとの会話は疲れたか?)

(まあ・・・だってあいつら、完全にアニメで見た時のノリのまま会話するんだもん)

 

 あのハイテンションぶりは、一般人だったら絶対疲れると思う。行く先々でハプニングが起こるのも何なのだあれは。主人公(イリヤ)がいるからかどうかは知らないが、何故普通に終わらせてくれるという事をしないのか。

 

(この世界は所謂ギャグ補正なる謎の力が強い世界らしい。君も今日一日でたんまりと堪能した筈だ。まあ、そう何日も続くものじゃない。しばらくすれば鳴りを潜めるだろう)

(メタい発言すな。っていうか、そういう事じゃなくてだな・・・)

(ふむ、要はあれだろう。気恥ずかしいのだろう。初めての友達という存在が出来た事が)

(はっ?)

 

 いや、バカお前。友達じゃないし。そもそも俺男だしボッチだし。やめろお前そういう事言うの。勘違いしちゃって変に意識までしちゃうだろうが。

 

(どこぞの目が腐った男並にひねくれているな・・・これも私の保護者責任か・・・)

(誰が誰の保護者だって?)

 

 変な冗談はさっきの発言で終わらせてほしい所だ。

 

(それに、彼女たちはこの物語の主要人物だ。そして俺はモブ。本来いるべきではない存在だ。友達だどうだというのは、そもそもお門違いだろ)

(主人公がモブと仲良くしては駄目な法律でもあるのかね?)

(あるだろ。それで変に物語がこじれて見ろ。イリヤを助けるどころか、もっと危険な目に遭わせてしまうかもしれない)

 

 今日初めて気が付き、今まで考えてきた事だが。

 

 俺が来ても来なくても、アニメや漫画の物語通りに進んでハッピーエンドにつながるのではないだろうか、という話である。

 

 そもそも俺はどこまで行っても異物なのだ。その証拠にイリヤたち以外の人物は相変わらずぼやけて見える。同じ人間のはずだが、彼らはモブで、この世界では優先順位が低いからあの様になっているのだろう。

 

 だが俺は?一体俺は何なのだ?よく小説で出てくる転生者は、原作に傲慢にも介入していくが、では一体その転生者はどのように言い表されるのか?

 

 主人公は他にいる。しかし事情を知っている限りモブではない。だが作品から見てわき役でもないし、悪役にはなれるだろうがそんな覚悟は俺にはない。そもそも理由が見つからない。

 

 では、転生者である俺は一体なんだろう。イレギュラーとでもいえばいいか?それとも、やはりただの異物なのだろうか。

 

 異物は端から見てどう映っているのだろうか。モブの彼らと同じようにぼやけて見えているのか、それとも主人公達の様に普通に見えているのだろうか。それすらも分からない。

 

 

 

 俺が生まれていなかったり、この街まで来なかったら。イリヤは今日はどのように過ごしただろうか。俺の為に街を案内までしてくれたが、恐らく友達・・・あの五人組でどこか遊びに行っていたのではないか。そんな大切な友達との思い出を、俺はイリヤから奪ってしまった。

 

 異物がいるだけで世界は変わる。川の流れが小石一つで変わる様に。バタフライエフェクト、というのだったろうか。小さな影響はより大きな影響を呼び、大局が変化するという意味だ。

 

 それがあるから俺はエミヤの提案を飲んだ。ただそれだけだ。小石が一つある事で物語にどのような影響があるのか・・・もしなかったらそれでいい。ただ、もしあったら俺がその分を補うだけだ。

 

 そもそもアニメと完全に同じ結末を迎える確証も無い訳だが、その辺りについて議論する気は毛頭ない。というより俺はただの人間だ。知識を持っているだけのただの人間が、未来のことなど分かるはずがない。

 

 だが、大まかな本筋は辿るだろう。恐らく、きっと。そこでバッドエンドを迎えるか、ハッピーエンドを迎えるか。その辺の裁量をうまくして、ハッピーエンドを迎える様促してやる。ソレが、イリヤと美遊を確実に救う方法なのではないだろうか。

 

(はあ・・・自意識過剰というか卑屈すぎるというか・・・本当にそう思っているのだから、よほど重症だな、君のそれは)

(どういう意味だ)

(いやなに。君はどこまで理性的にふるまおうが、ただの恥ずかしがり屋で心優しい、ちょっと根暗なだけのガキなのだというだけの話だ)

(はあ?なんだよそれ)

 

 エミヤはその後、意味ありげにかすかに笑ったかと思うと、そのまま黙りこくったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 その分だとでもいうように、エミヤは夢の中で普段の10割増しで俺をボコボコにした。何時か絶対やり返す。

 

 




主人公がイキリますが生暖かい目で見守ってあげてください。
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