ZERO×HUNTER   作:ゲロッパ

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第一話 召喚の儀

 全く最低最悪の日だわ!

 

 

トリステイン魔法学院の貴族、ルイズ・フランソワーズ・ド・ラ・ヴァリエールは心の中で叫んだ。なぜ彼女は不機嫌なのか、話は少し前に遡る。

 

 ハルケギニアの小国トリステイン、この国の魔法学院に在学する彼女は二年生に進級するにあたり、春の使い魔召喚の義に臨んでいた。

 使い魔とはメイジの忠実な下僕となる存在、延いては今後の人生を共に過ごすパートナーとなる存在。メイジは召喚の魔法で、この世界の生物をランダムに呼び寄せ、キスによって使い魔のルーンを刻む。

 

 この召喚の儀式はメイジにとっていわば通過儀礼のような物で、過去に召喚に失敗した事例は無い。生徒達は様々な生物を召喚する。鳥や蛙、巨大なモグラ、果てはドラゴンまで召喚する者まで現れる。流石にこれには立ち会った教師も驚きを隠せないでいた。

 

 そして最後の一人、ルイズの番になった。ルイズは焦っていた。実は彼女には大きな悩みがあった。彼女は魔法が使えなかった。否、正確には成功しないと言った方が正しい。

 

 彼女はどんな魔法を唱えても爆発を起こす。初歩の魔法もそうでない魔法も例外なく。そんな彼女を周りの生徒は侮辱を込めて『ゼロ』と呼んだ。理由は魔法の成功率0%だから『ゼロのルイズ』

 

 

 ルイズ以外の生徒はニヤニヤと笑みを浮かべながらルイズの様子を窺っている。

 

 彼らはルイズが召喚に成功するなど露とも思っていない。どうせいつものように爆発して終わりだと思っている。そして失敗して悲しむ彼女を、思いっきり馬鹿にしてやろうと下卑た笑みを浮かべている。

 

 彼らはルイズに嫉妬していた。怒りっぽく我儘な性格を除けば才色兼備で公爵家であることに、しかし彼女は貴族ならば無くてはならない、魔法というピースが欠けていた為に、彼らのストレス解消の絶好の捌け口になっていた。

 

 そんな生徒達の顔を見てルイズは少し苛立ちながらも、すぐに冷静になり呪文の詠唱を始める。

 

 「我が名はルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール! 五つの力を司るペンタゴン。我の運命に従いし、使い魔を召喚せよ」

 

 瞬間、ルイズの目の前が眩く光ったと思うといつも以上に激しい爆発音と共に地面が弾ける。

 

 生徒達は余りの出来事に腕で顔を守ったり、耳を塞いで身を屈めたりしている。

 

 生徒たちは笑いを堪えるのに必死だった。まだ早い。煙が晴れて、何も無い場所を眺めて膝を付くルイズを思い切り笑ってやろうと思っていた。

 

 だがそうはならなかった。なぜなら、うっすらと煙が晴れた爆心地に立つ者が見えたからである。彼らは目を丸くした。

 

 ((まさか、成功したのか!?あの『ゼロのルイズ』が!?))

 

 生徒達は驚きを隠せなかった。しかしそれ以上に驚愕していたのは召喚に成功したルイズだった。頭では成功して欲しいと考えても、心の底では成功なんてするはずがないと思っていたのは、他でもない彼女自身だったのだ。

 

 ルイズは、今にも泣きそうだった。今まで一度も成功しなかった魔法がようやく成功した。ルイズは喜びに浸っていた。しかしその喜びも束の間、ルイズは一気に血の気が引いた。

 

 煙が晴れ、爆心地の中央にいたのは、人間だった。

 

 身長180サントを超える長身、青く光る素材に見慣れない絵柄の刺繍が施された服を着た男。男は僅かに腰を落とし右手と右足を前に出す構えを取り、鋭い視線で辺りを観察している。

 

 ルイズは頭が真っ白になった。確かに召喚の儀式ではなんの生物が召喚されるかはわからない。だが人間が召喚された事例は存在しない。まさに異例中の異例である。

 

 見たことの無い服だが貴族には見えないし、杖も持っていないということは間違いなく平民である。

 

 生徒達が一斉にどよめき出す。

 

 「おい、あれって人間じゃないか?」

 

 「見かけない格好だがどう見ても貴族じゃないだろ」

 

 「と言う事は平民か?」

 

 「はははは!ゼロのルイズが平民を召喚したぞ!」

 

 生徒達が一斉に笑い出す。

 

 ルイズは周りの嘲笑に胸が張り裂けそうなくらい恥ずかしくなった。よりにもよって人間を召喚するなんて、過去にそんな事例は無い。このままでは仕込みか何かだと要らぬ疑い掛けられかない。

 

 何はともあれ、召喚には成功したのだ。今はともかく進級の為になんとしてもこの事態をのりきらなければならない。

 

 ルイズは契約をしようと男に近づく、しかしそれを止める様に立ち会いの教師ジャン・コルベールが彼女の前に立った。

 

 「ミスタ・コルベール、一体何のつもりですか?」

 

 ルイズは不機嫌そうに尋ねるが、彼の鬼気迫る表情を見てすぐに黙った。

 

 「皆さん!使い魔召喚の儀は終了とします!各自校舎に戻りなさい!」

 

 コルベールは召喚された男から目線を切らさず生徒全員に呼びかける。それは授業終了の合図というより避難警告に近いものだった。

 

「ちょ、ちょっと待って下さいミスタ・コルベール、急にどなされたんですか?」

 

 突然の終了の言葉に生徒の一人ギーシュ・ド・グラモンが不安そうに問いかける。

 

 「聞こえなかったかね?ミスタ・グラモン、早く校舎に戻りなさい」

 

 生徒達はその剣幕に圧倒され、ざわつきながらもフライを唱え急いでで校舎に戻っていく。

 その様子を男はかなり驚いた顔で見ていた。

 

 なぜコルベールは唐突にこのような行動に出たのか、彼の経験があの男を危険だと判断したからだ。大半が子供だとはいえこれだけの数のメイジを目の前にしてあの男は一切の恐れを抱いていない。

 

 恐れていないだけではない、その目には明確な殺意が込められていた。あの男は間違いなくメイジ殺しだ、其れもかなりの手練の、もし戦闘になれば倒すことはできるだろう、しかしその際に生徒が犠牲になる可能性が高い。

 

 だからコルベールは早々にルイズを除く生徒達を退散させた。コルベールは賭けに出た。戦闘は避け彼にルイズの使い魔になるように交渉する、もしも戦闘が避けられないのならばルイズだけでも逃がすと。

 

 コルベールは意を決し召喚された男に話しかける。

 

 「召喚されし者よ!我々に敵意はない!話を聞いてはくれないか!」

 

 「ミスタ・コルベール相手は平民ですよ?貴族が平民相手に下手に出るなど・・」

 

 「ミス・ヴァリエール!少し黙っていなさい!」

 

 コルベールに怒鳴られ、ルイズはビクリと肩を動かし再び押し黙った。

 

 そんな様子をただじっと見ていた男が構えを解きようやく口を開いた

 

 「@△*¥s+jp□#&∀◎★〆▼◇」

 

 「????」

 

 男が喋った言語は二人には聞いたことがないものだった。

 

 「すまないが一体何語ですかな。私の言葉がわかりますか?」

 

 コルベールは再び問いかけた。同時に非常に厄介だと思った。

 ハルケギニアは国によって訛りはあるものの一つの共通言語で統一されている。

 この者はもしかしたらハルケギニアではない未開の土地から来たのかもしれない。

 コミュニケーションが取れなければ交渉どころではない。

 コルベールは頭を悩ましていると

 

 「あーやっぱり今の言葉はわかんないのか、多分これで言葉は合ってるよな?」

 

 知らない言葉を喋ったかと思うと、今度は流暢なハルケギニアの言葉で喋りだす。コルベールは不安が杞憂に終わった事に一先ず安心する。

 

 「はい、言葉はそれで大丈夫です。先程も言ったように我々に敵意はありません。貴方が何者なのか教えていただきたいのです。」

 

 「敵意が無いって言うんならまずその手に持っている物を置きな、それと人に物尋ねる時はまず自分達の事から話すのが筋ってもんじゃねーか?」

 

 「失礼致しました。ここはトリステイン魔法学院です。私は教師のジャン・コルベールといいます。あなたを呼んだのはそこの彼女、ルイズ・フランソワーズ・ド・ラ・ヴァリエールです。今は春の使い魔召喚の儀式を行っており、貴方は彼女の使い魔として召喚されたのです」

 

 「ごめん、何言ってるのか全然わかんねーわ。トリステイン?聞いたことねーな。古代語なんかで話しやがって、適当にはぐらかすつもりなら相手が悪いぞ」

 

 「いや、私ははぐらかそうなどと・・・」

 

 「ちょっとあんたね!さっきから黙って聞いてれば言いたい放題言って一体何様なのよ!というか名前ぐらい名乗りなさいよ!」

  

 男の不遜な態度にいい加減業を煮やしたルイズが一喝する。

 

 ルイズの突然の怒号に男は面食らった表情を浮かべ少し笑いながら名乗った。

 

 「これは失礼した、俺の名はサイト、サイト=ヒラガ、プロのハンターだ。」

 

 「ハンター・・・?」

 

 ルイズとコルベールは訝しげに顔を見合わせる。

 

 「何よハンターって、猟師ってこと?要するにただの平民じゃない。平民の分際で貴族である私達に随分な態度とってくれたわね」

 

 「み、ミス・ヴァリエール・・・」

 

 サイトの事を全く恐れないルイズの強気な姿勢にコルベールは不安になる。

 

 「はあ?猟師?・・あんたら本当にハンターを知らねーのか?」

 

 「知らないわよ!あんたの方こそ適当にはぐらかそうとしてんじゃないの!?」

 

 余りにも噛み合わない会話にサイトも呆れて頭を押さえる。

 すると一匹の白い鼠がトコトコと走ってきてコルベールの足から肩に登った。

 

 「君はモートソグニル・・・」

 

 モートソグニル、この魔法学院の学院長オールド・オスマンの使い魔だ。普段は秘書のスカートの中身を覗き、その色を学院長に教えるというセクハラに使われているのだが、有事の際の伝令にも使われている。

 

 コルベールは彼の言葉に何度か相槌を打ち再びサイトの方へ顔を向ける。

 

 「ミスタ・ヒラガ!学院長が君に会いたいそうだ。すまないが会っていただけないだろうか。」

 

 「構わねーよ。その方が話が早い」

 

 「ミス・ヴァリエール、君もだよ」

 

 「わ、私もですか?」

 

 「当然だろう、君が呼んだ使い魔なのだから」

 

 はあ、とルイズは溜め息をついた。なぜこんなことになったのだろう。それもこれもこの猟師の平民がさっさと使い魔にならないからだ!と思った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 読んでいただきありがとうございます。
初投稿ということもあり、よく分からず書いている点が多々ありますので、ご指摘いただけると非常にありがたいです。


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