ZERO×HUNTER   作:ゲロッパ

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第五話 魔法と念

やっちゃった…

 

 箒を片手に、ルイズはめちゃくちゃになった教室を見てため息をついた。

 

 あの爆発から数分後、騒ぎを聞きつけ、やってきた教師たちにこってり絞られたルイズは、教室の後片付け、及び、新たな魔法を覚えるまで、学院内での魔法の使用禁止を命じられてしまった。生徒が魔法を禁じられるなど、学院創設以来、初めての事だった。

 

 一年前から、ルイズは爆発を起こしていたが、今までは運良く怪我人が出なかった為、注意される程度に留まっていたが、今回はシュヴルーズや、他生徒の使い魔等に大きな被害が出てしまった。

 

 本来ならば、退学になってもおかしくなかったが、あの後、保健室で目を覚ましたシュヴルーズが、今回の一件は、ルイズの事をよく調べていなかった、自分の落ち度だと言い張り、現状に落ち着いた。

 

 「はぁ…私ったら、最低ね。あんな事言われたぐらいで感情的になるなんて」

 

 ルイズが悲観に暮れていると、掃除を手伝っていたサイトが話しかけてきた。

 

 「なあ、マスター。ちょっと質問があるんだが、いいか?」

 「なによ」

 「メイジってのは魔法に失敗すると、皆爆発すんのか?」

 

 サイトの質問にルイズは少し不機嫌そうに答えた。

 

 「しないわよ。自分のレベルに見合わない魔法を唱えたって何も起きない。もしくはそれに見合った現象しか起こせないわ」

 

 ルイズは忌々しそうに顔をしかめた。

 

 「ならなんで、マスターの魔法は爆発するんだ?」

 

 サイトの問いにルイズはキレた。

 

 「そんなのこっちが聞きたいわよ!馬鹿にしてんの!?」

 「違う、違う!悪かったよ。お前自身も原因はわからないんだな?」

 「当たり前でしょ。だから私は『ゼロ』なのよ。魔法成功率0%の『ゼロ』のルイズ…」

 

 ルイズは益々落ち込んでしまった。

 

 「なぁマスター、もし俺が魔法が使えるって言ったら、信じるか?」

 

 サイトのとんでもない発言に、ルイズの目が大きく見開いた。が、すぐに閉じて、ため息をついた。

 

 「何を言い出すかと思えば…ジョークなら、もう少し笑えるやつにしてもらえないかしら」

 

 ルイズは鼻で笑ったが、サイトの顔は真剣そのものだった。

 

 「マジだぜ。まあ、魔法とは少し異なるけどな」

 「話してみなさい」

 

 ルイズも真剣な面持ちになりサイトの方を向いて椅子に座った。

 

 「順序を追って話そう。まず俺が、ハルケギニアとは別の世界から来たってことは信じてくれてるんだよな」

 「一応ね」

 「オーケー、話を進めよう。俺がいた世界には、『念能力』という、魔法に似た特殊能力が存在している」

 

 サイトは、ルイズに『念能力』について大まかに説明した。

 

 1、『念能力』とは、全ての生物に流れる生命エネルギー、『オーラ』を操る技術の事。

 

 2、系統魔法と同じく、『念』にも大別して、六つの系統が存在し、サイトはその内の、『強化系』に属する使い手である事。

 

 3、『念能力』を習得すれば、『オーラ』を視覚化したり、感じ取るができるようになるという事。

 

 4、魔法とは違い、個人差はあれど『念』は修行によって、誰でも習得できるという事。

 

 そこまで説明しサイトは一息ついた。

 

 「少しかいつまんで話したが、念については大体こんな感じだ、詳しくはまた今度話す。何か質問はあるか?」

 

 サイトが尋ねると、ルイズは目を閉じてはぁっと息を吐いた。

 

 「いきなりそんな話を信じろって言われてもね…仮にその話が本当で、アンタがその念とかいうのの使い手だとして、それが魔法と何の関係があんのよ」

 

 半信半疑のルイズに、サイトは自信有りげに答えた。

 

 「関係は大いにあると思うぞ。あくまで俺の見立てだが、メイジが魔法を行使する際に使う『精神力』と、念の『オーラ』は同質のものである可能性はかなり高い」

 「理由は?」

 「幾つかあるが、現時点で話せるのは、俺にはマスターの精神力が視えるからだ。マスターは魔法を使う時に、自分の精神力を視たり感じたりできるか?」

 「視えはしないけど、僅かに感じるくらいは」

 

 ルイズの答えに、確信を得たようにサイトはにやりと笑った。

 

 「やはりな。マスターは念を覚えた方がいい。魔法が使える糸口に繋がるかもしれない」

 

 魔法が使えるかもしれないという言葉に、ルイズの目が輝いた。

 

 「本当に魔法が使えるようになるの!?」

 「落ち着けって、あくまで可能性の話だよ。俺が見た感じだと、マスターは他のメイジより明らかにオーラのコントロールが出来てない。必要以上に膨れ上がったオーラが暴発している様に見えたんだ」

 

 ルイズは首を傾げた。

 

 「つまり、どういうこと?」

 「詳しく言うとだな。メイジが魔法を使う時のオーラの流れ、俺に視えたのは、まず杖を取った時に体からオーラが溢れ出た。そして呪文を唱え始めると、そのオーラは杖先に集中するのが視えた。そんで杖を振り上げて魔法を発動させていた」

 「魔法を使う一連の流れね」

 「そう、マスターとあの先生たちの違いは、その時に体から溢れるオーラの量がマスターは尋常じゃなかった」

 「尋常じゃないって、どれくらい?」

 「俺が見た感じ、軽く10倍以上だな」

 「じゅ…!」

 

 ルイズは驚愕した。それは例えるなら、なにかとても柔らかくて壊れやすい物を、全力で殴って壊し、それがなぜ壊れたのか理解してないのと同じだとサイトは説明した。

 

 「要するに、力み過ぎって事だな。まあ、それがなんで爆発という結果になるのかは謎だけどな」

 「その、念能力ってどれくらいで身に付くものなの?」

 「うーん、才能次第だが、最初の基礎をマスターするのに、早くても数ヶ月はかかるかな」

 

 それを聞いて、ルイズはがっくりと肩を落とした。

 

 「随分かかるのね…」

 「そう気を落とすなよ。噂じゃ、数日で念を習得したって話も聞いたことがあるし、十分見込みあるよ」

 

 フォローを入れるサイトに、ルイズは疑いの眼差しを向けた。そしてルイズはスっと席から立った。

 

 「証拠を見せて」

 「証拠?」

 「アンタの話はそれっぽいけど、やっぱりどうにも胡散臭いのよね。証拠がなきゃ信じないわ」

 

 サイトは少し沈黙すると、フッと不敵に笑った。

 

 「確かに、百聞は一見に如かずというしな。良いだろう。ただし、ちょっとしんどい思いをすることになるがいいか?」

 「構わないわ」

 

 サイトは「よし」と一言いい、ルイズから僅かに距離をとった。そして右手を前に出し、手を広げた。

 

 「今から、俺の殺気を乗せたオーラをマスターにぶつける。かなり加減はするが、辛いから覚悟しろ」

 「何度も言わなくていいわ、早くしてちょうだい」

 

 サイトが「いくぞ」と言うのと同時に、ルイズの体に凄まじい悪寒が走った。目に見えない、何かとてつもなく嫌なものが、サイトから発せれているのがわかった。

 

 な、に…これ…苦しい…!息が…できない!動けない…!

 

 ルイズが苦しさに耐え兼ねて膝を着くと、ぴたりと嫌な気配は消えた。サイトがオーラの放出を止めたのだ。ルイズは全身から滝の様に汗を流し、心臓がバクバクと音を立てているのを感じた。

 

 「く、悔しいけど…ハア、本当みたいね。今のが…『念』」

 「そうだ、お前たちはこれを、魔法を使うための、単なる燃料程度にしか思っていないだろうが、オーラそのものにも物質を破壊する力がある。邪念をもってオーラをぶつければ、人間の肉体は簡単に壊れる」

 「なぜ、それ程の力を私に教えようと思ったの?」

 

 サイトは腕を組み、うーんと唸った。

 

 「理由は幾つかあるんだが、まず一つは、マスターのオーラを見たからだな」

 「私の?」

 

 サイトはこくりと頷いた

 

 「ああ、あれ程のオーラを練るのは、念能力者だって、並の使い手じゃ中々できない。単純にすごい才能だと思ったよ」

 

 ルイズは少し頬を染めて照れくさそうに顔を掻いた。今まで、家族も含めて誰一人、自分に才能があるなんて褒めてくれたものはいなかった。サイトの言葉はそんなルイズに強く響いた。

 

 「二つ目は、まあメイジが念を覚えたらどうなるんだっていう、単なる好奇心だ」

 

 ルイズはプッと吹き出した

 

 「どうせ、それが本命でしょう」

 「まあな」

 

 二人は顔を見合わせ笑った。すると教室の入口からガシャン!という音が聞こえた。二人が振り向くと、そこには今朝、ルイズの洗濯物を取りに来た、メイドのシエスタが立っていた。音の正体は、彼女が掃除用具の入ったバケツを落とした音だった。

 

 シエスタは、ルイズの教室爆破の話を聞きつけ、掃除の手伝いにやって来たのだった。そして彼女が教室の入口で見たものは、今朝、ルイズの部屋にいた怪しい平民と、大量の汗をかき、膝をついたルイズの姿、シエスタの中で、再びいけない妄想スイッチが起動した。

 

 「お、お、お邪魔をして申し訳ありませんでした!」

 

 彼女は脱兎の如く教室から逃げ出した。

 

 「追うんですよサイトさん!!つかまえなさい!!!」

 

 髪の毛ピンクの少女が、二の腕pinkの宇宙の帝王のようなセリフを叫んだ。

 

 命令を受けたサイトは、人間とは思えない速度で追跡し、数秒後に、捕まえたナメック星人の子供のように、シエスタを脇に抱えて戻ってきた。捕まったシエスタは、両手と両足をばたつかせながら、助けてー!犯されるー!などと泣きながら叫んでいた。

 

 床に下ろされたシエスタが顔を上げると、そこには、不気味な程の笑顔を浮かべたルイズが腰に手を当てて立っていた。

 

 「全く、アンタという子は…間が悪いというかなんというか、変なタイミングで現れるわね」

 

 観念したシエスタは、正座をしてションボリとうなだれてた。

 

 「で、でもこんな場所で、堂々と事に及んでるミス・ヴァリエールも悪いと思…」

 「いい加減にしなさい!!シエスタ!」

 

 シエスタの勘違いに、ルイズの堪忍袋の緒が切れた。

 

 それからルイズは、なんとかシエスタの誤解を説いた。シエスタは何度もルイズに頭を下げ、二人は仲直りした。そして三人で掃除を再開した。

 

 「使い魔だったんですね、その人。私はてっきり街のゴロツキかとばかり…」

 「アンタ、私がゴロツキをはべらせてたと思ってたわけ!?」

 「いえ…意外とああいう野性的なタイプの顔の人が好みなのかなーって」

 「無い無い無い!野性的っていうか、ただのけだものでしょ、アレは」

 

 二人のガールズトークは、ばっちりサイトに聞こえていた。彼は新しく運んできた窓ガラスで、自分の顔を舐める様にチェックしていた。

 

 三人が掃除を終えたのは、昼食が始まる時間を少し過ぎた頃だった。この学院では遅刻は厳禁で、遅れた者は教室や食堂には入れない決まりになっていた。

 

 「しょうがねえ。俺が森に行ってなんか狩ってくるか…」

 「なんかって何よ」

 「そりゃ、森にいる動物だよ。いなかったら、その辺に生えてるキノコとか、蛇とかとって丸焼きにして…」

 「嫌よ!そんなの!それだったら食べない方がマシよ!」

 「なに言ってんだ!蛇は意外と美味いんだぞ!」

 「絶対いや!」

 

 二人がギャーギャーと言い合いをしていると、シエスタが恐る恐る声をかけた。

 

 「あのー…よかったら厨房に来ませんか?賄い程度だったら用意できると思うんですけど」

 

 その瞬間、二人は口論を止め、見開いた目でバッとシエスタの方を向き、ルイズは思いきり彼女に抱きついた。その目には涙が浮かんでいた。

 

 「う、う、やっぱり持つべきものは、使い魔じゃなくて友ね。シエスタ、貴方は最高の友達よ!」

 「そ、そんな大げさな、それに平民の私が友達だなんて恐れ多いです」

 

 シエスタは僅かに顔を赤らめた。ふとサイトを見ると、彼も目に腕を当てて男泣きしていた。

 

 

 




 修正
 3話における誤字脱字が多すぎましたので修正いたしました。
 
 念と魔法を独自解釈で結びつけました。
 他にもまだマギ族の事など沢山あるんですが、それは次回以降補足していきたいと思います。
 テンポが遅かったり、安易なパロディネタ等ぶっこんでますが、生暖かい目で見ていただければ幸いです。
 批判でも、注意でも、何でも感想があればそれが励みになります。感想頂ければありがたいです。
 
 
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