鋼線使いの武偵   作:鋼線使い

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11.斯くして序曲が始まる

 詩蓮 side

 

 夜中、あかりが寝た事を確認して部屋を出た。

 

 

 男子寮の駐輪場にいる『武偵殺し』に話しかける。

 

 

「よぉ、武偵殺しさんよ、仕込みは済んだかい?」

 

「死神…いきなり話しかけて来るな…。お前の気配の隠し方はレベルが違うんだぞ。驚いて撃ち殺す所だったぞ」

 

 声を潜めての会話をしながら理子は作業を続けて行く。

 

「C4か?…って、それ絶対自転車に仕込む量じゃねーだろ…」

 

「くふふ、だから良いんじゃねーか。キンジもいいリアクションが入って本気になるだろうさ」

 

 趣味ワリーな。まぁ、爆弾使いには丁度いいのか?

 

 仕込み終わった様だからそのまま部屋に帰る事にした。明日やってくるキンジの不幸を思いながら。

 

 

 

 

 何時ものように、五時に起きて朝食と昼の弁当を作る。

 

 昨日の様に同期が来ることはほとんどない。来ても理子ぐらいである。

 

 昨日のコンソメスープを温めながら、玉子焼きとほうれん草のおひたし、ウインナー、アスパラのベーコン巻きを作る。

 

 学食で済ませることも多いが、こうやって弁当を作ることもある。学食って意外と混むからその対策のようなものだ。

 

 小さめの弁当箱と自分の弁当箱におかずと白米を入れ、米の上に紫蘇昆布と梅干しを載せて弁当を完成させる。

 

 やっぱり一人暮らしだと料理にのめりこむのだろうか?ま、どうでもいいか。

 

 

 時間は六時を少し過ぎた。

 そろそろあかりを起こすか……。

 

 あかりの頭をペシペシ叩いて起こす。

 

「あかり~起きろ~飯が冷めるぞ~」

 ペシペシ、ペシペシ。

 

「んぁ~?……ふぇ?」

 

「寝ボケてないで顔洗いに行きな」

 

「ふぁい……」

 

 

 ようやく目が覚めたあかりと一緒に朝食を食べ、作った弁当箱を渡す。

 

「こ、これって詩蓮先輩が…?」

 

「他に作るヤツがいるのか?」

 

「デスヨネ」

 

 服装を防弾制服に着替えて、鋼線の予備があるかを確認して鞄を持とうとしたら……。

 

「先輩?机の上に拳銃が置いたままなんですが……」

 

「ああ、ワルいワルい。つい癖で、銃とナイフを持ってくのを忘れるんだよ」

 

「……校則で義務付けられていませんでしたっけ?」

 

「まーな。去年は、抜き打ちチェックの時に限って忘れてな。俺がAランクなのもそれが理由なんだよ」

 

 あかりがものすごく呆れているような顔をしている。しょうがないやん、忘れてしまうんだから。

 

 

 学校に行くためあかりと一緒に外に出ると、隣のドアから星伽白雪が出てきた。

 星伽がこっち見て驚いていた。俺の隣にいるあかりを見て驚いたのだろう。

 

 あかりと星伽は、挨拶を済まして一緒に学校に行くことになった。丁度よくバスが来たので乗り学校へ。

 

 生徒会長である星伽と別れ、あかりに午後に訓練を始める事を伝え、新しいクラスに向かう。

 

 

 

 

 そして、キンジに不幸が訪れる。

 

 

 

「んで?今日はどうした、キンジよー。まさか、星伽さんとクラスが一緒じゃないのを気にしてんのか?」

 

 どんな乗り物も乗りこなす特技を持つ、車輌科(ロジ)Aランクの武藤剛気。車の改造とスピード違反の常習者。

 

 

「武藤…今の俺に…女の話題を振るな……」

 

 これは、キンジのヤツ、HSS使ったな。いつものネクラ加減が五割増しだな。

 世にも珍しいチャリジャックされた哀れな遠山キンジ。

 元強襲科(アサルト)Sランクで現在、探偵科(インケスタ)Eランク。

 

「朝……の事件」

 

「今朝の爆弾事件(ボム・ケース)の被害者は遠山君だったんだ」

 

 武偵校常識枠のイケメン、強襲科Aランク、不知火亮。

 

「御愁傷様っと言っておこう」

 

 そして俺だ。

 キンジを労う様に肩をポンポン叩いておく。

 

 理子が良い笑顔でいることからチャリジャックは成功したのだろう。

 

 

「はーい、皆さん。二年生最初のHRをはじめますよ~」

 

 そう言って入ってきた、二年A組の担任、探偵科(インケスタ)担当の高天原ゆとり教諭。『血塗れゆとり(ブラッディー・ユトリ)』と呼ばれていた傭兵だったらしい。

 

「はい、まずは、去年の三学期に転入してきたかわいい子から自己紹介してもらいまーす」

 

 ガラッ。

 開けられた扉から入ってきたのは、ピンク頭のツインテ(神崎・H・アリア)だった。

 

 ガタンッ!

 

「遠山君大丈夫ですかー?」

 

「…大丈夫です」

 

 キンジが頭を机にぶつけていた。痛そうだ。

 

「先生、あたしアイツの隣の席に座りたい」

 

 キンジィ~オメーHSS時にナニしたんだ?

 

「キンジ、オメーにもようやく春が来たようだぞ!先生ー!俺、転入生さんと席替わりまーす!」

 

 隣の席だった武藤がノリよく席を退く。

 

 そして先生はのんきにあらあら言っている。

 

「キンジ、これさっきのベルト」

 

 そう言って投げられるベルト。

 

「分かった!理子分かっちゃった!フラグバッキバキに立ったよ、クララみたいに!」

 

 最後は違うだろ。あ~あ、絶対バカなこと言うなこれ……。

 

 とりあえず、携帯でいちいちぜろっと……。

 

「ちょっと待って、詩蓮!?お前今何処に電話するつもりだった!?」

 

「いちいちぜろ」

 

「やめろーー!!」

 

「キーくんはベルトをしてない!そしてそのベルトをツインテールさんが持っていた!これは謎!謎でしょ!でも理子分かっちゃった!」

 

 おっと、理子が大げさ増々で何か言おうとしているな。ノリがいいのかクラスの皆静かになったな。

 

「キーくんはツインテールさんの前でベルトをとる様なことをして、彼女の部屋にベルトを忘れていった。…つまり、二人は今、熱いアツーイ恋愛の真っ最中なんだよー!」

 

 ナ、ナンダッテー。

 

 クラスの皆ノリノリで騒いでいるな~。

 おっと、腐っている人がいやがるな。キンジ×リョウ?ゴウキ×キンジ?ネタに困らない様ですネ。もし俺の名が出たらワルい文明として粉砕しないとな。

 

 騒いでいるまわりを呆れて見ていたら、ピンク頭が震えているのが見えた。

 

 ズキューン、ズキューン!

 ……チンッ、チンッ……。

 

 両側のガラス、防弾で良かったね。

 ちょっとズレた事を考えてしまった。

 

 だってさぁーいくらなんでも発砲はしないだろう普通。常識的に考えろよ……あ。

 

 常識無いんですね。

 無法者に常識無いって思われるってどうなんでしょうね?

 

「れ…恋愛なんて下らない!全員覚えておきなさい!次、そういうバカなことを言うヤツには、風穴開けるわよ!!」

 

 荒ぶるツインテールによって今年最初のHRは騒然なものとなった。

 

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