鋼線使いの武偵   作:鋼線使い

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1.始まりの少し前の話

 段々と暖かくなってきた三月の半ばの昼間。

 

 俺、絲髪詩蓮(いとがみしれん)は、銀行の中に居り銀行強盗と真っ正面で対峙していた。……と言っても、強盗が持ってた銃はすでに俺が真っ二つにしている。

 

 未だナイフで抵抗しようとする強盗共に、自分の武器である鋼線を分かりやすい様に空中に出し、殺気をすこ~し出して往生際の悪いバカ共にお決まりの言葉(セリフ)を言う。

 

 

 

「小便は済ませたか?神様にお祈りは?部屋の隅でガタガタ震えて命乞いする心の準備はOK?」

 

 

 とびっきり良い笑顔で言ってみた。そういえば、こういった時の俺の笑顔って変らしい。キンジには、「完全に敵側のものだ」と。不知火からは、「凄味がある笑顔だね」。理子は、「その道の人にはご褒美です」。戦妹(アミカ)の百合は、「それを他の女の子に向けないで下さい」っていつもの忍者口調が無かった。中空知にいたっては気絶しちまった。

 

 脅しが効いたのかガタガタと強盗共がふるえだした。

 念のために持ってるナイフを切っておくか。左手を横に振って鋼線を操り、ナイフ全てを切断に成功する。

 

 

教授(プロフェシオン)、シャーロックの旦那に推理のコツを教えてもらったことが有ったが、ここまではその教えてもらったコツの推理通り。後は、バカみたいに俺から視線を反らしてる奴の目線の先にいる共犯者を縛るだけ)

 

「これで一件落着っと!」

 

 鋼線で縛り釣り上げた共犯者を手繰り寄せ、鳩尾にそこそこ威力のある拳を放ち、引き寄せている分、更に威力が上がる結果となり共犯者は汚物を吐き、自分の汚物に沈むことになった。

 

 

「やれやれ、俺に条理予知(コグニス)の才は無いな、共犯者が居て吐くところは推理できてなかったからな…」

 

 

 回りの人に聴こえない声で愚痴をこぼす。

 そもそもイ・ウーに入って、イ・ウーで教えを受けたのが少ないのも原因か?

 シャーロック、理子、ジャンヌ、夾竹桃、金一さん(カナ)、セーラ、ワトソンに教えを受けたっけ。代わりに鋼線の扱い方を教えたけど。

 

 

 捕まえた強盗を警察に引き渡して、寮に帰る。

 依頼の為に秋葉原に行き、目当てのブツを買った帰りに銀行強盗に遭遇(エンカウント)してしまった。

 

 

 依頼主に遅れることをメールして女子寮の屋上に向かう。

 

「しーくん遅ーい!理子が頼んだお使いに時間かけすぎー!」

 

 そう、俺に依頼という名のお使いを依頼してきたのは同じ研鑽派の峰理子である。

 

「それは申し訳ございません。メールにも書きましたが帰りにバカ共の騒ぎに巻き込まれまして……」

 

「まぁ、いっか!で、しーくん例のモノは?」

 

「ご要望に沿う物を三つほど買ってきました」

 

 手に持っていた紙袋を理子に渡す。ちなみに中身はエロゲーである。吸血鬼が出ないもの、続編ではないものを選んで買ってきた。

 イ・ウーで聞いた理子の境遇を考えれば当然の配慮だと思う。

 

「なかなかマニアックなモノもあるけどパーフェクトだ、しーくん」

 

「感謝の極み……んで?毎回コレやる意味あるの?誰得だよ」

 

「もちろん、理子得に決まってるよ、しーくん。ああ、それと……〈死神(リーパー)〉、次は始業式の日だ」

 

 

 いつものおバカな感じから冷酷な本性を表に出す理子。

 『武偵殺し』。ここ最近の理子の呼び名だ。本来なら怪盗の方が良いかもしれないが口には出すまい。

 自身の強さの証明と自由の為の計画。

 俺は、サポートとしてこの計画を手助けしている。

 

「そうか。そんで、今回の憐れなターゲットは?まぁ、なんとなく分かるけどな」

 

「くふふ、やっぱり分かっちゃう?言ってみろよ死神」

 

「遠山キンジ、だろ?教授の様にはいかんがそれぐらいなら分かるよ。この一年オメーは、キンジの事を注目していた。そしてこの前のシージャックで入ったカナの話しを聞いたからのと、教授の推理でも聞いた。この二つの内のどちらかだろう?」

 

「くふふ、凄いねしーくん。ちなみに答えは、前者だよ。オルメスのパートナーは、キンジだ。HSS、キンジはヒステリアモードだっけ?ソレになってないキンジは、ランク的に低いけどなった時、オルメスのパートナーとして力を発揮するとあたしはそう思ってる」

 

 

 確かに普段のキンジは根暗だの昼行灯、後は女誑しと言われていて正直、俺の全力出さなくても勝てる。だが、ヒステリアモードになったキンジは強い。なっている時のキンジを視たことがあるがあの状態のキンジなら強襲科(アサルト)Sランクでも上位に入るだろうな。

 

 

「そうだな、俺もそう思うよ。それじゃあ、俺はそろそろ帰るよ。あまり此所に長居はしたくないからな」

 

「わかった、じゃあね~、しーくん。欲しい物があったら言ってね~理子の名に賭けて盗ってきてあげるよ」

 

 背を向けたまま手だけ挙げて自室に戻る。

 

 計画開始まであと二週間程。

 

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