お前がベルファストになるんだよぉ!   作:みさりつ

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設定とかあんまり気にしないでください。
エッセンスです。
メインは俺ガイル原作で進める予定。



一話 暁の水平線上のメイド

わたしはかつてメイドが好きだった。

 

そしていつの間にか私はベルファストとなり、身も心もメイドとなった。

 

どうしてこうなったか、神様に出会ったことはない私は知らない。

 

 

 

しかし、そんなことを考える前に目の前には私のメイドとしての戦場が広がっていた。

そして仕えるべき主も側にいた。

 

 

ならばやるべきことは決まっていた。

 

 

 

 

 

 

 

「ご主人様」

 

目の前で起こっている喧騒に動揺していながら、何処までも冷静に私や自分の安全な場所を探して周囲に眼をやって事態の把握に勤めていた少年の前に膝を私はついた。

 

 

 

「え、ご主人様?……は?」

 

「ええ、貴方が私の指揮官です、どうか私のご主人様となってください」

 

 

「えっと…ベルファストさん?」

 

 

 

 

 

生者の為に施しを。

死者の為に花束を。

正義の為に剣を持ち邪悪な者には死の制裁を。

しかして我等聖者の列に加わらん。

ロイヤルの名に誓い、全ての不義に鉄槌を

 

 

 

 

「私とご契約を――――ご主人様」

 

そう言って私は彼に頭を垂れる。

 

 

 

 

私の耳に嵌められている骨伝導のイヤホンに誰かが『ブララグのロベルタのパクリだろうそれは!そんなのいいから早く契約して手伝え!』とか言っている。

メイドといったらこれだろう、ブラック・ラグーンのロベルタは本当に良いメイドさんなのだ、ああいうメイドさんが私は好きなのだ。

私には特に重い過去とか全くないけれど私がもしメイドになったら、絶対この文言をいつか使うと決めていたのだ。

 

この世界にはあの漫画はないので武蔵以外にはパクリとは思われない、やったね。

 

 

 

『というかお前なら契約しなくても素の身体能力で片付けられるだろうが!あれは数が多いだけだ、早く手伝え!私はノーコンなんだ、くっそっ!当たらない!?』

 

またなんか武蔵が文句を言ってくる。

 

 

(頑張って、武蔵……良いタイミングなのだから黙って、そしてキング・コングみたいに車とか投げてて)

 

骨伝導マイクが拾える小声で私は言った。

 

『ええい!このメイドキチガイめっ!』

 

武蔵の絶叫、いやそれほめ言葉です。

 

(はい、私は昔メイドキチガイ、略してメイドガイでした、そしていまは本物のメイドです、それがなにか?)

 

 

『後で覚えておけよ!……あたたたっ!?くっそウザいぞコレ!』

 

 

なんだか武蔵の悲鳴が聞こえているがそれを無視して努めて神聖な雰囲気を醸しながら私は黙っているように見せかけていた。

 

 

 

「一体…なにを…っ!?」

 

 

そして自分の纏っている服を、アズールレーンのあのベルファストの首輪付きの胸元の露出が眩しいメイド服に切り替える。

彼はその私の姿に驚いて後ずさりする。

 

 

 

「そうか…あれをなんとか出来るんだな…」

 

 

武装は指揮官たる目の前の彼の許可がないと展開できないらしいが、それでも私の服が学校の制服からまるでプリキュアか魔法少女のように瞬時に入れ替わったことで察しの良い彼は、私が超常の存在であることを認識したようだ。

 

彼がプリキュアのファンであることは知っていたのでこれは良い演出だった。

これはとても神聖なボーイ・ミーツ・ガールな感じ。

 

もう既に世界とか救えそう。

 

そして今も黒いじゃがいもみたいなものが宙を舞って弾丸を吐き出していた、それに対し興奮したゴリラみたいに車などを投げて武蔵が応戦していた。

武蔵が旗色が悪くてもそれでも世のため人のためゴリラみたいに必死に奮闘しているように見えるだろう。

 

 

あの危機を救えるのは私なのだと、彼はその光景を深刻そうにみている。

 

 

 

 

そんな彼の様子にじつは武蔵ばっかりを黒いじゃがいもは狙ってるので、黒いじゃがいもによって起こる被害は周囲のアスファルトが割れたりするくらいで、むしろ他人の車をぶん投げている武蔵のほうが被害額的に上だとかなんてことを私は思った。

人の避難はとっくに大淀さんの私設部隊が終わらせている。

 

戦闘機である黒いじゃがいもの本体は元々海にしか出てこないので岸壁付近の此処までしか実は攻撃してこないよう、そして現在人的被害はゼロだと大淀さんがほっとした声で報告してくれた。

 

そしてなによりも私たちの「敵」とやらはどうやらとても雑魚い。

 

本体はノーコン武蔵の投擲した車の一撃が命中したらしくとっくに沈んでいて、残った彼らはただの最後っ屁のようである。

 

これから先どうなるかはわからない、でも今は武蔵一人でも余裕だろう。

 

 

ということでしばらくこの人生初の告白に時間をかけても良いだろう。

人生とは劇のようなもの、演出にこだわるのは大事よ?

 

 

『いいから、いい加減に手伝って!食らうと痛いんだこれ!』

 

(着ている服が全部破けたら大破でしたっけ?…6割くらい裸になったら流石に本気で助けにいきますよ、まだ大丈夫でしょう?見た感じ)

 

今の武蔵は全然服とか破けてない、うん、大丈夫。

というか何故やばくなると服だけ破けた状態になるのだろうか?ドラゴンボールの孫悟空の道着の下くらい謎である。

 

『本気で最悪だ!痛いもんは痛い!』

 

(どうやら私にデコピンされたレベルの痛がりかたですね、それ、声に全然悲壮感ないです)

 

『お前のデコピンの方が痛いな!』

 

(ならまだ1人で頑張ってください)

 

『あとで泣かす!』

 

 

 

そんな会話が実は行われているのだが、そんなことはつゆ知らず彼は真剣に頭を垂れている私を見つめている。

 

 

 

 

義憤の燃える瞳で周囲で起こっている事態を見つめていたのを知っている。

彼はきっとヒーローになれる力があるなら、自分を犠牲にしてでも誰かを救う。

 

そして優しい人だ、仕えるべきに値する。

 

 

 

「ええ、私にはその力があります」

 

「契約って…どうするんだ」

 

「この指輪を私の指に嵌めてください」

 

そういって私はポケットからシンプルな結婚指輪を出し、彼に手渡す。

大淀さんから作っていただいた、なんの変哲もないプラチナリングである。

 

本当にただの指輪である。

 

『おま…っそれ大淀の会社が作った試作品の…ケッコンカッコカリ用の指輪かっ!?いやお前はアズレン……正気か!?』

 

 

ええ、武蔵、ここで私は決めさせて戴きます。

 

なにせ、私のご主人様になる予定の方は中々周囲の女性におモテになっているご様子。

変則的なアプローチですがとりあえず結婚指輪を嵌めていただいて周囲にプレッシャーを与えるつもりですわ。

恋は戦争なのです、戦争に手段はございません。

 

(恋と戦争においてはあらゆる戦術が許される)

 

『なにっ!?』

 

(そう、ガルパンのダージリンさんも言っていたではありませんか)

 

『あ、ガルパン知ってたのかお前、この戦いが終わったら今度…痛い!』

 

メイド専門で武蔵の前世のレベルのオタクでもありませんが、それなりには。

出勤途中で暇つぶしに可愛い女の子たちが戦うスマホゲーやるくらいでしたし。

 

あと本当に死亡フラグ立てるのが好きですね、武蔵は。

 

 

「さぁ…ご主人様ご契約を」

 

彼に自分の薬指を差し出す。

そして意を決して彼は言う。

 

「ああ、結ぶぞ!その契約!」

 

 

『あ、今のコードギアスっぽい』

 

 

小夜子さんは良いメイドさんでしたね、みんながルルーシュを裏切りまくっても最後まで尽くしてましたし。

 

 

 

そしてついに私の手に指輪が彼の手によって嵌る。

 

そうだ、ついに。

 

私はご主人様のメイドとなったのだ。

 

そう私がメイド。

 

俺がベルファストになるんだよぉ!

 

 

「おまかせをご主人様、今の私の手にかかれば、きっと彼らは台所の汚れよりも手応えはありませんので」

 

 

光を纏いながら私の武装を産まれて初めて展開される―――今いる敵とやらが1000倍いたとしても負ける気が一切しない。

 

顔を変えたアンパンマンの気持ちが分かった気がした。

 

なんだかほんとに世界とか救えそうな気分。

 

 

「さぁ私の砲火の産声を思う存分御堪能してください」

 

 

 

 

 

 

 

1話 暁の水平線上のメイド

 

 

 

 

 

 

 

「……どうぞ」

 

私はテーブルにワンプレートの皿と牛乳が並々入ったグラスを彼女が座る席の前に並べる。

カリカリに表面を塩コショウでよく焼いた合挽きウインナー、程よく舌触り滑らかな食感のスクランブルエッグ、瑞々しいトマトが混じったキャベツのコールスロー、マーガリンを塗って焼いたトースター。

特に代わり映えはしない朝食。

冷めてしまう前に食べればそれなりに飽きない部類の美味しさはあるとは思う。

私のはスクランブルエッグの代わりに目玉焼きにしているプレートを自分の席に置き、座る。

 

「いただきます」

 

「いただきます」

 

 

特に神様にも食材にもなんの感謝もなく。

ただ食べるという行為を確認するためにように私たちはそう言う。

 

「なぁ姉さん、姉さんは一体なんなんだろうな…」

 

妹が今日もまた一日の取り決めの言葉をトースターにシュガーポットから砂糖を匙で掬ってさらさらとまぶしながら発する。

私が誰か、何者なのか。

それはとても単純なことだ、今生きている自分自身の立場を私に対して確認を望んでいるのだ。

 

「あなたのお姉さんよ、ソレ以外の何者でもないわ」

 

私自身は何かと問われれば、特段、複雑で難解な存在でもないと思うので目の前の複雑で難解な存在であることを宿命付けられた妹にとっての私はそれ以上でもそれ以外でも何者でもないと告げる。

 

 

「それでいいのか、姉さんが望むんなら、俺はそれ以外でもいいんだぜ」

 

イチゴジャムの瓶の蓋を開けながら妹はさらに言った。

 

 

「私はただの貴方のお姉さんでいいのよ」

 

私や妹を支援している人達は姉妹としての関係ではなくそれ以外の不可思議で特別な関係であることと認識しているが私たちは何処にでもいる姉妹だ、わたしはそれでいいといつも思っている。

 

 

彼女のたった一枚のマーガリントーストにいつの間にか山盛りの砂糖、それを押しつぶすかのように赤々と乗っかるイチゴジャム。

 

「っていつも見てて思うのだけれど少しそれは甘すぎないかしら?」

 

「甘いほうが旨いだろ」

 

ついには蜂蜜のチューブボトルや練乳までどろどろと妹はかけだした。

彼女の手にかかれば、開けたばかりの甘い調味料達は今日の朝食を乗り越えられず明日また新しく開けなければならないだろう。

 

 

その様子をみて私は口の中が甘すぎて苦くなるような気がしたので、私は自分のトーストに優しく味塩をまぶした。

 

 

 

「ふーん、あいかわらず不思議だ、まるで夢みたいだ、こうしてんの」

 

妹はウインナーをフォークの先で突き刺してパクリと口にする。

私も真似をするようにウィンナーを箸で摘んで口にする。

やっぱりウインナーはカリカリと炒めて温かい内に食べると旨いと私はウインナーの肉汁を味わいながら思った。

しばらく互いに自分の分の食事を口の中に収める作業に没頭する。

 

一息をつくように妹は牛乳を私は水を飲み会話を始める。

 

 

 

「また怖い夢をみたのかしら?」

 

いつもどおりのこうした日々を夢と語る妹は決まって夜1人で悪夢に悩まされて涙を流した次の日だ。

私がまだ成人して間もない頃に妹と出会った日の夜にあった悪夢だろう。

 

 

「ああ、みたんだ、きのうの夜もあんたがさ、私をあの場所から連れ出したあの夜までのこと…いい加減昔にしたい感じだけどよ、見ちまうなやっぱりよ」

 

そういって、かたりとテーブルの皿にフォークを投げ出して、妹は自分の失われた片目に指を這わせる。

 

 

 

「今日は一緒に寝たほうがいいかしら」

 

私は対面に座る妹の方に身を乗りだして、彼女の頬に手を当てる。

 

 

「……別にあんたの添い寝は大丈夫だよ、私ももう16歳だし」

 

片目に這わした手を落とし、私が撫でる手に頬を少し傾け妹はそういった。

 

「まだ16歳じゃないの……それにまだ8年しか経っていないから、恥ずかしいことじゃないのよ、悪い思い出が悪い記憶に風化するのにはもう少しかかると思うわ、でもそれを恐れる必要はないしきっとこういうものはあっという間に忘れ去ってしまう方が何処か無理があるものなのだと私は思うわ」

 

「そうかぁ?」

 

「そうよ、天龍」

 

「そっか……まー夜はそんな感じによろしくお願いするとするかぁ」

 

「ふふ、今日の夜は抱きしめて一緒に寝てあげる」

 

「ああ、うん、よろしく……」

 

「ええ、私に甘えてちょうだいな、貴方に甘えられるのは大好きだから」

 

 

何の代わり映えのない、いつも通りの日課を終えるように会話を切り、そうして私たちは静かに朝食の続きを続ける。

 

妹である天龍がいつも通りに6枚は食パンを焼き足して6枚全てをダダ甘にしてむしゃむしゃと食べるのにため息をついたりもしたが。

 

 

「ごちそうさま」

 

 

「そういえば言っておくけど、お昼も我慢せず私が作った弁当だけじゃなくて学食でもコンビニでも使ってちゃんとお腹いっぱい食べなさいね、あなたの生活に関しては不自由のない額のお金を大淀さんから貰っているから気にせずね?」

 

流石に一回の食事で一万円は非常識すぎると思うが、それくらいは妹に不自由は与えられないようにと妹を引き取るにあたって私は人一人分においては莫大なすぎる額の生活費を大淀さん、世界でも有数の大企業「大本営」の会長から毎月必ず支給されている。

潤沢なほどの食費や妹の常識的な額のお小遣いとして使っているがいつも非常識なくらい余ってしまっている。

この8年で貯蓄した額は凄まじいものがあった。

 

 

一応無駄に余っていることを大淀さんには言ってはいるが気にしないで良いとのこと。

 

何故そこまでしてもらえるのかを一度説明を受けたが、未だに正直のところ私はよく理解できていない。

 

どうやら妹、そして私にはそこまでしてもらえる価値が存在しているらしい。

 

私が提督というもので天龍はその艦娘というものであるというのは教えられたが、実際その提督と艦娘というものが私たちの普段の生活になんら影響することはなかった。

 

「深海棲艦」という妹たちが戦う必要があるという存在がいるらしいのだが、天龍と同じ艦娘であり、そして最初の艦娘であるが大淀さんがこの世界に現れてからその敵とやらは50年は確認出来ていない。

 

 

私のような提督という艦娘の力を引き出す素質を持つ力をを持つ存在自体、現在私を含めて2名しかまだいないという。

 

当のその深海棲艦とやらが日本に出現するイザという日の為に私たちのような深海棲艦と唯一戦える人を支援するために昔から頑張っていたら50年の間に世界有数の大企業を作ってしまったという大淀さんも「正直のところ平和で助かります」と見た目20代の女性の容姿のそのままで可愛らしく困ったようにいうくらい日本は平和だった。

 

何事も平和が一番なので、そのままでいいと私たちは常々思っている。

時たま訓練っぽいことを大淀さんが現在確認されている艦娘たちを月に一度集めてするらしいけれど、天龍の話を聞くに、普段人には見せられない超人的な身体能力を使って海上で球技をしたりするくらいしかしていない。

 

そもそも現在、艦娘が持つというギソウという武器を使えるのは私という提督がいる妹の天龍のみであり、周囲に普段窮屈なくらい普通の女の子として非常識な身体能力必死に隠している彼女たちのストレス解消の意味でのただのレクリエーション的な運動となっている。

 

 

そんなことを思い出している私の顔を見て、ぽりぽりと頬を掻いて妹は所在なさげにしていた。

常々私は妹にもう少しわがままになれと普段から注意しているので、またそんな小言を言われそうだと思ったのだろう。

 

 

 

それをみて私は苦笑する。

 

 

「あーいや…我慢っつーか…ねぇ?」

 

 

 

大食いであることを学校のクラスメイトに指摘されていつもからかわれるているそうだ。

大食いキャラという周囲からの扱いは妹の乙女としての尊厳的にあまり気分の良いものでなく恥ずかしいらしい。

 

 

私が毎日作っている量でもダイエットなどをしていて体重を気にするお年頃の女子高生が眉を顰めるくらいでもあるし、やはり周囲からは少し異常に思われているらしい。

 

 

 

 

 

「………確かに武蔵は学食のテーブルを1人で毎回占領してるけどさぁ…なんかなぁ」

 

 

そして「あいつ、ベルが羨ましい…あいつは昼はおにぎり2つくらいで足りるらしいし、ズルいよな」と妹は文句を言う。

そういえば近所の大淀さんのマンションに住んでいていつも私服に露出が多い謎のメイド服を着ているベルファスト・大樹・ロイヤルも妹の天龍と似たような存在であったか、と思い出す。

 

 

「大樹ちゃんはそんなに食べなくても大丈夫なんだっけ?」

 

 

「ああ、ベルは武蔵や私と似てるようで全然違うらしい、武蔵が言うには知っても知らなくても意味ねぇらしいが確かベルはアズレンだとかなんとか」

 

「アズレン?」

 

「私たちはカンコレらしいぜ?よくわかんねぇけど」

 

「そうなんだ?」

 

 

「ま、殆ど私たち艦娘というやつと一緒らしい…ま、ベルだけなんか洋風だけどな」

 

 

そんなことを言う妹を見てふと私は思い立つ。

 

「そういえば那珂ちゃんたちって貴方くらい食べるのかしらね?」

 

 

「あーどうなんだろ、そういやあいつらと飯食ったこと無いな……あれ、姉さんはわかんねぇのか?姉さんは346プロで働いているんだろ?」

 

 

那珂ちゃん。

 

 

天龍やベルちゃん武蔵ちゃんとともにまだ世界に現在14人しかいないらしい特殊な体質を持つ人間であるという艦娘の1人。

 

その14人の艦娘のうちの三人で結成した3人組のアイドルユニット「三花」は全国的にも有名でありテレビをつければ一日一度は目にすることが出来るくらい人気がある。

特に那珂ちゃんはバラエティで引っ張りだこだが、たしかにご当地グルメ番組系でもそういう大食いな様子は見たことがない気がするし、346でもそういう噂は聞いたことはない。

川内ちゃんが346プロの敷地で木に忍者のようにぶら下がってるのをみるくらいで私は彼女たちをあまり目にすることがない。

 

「私は総務部だし、そんなに関わりはないわね、あの子たちのグループは凄い忙しいから…ふふ、気になるなら346に見学で顔でもだしたら?貴方前に武内さんにスカウトされているでしょ?」

 

「…アイドルってタチでもないさ私は……大淀は別になってもいいとか気軽に言うけどさ、無理だって」

 

妹は自分の左目のアイパッチに手を伸ばし擦ってそう言う。

そんなことはないと私は思っている、妹の天龍は身体能力は常人よりも遥かに優れているし、メリハリのある恵まれたスタイルと凛々しい容姿を持っている。

性格も面倒見がよく通ってる高校では武蔵ちゃんと一緒に今年の2月には学校中の全学年の女生徒からヴァレンタインチョコを山程貰って帰ってきていた。

その日の晩に家に帰ってきた私はそのチョコの量に呆然とした記憶がある。

 

「そうかしら?とっても貴方は可愛いわ、自慢の妹よ」

 

 

「うん、ありがと…」

 

頬を染めて天龍が消え入るような声で言う、本当に素直で可愛いらしい。

 

20歳の時にまるで運命のように出会った私の妹、ああ、本当ならもっと早く出会いたかったなんていつも思ってしまう。

 

 

 

そして二人で並んで朝食の皿を洗ったり片付けたりしていると「ドン」とリビングと台所の入り口の境に設けられた天井の壁に何かがぶつかる。

 

 

「痛っ…くはないが…またやってしまった……どうして毎度毎度私はこうして不注意なのだ……毎日毎日…」

 

 

そういって朝一番落ち込みながら財布を片手に寝間着である小豆色のジャージ姿で現れたのは1年前から私たちの家に大淀さんの紹介で住みはじめた子だ。

 

妹の天龍と同い年である16歳であるがびっくりするくらい背が高い子だ。

身長は優に180を超えていて確かうちの事務所に所属しているアイドルの諸星きらりちゃんよりも少し大きい筈。

彼女は「ベルファストの所にいると駄目になる」と言いながら此方に住み始めてから毎日この家の何処かに顔をどこかしらにぶつけている。

住み始めた頃はよく彼女が家の梁に顔を打ち付けるたびに怪我の心配をしたのものだが、最近は家屋の方の心配を私はし始めている。

 

彼女の名前は氷川武蔵ちゃん。

 

褐色の肌が眩しい大柄な体格と怜悧な印象を持たせるキリッとした眼鏡が似合う容姿と迫力のある言動の割にこういうドジなところが可愛らしい子だ。

 

 

 

 

 

「あら、おはよう武蔵ちゃん」

 

「おはようさん、武蔵」

 

 

「ああ、おはよう……天龍、透さん」

 

 

「今日は何処にいってきたのかしら?」

 

私は彼女の手にある可愛らしい彼女手作りの花柄の財布に目をやってそう言う。

今日も彼女は朝ごはんは外に出掛けていて今帰ってきたようだ。

 

「朝は最初に立ち食い蕎麦で胃を温めてから、サイゼリア、あと吉野家ですね」

 

武蔵ちゃんは恥ずかしげに自分の白い髪を弄りながらそういった。

 

「大変ねその体質…」

 

武蔵ちゃんは朝からパンを一斤を軽く平らげる妹の数倍は燃費が悪く、最低でも一回の食事で普通の成人女性の一日の摂取カロリーの2倍は摂らないとすぐ貧血症状のようにクラクラしてしまうらしい。

 

食事を自炊で用意するよりも外食で賄うほうが良いとこの家に住み始めた当初からこうして彼女は朝起きると外に出かけて食事に行っている。

 

一つのお店で一気に食べてしまうと無用な注目を浴びてしまうので様々なお店を梯子しているそうだ。

 

346プロにアイドルとして居ても違和感がないくらい大柄の美人さんなのできっととっくに近所の飲食店では有名になっているのだろうと思う。

 

 

 

「せっかくなんだから気にしないで朝ウチで食えばいいのになぁ…わかってんだけどよ」

 

一緒に住み始めて一年だが天龍や私は武蔵ちゃんをほんとの家族のように思っている。

 

武蔵ちゃんは何処か自分が女性であることに対して不器用で不慣れな子で、そして他人に対していつもまるで紳士の見本のような気遣いを見せる割に趣味という趣味が全て女性らしいというギャップが激しい子だ。

 

趣味という趣味が男の子らしい趣味、そして言動から周囲の同性に男前扱いされ格好良いと慕われているが実はか弱い乙女の扱いを心の其処で何処か望んでいる、そんな面倒な妹の天龍と竹を割ったような武蔵ちゃんと一緒に暮らして最初は多少の反発はあったようだったが今では天龍は武蔵ちゃんのことをまるで兄のように慕っている。

 

だから納得のいかない顔で妹は言うのだ、家族と顔を合わして食事をする、その当然の楽しみを武蔵とは一緒に朝行えないことに対して不満だと。

 

 

「毎朝すまんな、天龍。それに私のフードファイター並の大食いで二人の生活に迷惑をかけるわけにはいかないからな、それはベルファストの二の轍を踏むことになる」

 

前に一緒に住んでいたいつもメイド服の大樹ちゃん本人はメイド服そのままにメイドの如く他人に奉仕するのが至上の趣味なので気にしていないそうだが、いつも武蔵ちゃんの分の朝食と昼のお弁当を外が白んで見える前から用意していたらしい。

 

 

「そして二人におみやげだ」

 

 

そう言ってポケットから棒付き飴を2本ジャージのポケットから取り出して私たちに渡す武蔵ちゃん。

 

「あら、どうしたのかしらコレ?」

 

「朝旅行かなんかで駅近くでタクシーの当てを探している重い荷物を引きずったお婆さんが居てな、駅前のタクシー乗り場まで案内したらお礼で戴いた、いつものごとく甘いものは苦手でな、貰ってくれ」

 

「あら偉いわ武蔵ちゃん、もちろんいただくわ」

 

「相変わらず武蔵は武蔵だなぁ、いただくぜ」

 

そう、こういうのをいつもサラッと出来る良い子なのだ。

風船なんかを手にした迷子の女の子に肩車をするのがとても似合いそうというかなんというか。

 

「当然のことしかしてないが、二人に褒められるのは嬉しいな、ありがとう」

 

そう言って武蔵ちゃんは立派な胸を張って男らしく微笑む、ああ、これは通ってる学校ではかなり同性にモテるのは当然だ、私も年甲斐なくキュンキュンしてしまう。

 

「お、おう……」

 

その眩しい姿に妹は後ずさり気味。

 

彼女に比べられるクラスの男子生徒がいつも哀しいとは妹の談。

 

 

そしてしばらくうっとりと武蔵ちゃんを眺めていた私はハッとする。

 

 

「そういえばそろそろ良い時間ね、出勤の準備しなきゃ」

 

慌てて私たち姉妹が振り向いて皿洗いに復帰しようとすると「こちらは私におまかせ戴けませんか?」と声がした。

音もなく影もなく通っている高校の制服姿で白金の髪と透き通った肌、そして神々しいほど整った容姿の女の子がうちに現れた。

 

ベルファスト・大樹・ロイヤルちゃんだ。

 

 

 

「あら大樹ちゃん、居たのね…気づかなかったわ」

 

 

「気配を消して居たので気づかないのは当然かと」

 

メイドの嗜みです

 

そう言って凄絶なほどのドヤ顔を大樹ちゃんは私たちに魅せつける。

 

メイドって忍者かなにかの親戚だったのかしら?

 

「そしておはようございます、透様、そして天龍もおはようございます」

 

「えっと、おはよう大樹ちゃん」

 

 

「あーもうそんな時間か、おはようさん、ベル」

 

妹と武蔵ちゃんと大樹ちゃんは同じ高校に通っていていつも3人で通っていて、大樹ちゃんは朝の食事から武蔵ちゃんが帰ってくる頃にうちに来る。

 

どうやら帰ってきた武蔵ちゃんと一緒に来ていたらしい。

朝の挨拶を交わすとじーっと擬音がつきそうなくらい私たち二人の手元を薄い藍色の瞳で見つめている大樹ちゃん。

 

まるで散歩を「まだかな、まだかな」と尻尾をふって待ち望む豆柴のような風情。

 

そんなにも朝からいきなり人の家のお皿を洗いたがる人間はきっとこの世界に彼女以外いないだろうと思わせるくらいの期待した表情。

 

 

 

「えっと……おまかせ出来る?」

 

「はい、任せてください」

 

彼女はふんす、とに胸を張って嬉しそうに腕まくりをして当然のようにうちにおいてある自分のエプロンを着用しはじめていた。

そして鼻歌を歌いながら皿洗いをし始める大樹ちゃんを遠目にして私は出勤の準備をすることにする。

 

そんな大樹ちゃんの様子を見て、手ぬぐいで手を拭いながら天龍は言った。

 

「メイドとか自分で言うくせにいつもフリーダムだよなぁベルは…いきなり人んちにきて皿洗うか普通?あ、満足出来なくて台所掃除しはじめた」

 

皿洗いは殆ど終わりかけていたので、大樹ちゃんは台所の水垢を落としていた。

 

 

「そうね」

 

大樹ちゃんはイギリスにあるという1流のハウスキーパーを養成する学校にも通ったこともあるという憚ることなく「メイド」を自称出来る本物であるが――――変人だった。

メイドを名乗る割には人に一切遠慮しない子である。

私も天龍と同じく似たような感想をいつも彼女に抱いている。

 

「まぁ昔からそういう性癖なんだ、気にするな……断られて悲しくなって落ち込んでいる状態になられても面倒だからな」

 

大樹ちゃんは気の許した相手を見つけると兎に角メイドらしい振る舞いを他人に爆裂させる。

その被害を昔から食らっていたという武蔵ちゃんは諦め顔で言う。

昔からいつも家事をぶん取られていた被害者の慣れきった諦め顔だった。

 

武蔵ちゃんも家事などの細々としたことは嫌いじゃないので、高校から二人で暮らし始めてからは本当に大変でついには大淀さんの紹介で私たちのところに逃げてきたのである。

 

 

「ほんとにうちって武内さんの言うとおり逸材ばかりよねぇ…」

 

そんなことを思って私は頬に手を当てる。

カッコ可愛い妹の天龍。

男前な武蔵ちゃん。

神々しいほどに美しい癖にいつもメイドの大樹ちゃん。

 

あの大きな体で土下座する勢いで「村瀬さんのところの方たちを346に…」とよく武内さんに頼まれていたが、それも当然だわ、なんて思う。

私が総務部ではなくアイドル担当のプロデューサーであったらならきっと放っておけないレベルで見目麗しいし。

 

 

「……ベルファストは346に行ってもきっとアイドルの仕事をしないと思いますよ」

 

あそこはベルファストの言うお世話のしがいがありそうなメイドとして絵になるような人間が沢山いるからな、と武蔵ちゃんは言った。

 

「杏ちゃんあたりとかか?」と天龍

 

「動かないものはすぐ飽きる犬のような性癖だ、どちらかというと、ウサミンとか蘭子ちゃんとか幸子ちゃんとかだな、独特な世界観を持つ濃いキャラのアイドルは「メイドとしての本能がいつも疼きます」とこの前テレビを見ながら恍惚としていたからな」

 

「なるほどなぁ…」

 

「…なんか、大樹ちゃんはほんとに346に行かせてみたいわ」

 

「そうだな姉さん、私はいいから連れて行ったらどうだ?」

 

 

 

あまり問題児を増やさない方が武内さんの為になると思うけれど、面白そうではある。

 

 

「多分断るぞ」

 

「ん?」

 

「将来はイギリス王室に侍女として務めるのが夢、そういってイギリスに修行に行っていたのをやめて突然去年日本に帰ってきたのは、仕えるべき主を見つけたからだ、多忙なアイドルはやらないだろうな」

 

 

私たちの会話が聞こえないくらい台所掃除で夢中な彼女をリビングから見る。

 

 

「あらそうだったの?」

 

「それは初耳だ…マジか?」

 

「本気だ、提督…いやベルファストの場合は指揮官か、去年の春、私の高校入学を祝う為に日本に帰省していたときに偶然見つけたらしい」

 

「聞いたことなかったわ、どなたなの?」

 

「ああ、私たちの高校にいる…ぼっちな感じの子だ」

 

「ぼっち…」

 

「ぼっちってなんだ武蔵、どんなヤツだそいつは?」

 

「ぼっちとは友達が全くいない人のことだ、確か名前は比企谷とかいう男子だ…その彼がいるクラスに中休みで確認しにいったその時は机に突っ伏して寝てたな彼は」

 

ああ、クラスに1人はいるそういうタイプの。

 

「ふーん、ああそういうヤツね……つうかソイツ男かよ、危なくねぇ?」

 

大樹ちゃんはどこからどう見ても絶世の美女である。

 

彼女が謎の首輪付きのメイド服で外を歩くと周囲が妖精かなにか見つけたような不思議なものをみたという顔するくらい彼女は神々しいレベルの美人だ。

イギリス王室に仕えるメイドです、なんて言っても誰もが納得する。

 

 

彼女は真実、人に尽くすために生きている、下手をすると尽くした他人を駄目にしてしまうくらいのレベルであり彼女を使役出来るのはそれなりの大きな心の器がきっと必要だ。

 

普通の男性では彼女に「ご主人様」と呼ばれて仕えられたものなら大変なことになるのは目に見えている。

 

そんな彼女にとっての「命を賭けて仕える真の主」がその…友達がいないような机に突っ伏して寝ているタイプの男の子?

決めつけてはいけないけれど、相性的にばっちりすぎるというか悪すぎるというか。

 

 

 

「それに比企谷なんて、なんか暗そうな名前だな、つかなんであいつ私に黙ってんだよ…まさか」

 

私の不安も代弁して妹が不安げな表情でそう言う。

 

「ベルファストがそのご主人様にすぐえっちなこととか要求されて泣いてそう、とか思ったか?…安心しろ、どちらかというと彼にとってベルファストの方が有害だろうなきっとアレは…見つけて1年経っているがベルファストが殆どストーカーだアレは」

 

 

「は?」

 

 

「いやぁ、ベルファストがヘタレぽんこつ過ぎて面白いぞ、くくっあれはまさしく恋する片思いの女の子みたいでな…ははっ」

 

 

 

そういって武蔵ちゃんは笑う。

 

私はほっとした。

 

どうやら、私の悪い方向の想像とは違ってなんだか面白いことになっているそうだ。

 

 

 

「…それは一体…ああ、そろそろホントにいく時間だわ…帰ったらまた話の途中を聞かせて」

 

「ええ、ほら天龍、私たちも制服に着替えよう」

 

「ちっ、あとで聞かせろよな武蔵」

 

「ああ、教えてやるから、とりあえず私の話を聞く前にその男子のところに殴り込みに行くのはやめておけよ天龍」

 

 

「なんでだよ?」

 

「いや、それは本当に可哀想だからな」

 

 

一体どんな子なのかしら、その比企谷くんって。

 

私たちは話を切り上げて各自めいめい自室に向かっていく。

ちなみに大樹ちゃんがついにはやることがなくなってとにかくコップをピカピカにしようと磨き始めていた。

 

 

「そういえば、お前の提督の話も聞かせろ」

 

「ん?」

 

「あんま教えてくんねぇじゃん」

 

「私は仕えるとかそういうタイプじゃないからあんまり積極的でもないし、彼女の迷惑になりそうなのでそんなに絡まないので、つまらんが……まぁいいか」

 

「うちの高校で一番頭が良いあの女子なのは知ってるぜ」

 

「ああ、その頭の良い雪ノ下さんだ、そうか…もう2年の春か…ふ、今年は面白い一年になりそうだぞ天龍」

 

「どういうこったよそれは」

 

二人は2階の自室に階段で上がりながらそんなことを話していた。

 

それを見届け、あいも変わらず彼女たち「艦娘」は不思議よね、と私は思う。

 

あと「私、武蔵ちゃんの提督さんのこと聞いてないのだけれど、初耳なんだけれど」と疎外感を朝からいきなり味あわされた。

 

武蔵ちゃんの提督さんの話も仕事から帰ってきたあと私は問い詰めようと思う。

 

 

 

 

 

続く?

 

 

 




解説とあとがき



解説


世界観ベース 俺ガイル、らき☆すた、アイマス、デレマスとか平和系

サブカルチャーは若干リアルとは違い、艦これとかアズレンが配信されていない世界。



深海棲艦の規模 お話のエッセンス程度であんまり深刻にしない予定。
アズレン勢の敵は出す予定はない。



現在の艦これ勢 


氷川武蔵 TS転生者、格好つけのヘタレ。


村瀬天龍 転生者じゃない、過去が重い。
 
大淀  転生者。

那珂ちゃん 転生者ではない、346プロのみんなの全国区のアイドル。


村瀬透 天龍の提督 


アズレン勢  


主人公 

ベルファスト・大樹・ロイヤル

TS転生者、愛読書は「英国メイド マーガレットの回想」というメイド好き。


一番好きなメイドは終わクロのSf




俺ガイル勢

比企谷八幡 ベルファストの指揮官。

雪ノ下雪乃 武蔵の提督。



デレステ勢

武内P 那珂ちゃんの提督




(予定)



らき☆すた勢


泉こなた 転生者の艦これ勢の提督予定




あとがき



作者の性癖をぶちまけるお話になると思います。
ぜひ付き合って頂きたい(オリジナル笑顔)


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