幕間1
登校中、大中小で異様なほど見目麗しく並んでいる三人は様々な好奇の視線を受けながらも千葉県立の高校である総武高校に無事到着。
HRは8時35分、着いたのはその10分前程度であった。
「結構今日はギリギリのようですね、誰もいないです」
「お前がいきなり家の玄関前の庭掃除を始めたせいだな」
「そうですね、すいません」
「別にまだ間に合うからいいが」
「だな、逆にうるさくなくていい感じだから気にすんな」
「では気にしません」
「でもいきなり人んちの玄関の庭先を掃除をする自由勝手さは気にしろよな?」
学校の玄関前は進学校らしく余裕を持ってある程度の生徒はもう自分の学年の教室の廊下で喋っているくらいのもので、生徒の教室がない1階は静かなものであった。
女生徒に毎朝登校の度にベタつかれるタイプのモテかたをしている天龍などは本当に気分が良さそうに静かな玄関を見回していた。
「今度、努力してみます――――あら、今日は掲示板に面白いものがありますね」
絶対しないな、その努力、と二人は思った。
そして二人はベルファストが言う面白いものを見た。
三人が外靴から学校指定の上靴に履き替えて校内に入ると、すぐ正面にある、普段は学校生活における訓令などの張り紙がいつも張り出されている掲示板に白い台紙、そして全学年の生徒の写真が沢山散りばめられていた。
「お、この前のうちのクラスのレクでやった花見の写真も張り出されてるじゃんか…ってベルなにやってんだ?」
それにベルファストは近寄って黒いマジックペンで何かしらを書き始めた。
「ああ、その壁にぶら下がってる黒マジックで買いたい写真の下の余白の所に学年とクラスと名前と枚数書けばその写真買えんのか、私もなんか買うかなぁ」
「毎度の新聞部の部費稼ぎだな、今年の春の行事の写真ばっかりだが、去年のもだいぶあるな」
「はい、そのようです…とりあえず武蔵と天龍が写っている写真はいくつか買おうと思います」
「お、じゃあ私も二人の写真を買うぜ、三人で写ってるやつとかあれば良いんだけど、さてどれにすっかなー」
「私もいくつか買わせて貰おうか…っておい、ベルファスト――――なにしてる?」
そんな風に仲良し三人組をやっていると、武蔵がベルファスト・大樹・ロイヤルが不穏な行為に走っていることに気付いた。
「とりあえず下の余白に私の名前を書いて購入枚数を記入しました、この写真は5枚買ったので分かり易く漢字の「正」の字で記入しただけですが――それがどうかしましたか?武蔵」
武蔵は見た。
春にクラスの学級会で企画して行ったお花見の時の写真。
その写真の一つである短パン姿の武蔵の写真にベルファストが悪戯書きをしたのを、それも酷く悪質な。
同人誌でよくあるやつ。
写真に写る武蔵の眩しい褐色肌の内太腿に描かれたそれは――確かに「正」の字である。
武蔵は酷く目眩を感じた。
そして怒鳴る。
「しかも私が笑顔でダブルピースしている写真だぞこれ!?馬鹿か貴様!?」
「こうするとどんな写真も―――――フフフ、間違って写真の方に正の字書いてしまいました、申し訳ないです」
即、手でその正の字を消そうとした武蔵だが、依然としてその正の字が消えない。
「や め ろ……おいこれ油性!?なにしているんだ!ベルファストぉ!!貴様ぁ!」
「我ながら完成度の高い作品に仕上がりましたね、この周囲の女子に無理に頼まれて仕方なくやっているダブルピースで引きつり笑いな武蔵の表情ととてもマッチしていて―――これは意味がわかる人からするとホントに洒落にならないですね」
「くっそ!意味わかる自分が悔しくて恥ずかしい!」
「………なにいきなり怒ってるんだ武蔵は?ベルの書き間違いくらいで、変な写真でもねーだろ?なんかそういう歳でもないけど「歳考えろ」とか武蔵に言いたくなるような写真だけど」
「天龍まで!?」
純粋で無知な天龍に落書きの意味がわからなくても、武蔵のダブルピースが超絶似合わないことについて指摘され武蔵はダメージを受けた。
むしろ落書きよりもそっちのほうがダメージがデカかったようで少し武蔵はふらついた。
「さぁ、それよりもそろそろHRの時間ですね、続きは後にして教室に入りましょうか」
良い仕事しました、と微笑みながらベルファストは二人を急かす。
まるでその微笑みはシンデレラに登場する意地悪な継母のようだった。
「あーもうあんまり時間ねぇか、あとで見てみっかなぁ」と天龍。
「じゃあ昼休みにゆっくりみんなでみましょうか」もうすでになかったことにするベルファスト。
二人は歩き始め、その場に1人残った武蔵が低い声で言った。
「まて、ベルファスト…昼休みまでそのままこれを晒し物にして行く気か?」
「はい?――――ええ、もちろん」
「……いつも思うがベルファスト、お前は私の平和な日常や常識に文句があるのか?―――――その喧嘩買うぞ?」
流石に無人の荒野を征くがごとくなベルファストの暴虐無道に対し、武蔵は拳を握って震えていた。
「対抗して私のに書いてもいいですよ?紳士な貴方にそれが出来るのなら」
「貴様ぁ!」
武蔵が2度目の人生である誓いを立てて生きていることを逆手に取ってベルファストが煽る、煽る。
「何が悪いのかよくわかんねぇけど、ああ、ベルがまた思い出したようにいきなり武蔵に喧嘩売ってんのか…なんでたまにベルは武蔵に喧嘩をいきなり売るんだ?普段は仲良いだろお前ら」
突然険悪な雰囲気を出した二人に最初は混乱した天龍だったが、いつものことか、と思い直して、ふと思った疑問を口に出す。
「ああ、天龍には話したことがなかったですね、10年前、私が生まれて間もないころ海の上で3日間は独り彷徨っていた時のことです。」
それはベルファストがベルファストとして産まれた日のこと。
突然、小さな女性の体で太平洋のど真ん中に放り出されたベルファストは、いきなり遭難した。
一応海上の上を滑るように移動は出来る謎の力が彼女にはあったので必死に陸を探して彷徨った。
朝昼は太陽を使って、夜は北極星を頼りに…とか思っていたが、果たして自分のいる場所が南半球かそれとも北半球かどちらかを判断する知識がなかったので、相当不安なまま、そこまで熱くないから北半球とか思いながらいつか陸地に着くことを信じて3日間飲まず食わずで海の上を滑り続けた。
ちなみに北半球と南半球の簡単な見分け方は夜に南十字星か北極星のどちらかを確認すること。
しかし、彼女は前世では北半球以外に行ったことがなかったのでそもそも南十字星なんてわかるはずもない。
実は北半球だったのだが、色々混乱していて星空で北極星の見分けすらつけられないまま彷徨た。
所詮、いきなり大海原に1人放り出されれば人間そんなもんである。
しかし、そんな存在をいち早くキャッチした存在が居たのは彼女にとって幸運だっただろう、それでも3日で遭難が終わったのだ。
まぁ常人だったら72時間の遭難はたいてい死んじゃうがそれでも常人ではない超常の存在として、イギリスの軽巡洋艦の擬人化の生を再び受けた彼女にとって、迷子が精神的な苦痛なだけで肉体的にはその倍の日数でも肉体はびくともしなかっただろう。
そんな彼女にある不幸が起きた。
「武蔵はですね―――海上を彷徨っていた7、6歳くらいのベルファストの幼年体である私を見つけるなり、奇声を上げながらいきなりドロップキックを私の胸部に食らわせその一撃でぐったりと倒れた私のマウントをそのまま取ってとてもイイ顔で「先手必勝!くたばれっ!もしくは死ねっ!」などと言いながら全力でマウンテン・ゴリラみたいな怪力で無抵抗の私の顔をいきなり殴ってきたんです、それはもう私はマジ泣きしながらの命乞いをさせられましたね」
ある女性が作った日本の秘密組織が発見したとある一枚の海上を写した衛星写真。
それは海を彷徨い1人海上を疾走していた存在。
なんの痕跡もなく突如海上に現れた幼き日のベルファストの画像である。
そしてとある艦娘に詳しい情報通の助言によって、その一枚の写真は強大な力を持つという「人型の深海棲艦」の一枚だと大淀に伝えられた。
大淀は「初の深海棲艦との戦いが…ボスクラス…これは大変ですね、速攻での敵艦の破壊…それが肝…この先の人類の興亡がこの手に……っ」とかなったとかならなかったとか。
この戦いが発端で艦娘が揃わないうちに深海棲艦が一気に現れたりして海上封鎖によって日本が崩壊するのを恐れた。
霧の艦隊これくしょんが始まってしまうと思ったのだ。
それは盛大な勘違いであった。
なぜそんな勘違いが起きたのか。
そもそも現在でも艦娘が世界に14人しかいないし、そもそも彼女たちを使役するべき提督すら10年前は確認されてなかった。
そんな中ベルファストはこの世界における初のドロップ艦であったのだ。
この世界で現在確認されている14人の艦娘とは違うイレギュラーとして彼女は現れた。
どうして彼女が産まれたのか、その理由は誰も知らないが、ベルファスト・大樹・ロイヤルは女性の肚を介さず、海の上に突然ぽつりと孤独に産まれ落ちてきたのだ。彼女はPCでプレイするブラウザゲーの艦隊これくしょんとは全く別のスマホゲーであるアズール・レーン出典の存在であった彼女を自分たちの同類であり、そして味方である存在であるとは誰も思わなかった。
とある秘密組織のリーダーである女性は「私たちは人間として生まれて、ある日後天的に艦娘として覚醒する、それがこの世界の理なんだ」なんて思っていたそうだ。
実例がないので―――というやつだ。
艦娘が通常兵器が通用しないとされる深海棲艦と戦うための艦娘という種が持つ固有武装である「艤装」の展開すら誰もまだ実証したことがなかったくらいなのだ。
そんな手探り以下の状態で深海棲艦の人型だと思われる存在が日本領海付近の太平洋での確認されたのだ。
前世の知識を持つ艦娘たちは戦々恐々とし、転生者ではない他の艦娘の殆どは10年前はただの無垢な幼児ばかりであった。
故に犠牲の覚悟――――何が敵に効くかわかりもしないまま玉砕覚悟で誰かが戦うしかなかったのだ。
組織の長である大淀は絶対に戦ってはいけない、彼女が居なくなれば、次に生まれてくる艦娘を保護できる力、社会に対して権力を持つ人間がいなくなり、新しく産まれてきた艦娘たちが幼いうちに化け物扱いされたまま惨めな人生を歩まされる事例が増える、それだけはできなかった。
もし世間に自分たち艦娘の存在が認知され広まるくらい戦いが激化すれば人権すら危ういかもしれないのだ。
日本における上位の権力者である大淀はこの世界の艦娘の柱。
故に戦力外として数えられていた。
彼女以外、その時、唯一まともに深海棲艦と渡り合えるくらいの勇気と戦えるほどの強さがあったのはほぼ2名だけだった。
唯一の希望にして最後の希望。
武蔵坊弁慶のごとく2年に渡る妊娠期間で産まれてきたことによって怪物扱いされ、施設に赤ん坊のまま捨てられ、その後とある組織にすぐ拾われ艦娘としての戦闘訓練を自らの意志で受けながら育った存在、そして元からある程度の知識、いや前世持ちで一番オタク知識が豊富であったTS転生者である氷川武蔵。
当時7歳。
その時すでに人外的な怪力を彼女は使いこなせていた。
その彼女がただの無意味な死だが後の道となるだろう重要な戦いの一番槍として志願し、まだ7歳の女児の小さな体で命がけの特攻を行ったという。
「まじか、いきなりほっぽうちゃん相手に本気でステゴロか……だけど私くらいしか戦えそうなのいないからしょうがないか…とりあえず関節技とかで頑張るか」とか思いながらの武装なしでの世界初の艦娘の初陣、しかも相手はいきなり人型深海棲艦という無理難題にチャレンジしたのだった。
遅れて2番めの犠牲者として志願したのは艦隊これくしょんの知識がないTS転生者だった。
産んでくれた両親に普通の女性として運良く育てられそのまま成人し、その後、偶然艦娘としての力を覚醒させ、発見されたばかりの軽空母、鳳翔。
彼女は大した力を持たないまま、自らの危険と死を覚悟しつつもそれでも武蔵の後に続いた。
この戦いでの彼女の役目は武蔵の犠牲を前提とした情報収集に徹したものなる筈だったという。
「……そんなことしたのか…武蔵が?あと幼年体とかドラゴンボールのセルかお前」
哀しい、そう悲しい事故だった。
死を覚悟し、その戦いで自らの命を燃焼させた尽くそうとする武蔵からのゴリラの雄叫びのような絶叫と共に繰り出される鮮やかなプロレス技の連撃がベルファストに容赦なく決まっていったという。
その連撃の途中の激痛でベルファストは意識を失い、そのまま全身の関節という関節を武蔵に決められていった。
そして最後、武蔵に「とどめだ、首を折ってやる、死ね!ほっぽう!」とか言われて少し意識を取り戻したベルファストの「ほっぽうって誰だよ!?嫌だもう死にたくない!誰か助けて!」という最後の命乞いにやっと誤解かなにかかもしれないと思った鳳翔が助けに向かったそうである。
「それは置いといて、で、そのままチョーク・スリーパーで私の息の根を止めようとした武蔵をやっとこさ鳳翔さんが慌てて止めてくれたんですが、其の頃には意識が殆どなかったです」
「武蔵が引きつり笑顔のまま必殺の勢いで5回くらい私の顔を踏んだり殴ったりしてたのと、腕ひしぎ十字固めとかで私の右腕を持っていってたのはよく覚えてますが、あれは――――ほんとに死ぬかと思いました」
「私らの中で一番大人っぽい武蔵も10年前は子供らしくやんちゃに凶悪なヒールみたいなことしてた時代があったんだな…で、その後どうなったんだ?」
「それ以降ですね、私はこのような写真みたいに笑ってる武蔵の顔を見るたびに、こう、なんというかですね、黒い、そうドス黒い憎しみが武蔵に対して湧くんですよ……事故だったのはわかってますけれどもね……?」
「それって事故だったのか?というか可愛い喧嘩だろ?死ぬかと思ったつっても」
「本気の殺し合いだった、あと1分、鳳翔さんのストップが遅かったらベルファストは今、この世に居なかっただろうな」
「は?」
「フレンドリー・ファイア的な事故ですね――――頭蓋骨の亀裂骨折3箇所、鼻骨の陥没骨折、肋骨の亀裂骨折13箇所に完全骨折6箇所、右腕の靭帯損傷や脱臼、両足の粉砕骨折、全て合わせて常人なら全治14ヶ月の大事故でした」
「武蔵は7歳からパワーが凄かったのか……生き地獄だな…それ……お前も産まれで案外苦労してたんだな、海からいきなり7歳児が生えてきたとか意味わかんねぇけどさ」
「まぁ怪我自体はすぐに完治しましたけれど、しばらくは人格が変わるくらいのゴリラ・ゴリラ・武蔵恐怖症で誰も居ない部屋の隅で静かに泣きながらなんかブツブツ言いながら震えていた記憶があります」
「そもそもだけど生まれてすぐに最初から人格あったのか?最初からそんなんなのお前?」
「わかりやすく言うと昆布みたいなものですから私は、ほら、昆布はいくら芽が小さくても昆布は最初から昆布でしょう?昆布を人がどう名付けようと昆布は昆布のまま良い出汁がとれるんです、それが日高昆布でも利尻昆布でも…」
「いや意味わかんねぇから」
「そこは素直にシェイクスピアを引用しておけ…しかし……あれはホントすまんかった……敵だと思ったんだ……まさかドロップ艦がこの世にいるとは思わなかったし、小さいお前のことをほっぽうちゃんだと思って勘違いしたんだ――――本当にすまなかった」
「いきなり修羅道地獄にドロップしたかと思いましたよあれは、ということでその時の思い出し嗤いの復讐の為に写真はこのままで――――「いや駄目だ」
「駄目だ、と?生後3日の私に殺害目的のフレンドリーファイアかましておきながらそれを土下座くらいで許してあげた慈悲深い私に…こんな可愛い小さな復讐くらいいいでしょうに、それが駄目だと?」
「勘弁してくれ………そしてこれは可愛くもないし小さくもないから……これが分かる人には悪質で洒落にならんから、勘弁してくれ」
「ふふ、冗談ですよ、冗談」
「………そういう冗談、毎年三回はかましてくるなお前…お前の衛星写真を最初に見た時に勘違いしてお前を間違いなくこれはほっぽうちゃんだと大淀さんに伝えた私が全部悪いんだが……一生これ続くのか?」
「さて、どうでしょう?」
「なんだ、ただのいつものじゃれあいか、びっくりさせんなよなぁ…そういえば私はこのゲームを人から借りてたんだが、朝イチで返す約束してたんだ、それ返しに別学年寄るから先に走って行くぜ?」
天龍が人から借りた3DSを鞄から取出してスカートのポケットに入れ替えていた。
すぐに渡せるようにそうしたのだろう、ちらりと見えた本体に差さっていたゲームソフトはどうぶつの森。
どうぶつの森って人から借りてやるようなプレイ時間で返せるのだろうか?
そんなことを何のゲームか気にしてみていた武蔵は思った。
「ええ、私たちは仲直りしつつゆっくりクラスに向かいますよ…では後ほど…」
しかし人から勝手に借りて1時間くらい人の村を荒廃させてから「面白かった」と返却する奴も横にいたので楽しみ方は色々か、と武蔵は納得した。
天龍は釣りとかミニゲームだけをやるために人に借りたのだろう、きっと。
「また喧嘩すんなよー?」
ダッと駆け出す前に天龍が2人に振り向いて言う。
ふわりと優しく流れる様に横に舞ったスカートに武蔵は目が奪われたまま返事をする。
「ああ」
「ちなみにどこの誰からゲーム借りてたんですか?」
「一年の男子!じゃあまたあとでなー!」
そう言って走り去った天龍を見送ってふたりはしばし黙り込む。
「………」
「………」
「天龍はほんと可愛いな……気さくで飾らない美少女だ、ああいう子と一緒に過ごすだけの学校生活が夢だった」
「わ か り ま す」
「というか高校に入学して一ヶ月ばかりの異性の下級生からゲームをゲーム機ごと借りれる天龍のコミュ力凄いな、しかも新作ソフト付きだぞ?新作のソフトなんてバイトの許可もまだな普通の高校生の小遣いだとギリギリ年2、3本買えるかどうかなものなのだがな……」
しかも最近新しく発売したどうぶつの森。
人にそう簡単に貸せるものでもない気がするし、武蔵は最近ベルファストに勝手に借りられて後悔したばかりだった。
しかし、天龍みたいなフレンドリーで可愛い先輩がいたらそんなゲームソフトくらい気にせず本体ごといくらでも貸すだろうな、私も、と武蔵は言った。
「貸した男子生徒は天龍が間違って作ったアイテムとか見つけてそれを後生大事にしたりするんでしょうね」
「あり得る、私ならほっこりとしながロック掛けたりもする」
「私たちが雌に生まれてなければ、そもそも一生関わりなさそうなレベルですけれども…なんというか眩しすぎてみれない太陽、学園物の正統派ヒロインですね」
ポカリスエットのCMに出演したらyoutubeで再生数世界一獲れますよ天龍なら、とベルファスト。
二人にとって天龍とはお姫様である、一緒の学校生活を送ってまだ一年だが、それだけでも生まれ変わって初めて学生として復帰した価値はあったと思えるくらいだ。
様々な権力と泣き落しで天龍とは高校生活の3年間クラスは常に一緒になるようにとり計らって貰ってもいる。
「雌って……ちなみにお前は学園モノの伝奇小説に登場する異能の力を持つ猟奇殺人鬼とかそっち系だ、ジョジョだと女でもボッコボコにされるタイプの」
「そういう貴方は男臭い少年漫画に登場する学園四天王の1人って感じですよね、終盤はダイ大のクロコダイン扱いの」
「は?」
「あ?」
こうして二人がこうして仲良くバカ話もするようになったのも天龍が二人の間に入ってからだ、それまでお互いに別々な目標を立てて訓練や勉強などを課して鍛え続けるだけの人生だった。
「やめましょう、天龍に言われたばかりです」
「そうだな――――で、これが卑猥に見える人間が卑猥な、そんな文字が油性のマジックで書かれたこれをどうするんだ?ウェットティッシュで拭っても落ちないぞ、流石にこんなくだらないことでの盗みはやりたくないんだが」
「なんか今、凄いこと言われたような気がしましたが――――どうしましょうか?これ、一部分だけ破りますか?それはそれでちょっとした悪戯になりますが」
「…そのままにしたらしたで悪質な悪戯や虐め問題とかで今日は職員会議不可避だが?」
「ありえます、すみません……衝動的にワザとこんなことして、大体昔の武蔵のせいですが」
「過去の私のせいだが衝動的にこんなワザとが出来るお前は本当に凄いな……だがもしかしたら最初に問題提起をした教師が社会的に死亡するかもしれない汎ゆるモノ全てを切り裂くという伝説の諸刃の剣として放置される可能性もあるぞこれは」
そもそもだが、こんな同人誌的な悪戯の意味に気づく教師がいるのだろうか?
というか、生徒内で噂になって問題提起されたとして、問題を教師に伝える時点でその意味を知っている変態扱いは免れないだろうな、と武蔵は言う。
「じゃあ勇者がいつかこの剣を引き抜くまで放置で……実際抜く時『いいのかい、それを抜けば君は社会的に人ではなくなってしまうよ?それでも抜くというのかい?』みたいなこと言われたアーサー王の気持ちで抜くんでしょうか?この魔剣を抜く教師は」
「『生徒たちの顔が見えたんだ…幸せそうな……』っておい、こんなことやってる間にいい加減にしないとHRが始まってしまうぞ、なんとかしろ。あとFGOもやってたのかお前」
「それなら、こうして文字の上からさらにマジックで黒く塗りつぶせばいいんですよ、塗りつぶせば…あら、不思議、松崎しげるを黒く塗りつぶしても全くわからないように武蔵も一緒のようですね、これで問題ないです」
「私の肌が松崎しげるくらいとか言われるとなんか腹立つが、たしかにそこまで目立たないな、印刷ミスみたいな感じだ……それにしてもこの写真の全体比率的に見た目だけは良いお前は当然として、あとは天龍の写真が少し多いな」
「私たち3人の中で一番人気ありますからね、天龍は……しかしながら、いまのような性的な目的で購入している生徒も中にはいると思うのですけれど良いのでしょうか?新聞部も汚い稼ぎ方をしますね、武蔵のこれとか、ちょっとそういう感じで売上げが良さそうでは?」
「いつ撮られたコレ……学年とクラスと名前書く必要あるから、大丈夫なんじゃないか?後日教室での配布と直払いだろうし、元々これはデータ的な流出防止の意味での現物購入だろう?」
「なるほど…主に女子の写真は女子しか名前を書いてませんね、流石にそういう目的で堂々と買う勇者は居ませんか、しかし裏では高値で売ってたりとかしてそうですね―――――あ、ありました」
「なにがだ?」
「流石私のご主人様です、写真写りも影が薄くて素晴らしいです買わなきゃえっと保存用に4枚くらいいや10枚くらい「お ち つ け」
とある少年の写真を見つけベルファストは恍惚のパトスを溢れさせた。
「ちょっと興奮してしまいました、しかしほんとに素晴らしい一枚です、素晴らしい、初めて見つけた時に死にかけていた時レベルで眼が死んでて良いですこれ」
「………お前の素晴らしさの意味が理解できんが……どちらかというとメインで写ってる戸塚くんを目的に写真を買ったと思われてそういう趣味だと噂になるぞ、お前の同人誌的に」
「同人誌とは……?コミケでメイドの学術系同人誌は買ったことありますけど…一体、私の同人誌的なのとは?メイド好きがなんかするんですか?森薫先生が行くメイド喫茶レポの同人誌かなにか?」
「相変わらずなんか偏ってるな……アズレンのエロ同人誌でのベルファストはなんかショタばっかり食い散らかしているんだ」
「ああ、そういう…筆おろし系ですか、メイド物の王道ですね……ならそうですね、家庭科部の部長として新聞部の裏取引がないか強制監査を実施してデータごと手に入れたほうが手っ取り早いですか」
「家庭科部の部長にそんな権限ないだろう、どんな家庭科部だそれは、家庭板的な家庭科部なのか?私も一応この学校の家庭科部の副部長だけどそんな暗部があるとは知らなかった」
「言ってみただけです、なんにも権限ありませんけど、新聞部の部員の子に声でも一つかけて、そういう問題の被害の防止策を練るのを手伝う体で上手くデータを貰ってきますよ、つまりお金の節約にもなるので家庭科部的には正しいのでは?」
「お前はほんといつもいい空気吸ってる感凄まじいな…まぁいい、とりあえず教室にいくぞ、あと2分くらいで先生が来る、一応3年間、無遅刻無欠席目指しているんだ私は、まぁまだ、ゆっくり歩いても間に合うな」
自分の手首にあるベビーGを見ながら武蔵はそう言った。
「途中で編入の私も皆勤賞行けるのでしょうか?ちょっと私も欲しいですね、それにしてもなんかこういう先生が教室に来る前のギリギリに自分のクラスに向かうって、なんか懐かしいですね…そして新鮮です」
「ああ、そうだな…こういう平和がずっと続けば良いな…」
「ええ」
なんだかしんみりしつつ、ゆっくりと二人は自分の教室に向かった。
そして
「あー遅刻だぞ、お前ら仲良く……とりあえず自分の席に座りなさい」
「え」
「あ、すまんベルファスト、私の時計、普段から少し遅くしてたわ……皆勤賞終わったな…これ――すまん」
「このドジ!」
続く。
グラブルちゃんねるが衝撃すぎて何もいえねぇ。