お前がベルファストになるんだよぉ!   作:みさりつ

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まぁたクロス先増やして……と言われますねコレ、と思いつつクロス先を増やす。
基本は優しい世界なので設定とか気にしないでください。


幕間2 

「では、ばっつげぇえむの時間で御座いますお二方よろしいですね?」

 

「げ、流れたかと思ったが、忘れてなかったか……」

 

天龍は折角格好つけたばかりなのに、格好悪い罰ゲームでもさせられるのだろうかと戦々恐々とした。

さっきの話はこれっきりでバイバイだが、罰ゲームはさよなら出来なかったようだ。

 

「同じく…忘れてたわ」

 

この出会いも、もう少しで終わるのであろうか、なんてことを八幡は思っていたばかりだ。

既にもう少しで4時限の体育は終わりかけでこのまま片付けを終えてちょっと集合してからお昼休みに突入、いつもどおりの屋上での食事の時間だ。

しかし、そういえば、ベルファストさんは自分の予定を聞いていた。

そう思い出してどんな罰ゲームが武蔵と天龍に降りかかるだけは少し八幡は気になっていた。

 

神秘的な白銀の美少女ベルファスト・大樹・ロイヤルは薄藍色の瞳で茶目っ気を出しながら言う。

 

「折角ですし、これも人の縁です、新しいご友人である比企谷様と親睦を深める為にも今日の放課後、惨めな敗北者お二人には罰としてカラオケを私たちに奢るというのはどうでしょうか?」

 

既になんか友人になっていたらしい、と八幡は驚く、しかし「そうなの?」なんてことは天龍の手前、言えない。

八幡がそんなことを言えば、絶対に天龍たちは当然だと言うに決まっているのだ。

八幡もこの3人を既にそういう人間たちだと感じていたし、なんだかとても自然だった。

 

もしかして友人についてよく言われているが、八幡が実感したことがない、あれなのだろうか。

 

「友達とは気がつかないうちにもう友達になっている」というやつなのだろうか、そんな風に八幡は思った。

 

「お、いいね、それはいいな、そんくらいなら全然だな……お前、ベルファストなのか?」

 

「……あとで問い詰めますからね、天龍」

 

「フフフ、次はカラオケの点数で競うか?」

 

「よいですよ、ふふ」

 

武蔵はなんというか、逃さない、逃げられないようにし続ける、そんな狩人の心意気を武蔵はベルファストから罰ゲームの内容で感じ取った。

カラオケとは拘束時間が長く、そして安価で飲み放題のドリンクもついたり時にはアイスが食べれたり、互いを知らない男女でも会話が続かなかったとしても気にせず盛り上がりながら楽しめる遊びである。

 

天龍に先程のようなことをさせてしまってから、完全にベルファストの覚悟は決まっていたようだ。

かつて、古来マタギたちは獣の足跡を見つけるとその足跡に自らの矢を打ち込むことで、獲物が自分から逃走しないようにと、そんな呪を用いたという。

ベルファストは狩人ではない、しかしメイドであった、ならば一度見つけたご主人様の足跡でも見つけたものならば自分から離れることが出来ないような心地よい時間を彼に提供し続ける呪を用い続けるのだろう。

 

まさか、お持ち帰りまで視野に?

 

と思ったが、所詮人の恋愛なので、もう気にするのはやめよう、と武蔵は思った。

 

「カラオケか」

 

そして武蔵も満更でもない顔をする。

折角生まれ変わって女性の声を手に入れたので、カラオケに行けるようになった年齢からアニソンを歌いまくっていた時期が武蔵にはあったのだ。

Kalafinaやangelaを女性の声で上手に歌うのはオタクの夢である。

女性としてTS転生して嬉しかったのは一番これだと言い切るくらいにはそれなりにカラオケは趣味といえる趣味だった。

ちなみに一番の彼女の趣味は裁縫である、転生してからというもの何故か妙に好きになってしまったという。

医学的に証明されてはいないが、過去男性が病気で女性の心臓を移植手術されてから、家庭的な趣味に走る例は世界中でいくつか散見して報告されているらしい、武蔵自身もそういうものだと思っている。

武蔵は「人は片手を失えば、片手を失った人間らしく生きるしかない」などと女性に生まれ変わったことについてそれと同じような気分で受け入れて今の性別に付き合っているそうだ。

 

「カラオケかぁ…そういや最近いってないな」

 

「比企谷様、実は私の趣味は1人カラオケなんですよ?」

 

彼が寂しいことを言いそうだと思ったのかは知らないが、ベルファストは機先を制するかのようにそう言う。

そして案外俗な趣味を持っていると知らせることで親近感を彼に持たせようとしているようだ。

実はベルファストは三人の中で一番男性に人気があるが、あまり異性に積極的には話しかけられない、あまりにもな欧州系の美少女姿に日本人男性は気後れして話しかけるにはかなりの勇気が必要であることは本人もよく知っていた、日本ではナンパも1人ではされたことはない、欧州ではひっきりなしであったというのに。

なので眼の前のシャイな日本人男性そのままな彼にはこちらからグイグイ行くしか無いのだ、まるでスッポンのような心意気を持たなければならないことについてベルファストは理解して実践する。

 

自分ながら、これが肉食系であるのか、と思いながら。

 

そしてベルファストも、もし次は生まれ変わって女性になったとしたら女性の声でカラオケで歌ってみたかったと武蔵のように同じく思っていたらしい。

彼女にとって、家事などは最早「生き様」なので趣味らしい趣味はこのカラオケと自分を使ったメイド服の着せ替え人形である。

そしてカラオケではジョイサウンドやサイバーダムの会員になっており、1人でカラオケにいっては自分の歌う姿を録画してみたりしてよく遊んでいる。

 

 

そう、武蔵が考えている通り、そして尚且、自身の最大の見せ場を罰ゲームにしたのである。

 

「そうなのか、以外だ…ベルファストさんはどういうジャンルを歌うんだ?」

 

「演歌、ポップス、洋楽、童歌、アニソン、様々ですよ、なんでもござれです」

 

へぇ、という八幡。

本当になんでもござれで、後に八幡は驚くことになる。

他人に歌われる前に先に初手でいきなりアニメデジモンの名曲「Butter-Fly」を歌うタイプであることに。

 

 

「ああ、ベルは歌上手いぜ、しかも私が好きな歌も武蔵と一緒に歌ってくれるしな」

 

「天龍は洋楽とか?」

 

なんとなくそういう風に見えるので、八幡は聞いてたみた。

 

「ああ、そうよく言われるけど、私は平成仮面ライダーの曲かガンダムとかばっかりかな、お前歌えるか?」

 

「え?ああ、それなりに」

 

「それは楽しみだな、適当に付き合ってくれよ、電王の曲とか」

 

「ちなみに私は風鳴翼が好きだな」

 

武蔵はそう言った。

こちらの世界には何故か水樹奈々がいない代わりに、風鳴翼という女性が様々な水樹奈々ソングを歌ってくれていることに武蔵は驚いて、彼女の情報を追っているといつの間にか熱狂的なファンになってしまったのだ。

毎週金曜日にあるバラエティのクイズ番組で「か、顔はやーめーてー!」「これは、なんという当て擦りっ!」とそう叫んではよく罰ゲームで「じゃぼーん」と那珂と一緒に泥沼に沈んでいく彼女の姿を見るのが武蔵の週一回のテレビでの楽しみだった。

 

「ああ、日本語が可笑しいあの歌手か、そしてあの歌手が出るクイズ番組のやつは最早様式美として確立されてるよな、2人が顔ごと泥に沈まない日こそ逆に違和感があるくらいだし」

 

「ああ、あれを見なければ一週間の平日が終わった気がしないくらいだ」

 

「あれはわざとやってんのか、と思うけどわざとじゃないんだよなぁ……」

 

日曜の「日本にはまだ実際に忍者がいると外国に誤解をさせにいく趣旨の番組」である「川内の世界の果てまでニンジャでニンジャ」も毎週の楽しみだがな、と武蔵は言う。

ちなみに神通はNHKのお料理番組や家庭的な講習の番組によく出演しているらしい。

そう、川内型艦娘たちは立派な人気アイドルとして現在本当に大売り出し中なのだ。

 

「一端、こちらの話をお聞きください」

 

話が二転三転と移り変わり収集がつかないとベルファストは思ったので、ぱんぱん、と手を叩いて言う。

楽しそうに誰かと喋っているご主人様を見ていて嬉しいが、このままでは体育が終わると思ったのだろう、言っておくべきことだけは言っておく。

 

 

「それでは、本日の放課後、各自の所用が済んだあと、駅前近くのカラオケ店舗前に集合といたしましょうか、ちょうど実はその店舗のカラオケ学生割引チケットを私は持っていますので、フリータイム飲み放題つきで敗者お二方と私たちを入れても敗者が支払う額は1人500円程度で済むと思います、ではまたおしゃべりを続けましょう」

 

「あそこか……ああ、いいぜ、でもそれじゃ今回のお前らの勝利の美酒には少なすぎる、大盤振る舞いで一人ずつメガ盛りポテトもつけてやるぜ」

 

「え…………私はそこまで多くは食べることができません、比企谷様の分を少しだけシェアさせて戴こうと思います」

 

ベルファストは少し顔を青くしてそう言った。

ベルファストは実は雑で脂っこいイギリス料理っぽい食べ物が死ぬほど嫌いである。

なんでか――――それはイギリスに2年居たからだ、という説得力を持った理由である。

 

そもそも、ベルファストは艦娘とは違って別に飲食しなくても一切問題がない。

 

化物具合が半端ないのだ、過去の大怪我も一晩寝たらほぼ完治したくらいである。

そして食事は嗜好品や見せかけとして飲食をする程度であったが、イギリスに居たときは嫌でも食べなければいけない場面が多かったそうだ。

誰かに一番美味しくない食べ物はどんなものを食べたかと聞かれると素直に「あれは豚の餌の缶詰だった……」というくらいである。

食事に対する思いやりで食べてたそうだが、限界があったらしい。

 

「どうせ私らも食べるし、2個にするわ、みんなで食おうぜ」

 

「そのほうがいいわな」

 

まぁ、どうせみんなで食うだろうし、と八幡も特に異論はなかった。

 

「私も構わないが、どうせ一つは私と天龍で食べてしまうのでただの注文のようになってしまったな……此処はまだカラオケ屋じゃなくて学校のグラウンドだからな、あと、天龍の小遣いは今月キツイだろうし主な敗因の私がそれを奢るよ」

 

どうせ天龍がポテトを食べたいだけだから、むしろポテトじゃなくて一品ずつ二人で好きなものを頼め、と武蔵はまるで天龍のお父さんのように言った。

 

「ん?武蔵はなんで知ってんだよ、私の小遣いきついって」

 

「最近お前が部屋でぎゅんぎゅん夜にうるさいあのCSMのファイズギア&ファイズドライバーを買ったばかりだろう?あれを買うために結構小遣いを我慢してたんじゃないか?」

 

「あーうるさかったか?ごめんな、寝る前に555に変身してから寝るのが最近の私のブームなんだよ」

 

変身してから寝るって…5歳児か?

そもそも555ギアドライバーを買う女子高生なんか居るのか、この世に、と八幡は驚いた。

 

「この前はクウガだったか?別にそれは可愛いからいいが、たまにお前がスイッチを切らないまま寝てから、お前の寝相で夜中にベルトが勝手に鳴り出したりして、何度か私はクリムゾン・スマッシュを決められる夢を見て飛び起きる羽目になったから、今度からスイッチだけは切っておくように」

 

「ああ、ごめんな、でも羨ましいな、それ……クリムゾン・スマッシュいいなぁー」

 

「食らうほうだが?」

 

「食らってみたい、どんくらい痛いんだろうなぁ、17トンの蹴りと一緒に体内でフォトンブラッドが暴れまわって死ぬんだぜ、アクセルだったら5連撃だ、いいなぁ」

 

「………そんな風に夢の中で死んでいたのか私は」

 

「天龍って…趣味がそうなのか、結構しっかりとした」

 

天龍が持っているベルトはコンプリート・セレクション・モデル。

最低価格3万円もするというまさに555のファン御用達品。

多分、クウガのベルトも持っているだろうから、相当である。

 

「ええ、男の子っぽくて可愛い趣味でしょう?特撮とプラモデルが天龍の趣味なんですよ」

 

「そういう女子って聞いたことはあるけれど実在すんのは初めて見た……まじでいるのか…」

 

「そうだ、仮面ライダーが好きなんだ私は、グロンギ語が英語よりも得意なくらいな……そういえばさっきの違法パーツの話だけどさ武蔵はブロッケンGっぽいよな、知ってるか?比企谷」

 

グロンギ語が堪能って、相当ディープだと思いつつ、八幡は天龍に問われたブロッケンGについて記憶を探る。

 

「ブロッケンJrではなく?」

 

「それはキン肉マンだ、ミニ四駆の方のブロッケン・ギガントだな、コロコロコミックで中々猛威を奮ったな……懐かしい」

 

武蔵が遠い目をしつつ、そう言う。

 

「マグナムぶっ壊すやつだっけ?天龍よく知ってるなそれ…武蔵は懐かしいってなんだ」

 

噂ではバングラディシュ人と日本人のハーフらしいが、会話をしていると言葉の節々に立派なオタク系知識が時折みせてくるけれど、武蔵ってなんだろうな、と八幡は思った、今日日の女子高生の口からコロコロコミックなんて単語が出るだなんて、きっとただの褐色肌巨乳美女ではあるまい。

 

「ミニ四駆も私は好きだぜ、私が生まれる前のフレームとかもよく模型店でみたりするんだ、まぁ改造つーよりも私がやるのは塗装とかそっちだけどな、付属のシール使わないでちゃんと色をつけるんだ」

 

シャイニング・スコーピオンに紫外線発色の塗料やサーモ・カラーを塗ったりするんだ、とこれまたマニアックなことを天龍は言う。

 

「ああ、ほんとに結構なモデラーなのか」

 

「大した上手でもないけどな、ガンダムのプラモはシード系列が私は好きだ、よく言われるがフォルムの完成度がいいんだよ、あとガンダムの顔がスっとしていい、ストライクは8機作ったな」

 

「結構じゃなくて、かなりのモデラーだな……」

 

「おう、逆に特撮は平成仮面ライダーだけだな、私はあんまり古いのは好みじゃなくてな」

 

「またあまり夢中になって、また透様に怒られないようにだけしてくださいね?」

 

武蔵も天龍もお洒落等の女性らしくすることに興味が無さすぎて、大抵の割りを食らうのがベルファストなのだ。

元が良いので化粧も必要もないメンバーであるが、常日頃、天龍の姉に天龍と武蔵を女性らしくさせてくれと懇願させられていて困っているのだ。

 

 

「ああ、でもいいなぁ、クリムゾンスマッシュ…まじで食らってみたいなぁ…いいなぁ武蔵は」

 

「クリムゾン・スマッシュをされると夜中に変な汗かいて疲れるから見ないほうがいいぞ、次の日は寝不足だ、ベルファストの鳴き声よりもマシだが」

 

「武蔵っ!」

 

怒り声でベルファストは武蔵の名を呼んだ。

ちょ、おま、男の人いる前でなに、言ってるんだ、ときたまこういうことを暴投してくる武蔵にお前、会話ですらノーコンなのかとベルファストは焦る。

 

 

「す、すまない……すまん、本当にすまない」

 

あ、しまった、とした顔をしてすぐさま謝る武蔵。

 

 

「ん?ベルは夜泣くのか?魘されてんのか?」

 

わかってないのが一人。

 

「………」

 

もう既に居場所がなくなりそうな気がしてきた男性一名。

 

「――――ベルファストはとてつもなく寝言がうるさいんだ」

 

途轍もなくひどい誤魔化しだった。

言った後も、ああ、全然ダメだな、私…という顔をする武蔵に失望した顔でベルファストは小声で言った。

 

「武蔵…このノーコン…」

 

察しよく気付いたのか、八幡が大分エロいことを考えて股間にキて、前かがみ気味になっていた。

今ですらじっと近くで見ていたら、それなりに股間に響く3人なのだ。

全員がぱっつぱっつの胸元の持主で、特にベルファストには3人の中でも色気を八幡は感じていた、彼女がベッドの中で1人喘いでいる姿でも想像したのだろう。

 

ご主人様が少し気不味気な様子にベルファストは「ほーらー」と言いたくなったが、ご主人様が自分で妄想してくれるので、ちょっとラッキーな気分も感じていた、もしかして、武蔵の言い分だと下手をすると武蔵と私が百合関係だと勘違いされたのでは、という疑問も残る気がした。

 

怖くて訊けない―――しかし、もっと私でいやらしいことは考えても良いのよ?とは思ったがそれは口にせず。

 

「……そもそも女性の寝姿について言及するのはやめましょう、男の方が居ますので」

 

ベルファストは努めて冷静にそう言った。

 

「悪かった……」

 

武蔵、お前…そこは「悪かった」って認めたら駄目だろう…とベルファストはさらに思ったがそれは無視して言う。

 

「大体、武蔵はそういうデリカシーが一切ないんですよ、だから一緒に暮らしていてた透様に毎回激怒されてるんですよ?」

 

武蔵は風呂上りにそのままパンツ一枚で宅急便を受け取ったりなんていうドジをよくやってるらしく配達員をギョッとさせて、あとでちょっとラッキーな気分にさせることで村瀬家がある担当区域の配達業界では有名だとかなんとか。

 

「前と対して気持ちが変わらんからな」

 

股間についていたものがなくなり、でかい重しが胸に生えて、身長がでかくなった、武蔵にとってはその程度だ、それにこのような振る舞いに違和感を武蔵は感じていない。

逆に女性らしいベルファストは自身にあった女性らしい振る舞いでなければ、自身の違和感で苦しむそうだが、そもそもベルファスト自身がベルファストであることに対し自信を持っている、その差だろうと武蔵は思っていた。

 

「前?」

 

「ああ、またデリカシーがマイナス数値を振り切ってしまうのでこの話はお終いにしよう」

 

「いつも姉さんに怒られてるあれか……さすがに、あれはな………ち、あとは今月の小遣いはホビーマガジン買ったらギリギリだな…マガジンは発売してからブックオフ漁るのも…いや、すぐには中古で落ちてこないか…んー」

 

天龍は自分の懐具合にあれやこれや、と考えていたようだ、お小遣いで悩む無垢で純真で子供らしい姿に武蔵はほっこりとして言う。

 

「私に借金してもいいぞ?――というか、小遣いもらったばかりだろう?大丈夫か?」

 

「毎度のことだから、なんとかなるわ、あとは姉さんにはベルと武蔵には決して借金するなって言われてるから駄目だ、そういうこと言うとお前また正座させられるぞ、姉さんに」

 

 

夜、姉が仕事で遅い時はお化けが怖い日は1人寝る前にヒーローに変身して寝ていた小さな天龍は年月を経て大のプラモや特撮好きの女子高生になっていた。

天龍の提督である村瀬透は文房具などの学費や友人との最低限の交際費、そして食費はいくらでも使ってもいいが個人的な遊興費に関しては少し裕福程度なくらいの家庭の高校生レベルを天龍に強いていた、なので、お小遣いを貰うと天龍はすぐにプラモデルや変身ベルトに全てを使ってしまうのが彼女の悪い癖だった。

ちなみに天龍の部屋は下手をすると常人が入ると気絶するレベルで換気を忘れてプラモに夢中になっていることがあるらしく、天龍の姉の村瀬透はたまに命の危機を感じることがあるらしく最近自動換気装置を天龍の部屋に取り付けたという。

 

 

「…………あれは嫌だ、透さんが正座した私の周りで文句を言いながらぐるぐる周るんだ、マニ車みたいで怖いんだ」

 

常々、武蔵は天龍に甘いので天龍の姉にはキツく「あまり甘やかさないように」と言い含められていた。

 

「マニ車みたいな説教をする人がこの世にいるのか」

 

「ああ、居るんだ、これが」

 

「あと武蔵はいつもオルフェノクなのか?」

 

「また夢の話か?………ベルファストがカイザとして登場してエグい騙し方をしてくるからあの夢は怖いんだ、クウガのときはダトバだったな、何故かベルファストが一条さんポジでそれはもう怖かった」

 

「そういう夢みてみたいな」

 

本当に羨ましいらしい。

天龍はサンタクロースを待つ子供のようにそう言う。

 

「今晩、一緒に寝るか?私がお前の夢の守り人になってやるぞ」

 

またこいつは…とジト目になるベルファスト、そういう格好つけたこと言うから、お前は…と武蔵を睨んでいた。

その怜悧な表情に武蔵は顔を背けていた。

 

いつものことである。

 

「お前は図体でかいから嫌だ」

 

寝苦しそう、とあっさりと断る天龍。

 

「……それは残念だな」そしてこんなデカイ体に生まれてしまったことについて1人文句を言う。

 

武蔵としては「どうせなら、島風とかに生まれたかった、キャワイイ子になってチヤホヤされてみたい」と言って艦これの島風のビジュアルを唯一武蔵以外に知っている大淀に「ありがちなTS願望すけすけな感じでかなり変態くさいですね、それは…わからなくもないですけど、変態くさい」と言われて落ち込んだことがあるらしい。

 

「ああ、もう男性の前で話すな言いましたのに……終わりです、この話は終了です、ではハンデを背負って戦った天龍にも健闘を称えて私が天龍にポテトをご馳走するという形で終了です、良いですね?」

 

「ああ、しかし、カラオケか…いいな、久しぶりに天龍の歌声が聞きたかったところだ」

 

「はやく久しぶりにがーっと歌いたくなってきた」

 

「がーっと歌うんですか?ぽそぽそじゃなくて?」

 

「ぽそぽそ……え、私、実は音痴か?」

 

「恥ずかしがって歌ってるからまだ音痴かどうかのその段階ですらないですね」

 

「それがいいんだ……」

 

「よくねぇ!」

 

「どんだけ、武蔵は……まぁいいか」

 

「何を言いかけたんだ、比企谷」

 

「……いやいいわ……どうせ聞かなくてもわかるし」

 

「わかっているさ、私がどれだけ天龍が好きなんだ、とかだろう?それはもう決まっている―――私は天龍が好きに決まっているだろう!そんなわかりきったことを聞くなぁ!」

 

武蔵がいきなり天龍に対する愛を叫んだ。

 

そろそろ体育も終わりだな、と自分たちの集合場所に集まりかけていた他のクラスの男子達がざわざわ、と女子たちはキャーキャー言い始めた。

C組は「あーハイハイ」みたいな感じだった、一ヶ月程度でもう慣れたらしい。

 

「きくなぁあああー!きくなぁー!きくなー!なー!なーなー……たまにこうして他人に対する好意を叫ぶのも悪くないな」

 

「………耳いてぇ、声でかい……」

 

八幡は正面から武蔵の咆哮を食らって、ダウンしかけていた。

 

 

「ああ、すまんな比企谷…大丈夫か?」

 

まじでゴリラだなこの人、と八幡は思ったが「別に大丈夫」と言っておく。

 

ベルファストが「あとでいろいろ覚えておけよ、お前」と武蔵を本気で睨んでいた。

武蔵は顔をベルファストからまた背けていた。

 

こうして周囲にいつも武蔵は天龍ラブであることを様々な所でわざと広め回っている。

つまり「可愛いく健気な天龍になにか文句があるなら、私がすぐに敵としてポップして出てくるぞ」と周囲に言い含める高度な情報戦であるらしい。

メインで天龍は純真なので変な男に騙されないようにというプレッシャーも兼ねているそうだ、この氷川武蔵を超える男前ではないと天龍に花の一つも渡せないぞという感じのグラビトン・プレッシャー。

 

 

「エコーかけんな!!うるせぇよ武蔵!そんなこっ恥ずかしいこと叫ぶなっての!」

 

顔を赤くして天龍が怒る、それを見てベルファストもそのウェーブに乗っかろうと考えた。

 

「では私も――――私も天龍のことが大好きデース!デース!デース!デース!デデデデデーデー」

 

「最後バグってる!?」

 

八幡もついノリにのって突っ込む。

 

武蔵と天龍が百合関係だと思われてしまうのもお似合いすぎて洒落にならないので友達同士の他愛のない悪ふざけになるようにベルファストも参加しておくことにした。

こういう日々の努力は常に欠かさない、忘れると武蔵が洒落にならないからだ、球技以外は武蔵はこの学校一の男前なのだと自称、他称が出来ているのだから。

 

「昔のファミコンか?いまの…」

 

などと八幡が突っ込んで来たので、ベルファストは首を傾げて微笑みを返しておく。

 

「ベルもか!?あーもう!おまえらいっつもそう!悪のりすんな!」

 

「天龍ライダー1号だ」

 

「天龍ライダー2号です」

 

「お前ら………あーなんかもう疲れた……」

 

「三人はずっと前からこんな感じなのか?」

 

本当に仲が良い、友人関係で起きる悪感情から無縁なんだろうと思える理想的な友人関係だと八幡は思っていた。

 

三人の中心である熱血な天龍、大きな体の男前だが少しドジな武蔵、そして冷静沈着でありながら少しお茶目な感じのベルファストのアニメにでも居そうな見目麗しい三人組。

 

なんというか女版ゲッター・チームかな?と八幡は思いながら聞いた。

 

「ん、ああ、べつに去年からくらいだぞ、前からは一応知り合いだったけど、私が高校に入学して一緒になってから話すようになったって感じだ」

 

天龍がなんともなしに言った。

 

「1年…?」

 

「そうだな、案外短いな、だが、人が誰かと仲良くなるのに時間は必要ないだろうし、そんなものだ、そろそろ集合時間だな、さて放課後を楽しみにしておくぞ、比企谷」

 

「よし、じゃあまたな、比企谷、楽しみにしてるぜ」

 

「では、後ほど、楽しみにしてますよ」

 

 

そう言って三人が離れていく

 

「じゃあまた――――俺も楽しみにしてるわ」

 

八幡も負けずとそう言って、いつも1人で打球を打っていた壁の影にさようならをするように、笑って明るい光が燦々と差し込むグラウンドに向かって歩いていく。

 

「あ、私はその前にちょっとトイレいってくるわ、もし間に合わなくてそんまんま授業が終わってもいいだろうしな」

 

「……すこしはしたないですよ、天龍」

 

「お前のハシタナイ判定厳しいな、トイレは駄目なのか?便所っていってないぞ?」

 

「女性なら最低でもお手洗いと言いましょう、OK?」

 

「どっちも一緒だろ?」

 

 

天龍が思いついたようにそう言って、文句を言うベルファストにすこしガクッと来たが「ま、こんなもんだよな」と八幡は微笑みながら歩いていった。

 

 

 

 

 

幕間2

 

 

 

 

 

 

天龍がトイレに向かい、八幡が自分のクラスの集合場所に向かい、残った2人で歩いていると武蔵はふと、気付いた。

 

「おいベルファスト」

 

「なんでしょうか?今最高に幸せなので、なんでもお聞きしますよ」

 

るんるん気分のベルファストさんである。

これから放課後が待ち遠しい、カラオケである。

ベルファストは「もうボーナスステージ入った、絶対入った」ような気分である。

片思い系のラブソングを歌いながら意中の男性をちらちら見たりとか、部屋を薄暗くしてこっそりとベタベタしてみたり、とか、わざとジュース零してみたりとか、やりたい放題であるのだ。

 

「ふふ……」

 

こんなにも簡単なことで、もう幸せいっぱい、胸いっぱい、もうおっぱいでそうなくらい、と言った具合でベルファストさんは薬局で―――

 

 

「では聞こうか―――――お前、イギリスに居た頃、語尾がさっき叫んだみたいにデースとか言う日本人の友人がいなかったか?最近急上昇中のキリシラの切ちゃんみたいなの」

 

「キリシラは知りませんが……ああ、一緒にルームシェアで暮らしていて、毎日暇があれば私に紅茶を淹れるように強請ってくる子が1人いましたよ、私のメイドな趣味にも付き合って戴いて中々良い友人関係を作ってました、私が3日だけ通っていた学校近くの別の下町通りの学校の学生でしたが、それがどうかしました?」

 

ベルファストがイギリスで一番仲良くしていた人間だ。

栗色のロングヘアーの女の子で、2人の時は「ルー大柴なのかな?」とか思うような英語交じりの日本語を喋ってくる紅茶狂いの子だった、とベルファストは武蔵に言う。

 

その言葉で武蔵は確信の表情を浮かべて、言う。

 

「…その友人には一応、なにか困ったことがあったらこちらに連絡するように、という連絡がつくか?」

 

「ええ、まぁ…ではメールでは味気ないので手紙でもそう送っておきますよ―――ああ、そういうことですか」

 

「そうだ、15人目だ」

 

「私以降初ですか?」

 

「ああ、だから、かなり久しぶりだな」

 

武蔵は大変な奴が見つかったと思った。

 

「大淀が一番好きだった艦娘、居たのか…常に様々な情報収集を日本では怠らないらしいが、これからはワールドワイドで仲間を探し始めるな」

 

仲間を探して、見つけたら全力で支援をするのがあの老けない独居老人の唯一の生きがいだ。

主に彼女はバブル絶頂期の日本でお金を大儲けしたらしく、まだ彼女はバブルのままでやることなすことバブル過ぎて他の艦娘たちをドン引きさせるのだ。

事前の未来知識もさることながら大淀は「金儲け?お金は使った分だけ倍になるんですよ?」と言い切れるほどの豪運の持ち主でもある。

50年以上の投資や経営で運だけはステータスMAXなのだろう、きっと。

 

 

「本気でめんどくさいことになるぞ……」

 

「なんか、よくある感じですねそういうの――――本気で面倒です、全力で大淀様には黙っておきましょう」

 

「ああ、黙って連絡しておいてくれ、そいつが困らない限り、放っておいたほうがそいつは幸せかもしれないし」

 

「会社とかいきなり貰っても困りますからね」

 

ああいうのは老人が子供にあげるあんまり美味しくない駄菓子じゃないんですから、とベルファスト。

 

「それにまだ、目覚めてないかもしれない」

 

「…………ああ、もう彼女は目覚めてます、不審な部分もありました、なんか隠してる感がありました、あの頃はまだメイド修行で夢中でそんなに他人を気にしてなかったですし」

 

「ビンゴってやつか」

 

「彼女は何の?」

 

「大戦艦金剛だ、大淀が一番好きで血眼になって探していた子だ、ずーっと秘書艦にしてたそうだ」

 

あまりプレイはしていないが、その独特な声を聞くためだけにゲームを起動していたようだ、と武蔵は言った。

 

「秘書艦……つまりは嫁ですか……そういうところはミーハーですよね、大淀様、そういう部分は本当に人生2連続女性らしいですね」

 

「…………なんだろう、この会話、アニメでみたことある気がする、こうよくあるネタで」

 

「今のアニメでみたことがある、もさらに見たことがある、という使い古した感じ、かなりありますね、もうこの会話の一連の流れがフラグだったんですね……はっ!」

 

「い、一連の流れがフラグというのも……も、もう会話するのやめようか、黙って集合場所にいこう、これ以上は危険すぎる……」

 

「ですね、こ、これ以上は危険すぎるも「しっ!」

 

 

「…………」

 

「…………」

 

 

二人は無言で集合場所に向かった

 

 

怖くてしょうがなかったのだ、本当に怖くて怖くてしょうがなかった。

 

大淀の暴走フラグを立てそうで。

 

そして二人は思った。

 

 

多分、もう駄目だ、と。

 

でもまだではない、そう、いつか――突然来るんだ、こういうの、と2人は震えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

続く。

 

 




あとがき

原作 シンフォギアシリーズ。

風鳴翼 

最近ブレイク中の歌姫。


キリシラ

同じく最近急上昇の二人組のユニットのアイドルグループ。
なんでも調ちゃんは偶然テレビで凄技のヨーヨーを披露し、そのままスカウトされて芸能界に入ったのだとか。


武蔵はシンフォギアの放送されていない世界からの転生者とかだったりするかもしれない。


ノイズ?んなもんでないよ。


カラオケ

TS転生したら絶対にまずなによりも先にカラオケ行くと思うのに、あんまネタにされない気がします。



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