ともかく一族滅亡は逃れたい   作:藤猫

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難産だった戦闘シーンのある回。何回も書き直して、最終的にこれでいいやと諦めました。やっぱり苦手なもんは難しいですね。



最悪な初陣

千手の長、仏間の長男が初陣を迎えるらしい。

とある戦への出陣前、周りから漏れ出て来る話に、アサマはふん、と鼻を鳴らした。

 

(・・・・絶対に兄ちゃんの方が強いに決まってる。)

 

だというのに、まだ戦ってもいない千手の人間のことを噂する大人たちにアサマは不快感を覚える。

せっかく、新品の武具に、姉と兄が整えてくれた戦装束を着ていい気分だったというのに。

 

「・・・・アサマ、大丈夫?」

「別になんともおもってねーよ。」

 

アサマは隣りにいた、今日初陣のミヨリに返事をした。

 

「相手の頭領の息子だから、みんな噂をするのも仕方ないよ。」

「だから、何にもおもってねえって。」

「それならいいけど。」

 

ミヨリは心配そうにアサマを見ていた。その顔が、どこか弟のホノリと似ていて、罪悪感が湧く。

ミヨリは、アサマの鍛練仲間だ。他に比べて少し気弱というのだろうか、控えめな気はあるが、思慮深い性格は弟のホノリによく似ている。

そのせいか、アサマにとってはミヨリは気になる存在であり、いつの間にかよく端にいる彼と話す仲になった。よくも悪くもすぐに熱くなるアサマと、慎重なミヨリは凹凸ではあるが、息があった二人組だ。

 

(・・・・こいつも、俺のこと心配してくれてるんだよな。)

 

少し冷静になれば、アサマは自分の行動が恥ずかしくなる。

 

「・・・・ごめん、そんでありがとな。俺の事、心配してくれたんだよな?」

「ううん、別にいいよ。でも、戦の前だから、少し落ち着いて来たら?」

「わり、そうするわ。」

 

アサマは、一言断りを入れて、人の輪から外れた。

 

(・・・・とうとう、初陣か。兄ちゃんとも同じ戦だ。)

 

これからの戦場について考えて、一人で浮足立たせていると、そこに頭上から声がかかる。

 

「・・・アサマ、大丈夫か?初陣で緊張してるのか?」

「兄ちゃん!そんなことあるわけねえじゃん!」

 

咄嗟にそう返せば、ヒヨリはそうなのか、と心配そうにアサマは覗き込んだ。

 

「誰だって初陣は不安なものだからな。俺も、そうだった。」

「だーかーらー!俺は別に不安になんて思ってねえって!」

 

ぽすりと頭の上に置かれた手に、アサマは表面上は不機嫌そうな顔をするが払い落とそうとはしなかった。どんな理由でも、兄に構ってもらえるのは嬉しい。それを自分の手で台無しにするのはあまりにも残念な事だ。

ぷいっと、視線を逸らしたアサマにヒヨリは苦笑をする。そして、心の底から後悔しているような、そんな悲しそうな顔でアサマの逸らされた顔を見た。

 

「・・・・・本当なら、本格的な初陣はもっと先だったんだが。」

「なんだよ、兄ちゃんは俺のこと、そんなに信用できないのかよ?」

 

忍の子は、六歳になれば初陣をきる。といっても、いきなり戦場に放り出すということはない。その前に、戦場の空気に慣れさせるために、比較的安全な役目に着かせるのが普通だ。

けれど、アサマはそういった役目に着くことなく、今回は兄や父がいる先陣部分に配置された。

それは何故かというと理由は簡単で、先の戦で思った以上に一族の人間が戦死し、数合わせとして初陣をきるアサマを含めた数人が配置されたのだ。

 

「俺だって、うちはの人間として立派に戦える!」

 

兄に心配されることは嬉しくもあるが、それ以上に自分を信用できないのかという腹立たしさも感じる。

少しだけアサマよりも背が高いヒヨリは、己を上目遣いで睨み付ける弟に小さく微笑んだ。いや、それは笑みと呼ぶには歪だった。眉を寄せ、無理やり笑みに仕立て上げた表情にアサマは兄が心配になった。

そして、ヒヨリは体を屈めて、アサマと同じぐらいにまで視線を下げた。

 

「・・・・アサマ、兄ちゃんとの約束、覚えてるか?」

「・・・・うん。」

 

アサマはこくりと頷いたが、どこか不満そうに口を尖がらせた。ヒヨリは、その様子に納得していないことを察して、彼に鍛練を付けるようになってから幾度も繰り返したことを口にした。

 

「いいか、アサマ、初陣で功を得ようなんて考えるなよ?」

 

アサマは口を尖らせたまま、それを無言で聞く。

 

「あのな、兄ちゃんも初陣じゃあ逃げるだけだった。まともに戦えるようになったのも一年経ってだ。いいか、アサマ、弱いということを恥じるんじゃない。誰しもが最初は弱い。その上で強くなっていけばいいんだ。順番は守れ。」

 

ヒヨリは、アサマの頬を両手で包み込み、逸らされた視線を己の方に向けた。真剣な、真面目そうな表情をした兄に、アサマは居心地が悪いというように体をねじった。けれど、ヒヨリはそれも気にせずに、言葉を続けた。

 

「・・・・いいか、アサマ。命の使いどころを間違えてはいけないよ。」

 

兄の言葉の最後には、よくその台詞があった。

本当は、もっと長いのだが、良く分からないので聞き飛ばしてしまう。

いつだって、兄の言葉は、アサマには難しかった。頭の良いホノリには分かっているようだった。自分には理解できないことが面白くはなかったが、それでも兄から言葉がもらえるのは嬉しかった。

そして、その言葉に、いつだって切なるものがあるのだってアサマにも分かっているのだ。

アサマは、その発言に、もう一度こくりと頷いた。

初陣で求められるのは、第一に生き残ることだ。特に、今日は千手一族が相手。守ってもらえるような状況ではないのだ。けれど、兄にそこまで言われるほど、アサマは自分が弱いとは思っていなかった。

その様子にやっと安心したのか、もう一度アサマの頭をぐりぐりと撫でると、その場を後にした。ヒヨリは、その年にして精鋭が集められた斬り込み部隊だ。

自分も早く、兄と同じようにその部隊に所属することを夢想しながら、彼は思いきれない頭の中で、名案を思い付いた。

 

(・・・・そうだ!今日は千手の長男も初陣だ。きっと強さも俺と同じぐらいのはず。そいつと戦うぐらいなら、兄ちゃんもそんなに怒んないはず!)

 

もしかすれば、功績をなしたと褒められるかもしれない。

アサマは、己の命の使いどころをちゃんと自分では理解していると思っていた。

そう、彼の命は、いつだって一族と家族、そして兄に褒められるために存在しているのだと。

 

 

 

戦が始まってすぐに、乱戦にもつれ込んだ。兄とも離れ、アサマは同い年の友人たちと敵側の目をひき、そこを大人たちに叩かせるということを繰り返していた。

出来るだけ、死なないように、且つ危険を排除できるようにとヒヨリは弟妹たちや年少者に受け身の取り方や回避の仕方を叩き込んだ。おかげで、アサマは今のところ大きな怪我は負っていなかった。おそらく、このままなら、無難に初陣を迎えられただろう。

けれど、アサマは遠くで、叫ばれた声を聞いてしまった。

 

仏間の長男だ!

 

それにアサマは飛びついた。所詮は、一族と敵が混ざり合う乱戦だ。素早く、その場を駆ける小さな体躯を正確に狙えるものは少なく、アサマと、そして彼を心配しついて来た友人のミヨリはあっさりと目的の人物の元にたどり着いた。

 

「あいつか・・・・!」

 

茶色がかった黒のおかっぱ頭の、同い年くらいの少年。そして、彼は現在、うちはの人間と対峙していた。

それにアサマは駆け寄った。その実力について、知りたかった。

抜き払った刀は、やはり少しだけ重い。

 

(・・・・あいつを討ち取れば、兄ちゃんも俺のことを強いって認めてくれる。)

 

周りの大人たちだって、自分を鍛えた兄を天才だと誉めそやすだろう。

けれど、アサマは彼に挑みかかる直前、後ろ姿しか確認していなかったうちはの者が血を飛び散らせながら倒れ込んだ。

アサマは、それに動揺した。目を丸くして、崩れ落ちた存在に隠れていた千手の長男の姿を凝視した。

ドングリまなこの、目が、確かにアサマを捕えていた。くりくりとしたそれは、普段なら愛嬌があると思えるようなものだというのに、ぞわりと背筋に寒気が走った。

勝てない、そんな言葉が浮かんだ。

 

(・・・・・・いいか、アサマ。勝てないのだと分かったなら、すぐに逃げろよ。勝てもしない賭けに命を費やすな。)

 

けれど、アサマはそんな言葉を振り払う。

うちはとしての誇り。

彼は、それによって引けなかったのだ。幾度も、幾度も、兄に言われた言葉があっても、それでもなお、うちはとして、何よりも兄の弟として、逃げ出すという選択を除外してしまった。

アサマには自負があった、周りからも言われ続けた。

頭領の子として、兄の弟として、けして逃げてはいけないのだ。

 

(・・・あっちだって、俺の存在に驚いてた!今なら、動揺してる!)

 

一太刀程度なら、浴びせられる。

アサマは弾丸のようなスピードで、千手の長男に真正面から斬りかかる。よくよく確認すれば、相手は倒れ込んだうちはの人間に刀を突き立てている。

アサマと千手の長男の距離はあまりない。その間に、刀を抜き取りアサマに向けるのは恐らく無理だろう。

いける、と思った。少なくとも、相手に手傷を負わせるぐらいならば出来るのだと。

少年は、刀で応酬するよりも早いと思ったのか手の甲に巻かれた籠手を刀の軌道上に置いた。

 

(刀の重さと、走ってきた分の勢い、少ねえけど俺の腕力。籠手を断ち切ることは出来なくても、衝撃で片腕を少しの間ぐらいは潰せるはず!)

 

がきん!!

金属同士がぶつかる音がした。そのまま、腕の力が弱まり、刀を振り下ろせると思った。そうすれば、近距離で相手に深手、それが無理でも傷を負わせることぐらいは出来ると思っていた。

けれど、予想に反して、刀は自分が思っていた以上の力で振り払われた。それも、力を駆けていた上方向ではなく、右方向に振り払われたため、緩んだ手から弾かれた刀が飛んでいく。

ああ、死ぬ。

振り払われた衝撃で、崩れた姿勢ではどう足掻いても逃げられない。視界の端には、くるりくるりと宙を舞う刀が見えた。

頭の中に、まるで本の頁を捲り続けたように今までの記憶が浮かび上がった。

逃げる?

いや、倒れる寸前の今では刀から逃れられない。

忍術を発動する?

印を組む時間はない。

ああ、死ぬ。

もう一度、そう思った。

まるで、自分だけが取り残されたかのように迫りくる刀が見える。

後悔だとか、それを思う暇も無く、茫然とアサマはその刀を見つめた。

けれど、それは突然、アサマたちの間に割り込んできた。

 

「あああああああああああ!!」

 

感情を何とか吐き出すための絶叫と共に、ミヨリは持っていた刀を千手の長男に振り下ろした。

致命傷ではなかったがミヨリは相手の太腿部分に刀を突き立てた。それと同時に、アサマは地面に倒れ込む。それでも、ヒヨリとの組み手で畳みこまれた受け身により、彼はすぐに立ち上がり距離を取ることが出来た。

ミヨリのことを気にする余裕はなかった。それでも、おそらく大丈夫だろうと思った。いくら傷は浅かろうと、傷つけられれば動揺は生まれるだろう。

その隙に、きっと逃げられる。

距離を取り、ミヨリの状態を確認しようと彼の方向に目を向ける。

赤い、飛沫が宙を舞った。

 

「え?」

 

漏れ出た言葉と共に、アサマの口からそれが飛び出た。

どさりと、何か重いものが地面に転がった音がした。

 

「み、より?」

 

どこを斬られたかまでは分からない、それでもまるで決壊した河辺のように流れ出る血が彼の命の危うさを示していた。

それに、アサマは危機感も無く、咄嗟にミヨリに駆け寄る。けれど、ミヨリに振り降ろされた刀は、そんな時間を与えることも無くアサマに向けられていた。

けれど、その刀がアサマに届くことはなかった。

何かが空を切るような音がした後、アサマの前を一つの手裏剣が横切った。それに足を止め、思わず後ろに飛んだ彼の前に、まるで今までそこにいたかのように誰かが立っていた。

 

「兄ちゃん!?」

 

その後姿は、見慣れたアサマにとっての兄のものだった。

ヒヨリは見開いた写輪眼で辺りを素早く確認する。アサマは、安堵のために弾んだ声を上げた。

 

「に、兄ちゃん、ミヨリが・・・・・」

 

アサマは安堵のあまり、兄の後ろ姿を見つめて話し始めようとした。

自分一人では、勝てなかった。それでも、兄が一緒ならばきっと勝てる。ミヨリのことだって、兄が一緒なら助けられる。

そう思った。アサマは、兄を信じていた。誰よりも強い人だと、誰よりも完璧な人なのだと。

けれど、その期待は、ヒヨリの冷たい声で遮られた。

 

「・・・アサマ、お前はうちは側に撤退しなさい。」

「え?」

 

ヒヨリは、息を整えるようにして肩を下ろし、刀を構える。それに、じっとこちらを見ていた相手も、改めて刀を構えた。

 

「でも・・・・」

「ミヨリのことは俺に任せろ。お前はさっさと行け。」

「でも!」

 

アサマが更に言葉を続ける前に、ヒヨリは一瞬だけ振り返り、持っていたクナイを投げた。それに、蛙が潰れた様な声と共に、何かがどさりと倒れる音がした。それに視線を向ければ、丁度喉にクナイの刺さった、千手の忍が倒れ込んでいた。

 

「それにさえ気づかないお前がいても無意味だ。」

 

冷たい言葉と共に吐き出されたそれは、明確な拒絶の意味があった。アサマは、それでも戦う意思を見せるために、男の喉から短刀を引き抜いた。それによって勢いよく吹き出る血に、少しだけ手が震えた。

 

「だめだ・・・・・」

「でも、ミヨリが!」

「もう死んでる。」

 

短く紡がれた言葉に、アサマの目が見開かれた。思考が暗く、遠いどこかに飛ぶ前に、目の前の兄から湧き出る冷気のような何かに、現実に戻される。

 

「行け!足手まといのお前を抱えたまま、あいつとは戦えねえ!」

 

それが、決定的だった。

目の前の相手が強いことは、アサマ自身がよくよく分かっていることだった。アサマは、憎い相手を睨んだ。

そして、ミヨリが刺した刀が引き抜かれ、その傷が何故か完治していることに気づいた。それと同時に、顔についていた細かな傷もすでに完治していた。

それが、けして医療忍術でもなく、千手の高い生命力でもない、もっと途方もない何かだとアサマは感じた。

アサマは、それに咄嗟に、侮蔑の意味も込めて叫んだ。

 

「・・・・・化け物!」

 

彼はそう言って、周りに気を配りながらうちは側の方向へと撤退した。

弱い、自分は弱いと、そう感じながら、彼はただ、逃げるしかなかった。

 

 

 

後ろで遠ざかる気配に、安堵を抱きながらヒヨリは改めて息を整えた。目の前の存在は、ヒヨリにとっては一方的とはいえ見知った存在である千手柱間は刀を構えてじっと自分を見ていた。

別段、待っていてくれたわけではない。柱間との間には、ある程度の距離がある。そして、周りは乱戦と言えどもいつ弾かれたクナイや何かしらの術が飛んでくるかわからない。

柱間が、隙も無く周りに気を配っていることは察せられた。

逃げる、という選択はなかった。周りにいる一族の手前、それは出来ない。

 

(・・・・やるしかない、んだよなあ!!)

 

ヒヨリは、刀を構えて一気に柱間との距離を詰める。

知っておきたい、そう思っていた。

知っている物語の主軸、その中心にいる存在の強さというものを。

 

 

(ああああああああああああ!これが本当の主人公補正!まじで理不尽!)

 

ああ、なるほど、そう納得さえできる。

天才とは正しく彼のような存在の事なのだろう。

そんな確信が生まれるほどに、千手柱間は強かった。

打ち合う刀は、何とか守りに入るしかなく、柱間の攻撃をなんとかいなすことしか出来ない。

腕力で押し切ろうとしても、それさえできなかった。攻撃に出れば、それはあっさりと受け流される。相手が攻撃にでればそれこそ、守りに入るということしか出来ないのだ。

写輪眼は、チャクラ量を考えれば温存しておきたい。

 

(・・・・・・忍術、は出来れば使いたくねえしなあ。)

 

戦場において、子どもは基本的に体術と剣術だけで戦うことが前提とされる。それは何故か、簡単だ。チャクラが少ないのだ。

ヒヨリは、身体的には子どもとはいえ、精神面では成熟している。そのため、平均よりもチャクラの量は多い。だからといって、そう簡単に忍術を使えるほどのチャクラ量ではないのだ。

 

(・・・おまけに、さっき、瞬身の術(仮)無駄打ちしまくってそんな余裕もねえし。)

 

刀を打ち合い、距離を取るために大きく後ろに飛ぶ。そして、乱戦状態で時折割り込んでくる敵や武器などいなすこともしなくてはいけない。

ヒヨリは、今回の戦において最初から柱間と戦うことは目的の中に入っていた。もちろん、殺す気はなかった。

 

(・・・・つって、殺す心配の前に、殺される心配しなくちゃいけねえぞ、これ!?)

 

まだ木遁は使えないようだったが、洗練されてはいない、ただ、粗削りではあるが純粋な才能で彼は戦っていた。

それに、覚悟を決めた。これぐらいでは、おそらく死にはしないだろうと直感して。

 

(勝負に出るか。)

 

ヒヨリは、印を組む。それに、柱間も警戒によるものなのか同じように印を組み始める。

 

(火遁・豪火球の術!!)

 

ヒヨリの口から吐き出される身の丈もある火の弾は、まっすぐに柱間に向かう。けれど、それは柱間の術によって防がれる。

水遁の一種なのだろう、口から吐き出される水鉄砲のようなそれによって防がれる。けれど、水の蒸発の為か、白い靄が辺りに広がった。

それに、ヒヨリは飛び込んだ。彼が、一応開発したというのだろうか、瞬身の術(仮)も発動させる。何故、仮というものがついているかというと、これが本当に瞬身の術なのかどうか分からないからだ。

高速移動、という情報しかなかったために、ともかくチャクラで身体能力を高め、それによって高速移動を実現させているのだが。

まあ、チャクラの燃費も悪ければ、発動させるために一定は体が負荷に耐えられる程度でなくてはいけない。というか、負荷に耐えるためにチャクラのコントロールも必要になる為、実戦で使うには難しいものになっている。

おかげで、もう残りのチャクラはカツカツだ。

 

(隙は付けるか?)

 

前方に人影が見える。ヒヨリは、その人影の首筋に刀を添えた。

 

「な!?」

 

近づき、刀を付きつけると同時にヒヨリは気づいた。人影に見えていたのは、ただの土人形だった。

それに気づくと同時に、右方向から何かの気配を感じる。なんとかそれに反応し、刀を向けるが予想外のことに、ヒヨリは倒れこんだ。

自分にふり降ろされた刀をなんとか受け止めるが、チャクラを消費したせいか、疲労も感じ始めていた。

目の前には、漫画でよく見た柱間がいた。その、幼い顔に比べて、その表情はどこか硬質なもののように感じる。

戦うことを知っている目だ。今まで、幾人も、そんな目をした存在を見て来た。

ヒヨリは、ぎりぎりと己に迫る刀に恐怖を感じる。けれど、それは死に対しての恐怖ではなかった。

ヒヨリは、弟や妹を置いていってしまうことに恐怖した。そして、脳裏には、彼にとって可愛い、たった一人の妹の顔も浮かんでいた。

自分の死は、彼女を追い詰めてしまうのかもしれない。そして、原作のように、疎まれて、騙されて、理解されずに。その果てに、優しい少年を、騙して、利用していくのかもしれない。

ヒヨリは、それに叫んだ。己を奮い立たせるために、そして、何よりも、その言葉が目の前の少年にとって弱点になりえるのではないかと無意識に感じていたからかもしれない。

 

「駄目だ、俺は死ねないんだ!」

 

吠える様に、ヒヨリは叫ぶ。

 

「俺は、兄ちゃんなんだ!」

 

それに、柱間の目が少しだけ見開かれた。それに、ヒヨリはあらん限りの声で叫ぶ。

 

「弟たちのところに、帰らなくちゃいけねんだよ!」

 

それに、振り下ろされた刀に加わっていた力が緩んだ。その瞬間、ヒヨリは刀を振り払い、柱間から距離を置く。そして、ヒヨリは見てしまった。薄れゆく靄から見える柱間の顔を。

子どものような顔だった。迷子の子どものように、途方に暮れた様な顔で、柱間はヒヨリの方を見ていた。

いや、違う。彼は、どうしようもなく子どもであるはずなのだ。

靄から飛び出れば、いつの間にか、うちははうちは側に。千手は千手側に移動しはじめていた。

戦が終わろうとしているのだろう。ヒヨリは、それに素直に従った。

そして、彼は約束通り、すでに血の気のないミヨリの死体を背負い、走り始めた。

ずしりとしたそれは、はっきり言えば捨てていった方が早く走れる。けれど、せめて、弟と最後の別れをさせてやりたかった。

一目散にヒヨリは駆け出しながら、胸に広がる苦い感覚に歯を噛みしめた。

それが、ミヨリの死によるものではなく、あの柱間の表情のせいだということは分かっていた。

弟や妹とダブって見えたあの幼い表情に、ヒヨリはひどく、ひどいことをしてしまったような気がして仕方がなかった。

 

 

 




柱間さんたちの戦がどんなものか分からないので殆ど想像になりますが。戦闘シーンってこんな感じなのかだろうか。
というか、柱間さんをチートにし過ぎたかな。でも、たぶんマダラさんと柱間さんは子どものころからチートでも違和感はないかな。
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