「・・・最後に君達に一つの言葉を贈らせてもらおう。本学院が設立されたのはおよそ220年前のことである。創立者はかの”ドライケルス大帝”。獅子戦役を終結させたエレボニア帝国、中興の祖である。即位から30年あまり。晩年の大帝は、帝都から程近いこの地に兵学や砲術を教える士官学院を開いた。近年、軍の機甲化と共に本学院の役割も大きく変わっており、軍以外の道に進む者も多くなったが……それでも、大帝が遺した”ある言葉”は今でも学院の理念として息づいておる」
教壇の前に立つ一人の老人はしばし目を閉じた後、部屋全体に響く声で語る
「『若者よ・・・・世の礎たれ!』“世”と言う言葉をどう捉えるのか。何を持って“礎”たる資格を持つのか。これから2年間で自分なりに考え、切磋琢磨する手掛かりにしてほしい。・・儂の方からは以上である」
老人の話が終わると何処からともなく拍手が上がる
「以上で“トールズ士官学院”第215回入学式を終了します。以降は入学案内書に従い指定されたクラスへ移動すること。学院におけるカリキュラムや規則の説明はその場で行ないます・・・以上、解散!」
男性の指示で白と緑色の服を着た生徒達が講堂から出て行き、講堂には赤い服を着た生徒のみが残った
「(残ったのは俺含めて11人。そのうち3人は顔なじみ。んで担任は)」
「はいは~い♪赤い制服の子は注目」
聞き覚えのある声に悠一を含めた4人は顔をしかめる
「どうやらクラスが解らなくて戸惑ってるみたいね。実はちょっと事情があってね・・・君達にはこれから“特別オリエンテーリング”に参加してもらいます」
話をしている女性の言葉に生徒は慌てたり、考えたりする
「それと悠一にフィー、何逃げようとしてるのよ?」
「・・・ばれちゃったね」
「はぁ~~」
気配を消して講堂から出ようとしていた2人は女性に声をかけられ足を止める
「まったく・・・・それじゃあ皆、私についてきて。それとユリシア、シルヴィア、その2人がまた逃げようするなら引っ張ってでもいいから連れてきて頂戴」
話を終えた女性は一足早く講堂から出て行き、遅れないように他の面々も講堂から出て行く
「ほら行くよ悠一君」
「メンドウな予感しかしないからやだ」
「フィーに同じ」
「しょうがないな~~」
2人に話しかけた少女“シルヴィア・リューネハイム”ともう一人の女性“ユリシア・ファランドール”は2人の返答にため息を漏らす。シルヴィアは悠一の耳を掴み引っ張っていく
「いででで!シ、シルヴィ!み、耳がちぎれる!!」
「人の話に耳を傾けない耳なんて千切れても問題ないでしょう?」
「Noooooooo~~~~!!」
「・・・悠一はあぁなったけど貴方はどうする?」
「自分で歩く」
身の危険を感じ取ったフィーは素直に行くことユリシアに告げた
「本当に耳がちぎれるかと思った」
「だ、大丈夫ですか?」
引っ張られ、痛む耳を摩る悠一にエマが声をかける
「まったく、悠一君、君は私達を率いる“長”何だよ?もう少ししっかりしてくれると嬉しいんだけど」
「シルヴィの言う通りよ。何の知らせも無く黙って何処かに行ったことは今日の夜に払ってもらうわ」
「勿論、私もね」
「Oh my Goodness」
いい顔で笑うユリシアとシルヴィアを見て悠一は明日の朝日を拝めるかどうか本気で心配になった
「それより気づいてる?」
「あぁ、見られてるな・・・数は2人って所か」
「どうする?」
「敵意はないし無視で良いだろう」
古びた校舎を見下ろせる丘を見ながら対処しないでいいとフィーに告げるも、悠一は丘を一瞬だけ睨むと校舎に入っていった
「完全に気づかれてたな」
「そうだね。あそこからここまでかなりの距離があるっていうのに」
丘のふもとで青年と少女が校舎に入る12人の赤い服を着た生徒を見ていた
「それにしても今年もかなり可愛い子や将来有望な子がいたね」
「お前、いい加減その癖どうにかしろ。お前のせいで去年何人の男子が泣いたことか」
「無垢な女の子たちを毒牙から守るのが淑女たる私の務めだからね」
「はぁ~~~」
何を言っても無駄だと解った青年は盛大にため息を吐くと
「ま、せいぜいお手並み拝見と行かせてもらおうか」
校舎に入った生徒達に同情のまなざしを向けながら呟いた
「さて、取りあえず自己紹介をしておくわね。サラ・バレスタイン、君達“Ⅶ組”の担任を務めさせてもらうわ。よろしくね♪」
女性、サラ・バレスタインはウインクをしながら自己紹介をする
「な、Ⅶ組・・!?」
「ふむ・・・?」
「あ、あのサラ教官この学院の1学年のクラス数は5つだったと記憶していますが。それも各自の身分や、出身に分けだったはずじゃ」
「あら、さすがは首席入学。良く調べているじゃない。そう5つがあって貴族と平民で区別されていたわ。・・・あくまで去年まではね」
サラの去年と言う単語に何人かの生徒がざわめく
「今年から新しいクラスが立ちあげられることになったの。今ここに居る君達・・・身分に関係なく選ばれた“特科クラスⅦ組”が」
サラが新たに設立されたクラスの発表を告げると一人の青年がそれに抗議し、貴族の青年との言い争に発展した
「(聞いていた通り、ううん、それ以上ね)」
「(あぁ。貴族と平民のいがみ合い。あの国ではそんなことなかったがな)」
「はいはい、喧嘩なら後で思う存分やらせてあげるから、今は静かにしなさい」
「サラ、そこは止める所じゃないの?」
「いいのよ。納得がいかないなら納得するまでやらせてあげるのが一番。それにそろそろオリエンテーリングを始めないといけないしね~」
「オリエンテーリング・・・それって一体何なんですか?」
「そういう野外競技があるのは聞いたことがありますが」
エマと一人の少女がサラに質問した時
「・・・もしかして、門の所で預けた物と関係が?」
「あら?いい勘をしてるわね」
サラは一歩下がる
「(ユリシア、シルヴィ、フィー)」
「(えぇ)」
「(うん)」
「(ん)」
何かくると思った悠一は3人に声をかけると4人はあくまで自然な状態で構える
「それじゃあ、始めましょうか」
そしてサラが近くにある柱に取り付けられていたレバーを下げると、生徒達がいる床が傾きはじめ、生徒が下に落ちて行ったが、
「大丈夫かエマ?」
「は、はい。ありがとうございます」
「傾いてる床の上に立ってられるなんて・・・・相変わらず常識はずれね」
お姫様抱っこでエマに問いかける悠一。そんな悠一を呆れた表情で見るサラ
「少し悪ふざけが過ぎるんじゃないですかサラさん?ってか何で怒ってるんですか?」
「何でかしらね?兎に角、アンタ達もさっさと降りなさい」
「はいはい。エマ、舌噛むなよ」
「ま、待ってください!?まだ心の準備・・・きゃぁあああ!?」
エマの返事を聞く前に悠一は床を蹴って下に降り、それに続くようにユリシア、シルヴィア、フィーも下に降りて行った