「よっこらせっと」
「思ったより深くないわね」
「この程度だったら身構える必要なかったわね」
「ん。でも1人だけ大丈夫じゃなかったみたいだよ」
フィーは悠一に抱えられているエマを指さして言う
「・・・エマ?」
フィーに言われ、悠一がエマの顔を覗き見すると、目を回していた
「エマには刺激が強かったみたいだな」
「悠一、上着を脱いで彼女にかけてあげなさい」
「おう」
悠一は気絶しているエマを壁に寄り掛からせると上着を被せたと同時に何かを叩いたような音が鳴り響いた
「・・・ここ・・は」
「お、ようやく気が付いたか」
意識を取り戻したエマが最初に見たのは自分を覗き込む悠一の顔だった
「こ・・・こ・・は」
「旧校舎の地下だ」
「旧校舎・・・の・・地下?・・・っ!!」
エマの意識がだんだんと覚醒していき、色んな事を思い出すと、悠一の服を掴む
「行き成り跳び下りるなんて何考えてるんですか!?怖かったんですよ!!」
「はははは」
「笑って誤魔化さないでください!!」
笑う悠一にエマが注意する
「所でこれな~~んだ?」
悠一はあるものをエマを見せる
「それは・・・私の眼鏡!?」
「眼鏡をかけてでも美人だったが、素顔だとまた違った破壊力があるな」
「か、返してください」
「ほい」
「・・・やけにあっさりと返しますね」
「寝顔と共にたっぷりと堪能させてもらったからな。でもまさか、あんな古典的な寝言を言うとは思わなかった」
「うぅ~~~」
自分の寝顔と寝言を聞かれたことにエマは恥ずかしさで顔を赤くして顔を俯かせた
「所で他の人達は何処に行ったんですか?」
数分かけて落ち着いたエマが周りを見回しながら尋ねる
「他の連中なら、旧校舎1階に戻るために先に行ってるぜ。俺はエマが起きるまで待ってたのさ。気を失わせたのは俺のせいでもあるからな。あそこにエマが校門で預けた物とこれに必要な物が入ってる。持ってるんだろう、入学案内書と一緒に送られてきた戦術オーブメント」
「えぇ。悠一さん、やっぱりこれって」
「御察しの通り、戦術オーブメントだ。何でもラインフォルト社とエプスタイン財団が共同で開発したそうだ。第5世代戦術オーブメント“ARCUS”それがこれの名称だ。箱の中に特別なクォーツが入ってるから。まずはそれをセットするんだ」
「解りました」
悠一に言われエマは自分の荷物がある台座に行き、小箱の中に入っていた珠をオーブメントの組み込むと、オーブメントが淡く輝く
「エマと“ARCUS”の同機も完了したことだし、旧校舎1階目指して俺達も探索を開始するか」
悠一は入り口に立てかけていた刀を手に取り、腰に差す
「一応聞いておくがエマ、魔獣との戦闘経験は?」
「一応あります。ですが、悠一さんみたいに戦えるかといわれると無理です」
「だよな。エマはタイプで言うなら後衛だからな」
「そこです!」
他のメンバーたちよりも遅く探索を始めた悠一とエマは途中で遭遇した羽の生えた猫型の魔獣と戦っていた。前衛に悠一、後衛にエマ、ツーマンセルとしての基本的な配置で戦っており、エマに実戦経験を積ませるために態と抜かした魔獣にエマが持つ導力杖から放たれたエネルギーの塊に当たり魔獣は消失した
「ふぅー何とか倒せました」
「悠一はスパルタだからね」
途中で合流したフィーが同情するようなまなざしでエマを見る
「所でフィー、お前何で戻ってきたんだ?」
「奥まで普通に行って、入ろうとしたんだけど。やな感じがして戻ってきた」
「嫌な感じ?」
「ん」
悠一の問いにフィーは頷いて答えた
「お前達は」
「お前は。俺達より先に探索に行ったって言うのにまだこんな所にいたのか?」
「もしかして迷子?」
「そんなわけないだろう戯けが。1人で行動してるのだ、慎重に動くのは当然のことだ」
「理にかなってるね」
「そうだな。眼鏡の男子と同じで頭が固いと思ってたんだがな」
「俺の頭はあそこまで固くはない。それはそうと貴様、制服の上に羽織っているのは何だ?」
「これは“陣羽織”て言って東方の物だ。俺は(設定上)東ゼムリアから来たんだよ」
「東ゼムリア?あの東ゼムリアからか?」
金髪の少年は悠一の言った“東ゼムリア”というワードに目を見開く。ゼムリア大陸は西と東に別れており、東ゼムリア大陸は謎の怪奇現象により大地は枯渇し、人が住めるような場所ではなくなったのだ
「そう言う事だ。そう言えば自己紹介がまだだったな。氷室悠一だ。んでこっちが・・」
「フィー・クラウゼル。フィーで良いよ」
「エマ・ミルスティンです」
「・・ユーシス・アルバレアだ。それより腰に差しているその剣が貴様の得物なのか?」
「あぁ。東方に伝わる刀だ」
「見せて貰ってもいいだろうか。これでも剣士の端くれでな、東方の剣に少し興味がある」
「構わないぞ。重いから気を付けろよ」
悠一から刀を受け取ったユーシスは鞘から刀を抜き、顕になった刀身を見つめる
「“紫微垣”それがその刀の名だ」
「・・・見事としか言えんな。今まで一流職人が作った物を見てきたが、これはそれと同等、いやそれ以上かもしれない。感謝する」
刀を一通り見定めたユーシスは悠一に刀を返す
「さて、ここであったのも何かの縁みたいだし。一緒に行かないか」
「・・そうだな。だが、足手まといにはなるなよ」