オーディナル・スケール 少し違う世界の物語   作:夜桜の猫の方

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どうしてこうなった。
あと、ちょっとだけ注意して読んでください。
相方の得意分野がこれでもかと入っているので。


堕ちた少女と巫女の記憶

髪は黒色。腰ほどまで伸びていてバルコニーに流れる陽気な風が緩やかに靡かせていました。瞳の色も黒。それもただの黒ではなくオニキスの様に美しい漆黒でした

ただし、顔立ちと身長は十代半ばと言って良いでしょう。

しかし、夜が明ける朝日と雄大なビル群が立ち伸びる都心を眺めるその少女は優雅と言えるでしょう。寝間着の黒のパーカーから伸びる雪の様に白い脚線が朝日を浴びて美しく扇情的に見えました。

はい、私です。 ………ごめんなさい。一度やってみたかったんです

近くのテーブルに置いたカップを取り、瑞々しい桜色の唇に合わせコーヒー

ではなくホットココアを飲み干します。

 

「…ほ。朝はこれに限りますね~」

 

都市を照らす太陽の光は眩しいけど嫌でない。むしろ、暖かな日差しが冷め切った体を撫でる感覚が癖になっていると言いますか

あ、どうでも良いですかそうですか。ふむり、()()()()()()()が新鮮過ぎて眠るに寝付けなかったですが今は許しましょう。それほどまでに私にとっては衝撃でした。

同じテーブルに置いていたオーディナル・スケール専用のスティック型コントローラーを取ってまじまじと見つめます。昨日はコレで素振りをしていたから中々寝付けなかったのかな?

 

「らしく、ありませんね。」

 

そう言いつつ頬が緩むのは止まりません。止める気もありません

さ、早いですが朝食でも食べて昨日の続きとゆきましょう。

そう意気込んで台所へ向う途中、ピンポーンと来客が来た事をベルが知らせます。

誰でしょう?一戸建ての住宅なので大家さんでもありませんし回覧板は昨日回しましたし。はーいと玄関を開けます。

そこに立っていたのは若い男性でした。

社会人なのか紺のスーツを身に纏い()()()()をかけていました。

それ以外はコレと言って特徴はありません。

 

「あの、どちら様です………………」

 

私が言葉を区切ったのは目の前の男が何か粗相をしたからではありません。

その手首を見たからです。ついでに言えば先ほどの陽気な感情も霧散していました

 

 

 

――――本当、サイアク。

 

 

「何の用ですか、赤眼のXaXa(アカメのザザ)

「貰いに、来た」

 

空気すら凍死するほどの視線と声と態度で出て行けと言外に告げたが効き目なし。

おまけに()()()()()

 

「………何を所望で?」

「永遠の、絶望と、再生」

「数は」

「3本で、いい」

「……40万と3071円、現金以外お断り」

 

心すら無表情になり値段だけ突き付けるとザザ(コレ)は膨らんだ茶封筒を無言で渡す

中身を確認することも無く無造作に掴み、台所に向かう。袋をベッドに放り投げ

ちょっと古びた白い冷蔵庫を開ける。凍らしていた()()()()()()()()()()()()()を取出し、それを床に叩きつけたい衝動が沸き上がるがクロムの仮面で潰す。

―――ほんと、嫌になる(殺したくなる)

 

「………」

「………」

 

会話なんてない、したくない。早く消えろとだけ込めて物を渡してドアを閉めようとする

だが、その直前

 

「お前の、面白い物(全て)は、等しく潰える。それは、現実でも、例外ではない」

 

ドアを閉める手を止め、射殺す視線でどういう意味だと問う。

しかし、ザザは耳に残る卑屈笑いだけ残して去ってしまった。

問い詰める気は………………ない

 

「…………ッチ」

 

舌打ち一つを盛大に打っても気分なんて晴れない。当然、食事する気も起きない

シャワーでも浴びて流してしまおう。この気分も空腹も、殺意と嫌悪感さえも

脱衣所で衣服を乱暴に脱ぎ、ある物を取ってシャワー室へ入る。

そのまま冷水を頭から被り、無心になって水を浴び続ける。

それでも、このドス黒い感情は止まらない流される事なく濁流の様に溢れ出す

 

「ッ!!」

 

とうとう抑えきれなくなって、持ち込んでいたナイフを鏡に突き刺す。

バリと罅割れた鏡は一片も零れることなく堕ちた少女を映している

体を穢された事など一度もない純潔な白い体。

だが、少女が平穏に生きる事を、この黒い感情と今にも吐きそうな表情。

そして、ザザの手首にあるモノと同じエンブレムが許さない。

10年前に焼き付けられた刻印――笑う棺桶(ラフィン・コフィン)の焼印

それが二つ。左胸のやや右とお腹の下辺り。つまり、()()()()()に当たる部分

これが意味する事は

 

少女()の生涯は血と骸に埋まれ、少女()の産む子供は殺人鬼の人形と化す』

 

何度も刃で切りつけた、何度も消えてと突き刺した

でも、消えない。消える事ない呪い。私が行った切り傷(反逆)は善の人達によって消えた。そして、ヤツラは求めた。人を殺せるモノを、(道具)を―――

 

「なに言ってんだか。この心は……私も同じでしょうに。」

 

悲劇のヒロイン(し▼うじ■)演じて(生きて)楽しいですか?

ねえ、嗤ってみなよ、(●つ■んき)

 

 

なんだ、笑える(嗤える)じゃん。てか風邪ひきますね。早く上がりましょう。

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

夜が明けてから数刻、時計の針がどちらも真下を過ぎた頃

自他共に認めるパソコンオタクこと俺――桐ケ谷和人がデスクトップパソコンを眺めていた。勿論PC用メガネはしているとも。最近目が悪くなってきたし

 

「バックシークエンス83%。プログラムインストール98%。

  データ保存シークエンス99っと、100%になった。」

 

で、俺は今何しているかと言いますと、茅場さんから貰った謎の箱の解析中。

どうやらUSBケーブルでパソコンに繋げられたのでインストール中というわけだ。

ちなみに木綿季と直葉はまだ寝ている。昨日のイベント戦(恥ずかしいから詳細は言わない)

の疲れもあるだろうに、その日の夜は珍しくご馳走にフルコースと3人だけでパーティーを開いたんだ。

二人とも疲れているのに腕を振るって用意してくれた料理は最高で、思わず涙ぐんでしまった。

まあ、イベント戦の発破の事も散々言われたが……

木綿季と直葉が格好良かったよって言ってくれたのが救い。

でももう許して。和人のライフはもう0よ!

その後、疲れて眠ってしまった妹二人は寄り添うようにソファーで眠ってしまい

2人に毛布を掛けてから後片付けを終え、さて眠っている二人でも撮影してやろうと

魔が差した。そのおかげで二人から『すきだよ……和人(お兄ちゃん)

と言われたのでこれは明日の朝にネタになるなと思ったしだいです。

その時の顔はこれ以上にない程に真っ赤だったけど(俺が)

本当にいい妹達に恵まれたよなーと思いつつ部屋置きのコーヒーメーカーで一杯を注ぐ

他の所とは比較にならんとか、妹達とイチャ付きやがってこのラノベ主人公とか

友人たちの言っていたのはこの事だったらしい。今度、何かしてやろう。

…………彼女作りとか?絶対、拳が飛んでくるな。

そう思いつつコーヒーを飲んでいるとPCから音が鳴る。

どうやらシークエンスが全て終わったらしい。

てことで起動ッと

 

「さて、蛇が出るか鬼が出るか。今からたの「蛇でも鬼でもありません」

  へ?」

 

声を遮る様に俺以外の声。少女の様に高いソプラノの声が聞こえ部屋の中を見渡す

だが、俺以外誰もいない。言ってしまえば木綿季と直葉の声でもない。

じゃあ誰が?と疑問に思っていると

 

「こっちです。貴方の目の前です。」

「うわぁ!ま、またって、目の前?」

 

目の前にはPCしか……いや、画面中央にいつの間にか()()()()

ショートヘヤーでお下げの髪型をした10歳と言っても良い程の女の子

来ている服は巫女を彷彿させるかの様な蒼いワンピース。

そして、腰に下げた細剣(レイピア)。画面の中であっても銀の輝きを放つそれは

少女に、以外にも様になっていた。

うん、言葉は冷静だけど中味は?マーク一杯てねハハ!

…………もう、どーにでもなれ

 

「えっと、君は?」

『初めまして。私は“プレミア”といいます。』

「プレミアさんね。俺は和人、桐ケ谷和人だ。よろしく?」

『はい、よろしくお願いします。』

 

うん。コミュニケーションは大事なのだよ諸君。(元ボッチ)が何言ってんだっての

ふと疑問に思ったのだが、彼女はAI?それとも茅場さんと一緒に働いている人?

そんな事を考えていたらプレミアさんが画面近くに寄って来た。

 

『あの、オーグマーを起動してくれますか?』

「へ?どうして急に」

『実際に目と目を合わして話した方が腹を割って話せると、アキヒコさんから聞きました』

 

アキヒコさんって。でも、今も実際に目と目を合わしているような

あ、その上目づかいに俺は弱いんだって。主に妹達のせいで

 

「わかったよ。オーグマー、起動!」

 

俺の音声からオーグマーが起動する。途端に意識が()()()()()()感覚に襲われるが

なんとか押さえつける。数秒もしない内に視界内に大小様々なホログラムが浮かび上がる。

さて、これで良いかなと画面の少女に向き直ると、彼女は一つ頷いて

 

『プログラム(リアル)、顕現開始!コード、『プレミア』!!』

 

一際高い声で呪文の様に何かを唱えた直後、画面が白い閃光で覆われる

余りに眩しく目を背けると()()()()()()()が側を通り抜けていく

それは部屋の中央に集まり段々と集合していく。

 

「これは、一体……」

 

幻想的とも取れる光景に唖然となる和人。そんなものお構いなしに集合は続く

やがて、ふわりと宙に上がり、青が眩い白へと変わっていく

眩い光は目を貫いて痛みすら感じるがそれでも見続けていると

中央に、人のようなシルエットが…………

和人がそれを凝視しようと目を凝らした瞬間、今まで以上に光が強く輝き思わず腕で遮る

しばらくして腕を取ると、先程の所に()()()()()()()()()()()()がいて

白い破片を散らしながら落下し始めていて

 

「危ない!」

 

咄嗟に飛び込みなんとか受け止める。急な運動を行ったからか足が痛むけど

それよりも驚愕が大きかった。

この少女の()()()()()を感じる、と。

この暖かさは、重さは真実だと()()が告げていた。それこそ、木綿季や直葉と何ら変わらない現実の物だと。だが、彼女の巫女服の様な格好は変わってない。

なにより腰に下げた剣帯が、そこに収まっている細剣(レイピア)が非現実だと訴えている。そして、今も不安定な()()()が走る手足。

和人の脳のキャパシティーが限界を迎え始めた

 

「君は、一体……それに、さっきのはなんなんだ?」

 

プロジェクト(リアル)彼女はそう言った。そして、今

此処から導き出す答は――――まさか………

 

「君は、AI、なの「やっと、やっと会えました。()()()()()

 

和人の胸に顔を埋め、声を湿らせながら言う()()

いや、実際に声を殺して泣いている。

………これじゃあ、さっきの質問は聞けないな。

そう思いつつ慰める様に頭に手を置いた瞬間

『逃げろッ!!プレミア!!』

脳内を埋めつくす光景(ソレ)と声に絶句する。顔は良く見えないが

黒いロングコートに青と黒の二刀を振るう青年(誰か)

青年が対峙するのは闇に覆われた巨大な何か(絶望を纏う災禍の化身)

彼は()()()()()で咆哮を上げソレに立ち向かっていた。

そして、それから目を背ける様にノイズが走った瞬間、場面が切り替わる。

紅い。紅い黄昏空は終焉を告げる様に酷く不気味で

背けていた視線を戻すと、目につくのは地面に突き刺さった青と黒の剣(墓標)

それにフラフラとした足取りで近づき、目前で崩れ落ちる()()()()()()()()()()

その隣には寄り添うように銀の細剣が、鍛冶屋の槌が、水色の羽をかぶせる短剣が

風と炎を纏う二振りの刀が、巨大な斧と大剣が、冷たい狙撃銃が、紫紺の両刃剣が

金を施した短剣が、音符を施した槍と二振りの剣と蒼い大剣が、黒い巨剣に寄り添う細剣が

青い巫女服を着た少女(プレミア)の目の前で輝きを失っていた(死んでいた)

 

「あ、ああ、●▼ト、ア■ナ、▲ズ、●リカ、リ―▲、■ライ▼

  エ▼●、スト●ア、▲ノ■、ユ■キ、▼リア、セブ■、●▼ン

  スメ▲ギ、ジェ●シ▲、お姉ちゃん―――ああ、あ、ああ――」

 

誰も少女の声に答えない。誰も返事(生きて)しない。目線を凝らすと

その奥にも、さらに奥にも続いている“剣の墓標”。そこに居るのは少女(プレミア)だけだった。少女の心が砕けるのは必然だった。

 

「ああ、アあアああ、あア―――――――――――」

 

少女の慟哭が響き渡る。たった一文字を、ごめんさいと、いやだ、と

それを()()()()()()()()()()()俺は、俺は―――――

 

 

『同情か?哀れみか?』

違う。そんなものじゃない。これは―――怒りだ。

『この光景は()()であり()()()()()()だ。』

そうか―――

『だから、君が抱く怒りはエゴであり、ただの自己満足だ』

そうか――――で、()()()()()()()()

『ほう』

そうだ、この感情はエゴだ。それで俺が動いたって自己満足かもしれない。

でもな――

「そんな自己満足(エゴ)()()()()()を変えてやる」

差し当たって、まず最初にいつまでも泣いている彼女(プレミア)を泣き止まそうか

 

 

 

和人がプレミアの近くまで寄り、涙を流す彼女を()()()()()

プレミアの慟哭が止み、白衣を着た長身瘦躯の男が目を見開く

 

「悪い、遅くなった」

『――――――キリト』

 

和人――キリトがもう一度強く抱き、プレミアから離れる。そして

地面に突き刺さった『ダークリパルサー』と『エリシュデータ』の柄を握る。

その瞬間流れ込んでくる情報圧。だが、それは懐かしく心地よい物だった。

 

「スゥ―――――ラアァ!!」

 

深呼吸から気合一声に地面から相棒たちを引き抜く。

それと同時に波紋の様に広がる青と黒の煙。ソレが急速に広がり

紅い黄昏を暖かい夜空へ

焼け焦げた台地を命芽吹く草原へ変えていく。

その大地に佇む剣士、いや、剣士(仲間)たち

 

「さあ、行こうか」

 

プレミアは涙を流したまま、小さな花の様に――――

 

―――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 

ハッと目の痛みに目を閉じれば、先程の光景は無くなっており

いつもの自分の部屋に和人はいた。

さっきのは何だったのだろうかと目線を下げれば、泣き止んだが離れないプレミア

 

「過去、そして確定した未来か………」

 

アレがただの寝不足による妄想だとは考えられない。それ程までに鮮明で

現実(リアル)だったのだ。

そして、俺と話していたあの男。恐らく茅場さんだと思う。

彼は最後の瞬間何かを言っていた気がする。それも()()()()()()()()()()()

嫌な予感しかしないが、一先ずは

 

「ほら、プレミア。俺と話したい事が沢山あるんだろ?」

「はい」

「なら、そろそろ話そうぜ。直葉や木綿季が来るかもしれないから」

 

今の現状を見られたらロリコンと間違われるよな。と冷や汗を欠いていると

ガチャリと

 

「かず兄、さっきから女の子の声が…………」

 

あ、ユウキ=サン。なんとタイミングの良いことで

 

「あの、木綿季。これには太平洋並みに深いワケが

「やっぱり、和人はロリコンだったんだね」

「待て、俺はロリちょっとまって!“やっぱり”って言ったか!?」

「しんじ、信じてたのに…………」

 

いよいよ泣き出した木綿季に和人が話を聞いてくれと言おうとするが

木綿季は駈け出してしまう!

 

「和人のランスロット~~!!!」

「いや、FGOは関係ないだろう。

そうじゃなくて、待って!お願いだから話を聞いてくれ!!」

「?」

 

急いで木綿季を追い掛けた和人だが

直葉に泣きついてさらに混沌が加速したとだけ言っておこう。

あと首を傾げているプレミアさん。貴方が原因ですよ。

 

「えっと、ごめんなさい?」

 

天使だから許す。以上!ホラ、プレミアさんも追い掛けないと(純粋スマイル)

 

「誰だかしりませんが、解りました」

 

よし、任務遂行。

 

『令呪を持って命ずる!ユウキお姉ちゃん、ヴォーパルストライク!』

『うわ~~~!!和人のバカ~~~~!!!』

『待て、待って!!ぎゃあああああああああ!!!!』

『えっと……これが修羅場というものでしょうか?』

だいたい合ってるとだけ言っておきましょう。




うん、何故かキリト君が主人公してらっしゃる。
あっれれ~おっかしいな~。プロットの段階ではヒロインだったのに。
いや、ヒロインか。絶望した彼女に次元とか仮想空間とか超えて抱きしめに行くとか
やっぱヒロインじゃん!(錯綜)

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