オーディナル・スケール 少し違う世界の物語 作:夜桜の猫の方
うん、重い。全体的にキリト君がヒロイン兼主人公してらっしゃる。
まあ、最初だし仕方ないよね!次回からユウキメインだしね!
だからユウキファンの皆さんは武器をしまってくださいお願いします。
『キリト、朝です。朝ごはんの時間だとリーファが言っていますよ。』
「ん……むぅ……」
そろそろ夜も気温が高くなってきた今日この頃
早めに布団を取り替えていたので少し肌寒いと思い毛布を手繰り寄せようと手を伸ばし
『ひぃ!』
突然、脳に響くように高いソプラノの声――と言うより悲鳴が聞こえてきた。
半場寝ぼけて怠い体を起こし目を開けると
「キリトは朝から大胆です。」
ベッドの上に独特な青巫女衣装のプレミアが座っており、雪のように白い頬を若干朱に染めている。
そして何故か手から伝わる
プレミアの太ももに手を這わしている手が―――あ!?
「ごごご、ゴメンッ!!?」
初速からトップスピードで手を引き羞恥やらナンやらで後退りし
あ、と声が聞えた瞬間に後頭部を壁に強打する。ついでに肘も
つか、ドンではなくゴンッ!と響いたため相当痛いとプレミアは思っていた
事実、和人は「うおおおぉぉぉぉぉ~~」と言いながら蹲っている。
と言うより、プレミアが見えている時点で気付いたがオーグマーをしたまま寝たのか首も痛い
と、呻き声を上げる和人を見ながらプレミアは首を傾げていた。
ユウキの頭はよく撫でるのに何故自分に触れただけでこうも驚くのか?と
和人が無様に唸っていると、プレミアなりに結論が出たのか
『キリト』
「は、はい!!」
『触りたいのですか?』
「ほわァ!?ななななぜ!?」
『ユウキにはよく頭を撫でるのに、他の女性には奥手だとリーファから聞いたので
私も撫でて欲しいのです』
「あ、あ~そういう
『あと、リーファからキリトは欲求不満だと
「ちょっと待って!!?俺はそんな事一度もないいやこれも誤解を生む発言だけどユウキだけで満足できちゃうというかいやこれもダメだ
ほかの女性には恐れ多いというかユウキには壁が無いというかつまりそう言う事だ!!」
『は、はあ。』
ゼエゼエと肩で大きく息をする和人に首を傾げながらも何となく解ったと言うが
和人は朝から体力の6割を持っていかれたと嘆息する。
プレミアが桐ケ谷家に来てからもう3日は経つが、その間にプレミアに振り回されっぱなしだった。
主に、俺が。木綿季や直葉とは最初こそ訝しめ―――いや、俺だけが説明していた時だけだったな。
最初から木綿季は持ち前の元気さと無邪気さですぐに打ち解けて、俺が寝るころには直葉とも楽しく話していたな。
俺達はなんだかんだ言いつつ、新しい
ん?妹が多すぎる?いや、これだと長男だと言うのに肩身が狭くって。
でも、木綿季や直葉、会って数日のプレミアは俺の事を慕ってくれている。
俺か?愛する妹達を無下に扱うとでも?シスコンでも何とでも言いたまえ!中が悪い妹や姉がいる人には
悪いな、
『あ、今リーファから連絡が。……どうやら早く来なさいとの連絡です。』
「スグは俺達のオカンだからな。じゃ、お母に怒られない内に行こうか。」
ベッドから下りて体を伸ばした後、先程の会話を思い出してプレミアを近くに招く。
頭に?マークを出しながらも近寄ってくれたプレミアに
「さっき羨ましいって言ってたからな。ちょっと、失礼して。」
ポンと深い海を彷彿させる髪色の頭に手を置き、木綿季にするように優しくそれでいてこっちの温度が伝わる様にちょこっと押して撫でる
最初は驚いたのか肩を浮かせたが、今はホニャと表情を崩しているので間違っていないのだろう。
しかし、手から伝わる髪質や温度は現実のそれと驚くほど変わりない。
彼女は、言ってしまえばオーグマーが見せるホログラムの一つであり
AI、つまり生身の肉体を持っていないのだ。
(だけど、プレミアは既存のAIのレベルには当てはまらない。)
異端ではない。
何となく、自分でも自分に辟易しながらプレミアの事について尋ねたのだが
プレミアはそこらのAIの超強化版
電子的に複製された魂―――人工フラクライトという物らしい。
詳しい話は木綿季と直葉がいたから話せなかったけど
しかも、そのプロジェクトには茅場晶彦の名前があったらしい。
俺は聞いた当初は困惑と驚愕と―――ほんの少しばかりの忌避感を覚えてしまった。
そのような非人道的行為を人間が、ひいては
そんな心の忌避感にプレミアは気付いた。いや、気付かせてしまった。
だから、プレミアが今にも消えてしまいそうな程に儚く笑って
俺が息を飲んでいる間に立ち上がった瞬間
俺は自分で自分をぶん殴った。それこそ歯が折れて出血する程に強く
ギョッとして振り向いたプレミアを引き寄せて何処にも行かないように。消えてしまわないように強く抱いたのを今でも覚えている。
勿論、電脳世界の住人である彼女は何時でも抜け出せたのだが、彼女は放心したかのされるがままだった。
『なぜ、AIである私を抱きしめるのですか。私は、人間ではないのですよ。』
呟くように、それこそ拒絶するように言葉を漏らした彼女に
俺は『ごめん』と言った。
『AIとか人間とか、そんな事は最初からどうでも良かったんだ!ただ、俺がバカで、どうしようもない大馬鹿野郎だったからだ!!』
『意味が解りません。キリトの言う事は
『ああ。ああ。ならストレートに言ってやる。
君は、プレミアは人と同じ教養を持っている。人の様に考察だってできる。』
『言語プログラムです。そこらのAIにだって入ってます』
『プレミアは
『それは、オーグマーの疑似感覚に過ぎません。本当の私は、あの箱ですから。』
『君は、プレミアは、
『それは……私が学んだ不完全なものです『不完全なのは当たり前だ!』ッ!?
それは、どういう……』
『心も、感情も
嬉しかったらさっきみたいに笑って、不意に触れられたら恥ずかしがるんだよ。
大切な人を失ったら
こんなにも、こんなにもプレミアは沢山の
それに気付かなかった俺がバカだったんだ!大切な
『和人は、こんな私を、プレミアを家族だと思ってくれているんですか』
『当たり前だ!!こんな簡単な事にも気付かない馬鹿な兄貴で、本当に『なら』
『…………なら、もっと強く、何処にも行かないように強く抱き寄せてください。
じゃないと、どこかに、消えてしまいそうになるから……』
『ああ。『もっと強くです!!』ああ!!』」
その後は、俺の体温を、温もりを求める様に痛いくらいに抱き合って
俺は誓ったんだ。この子を、何としてでも守るって。
ああ、子供の、15年程度しか生きてない少年の一時の迷いと言う奴がいるかも知れない。
そんなの知った事じゃない。あの時の記憶に感化されたわけじゃない。
これは、俺が
それに、兄貴っていう生き物はな――妹の事になると誰よりも最強になるんだよ。
……うん、最近で言うと、あのイベント戦の発破みたいに。あの時を学校でもからかわれて転げまわったのはここだけの秘密。
いや、ホントに、明日奈みたいにいかないな~としみじみ
「さ、直葉の朝食を食べて来るよ。今日は学校休みだし、どうしようかな?」
『そう言えば、今日は休日と言うものでしたね。それなら……』
ちょっと名残惜しそうにしているプレミアに思わず微笑んでしまうのは悪く無いはず。
べ、別に、ロリコンじゃないんだからね! なにやってんだ俺。
と別方向に気が沈んでいた俺の眼前に地図が現れる。それはグーグル先生のホログラム地図で、既に何処かを目的地として設定されている。
『今日、この場所にキリト達と一緒に生きたいのです。私が、生まれた場所です。』
その場所は
プレミアが生まれた場所。そして≪オーディナル・スケール≫を開発したゲーム会社。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
朝食を食べ終わりプレミアが先ほど言った事を二人にも伝えたのだが、直葉は部活らしく行けないそうだ。
ちゃっかりお土産を頼む辺り内の妹はしっかりしているな~と。
ちなみに明日奈達にもメールで送ったが全員が用事があるそうで。
…………俺、嫌われてる?
「かず兄は嫌われてないから大丈夫。多分、皆は買い物に行くんじゃないかな?」
「そっか。あれ?何で木綿季は買い物だって解るんだ?」
「か、勘かな。女の勘って……そんな事どうでもいいからさ!早く準備しよ!」
「お、おう。」
なんだ、木綿季の奴。急にあたふたと慌てだして。
ん~それにしても木綿季と二人っきりか。あれ、それって
「二人っきりって事は、デートって事になるのか?」
「ででででデートおぉ!!?い、いや、兄妹だよ!?ただ二人で行くのんは変わらないでひょ!?」
「呂律まわってないぞ。あ~ま~……別に、良いんじゃないかな。」
「~~~~!!す、直ぐに準備してくるから!!」
あ、赤くなって行ってしまった。うむ、何か怒らせるような事しただろうか……
やっぱ俺って嫌われてるのかな……おにいちゃん悲しい。あ、脳内に琴の音楽が
『キリト、私もいるので三人でデートですね。』
「ん?あ、そっかプレミアもいるから……デートじゃないな。」
『違うのですか?辞書によれば男女二人の営みや爆発するべき存在と書かれてますが』
「プレミアさん、それは誤情態だから違うな。あと、それは辞書に失礼だから。」
『そうですか。では、いずれかの機会にデートと言うものを教えてください』
「ああ、その内な」
何時の間にかプレミアとデートする流れになってしまった。プレミア恐ろしい子!
まあ本人が純粋さ100%。だから俺もついつい答えちゃったけどさ。
別にいいかなと思ってしまうあたり、俺はつくづく妹に甘いシスコンなんだろうな。
『キリト?なんだか楽しそうですね』
「ん?ああ、そうだな。」
とりあえず、今は恥ずかしいから誤魔化しておいて準備しよう。
俺も半端な服装じゃ木綿季に悪いからな。
駅を乗り継いで東京の六本木までやって来た俺達は駅で買ったサンドイッチ片手に目的地に歩いている。
ちなみに、俺の服装は黒のジーンズに深青のシャツにベスト。その上に銀のラインが入った黒のちょっと大きいパーカーだ。
あと、プレミア(箱)を入れるためにちょっと大きな背負いバッグと割と軽装だ。
本当は明日奈達がプレゼントしてくれた(なぜに)空色のマフラーがあるのだが
「さすがに都心は暖かいな。もしかして、マフラーしてると暑いか?」
「うんん、むしろ……やっぱ何でもない。大丈夫だよ」
隣で笑う木綿季に貸している。ちなみに木綿季は俺以上に軽装で一見すると紫のニットワンピースに黒タイツに黒スニーカーと
急いで着替えて来たと勘違いしそうになるが、ニットワンピを脱いでもブラウスにショートパンツを着ている、らしい。
あとヘヤバンドをしていて、VR空間のユウキと同じモノだ。
そして極めつけは髪型だ。なんと、二次元でしか見た事のないサイドテールなのだ!紅魔族のフランちゃんなのだよ!
つまり、天使だ。異論は認めない。思わず「……かわいい。凄く似合ってる。」と言ってしまった。
そんな軒並みの感想しか出なかったのだ。最初は天使を見た時の放心。で、何故に軒並みな感想かと言うと
『どう、かな?明日奈やスグ達が考えてくれたんだけど…」
と、ちょっと頬を染めて上目づかいに聞いてくるんだぞ。撃沈しない方がおかしい
表面は妹をほめる兄を装ったが、心は!叫びたがっていたんだ!!実際に心は叫んだ。
勿論、移動中はドキドキさせられけど……木綿季がくしゃみをいた時にやっぱり妹なんだなと立て直せたからだ。
その時にマフラーを巻き兄としてしっかりしないとな、と誓った。
その2秒後の向日葵のような笑みの『ありがとう、和人』で砕け散ったけどな。かず兄でなく和人と言われて
こっそり心臓を抑えたのは内緒にしてくれよ。
『キリト、ユウキ、着きました!ここが≪ラース≫です!』
「ここが?へ~すっごい大きなビルだね。」
いつにも増してテンションが高いプレミアと木綿季の声にハッと現実に戻れば、いつのまにか目的地に到着したらしい。
俺も目前に建っているビルを見上げる。天を衝く、なんて言わないが周りに比べると高い方なのだろう。
AR世界のゲームとして最高峰の人気を誇る≪オーディナル・スケール≫を世に出した企業で
プレミアの
「でも、どうやって中に入るの?かず兄はアポ?って取っているの?」
「いや、プレミアが話を付けたんじゃないのか?」
『大丈夫です!その点はご心配なく。さあ、行きましょう』
ムフーと胸を張っているプレミヤに大丈夫かなと疑問は尽きないが、とりあえず当たって砕けろで行こう。
企業見学……は厳しいだろうな
なんて一人で悩みの溜息を吐きつつエントランスに入るが……誰もいない?
「あれ?これだけ大きいなら受付の係さんとかいると思うんだけど」
『あ、あれ?おかしいですね。ラースは24時間体制のブラック企業だとヒガさんから聞いたのに』
「ブラック企業って。それより、ヒガさん?それは……」
『はい。私を産んでくれたチームの一人だそうです。』
「……なるほど。とりあえず、受付の人が来るまで待ってようぜ」
そう和人が言った瞬間、横手のエレベーターが開き迷彩服を着た小柄な男性が出て来る。
「いや~やっぱVRにずっと入ってると肩が凝るっすね。」
―――――――――――――――――――――――――
≪ユウキ視点≫
「……なるほど。とりあえず、受付の人が来るまで待ってようぜ」
和人の言葉にそうだね、と返そうとした直前にエレベーターが開いて
何故かよくテレビで自衛隊の人が来ている服を着た男性が肩を回しながら出て来る。
身長は、結構小柄でかず兄より小さい。でも金髪だし顔は日本人ぽくない?
僕が言葉を発せないでいると和人が少し前に出て
「あの、すいません。ここの関係者ですか?」
「ん?だれっす…………」
驚かせないように声を掛けたはずなのに、男性はまるで
僕とかず兄が顔を合わせ困惑していると
『ヒガさん!』
とかず兄から声が響く。それからかず兄があーと言った後、スマホの画面を驚き固まっている男性へ向ける。
その画面ではプレミアちゃんが手を振っていて『私です!プレミアです!』と言っている。
そこで、ようやく
「ほ、本当にプレミアちゃん?じゃ、じゃあっすよ、君達が『キリト君にユウキちゃん』っすか!?」
なぜ僕達のアバターネームを?と訝しむと、どうやらプレミアちゃんが教えたらしく
かず兄が証拠としてオーディナル・スケールの
僕も慌てて同じプロフィールを見せると納得したように頷いた。
でも驚きは隠せないのか額をしきりに拭っている。
「ほ、本当っすね。ああ、申し訳ないっす。茅場先輩の子がまさか高校生に預けられるなんて
結構ビックリしたもんすから」
「いえ、お気になさらず。」
「…………ここに来たって事は、プレミアちゃんは……」
『はい。
「……そうっすか」
男性が我が子の成長を見守る父親の様に微笑む。それだけで、この人がプレミアちゃんをどれだけ大切に本当の娘の様に思っているって僕には解った。それはかず兄も同じなのか微笑んで
あれ?
「かず兄?顔が青いけどどうしたの?」
「あの、プレミアさん。先日お話って、どこまで話したんだ?」
あ、そっか。だから僕達の事をこの人が知ってたんだよね。
でも、なんでかず兄が血の気が引いたように顔が青いんだろう。
そして、先程よりも温かい目でかず兄に視線を向けると
「和人君。君はプレミアちゃんを俺たち以外で受け入れてくれた素晴らしい人であり
同時に俺達プロジェクトの人間には欠け外のない人物なんす!
だから、プレミアちゃんの事、よろしくお願いしますっす!」
大の男性が頭を下げて本気でお願いしていた。驚愕と同時に、それ程までに愛されているんだと思うと
こっちも身が引き締まる思いだ。絶対、和人も同じだろうと目を向けると
なぜか
「こちらこそ、根本がどうであろうとプレミアはもう家族の一員です。絶対にこの手を離さないと誓ったんです。」
「僕も、同じです。プレミアちゃんは僕達に任せてください!」
『キリト…ユウキ…』
「ああ、ありがとうっす!」
男性――ヒガさんは顔を上げると笑みを浮かべて礼を言ってくる。
う~ん、でも、お礼を言いたいのはこっちなんだよね。
ちら、っとかず兄の方を向くとやっぱり同じらしい。
「ヒガさん。御礼を言うのは俺達の方です。」
「へ?」
「プレミアを産んでくれて、出会わせてくれて、ありがとうございます。」
かず兄に続いてお礼を言うと、最初は呆けていたけど段々と涙ぐんでいくヒガさん
「―――—ああ、もう。感動で泣いたのって久し振りっすよ」
小さく言ったけど、僕達にはしっかりと聞こえていた。かず兄は今はそっとして置こうと目で言ってきたので
大人しく待っていると、ヒガさんが振り向きこの上ない満ち足りた顔で提案して来た。
「二人とも遠路遥々プレミアちゃんと来てくれた恩人っすからね。
どうっすか、ラースの見学もとい、プレミアちゃん達の
勿論、さいっこうに歓迎するっす!と提案してくれた。あと、プレミアちゃんが端末の中で目を輝かせている。
そのままかず兄と話すと、僕に視線を向けたので勿論頷く。僕も会ってみたいからね!
「じゃあ、お言葉に甘えさせてもらいます。」
「オッケーすよ!じゃあ早速っとその前に……これにプレミアちゃんを繋いでくれるっすか」
「は、はい。良いかプレミア?」
『はい!勿論です。」
かず兄が受け取った片手ラジオのような物にケーブルを差し込むと
突然に和人の頭上の空間が歪み始めた
「か、和人うえ、上!!」
「上?上がどうしたって……え!?」
変化はソレだけに留まらず、その亀裂から蒼い何かが出て来て落下し始めた。
僕がギョッとして驚くのと、和人がその何かを受け止めるのはほぼ同じだった。
思わず踏鞴を踏む和人だが、落ちてきた
「ふう。ありがとうございますキリト。」
「ぷ、プレミア」
そこには、家と同じように実体化したプレミアちゃんがいた。
僕達は驚きも抜け出せずに半場引っ張られるようにラースを案内させてもらった。
プレミアちゃんがブラック企業何て言ってたけど職員の人は楽しく談笑したり会話に花を咲かせたりしていた。
ただ、こっちを向いた時に一様にして全員が
う~ん……プレミアちゃんが実は会社の中でも機密情報だったからとかかな?
「さ、着いたっすよ。ここが、俺達の研究部屋っす。たぶん皆驚くっすよ~!」
そう言ってたどり着いたのはたぶん8階辺りにある一部屋。
あれ?この階はこの部屋しかないんだ。疑問に思ったけど気にするほどじゃないかな。
比嘉さんが陽気に声を上げながら「ただいまっす~。それとお客さんっすよ~」
と言いながら入っていくものだから僕達も慌てて追いかける。
入る前までは聞こえていた話し声が、僕達が着た瞬間に波が引くように途切れて行った。
勿論、全員が驚愕したり唖然としたり。いいかげん気になってきたかな~と思い、不意に和人に視線を向けると
何かを思案するかのように周りを見渡していた。怪訝に思って僕も周囲を見渡すと
誰もが驚きを隠さない中、ただ一人(比嘉さはん抜いて)驚く事無くこちらに歩み寄る白衣の男性が目に留まった。
その人は僕達の前まで来ると、僕達の顔をしっかりと確認し
「初めまして。いや、久し振りと言った方がいいかな。
私は茅場晶彦という者だ。プレミアの生みの親であり、今はあるゲームの総監督を任されている研究員さ」
そう言って握手を求めるかのように手を差し出す男性――茅場晶彦さん。
この人が、プレミアちゃんの父親でオーディナル・スケールの開発スタッフトップの一人。
かず兄が自己紹介と握手を返したので慌てて同じようにする。その時には他の皆さんも幾分か冷静さを整えていたらしい。
「さて、積もる話も沢山あるだろう。それに、私も自分の娘がご迷惑を掛けてないか気が気でないからね。」
「か、カヤバさん!」
親子二人のやり取りに周りが微笑む中、和人だけはその奥に視線を縫い付けていた。
僕も追って視線を向けると
そこに有ったのは
緑はもちろん、山や海。人が生活しているであろう街まで投影されている。
まるで……一つの世界みたい
息を飲む僕達の視線に気付いたのか、茅場さんが僕達の隣に立ち子供の様に自慢げに話す。
「驚いたかい。アレが、あの世界こそが
その名も
≪SA:O≫それが、私達が造る
はっはは。ちゃんとこの世界にもSAOはあるぜ!
オリジンだけど。ついでに言えば主のVITのスラパが壊れてプレイできないけど!!