オーディナル・スケール 少し違う世界の物語   作:夜桜の猫の方

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《閑話》は裏でキリト君が何しているかを簡潔に書いていきます。基本は短い。


《閑話》語られない剣士の物語

木綿季に現実世界を任せた俺は、向こうから接触(コンタクト)してきた茅場さんとプレミアの送り物。SA:O(ソードアート・オリジン)にログインする準備をしている。なんでも、茅場さんが言うには今のままOS(オーディナル・スケール)で1位になっても≪ラフコフ≫に使い潰されるだけだと推測したらしい。あの狂人達が何をするのか俺にはちっとも解らないが、茅場さんは”自分も狂人だから”だと言っていた。その真意は測り兼ねないけど………現実で動けない俺に今出来るのは、これしかない。

 

『キリト君。これは、≪ゲーム≫であって≪遊び≫ではない。君の肩にはOSプレイヤーの全員の命が乗っていると思ってくれたまえ。』

 

その言葉は誇張でも比喩でもなく、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。というふざけた話だった。どうやらラフコフは殺人こそ至上の快楽と考えているらしく、希望に集まった―—―木綿季の様なプレイヤー達を絶望の底に叩き落す算段らしい。

 

『その最悪の結末(バットエンド)を打破するために、君が誰よりも早くSA:Oをクリアしなければならない。その後の事は私に任せてくれたまえ。』

 

なるべく時間は稼ぐがね。そう言って彼は去ってしまった。この世界に≪現実世界の人間が入って来る(ログイン出来る)のは”一週間後”。逆に言えば、正式サービス開始の一週間は俺も身動きがロクに取れないらしいが………レベリングは出来る。そして開始と同時にその間に得た知識をフルに活用して攻略する。ラスボスは、恐らく()()()()。見るだけで足が竦み、触れただけで剣士たちが灰と消えるあの存在に勝たなきゃいけない。けど、問題はない。

 

「死んでもいいゲームなんて温すぎるぜ。」

 

木綿季がデスゲームを行っているんだ。あの程度のボスに勝たずして誰が顔向け出来るってんだ。そのためにも………

 

「プレミアは木綿季に付いていてくれ。」

「な!?待ってください。私も一緒に戦います!」

「いや。こっちはデスゲームじゃないし、何より木綿季はまだ10代も半ば。死という恐怖で精神的に壊れてしまうかもしれない。だから、もしも時の為にプレミアが付いていてくれ。頼む。」

「…………わかりました。」

 

彼女が頷いてくれたのに安堵しながら俺は携帯に入っている連絡帳のデータを渡す。

 

「これは……アスナ達の連絡先?」

「もし木綿季に何か……いや、俺がSA:Oにログインしたら直ぐにそこに書いてある全員に連絡して欲しい。明日奈達を巻き込む形になってしまうけど、背に腹は代えられない。」

 

解りましたと彼女が頷くと同時にログインの準備が終わった。

早速あの世界に―—―と行こうとしたら服を捕まれた。

 

「プレミア?」

「気をつけてください。キリトのアカウントは無理矢理サーバーから引っ張り出した物です。何かしらの不具合が起きるかもしれません。」

「………分った。ありがとな、プレミア。」

 

不安に顔が陰るプレミアの頭をポンポンと手を乗せて視線を上げさせ、木綿季や直葉によくやる様に微笑んで見せる。俺は大丈夫。そう伝わる様に微笑むと彼女は服を離してくれたのでSA:Oへログインするための扉を開く。厳かな音共に開いていくが、待ってられないとばかりに自分から開けて飛び込んでいく。

 

 

まずは、今日中にレベル20まで上げる。そう思いつつ浮遊感に身を任せた――――—

 

 

 

「グオオオオォォォォ!」

「のわあああああああッ!!」

 

任せた結果がコレだよ!?何でログインした先が()()()()()()()なんだよ!?おまけにその場にいたモンスターにルパンダイブする始末。始めから魅せるOPだな~なんて呑気に現実逃避していたのが運の尽き。結果としてゲーム開始1分でドラゴンと鬼ごっこというrta走者も真っ青な現状になっているのだが………

 

「鬼畜ゲー過ぎませんか茅場さーーーん!!!」

 

体長4メートル近い龍の隙を付いてインベントリを開いてみるも、最悪が絶望に変わっただけだった。見事に武器も防具もない。これでどうやって戦えばいいんだ!?

ちなみに、今の俺のステイタスは≪Level.1≫は始めたばかりだから仕方ない。一方、後方で突進体制に入っているドラゴンは………って!?マズイ回避ッ!!

 

「ガアアアアアアァァァァァ!!」

「うわっつぐ!!あ、危なかった………」

 

空間を巨体が猛然と駆けた後には薙ぎ倒された木々と抉られた地面が見えるのみ。そして、その奥で頭を振っている見た目がRPGでよく出て来る4足歩行のドラゴン。奴にピントを合わせるように注視するとHPバーと名前。そしてレベルが表示される。

 

『インファイト・リザート Level.27』

 

ハッハハ!!………なぁにコレェ?

 

「そう言えば、これがオープンフィールドの特徴だったな。」

 

古今東西、オープンフィールドにおいての初見殺しが今の俺の現状だ。一番初めのマップに沸く(ポップする)埒外のモンスター。慢心した冒険者を絶望に叩き落す()()()()()。その存在の圧倒的な力量差に死に戻り(リスポーン)した方が早いのでは?と最初は思ってたけど………俺のHPはレッドゾーンに到達している。遭遇した初めに尻尾での薙ぎ払いに直撃してここまで減らされたのだ。咄嗟に初期武器を割り込ませて防御したが、剣と防具は耐久値を0にし、HPは1だけという状態だった。それだけならばまだ絶望はしないけど

 

痛覚遮断(ペインアブソーバー)が機能していないのは辛いな。」

 

直葉の防具無しでくらった腹パンとはレベルが違う。背骨が飛び出したと思う程の衝撃に、暫く動けなかったほどだ。勿論、止めを刺される前にミルタンク宜しく転がって逃げたけど。

 

「さすがに、ミンチになるのは嫌だな。」

 

インファイト・リザートの鋭い眼光に膝を着きそうになるが必死に耐える。なぜなら、先程の突進と()()()()()()()()()()で思い付いた作戦があるからだ。それに、武器は()()()()()()()

 

「…………いくぞ…」

「グオオオオオオオォォォォ!!」

「フッ!!」

 

インファイトは巨体でレベルは高いが初期マップのモンスター故に隙が大きい。特に、先程の突進と前足での大振りのスタンプ。この二つを誘発させる。不意に来る尻尾や頭部での薙ぎ払いはバックステップで躱し、噛みつきや稀に吐く近距離のブレスは潜り込んで回避する。仮想世界にはある程度慣れているけど、それよりも体が動く。生身の体を動かしているかのように『ラグ』がない。そのまま噛みつきの範囲外、前振りの範囲内という絶妙な立ち位置を保っていると、ヤツが右腕を大きく振りかぶる。

 

(今だ!)

「オオオオオオオオオオオオオッ!!!!」

 

今まで以上に大きく距離を取ってスタンプの振動ごと避けて、一心不乱に岩壁に駆け出す。後方から唸り声が響いてくるが怯むことなくメニューを開き、いつでも取り出せるようにしておく。俺が今から行うのは一種の賭けだ。成功したらダメージを負わせるし、失敗したら死ぬ。タイミングは、慎重かつ大胆に!

 

「よし、後は………来た!」

 

壁に手が触れる所まで走り振り向くと、作戦通りにインファイトが突進体制に入っている。やっぱり、奴はブレス系統の攻撃が得意ではない。そして、自身すら制御できない攻撃だからこそ出来る作戦。

 

「さあ、そのまま来い!」

「オオオオォォッッ!!!!!」

 

埒外の巨体が突っ込んでくるのには目を逸らしたくなるが、ギリギリまで惹きつけ

 

「ここ、だぁ!!」

「―--グヒュゥ!?」

 

地面と龍のほんの数センチしかない隙間に体を躍らせて回避した結果、奴は破壊不能オブジェクトである岩壁に激突し無防備な姿を晒している。好機は今。と素早く立ち上がり無防備な龍の背を駆け上がっていく。そして、首裏の鱗に覆われていない部位まで走り三角飛びの要領で崖を使って飛びあがる。未だ、目を回している龍を見下ろしながらメニューから目的のアイテムを顕現させる。

 

その名は―—―≪闇を払う者(ダー■リ■ルサー)の意思≫()()()()()()()()()()()()()。それを勢いをそのまま奴に振り下す。

 

「おおおおおおぉぉぉッ!!!!らあぁ!!」

 

刹那の抵抗感の後、肉を切り裂く感触と共に地面に落下する。なんとか着地したが、剣の余りの重さによろけて転んでしまう。咄嗟にインファイト・リザートに振り向くと、奴は体中から水色の光を溢れさせ軽快なサウンド音と共にポリゴン片へと姿を変える。

 

「…………か、勝った………」

 

文字通り、死中に活を見出したためにドッと疲れが巻き起こりその場に尻餅を着く。そして、あの龍をHPが自傷で削れていたとは言え()()()倒した剣を見つめる。

 

「レベル27を一撃か。一体、どんな性能をッ!?」

 

アイテムを二度タップする事に詳細が見れるのだが、そこに書かれていた数値に絶句する。

 

 

闇を払う者(ダー■リ■ルサー)の意思≫ 作成者―—●ズ■ット

 

刃折れのため装備時の補正大幅ダウン

HP+12000/SP+120/STR+250/DEX+140/AGI+85/攻撃速度+7%/与ダメージ+150%

装備可能筋力値―—250

『其の者は闇を払う剣の墓標なり』

 

「なん、だコレ。」

 

ぶっ飛んだ補正値とか名前が文字化けしているとか色々気になるが

 

「これでも刃折れって事だよな。修復したらさらに補正値が上がるのか。しかし、何故俺のストレージの中に入っているんだ?」

 

茅場さんかプレミアが情けとしてサービスしてくれた?考えられるのはそれしかないけど………

 

「兎に角、さっきの様な作戦は禁止だな。流石に卑怯すぎる。」

 

そう心に誓ってアイテムをインベントリにしまう。ひとまず本来の拠点となる≪始まりの街≫に戻らねば。そしてまずは情報収集。情報は最も大事なステータスだからな。と、必死に俺のレベル21から目を逸らしつつ今後の予定を立てていくが………………

 

 

「やっぱり、レベリングで使う位は………いやダメだ!そもそも耐久値が0になりかけている!」

 

はあ、と肩を落として街へ向かう俺で合った。それより、()()()()()()()()()()()

「あ……」と言葉を失う俺は空を見上げる。そこには清々しい晴天が空の果てまで広がっている。

 

「とりあえず、東に向かって歩こうかな。太陽上る先に人はありってね。」

 

 

 

 

此の後、さらに3時間彷徨ってマップ最東の村に着いたのはここだけの秘密。≪始まりの街≫に着いたのはさらに4時間後の話。

 

「うん。もう、今日はログアウトしよう。」

 

さすがに、初日の7時間でレベル30に入るとは思わなかったよ。それも痛覚遮断無しで。

木綿季はこんな無茶は現実でしないでくれよと全力で自分を棚上げしつつ、ログアウトボタンを押したのだった。




こっちは、やっつけ作業の息抜きで進行します。原作2巻みたいに飛び飛びで進むかも?あと、キリト君が使った剣はHR基準。ちょっと盛ったけど。基本、ソードスキルもアニメとHR基準になります。あと、こっちではクロスオーバーとして他作品のキャラを出したいな………出します(迫真)

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