タイトルとあらすじの割にはかる~い作品となります
ですので、かる~い気持ちで読んでいただくくらいが丁度良いかと
それでもよろしければ最後までお付き合いいただけると幸いです
「クソがッ。油断、した……」
沼地に現れたフルフル亜種を倒し、ホッと一息。今、私がいる洞窟の中はやはり寒く、吐き出した息が白く染まる。
フルフルとは戦ったことがあるものの、その亜種と戦ったのはこれが初めて。その感想は……どうだろう。相手がG級ではなく上級モンスターってこともあり、それほど苦労することはなかったんじゃないかな。一度、どっかのバカに思いっきりシールドバッシュを食らって吹き飛びはしたけれど、それくらいだ。
ホント、アイツはロクなことをしない……
「モミジ、お疲れ様ニャ!」
愛用している片手剣を納刀し、今し方倒したフルフルから素材を剥ぎ取っている私の元へ、トコトコと走ってきてから、一匹のアイルーがそんな言葉を落としてくれた。
「うん、ミナヅキもお疲れ様」
声をかけてくれたアイルーへ、その頭を一度撫でてあげてから、私も言葉を落としてみた。
ミナヅキ。それがこのアイルーの名前。このパーティーにおける癒し担当。とあるひとりに対してのみ、やたらと辛辣な性格ではあるけれど、ちゃんと他人のことを考えられる優しい性格の持ち主だと私は思っている。それに、アイルーであるにも関わらず、その実力はハンターにだって負けないくらいだ。
ミナヅキみたいな優秀なオトモが私のパーティーに居てくれて有り難いっていつも思っているよ。
「ちく、しょう……ブナハブラなんかに……」
私とミナヅキ、そしてもうひとりのハンター。それが今の私のパーティー。
そんな今の私のパーティーだけど……さっきも言った通り、ミナヅキに不満はない。そして、自慢をするようでアレだけど、私だってそれなりの実力を持っているハンターだと思う。
じゃあ何が不満かってそういう話になる。
「……ねぇ、ミナヅキ。あのバカは?」
「あぅ、うニャ……ロロットならモミジに言われた通りランゴスタと戦っていたはずニャ」
ああ、そっか。戦力にはならないし、むしろ邪魔なくらいだったから、私がランゴスタの駆除を頼んでいたんだった。
正直なところ、あんな奴は無視してもう帰ってしまっても良いと思うけれど、一応アレも私のパーティーの一員なためそれもできない。そんなわけで、仕方なくあのバカを探してみることに。
「悔、しいぜ……」
そして、私たちから少し離れたところでうつ伏せに倒れているバカを発見。
ランゴスタの麻痺針にやられたのか、うめき声のようなものを出すばかり。やだ、めっちゃビクンビクンしてる。私とミナヅキが頑張っていたというのに、アイツは何をやっているのだろうか……
「あっ、でも、感じちゃ――
ぶん殴っておいた。
◆ ◆ ◆
私がハンターという職に就いてからそれなりの時間が経ったと思う。
けれども、そんなハンターという職業は決して楽なものでない。だってハンターは人間の力を遥かに上回る、あのモンスターたちと戦わなければいけないのだから。……それに人間という生き物は残酷なほどに脆い存在だった。本当に、ちょっとしたことで壊れてしまうほど脆い存在。
じゃあ、どうして私はハンターになったのか。自分たちよりもずっとずっと強い存在へ立ち向かわなければならない職業へ就いた理由。
もしかしたら、何かしらの思いがあったのかもしれない。もしかしたら確固たる信念があったのかもしれない。けれども、そんなことも私は忘れてしまった。時が流れ、過去の記憶は色あせ……風化していく。
忘れたくても忘れられないことはあるくせに、消えていくのはいつだって大切なことばかりだ。
……それも仕様が無いことなんだろうか。
「おい、ミナヅキ。俺の活躍はちゃんと見ていたか?」
「ランゴスタ相手にボッコボコにされているところなら見たニャ」
ポッケ村の集会所へと戻る飛行船の上、ひとりと一匹の会話を横目にボーっと考えごと。
飛行船の上で感じられる風は好きだ。地上で感じられるそれよりもずっと。それがどうしてなのか私には分からないけれど。
「おまっ、なんでそんなとこばっか見てんだよ! 俺だってちゃんと活躍してただろうが」
「よくそんなことが言えるニャ……少しはモミジを見習うといいニャ」
呆れ顔で言葉を落とすミナヅキと、ヘラヘラといつも通り笑いながら言葉を落とすアイツ。
ロロット――それがアイツの名前。でも、その名前を呼んだことは本当に少ないと思う。私とアイツの関係なんてそんなものだ。いがみ合う必要なないけれど、馴れ合う必要もない。そんな関係。
……それに正直なところ、アイツの笑い方は好きじゃない。それがどうしてなのかはやっぱり分からないけれど、アイツの笑い方が好きになれなかった。いや、まぁ、うん……私がアイツ自身を嫌っているだけな気もするけどさ……
じゃあ、どうしてそんな奴とパーティーを組んでいるかってことだけど……ポッケ村の村長とギルドマネージャーに頼まれ、仕方なくこのパーティーを組んでいるだけ。この私の性格を考えるに、パーティーを組むよりソロでやらせてもらった方が合っているとは思う。ミナヅキがいなくなるのは痛いけれども、ポッケ村へ来る前はずっとずっとひとりで戦ってきた。そんな私にどうしてパーティーを組むよう村長たちが言ったのかは分からない。
「バッカ、お前。俺だってアレだぞ? 本気を出せばモンスターどもが逃げ出すレベルだぞ?」
「つまり、こやし玉レベルってことニャ。臭いニャ、近寄らないでほしいニャ」
「いやホント、お前は容赦ないな……」
暴言を飛ばすアイルーと、それを笑って受けるハンター。そんなひとりと一匹を横目に何をするでもなく、ただただ風を感じ流れていく景色を眺める私。それがいつも通りの光景だった。
これといった目的があるわけでもなく、これといった目標があるわけでもない。何がしたくてハンターとなり、何のためにハンターを続けているのだろう。そんな私が今、こうして生きている意味はあるのだろうか。
考えれば考えるほど、思い浮かぶのはマイナスなことばかり。私はそんな性格だった。そんな自分自身を好きになれないのは仕方の無いことだと思う。
「へい、マイハニー。モミジからもこのネコ畜生に言ってやってくれ。コイツ、口を開けば直ぐに俺の悪口を言いやがるんだ」
誰がお前のハニーだ。飛行船から叩き落とすぞ。
あと、私を巻き込むのはやめてほしい。それほど強い相手ではなかったにしろ、疲れているのは確かなのだから。
「今日はお疲れミナヅキ。帰ったら美味しいものを一緒に食べようね」
「うニャ! それは楽しみニャ!」
「やだ、このパーティー敵しかいない……」
フルフル亜種を倒した時と同じように、ミナヅキの頭を撫でてあげてから、言葉を落とした。アイツのことは無視の方向で。アイツの扱いはそれくらいが丁度良い。少しでも甘いところを見せると直ぐに調子に乗るんだ。……いや、まぁ、何もしなくとも調子に乗り始めたりするけどさ。
いつも通り、辛辣な言葉を受け続けたにも関わらず、ヘラヘラと笑うアイツを見て、ため息をひとつ。何が楽しいのか分からないけれど、ホントよく笑うやつだ。
……笑う、か。
私が最後に笑ったのはいつのことだろうか。そんなことも思い出せないほど、私の記憶は風化してしまっている。
いつの日かまた、私も笑える日が来るのかな。
そんな考えも進む景色とともに流れ、消えていった。
◇ ◇ ◇
きっとそちらは今も雪が積もり、真っ白な景色となっているのでしょうけれど、お元気かしら? 此方は今日もまた順調にこの広い世界を飛んでいるところよ。フフッ、こうして手紙を書くのも久方ぶりとなるわね。
さて、分かっていると思うけれど、こうしてこうして手紙を送るのはあの子の様子を聞きたかったらという理由。どう? あの子もそっちの空気に少しは慣れてくれたかしら。自分の感情を表すのが苦手なあの子のことだから、きっとなんでもないような振りをしていると思うわ。ハンターとしてのその実力は文句無し。それに、貴女も知っていると思うけれど、あの子はアタシが胸張って自慢できるくらいのハンターよ。
……ただね、あの子はなんでもかんでも全部自分で抱え込んでしまうの。別にあの子が悪かったわけじゃない。誰かが原因だったわけでもない。本当にただただ運が悪かっただけ。そうだというのに、あの子はきっと今も自分を責め続けている。だから、アタシは貴女に頼んだの。新しい環境に移れば、あの子も少しは楽になってくれるんじゃないかと思って。
今のあの子を見ていると、考えられないでしょうけれど、昔はね、あの子も笑うことがあったの。何処か恥ずかしそうに、ぎこちなく、静かに……そっと笑ってくれることがあったわ。そんなあの子の笑顔がアタシも好きだった。だからね、もう一度そんなあの子の笑顔が戻ってくれればいいってアタシは思っているわ。
それじゃあ、良い知らせを待っているわよ。
ポッケ村村長へ。
集会酒場マスター、ラヴェンダより。
読了、お疲れ様です
ここ最近書いていなかったので、ちょいと書いてみることに
暗い過去を持つ少女とバカとネコ、つまるところありがちなお話
でも、それがいい
前書きでも書いたように、かる~い作品となり、1話5000文字を超えないよう頑張りつつ、10話程度で終わる短中編を予定しています
それでは、次話でお会いしましょう