だから笑ってください   作:puc119

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そんなハンターではあるけれど張りたい意地や通したい筋くらいは残って……

 

 

「今日は本当にありがとうございました!」

 

 少女をベースキャンプまで無事送り届け、本来の目的であった特産キノコの納品も終え、今は飛行船に乗ってポッケ村へ戻るところ。

 そんな飛行船の上で今回助けた少女――エーファが深々と頭を下げた。

 

「別にそんな気にしなくていいわよ。私たちハンターにとっては当たり前のことなのだから」

 

 それは嘘偽りのない本音。

 クエスト中に一般人を助ける、なんてことはなかなかないけれど、それも私たちハンターの仕事だと思っている。

 ホント、この少女を無事に助けることができて良かったし、今はそのことだけを喜ぶ場面なんだろう。

 

「このお礼は帰ったら必ず……」

「あー、モミジも言ってるが、ホント気にしなくていいぞ?」

 

 真剣な表情の少女に対し、ヘラヘラといつも通りの顔をしながら言葉を落とすあのバカ。ただ、リオレウスとの戦闘のせいか、その表情は少しばかり疲れているようにも見える。

 

「戻ったらちょっと俺と結婚を前提にお付き合いいただけるだけで――」

 

 ぶん殴っておいた。

 なんてことを言ってるんだコイツは。台無しだし、最低だよ。

 

「ああぁあっ! レウスとの戦闘による傷がぁぁああ「うっさい!」あっ、はい。すみません……」

 

 私とバカを見て、少しだけ困惑している様子の少女。ごめんね、こんな変な奴で。勘違いしてもらいたくないけれど、コイツがおかしいだけで、他のハンターは皆ちゃんとしているからね。

 

「今回はとにかくエーファちゃんが無事で良かった。ただね、これからは本当に気をつけて。村や里から少しでも離れちゃうと、そこはもうモンスターたちの領域なの」

 

 私たちハンターはそんな場所が普通。けれども、この少女のような一般人にとってあの場所は危険すぎる。だからこそ、この世界ではハンターという存在が貴重なんだけどさ。

 

「あっ、はい……これからは気をつけます」

 

 うん、そうしてもらえると嬉しいかな。

 今回はたまたま私たちがいた。けれども、ハンターがその場にいない時の方が絶対に多いし、それで散って逝ってしまう命も少なくはない。……本当に簡単なことで命は散ってしまう。それほどにこの世界は人間にとって厳しい世界なんだ。

 

「それにしても、よくミナヅキだけでリオレウスを倒せたわね」

「あれ? 今、普通に俺の存在がスルーされなかった?」

 

 ミナヅキの実力は私だって知っている。けれども、あの時は様子もおかしかったし、いくらミナヅキといってもあの小さな身体でリオレウスを倒せたことが信じられなかった。あのバカは……まぁ、うん。頑張っている場面を想像するのはちょっと難しいかな。

 

「レウスくらいボクならどうってことないニャ!」

 

 私の言葉に胸を張って応えてくれたミナヅキ。ホントかわいい。癒される。ついつい抱きしめてあげたくなるけれど、流石に引かれそうだからそんな気持ちはそっと沈めておくことに。

 

「嘘つけ、俺がいなかったらレウスだって倒せなかっただろうが」

 

 そんなミナヅキと私を見ながら、少しだけ拗ねたように言葉を落としたロロット。

 このバカの実力が残念なことは私も知っている。けれども、ロロットもアイテムの使い方だけは本当に上手い。たぶん、今回もこのバカがアイテムを使ってミナヅキをサポートしながら戦っていたのだろう。オトモアイルーをサポートしながら戦うハンターとか聞いたこともないけれど……

 

「そう言えば……あんたも怪我をすることってあるのね」

 

 リオレウスの炎を受けた影響か、防具は焦げているし火傷のような怪我も見える。毎回モンスターからボコボコにされるロロットではあるけれど、今回のように目に見える怪我をすることはなかった。

 

「そりゃあ、俺だって怪我くらいするわ。俺をなんだと思っていたんだ……」

 

 だって、いつもならモンスターからどんな攻撃を食らってもピンピンしているじゃない。だから、今回は珍しいなって思っただけ。

 

「……それで? 戦闘はどんな感じだったの?」

 

 ロロットがミナヅキをサポートしたのは確かだと思う。ミナヅキの実力だって知っている。それでも、リオレウスを倒せるほどの火力が出せるとは思えない。

 ミナヅキは無傷だけど、あのバカの怪我を見るに、決して楽な戦いではなかったはず。

 

「うん? そりゃあ、決まってるだろ」

 

 拗ねたような表情から、いつもだらけ切った表情に戻るあのバカ。

 

「レウスの股間へ俺がシールドバッシュを叩き込み続けただけだよ」

 

 そして、いつも通りのヘラヘラした表情であのバカがそんな言葉を落とした。

 はぁ、ホントどうやって戦っていたのやら……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

「おい、バカネコ。どうだ? 少しは落ち着いてきたか?」

 

 俺が投げた閃光玉によって怯んでいるレウスを見ながら、ミナヅキへ言葉を送る。

 モミジとあの女の子の姿はもう見えない。つまりこれで、レウスだけに集中することができるってもの。とはいえ、流石に俺だけじゃあコイツを倒すことなんてできやしないし、そもそも足止めすらできない可能性が高い。

 自分で言っておいて悲しくなってくるが、俺の実力なんてそんなものだ。

 

「……ニャ。もう大丈夫ニャ」

 

 拗ねたようなミナヅキの声。それでも、いつも通りになってくれたのは有り難い。

 

「んじゃま、相棒。この目の前のでっかいトカゲをどうにかするぞ」

「ボクはロロットの相棒なんかじゃないニャ。……それでもまぁ、手伝ってやるニャ」

 

 相変わらずの減らず口なことで。いつも通りになったと思ったら直ぐコレだ。ま、お前と俺との関係はそんなものでいいって思っているけどさ。

 

 ……閃光玉は残り4個。調合分も含めると14回。それだけで稼げる時間は7分が限界だろう。シールドバッシュによるスタンと罠の拘束も含めると……10分程度の足止めくらいだ。10分もあればモミジがベースキャンプまで行く時間は稼げるが、あの少女を連れているってことを考えると……まぁ、厳しいか。

 そうなるとやっぱ、レウスを倒すしかないよなぁ……

 

「ミナヅキ、10分あればコイツを倒せるか?」

「ロロットは戦力にならないし、今のボクだけじゃ無理ニャ」

 

 まぁ、そうだよなぁ……いくらミナヅキに実力があるとはいっても、ちゃんとした装備もない状態でレウスを倒すのはかなり厳しい。ホント情けない限りだが、俺が全力を出したところで、レウスを怯ませられるかもわからない程度。

 モミジがいないだけでここまで火力が落ちるとは……まぁ、今できることをやるしかないわけだが。

 

「どうするのニャ? ボクの準備はいつでもできているニャ」

「もう少しだけ待て、下手に怒らせてかーちゃん(リオレイア)が来たら面倒だ」

 

 ミナヅキに()を使わせるか? いや、それでも火力は足りない。今は逃げられることもレイアを呼ばせないほども早く倒す必要がある。

 考えろ、最善策は他にあるはずだ。

 

「……レイアはこの場所にいるのかニャ?」

「クエストが始まって直ぐに巣を確認した時、痕跡はなかった。ただ、アイツが急に現れることくらいお前だって知ってるだろ」

 

 俺がそんな言葉を落とすと、ミナヅキの表情は一気に暗くなった。

 あーもう! いらんことを言った。余計なことを考えるなって言ったばっかだろうが。

 

「……ミナヅキ」

「うニャ……大丈夫、ボクは大丈夫ニャ」

 

 頼むぞ、俺だけじゃあコイツをどうにかすることなんてできないのだから。

 さて、そろそろ閃光玉による怯みだって解けるだろうし、動き出さなければいけない時間だろう。

 

 頭のどこかではわかっているんだ。どうするのが正解なのかってことは。……けれども、ソレを俺ができる自信はない。

 

 ま、『助けて』なんて言われてしまったんだ。やらなきゃしゃーないだろう。

 今度こそはきっと誰かを守れるようこの武器を選んだ。今、その守る対象はいないけれど、この武器だからできることがある。

 

「ミナヅキ、サポートを頼む」

「それはいいけれど、どうするつもりニャ?」

 

 閃光玉による怯みが解けたレウスへ、もう一度閃光玉を喰らわせる。真っ白に染まる視界。絶対にお前を逃がしやしない。なんと言われようが、今ここで倒させてもらうよ。

 

 

「お前のご主人の真似……かな」

 

 

 ミナヅキのご主人によってその火力は保証済み。調合分まで含めた素材も持ってきている。あとはそれを俺ができるかどうかってだけだ。準備よし、覚悟よし。

 そんじゃま、始めようか。

 

 小さく折りたたまれた大タルを組み上げ、その中に爆薬とカクサンデメキンを詰め込んでから、レウスの前へ設置。そして、直ぐに片手剣で斬りつけて起爆。爆炎はローリングで回避し、また直ぐに大タルを作り調合を開始する。

 むせ返るような炎と煙の匂い。ローリングで回避はしているものの、炎で身体が焼ける。さらに、煙のせいでレウスの様子が全く見えない。

 

 ……ホント、アイツはよくこんな戦い方を続けていたもんだよ。

 

「尻尾攻撃来るニャ!」

 

 煙のせいで見えないため、レウスの動きはミナヅキの声で確認。頼むぞミナヅキ、お前のサポートがないとこの戦い方はできないのだから。

 ミナヅキの言葉を受け、調合作業を止め、ローリングでレウスから距離を取る。その瞬間、相手の尻尾が煙を切り裂いていった。やってられん、マジで怖い。相手が見えないと、ここまで戦いにくいのか……

 

 回避後、調合を再開し再び大タル爆弾Gを設置し直ぐに起爆。

 慣れていないせいで、爆炎を上手く避けられない。身体が焼ける。正直、こんな戦い方なんてやってられないが、今はこの方法しか思いつかない。無理やりでもいい、止まるな、身体を動かせ。

 

「ブレスニャ!」

 

 あいよ、了解。

 股下へ潜り込むようにローリングをして調合、設置、起爆。

 

「閃光怯み解けたニャ!」

 

 アイテムポーチから閃光玉を取り出し、レウスの顔の位置を確認。そして、顔の前へ閃光玉を投げる。目が痛くなるほどの白。鬱陶しいことに煙が目に染みて涙だって出てきやがる。涙邪魔! 引っ込んでろッ!!

 

 ……集中しろ。絶対に手順を間違えるな。気にしなければいけない仲間はいない。今はただ、コイツを倒すことだけ考えていればいい。

 

 

 

 

 どのくらいの時間、そんな戦い方を続けていたのかはわからない。それでも、その時間は永遠のように長く感じた。

 ……情けないことではあるが、ここのところはずっと楽をしてきたんだ、それも仕方の無いことなんだろう。

 

「……討伐、完了ニャ」

 

 閃光玉は残りひとつ。大タル爆弾Gの調合素材は残りふたつ分だけ。

 そんなギリギリの状態まで追い詰められたが、それでもレウスを倒すことはできたらしい。もし相手がG級個体だったのなら無理だっただろうが……まぁ、今回は運が良かったってことなんだろうな。

 

 爆炎を喰らい続けたことで身体はボロボロ。こんなに怪我をしたのは本当に久しぶりだ。ああ、本当に疲れたな。

 無事にレウスを倒し安心したところで襲いかかってきた疲れと痛み。ヤバいことが起きた時、知らせるように言った2回サインは出ていないし、今ばかりはちょいと休ませてもらうとしよう。

 

「ニャふ。ボクのご主人と比べて全く上手くできていなかったけれど、さっきのロロットの姿ならモミジも褒めてくれると思うニャ」

 

 俺のことをバカにしたように笑いながら言葉を落としたミナヅキ。

 

 ミナヅキのご主人……か。俺もこの武器を使い続けていれば、いつかアイツみたいに上手く戦えるようになるのかねぇ。

 ま、そんな気は全くしないわけだが。師匠といい、ミナヅキのご主人といい俺の周りにいたハンターはバケモノみたいな奴らばかりだ。

 

「バカ言え。あんなカッコイイ姿を見られたら惚れられちまうだろうが」

 

 そんな姿は俺にゃあ似合わんよ。

 誰よりもカッコ悪く、誰よりも情けない……俺はそんな人間なのだから。

 

 そして、ミナヅキと会話をしていたところで、モミジが出したと思われる1回だけのサインを確認。ああ、良かった。あっちもどうやら無事だったらしい。結果論でしかないが、あの女の子をモミジに任せたのは正解だった。

 

 今、俺のしていることが正しいだなんて思っちゃいない。どう考えたってバカなことをしているってわかっている。

 それでも今回、あの女の子を守ることができたのは本当に嬉しいと感じている自分がいた。

 

 

 







これまでの作品で大タル爆弾を使う場面は何度も書かせていただいておりますが、あんな大きなアイテムをどうやって持ち運んでいるんでしょうね
ちなみにですが、大タルが折りたたみ式という設定は公式にありません

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