だから笑ってください   作:puc119

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火傷した部分は痛むが、なんだかそれも快感になってき……

 

 

「失礼。最近他のギルドから此方へ来たというのは、君で間違いないだろうか?」

 

 声をかけられた。

 今思うと、きっとそれが何かの始まる合図だったんだろう。私の知っている所でも知らない所でも何かが動き出した合図。

 

「……貴方は?」

 

 この地方出身でないということもあり、このポッケ村周辺で私の知り合いは少ない。

 ……いやまぁ、元々人見知りだし、例えここが故郷だったとしても知り合いはそれほどいなかったでしょうけど。

 ま、まぁ、そんなことはいいとして、声をかけてきた人物を確認してみた。

 頭防具は外しているものの、防具はレイア一式に、武器はライトボウガンでそちらもレイア素材を使ったもの。そして恐らく、上位の更に上――G級の装備。

 

 となると、このハンターはG級ハンターってことだろう。さて、そんなハンターが私に声をかけてきた理由はどうにも思いつかない。私だってそれなりの実力は持っているとは思っているけれど、G級ハンターと比べてもそう言えるとは流石に思えないのだから。

 

「おっと、失礼。つい舞い上がってしまって……僕はリュオン。これでも一応G級ハンターをやっているものだよ」

 

 リュオンと名乗ったハンターは少しだけはにかみながら、そんな言葉を落とした。整った顔立ちからそんな表情はずるい。きっとモテるんだろうなぁ。

 それにしても……なんだろう。別段おかしくもない極々普通な会話なはずなのに感動している私がいる。誰のせいだ。あのバカのせいか……

 

『よ、初めましてだな。俺はロロット。右利きだが相棒は左手だ』

『死ね』

 

 ……今思い返してもアレは最悪な出会いだった。うん、忘れることにしよう。ホント、どんな教育を受ければあんな性格になるっていうんだ。

 

「私はモミジよ。それでG級ハンターさんが私にどんな用事?」

「うん、よろしくモミジ。実は君に僕たちのパーティーに加わってほしいんだ。あっ、ずっとわけじゃなく、一時的にだけどね」

 

 なるほど勧誘、か。それ自体は別にいいのだけど、やっぱり私を勧誘する理由がよく分からなかった。この彼はG級ハンターで私はまだ上位ハンターでしかないのだから。まぁ、流石に足を引っ張るようなことにはならないと思うけど。

 

「どうして私を?」

「さっきも言ったけれど、最近他のギルドからこっちへ派遣されたのがモミジなのだろう? その実力は僕も聞いている。詳しい話はまたするけれど、今は君の力がほしいんだ」

 

 むぅ、なんともやりにくい。過小評価されるのは嫌いだけど、過大評価されるのも迷惑だ。まぁ、私がこっちのギルドへ派遣されてきたのは確かで、その理由ってのいうのがきっと……はぁ、ギルドマスターもそれなら最初からそう説明してくれれば良かったのに。

 

「分かったわ。貴方に協力する。と言っても、私にそこまでの実力を求められても困るわよ?」

「ふふっ、そんな謙遜しなくても大丈夫だよ。こっちに来てからの君の成績は僕も聞いているから。それを知っているからこそ、こうして頼んだんだ」

 

 あー……ダメだ。なんというか、すごく苦手なタイプだ。いや、良い人だっていうのはわかるのだけど、根本的に私と合わないのだろう。

 

「まぁ、とりあえずよろしくね、リュオン」

「ありがとう。短い間になるだろうけれどよろしく頼むよ、モミジ」

 

 そして、そんな会話を交わしてから握手。なんというか、こそばゆい。こういうのには慣れていないんだ。自分で言っていて悲しくなるけれど、基本私はソロハンターだったし……

 

 

 

 

 

 

「それにしてもモミジが僕の提案を受け入れてくれて本当に良かったよ。実のところもっと堅い性格だと思っていたんだ」

 

 クエストカウンターでクエストを受注しながらリュオンはそんな言葉を落とした。しっかりと確認することはできなかったけれど、受注したクエストは下位クエストだったと思う。

 

「……そうね。もう少しだけ昔の私だったら断っていたと思う」

 

 昔じゃ考えられなかったけれど、パーティーを組むことに抵抗が少なくなっているんだろう。それはきっとあのバカとパーティーを組むようになったのが原因。

 

「そっか、それなら丁度良いタイミングだったね。それと、君はもうパーティーを組んでいただろう? そのことも不安だったんだ。ロロット君……だったよね? 彼から了承を得なくても良かったのかい?」

「ああ、それなら大丈夫よ。アレとパーティーを組んでいるのもなんとなく成り行きでってだけだし」

 

 現在アイツはケガでダウン中。まぁ、私がリュオンとパーティーを組んだことを知ったらどうせアイツは騒ぐだろうけれど。

 

「それに、アイツがパーティーに加わっても困るでしょ?」

「ま、まぁ、ちょっと変わったハンターだってことは聞いているよ」

 

 どんな言葉を落とせばいいか酷く迷っている様子。まぁ、私と同じパーティーの人間を悪くは言いにくいんだろうなぁ。別に私は気にしないけれど。

 そして、やっぱりアイツのことも知っているんだ。まぁ、あんなハンターなんてなかなかいないのだし、噂くらいにはなっているだろう。ホント、どんな噂をされているのやら。

 ふと思ったけれど、そんな奴とパーティーを組んでいる私って……

 

「それで? どんなクエストへ行くのかしら」

「雪山の採取ツアーだよ。……表向きはね」

 

 後半の言葉の声を小さくしてリュオンは答えた。

 ……表向きは、ねぇ。

 そういうクエストを受けることは私もあった。普通ではないクエストを普通のクエストとして受けることが。ホント、なんとも懐かしい感じだ。

 

「それと言っていなかったけれど、もうひとりメンバーがいるんだ。見た目は少しばかり怖いけれど、中身は良い奴だから安心してほしい。あとその実力も保証するよ」

 

 あら、後出しの情報提供ですか。見た目通り、しっかりとした性格なんですね。

 なんて、思ってしまうのは私の悪い癖なんだろう。

 

「別に私は気にしないわ」

「ふふっ、そっか。それなら良かったよ」

 

 私の言葉に対してリュオンはそう答えてからまたはにかむように笑った。

 うーん、やっぱり私とは性格が合わないかなぁ。これならまだあのバカの方が……いやいや、落ち着け。私は今何を考えようとした。

 

「さて、今回は調査が中心となるだろうけれどクエストへはもう行けそうかな?」

「ええ、いつでも」

 

 食事は済ませてあるし、アイテムの準備もできている。どんなモンスターがターゲットとなるのかは分からないけれど、いい感じの緊張感になっている。久しぶりの感覚。でも悪い気はしない。

 

「よし、それじゃあ早速出発するとしよう。もうひとりのメンバーはもう出発口にいるはずだ」

 

 なんて言葉を落としたリュオンに続いて私たちもクエストの出発口へ。

 

 そして、そこにいたのは――

 

「おう、リュオン漸く来たか。うん? もしかして一緒にいるのが例のハンターなのか?」

 

 武器はハンマー。見上げてしまうような高身長に。私の倍以上の横幅。それは、つい今さっき見たような外見で……まぁ、なんというか……すごくあのモンスターを彷彿させるハンターだった。

 初めての出会いなのだし、色々と言わなきゃいけない言葉はあったと思う。けれども、そのハンターを見て最初に私が落とした言葉は――

 

 

「えっと、貴方もしかしてお姉さんがいる?」

 

 

 なんてものだった。

 

 

 

 

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 お返事、ありがとう。其方はやはり今でも雪が降っているそうね。ずっと空の上にいる私も久しぶりに大地を踏みしめたくなったわ。フフッ、なんてね。

 さて、あの子も元気でやっているようで私は嬉しく思うわ。ちょっと癖が強いみたいだけど、良いハンターとパーティーを組むこともできたみたいね。きっとあの子がまた昔みたいに笑ってくれる日も近いんじゃないかしら。

 貴女の腕の立つハンターを派遣してほしいという意見と、あの子に新しい環境を知ってほしいという私の意見が合ったからあの子を貴女の元へ送ったのだけど、間違いではなかったようね。どうかしら? 雪山で起こっている異変の原因もそろそろ分かってきたのでは?

 もちろん、私にだって不安はある。けれども、それ以上にあの子のことを信頼している。大丈夫、きっとあの子なら貴女の期待に応えてくれるはずよ。

 それじゃあ、きっとあの子が掴んでくれる良い知らせを待っているわ。

 

 ポッケ村村長へ。

 集会酒場マスター、ラヴェンダより。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇ ◇ ◇

 

 

 

「……行くのですか?」

 

 決して広いとは言えない部屋の中。クエストへ行く準備をしているのか、どこか上機嫌にアイテムボックスをあさる男へ、女性がため息混じりにそんな言葉を落とした。

 

「まぁな。別に俺が頼まれたわけじゃない。けれども今回ばかりは自分で行きたいって思うんだ」

 

 あきれ顔の女性の方を向いてから男はそう言って笑った。

 普段からもうハンターなんぞ辞めてやる、なんて言葉を重ねている男にしては珍しいセリフ。けれども、その女性は男がそう答えることはわかりきっていただろう。それでも、聞かなければいけない気がした。

 

「自分の子どもように可愛がってきた奴が困ってるかもしれねぇんだ。師匠っぽいことは何もできなかったもしれないけどさ、たまには師匠面したくもなる」

 

 そんな男の言葉を聞いた女性はため息をまたひとつ。

 そして、そんなため息を落としてから――優しく笑った。

 

「最近はずっと顔も見せに来ないんです。たまには帰ってくるように言ってくださいよ?」

「ああ、きっと伝えるよ。そんじゃ、あんま待たせるとアイツが激昂状態になるし行くとするわ」

「ええ、どうかお気をつけて」

 

 女性が落とした言葉に対して、手を挙げることで応えてから家を出た。

 

 

 







あと3話ほどで完結……できたらいいなって

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