デート・ア・ライブ 喰奈モンスター   作:事の葉

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明瞭・不明瞭

‐side 士道

 

「なんだ、貴方もいたんですか。これは好都合です」

 

 途端に現れ、一瞬にして精霊<ブラッド>の心臓を突き刺し殺した華麗で冷徹なそれ、エレン・M・メイザースは光の剣を生命体だったものから抜き取り、何事も無かったように、その皮膚に、剣についている血も知らんと言わんばかりに今度は俺にその剣先を突きつけた。

 このエレン含めるDEM社の狙いは精霊、そして俺だ。理由は知らないし、知りたくも無い。今、必要な情報はここから逃げる手立てだ。

 

 脳をフルに働かせて逃げる手段を考えていると、視界の端にあった精霊の遺体が、むくりと立ち上がるのが空が明るんでいくのと同時に確認できた。

 いや、待てよ。その傷口は大きくパックリ開いている。琴里の天使のように修復することも無ければ、何事も無かったように服に滲んでいる血が元に戻っているわけでもない。そこから向こう側も確認できるのだから、心臓に穴が開いた状態で立ち上がっているとしかいいようがない。

 

「何っ…!?」

 

 珍しくエレンが顔を歪ませ、後方へと踵を返し、光の刃を再び突き立てる……が、それが精霊の元へと届くよりも前に、床に出来ていた血溜りから壁のようなものが作り上げられ、剣を軽々と弾き飛ばしてしまった。

 

「…<無生生命(サリエル)>―――【弾丸(メコアル)

 

 狐の面のせいで篭った声でその精霊が囁いたと同時、その壁は散り散りになり、その一つ一つが球形となりふわふわと宙に留まった。

 

「これは、予想外です」

 

 俺には想像も出来ないほどエレンは素早く脳を動かしているんだろう。そこから先のことを瞬時に理解したエレンは背中に担いでいたバックパックの出力を上げ、後方へ飛び退く。

 このエレンの戦っている姿を見たのはそこまで多くは無いが、その中でも後ろへこんな速いスピードで飛び退いたのは初めて見た。それから一瞬後、その球体は槍のように尖り、元エレンが居た場所へと一直線に突き進んでいった。

 

「外した……」

「今度はこちらの番です」

 

 いつの間にか取っていた光の剣を構え、再びバックパックの出力を上げ、下から切り上げる。

 

「待て!」

 

 エレンの切っ先が少女に届く前になんとしてでも、と体を二人の間に滑り込ませる。

 何をやってるんだ俺は。エレンは、俺がほぼ不死身ということを知っている。視界に見えるエレンもスピードを下げる様子は見られない。しかも、この精霊は俺と一緒。攻撃を受けても一切問題ないように見えた。

 けど、だけど… だとしても、再び少女の胸に剣が突き刺さるのを黙って見てられる程、俺の心は強くない。驚くほどに脆いんだ。

 

「敵の命令を聞く馬鹿がどこにいますか」

 

 そりゃぁそうか。いや、でも、俺が肉壁になって、この子に剣が刺さらなければそれはそれで俺の考えは成功することになる。

 

「守らなきゃ。【秘密(デレット)】」

 

 後方でポツリと吐かれた言葉に従うかのように、少女の周りに浮遊していた球体が、血溜りへと戻り、闇が迫るかのように俺の周囲を包んだ。その直後、その闇の先で金属と金属が激しくぶつかるような音が響いた。

 この暗闇の中、やけに明瞭にその精霊の姿が見えた。近くで見ると、確かに威圧感こそあるものの、どこか孤独感を漂わせていた。他のどの精霊よりも。

 

「た、助けてくれたのか?」

 

 コクリ。頷いた。

 

 それから数秒沈黙が流れていた。いや、正確に言うのであれば沈黙ではなく、壁から何度も金属同士がぶつかる音が響いていた。人数が増えたのか、その音は様々な角度から聞こえるようになっていった。

 

「お、俺は五河士道。君の名前を聞かせてくれないか?」

 

 沈黙から逃れる術がこれしかなかったんだ。

 精霊は暫く黙ったあと、カツンと一歩こちらへ踏み出した。が、闇の中という空間把握がしづらい場所であるせいか、どのぐらいの距離からどれだけ近づいたかよく分からない。

 

「私は喰奈。好きなものは甘いもの。嫌いなのは煩い人」

 

 お、おぉ。なるほど。

 さっきよりも綺麗に聞こえるその声はか細く、しかしずっと同じトーンだった。

 

「甘いものって、例えば?」

「……シュークリーム」

「ははっ。案外普通だな」

「普通で何か悪いことが?」

「いやいや。女の子っぽくていいと思うけどさ、なんか、体に穴が開いてる子のいうことじゃないなぁって」

 

 当たり前のように視界に入っていた少女の心臓にある穴を指差して、クスリと笑った。人って非現実的な傷を見ると、恐怖も何も感じなくなるもんだ。

 精霊、喰奈はその穴を一瞥して、ポンと手をコミカルに叩いた。

 すると直後、その穴は瞬きすると同時に消えた。綺麗さっぱりと、そこに何かあったとは信じれないほど…だが、服は復元できていないようで、その白磁の肌が結構な面積露わになってしまっている。

 

「これで普通?」

「あぁ。ちょー普通」

「それは、嬉しい。と、思う」

 

 狐の面のせいで表情が読み取れないし、声のトーンも全然変わらないけど、だけれど、どっかから感情が漏れている。

 

「なぁ。それより、さっき俺のこと『守らなきゃ』って言ってたけど…。どうしてだ?」

「? よく、分からない。知ってる、気がする、から」

 

 そんな曖昧な言葉を聞いて、俺は首を傾げることしかできなかった。少なくとも、俺の知り合いにお面を収集してる人はいないから。




一番感覚を失っているのが戦闘系だなと、これを書いていてよく分かりました。


シーンがなんとなくでも浮かんでいたなら、これ幸いというやつです。

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