デート・ア・ライブ 喰奈モンスター   作:事の葉

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会戦の狼煙

‐side 喰奈

 

 目の前にいる男の人、五河士道。

 この人の話を聞いたことがある。精霊を救う存在であるということを、どこかの誰かから聞いた。誰かは思い出せないけど、聞いた。

『安全な人』

 私が彼に感じたのはそれただ一つ。

 

「な、なぁ。それよりも、これ、どうにかできないのか? 気が気じゃなくて…」

 

 けれども、その安全な人は毎秒聞こえてくる金属が激しくぶつかる音に震えている。

 

「どうにか? 解除したら、多分私も、貴方も、串刺し。蜂の巣」

「そうなんだけどさ! 暗闇って怖くて…」

 

 成る程。普通の人は暗いところを怖がるらしい。確かに、距離の分からない闇は私も当時は怖かった。今や慣れているけれども。そうだった。そんな感覚もあった。

 

 しかし、どうしたものか。先ほどから音を聞いていて分かったが、どのタイミングでこの球を解除しても銃弾か、先ほどの女性からの一閃が飛んでくるように攻撃のタイミングを合わせている。我武者羅にやっているように聞こえて、実のところ完璧な統制の結果の行動ということだ。

 

「<無為生命(サリエル)>―――【贖罪(ミヴツァル)】」

 

 ならば、と私たちを包んでいた血を一瞬解除して、直後それをゆらゆらと風にはためく旗に変えた。私の血は私の意志で自由自在に性質、素材、強度その他諸々を操れる。それに限度は無いし、この旗みたいに布の性質であるにも関わらず鋼鉄を軽々と越す強度を与えることも出来る。それは私の親指につけた傷から血として出ていて、私と士道を四方八方から来る攻撃に対してひらりとした動きで防いでくれる。

 

「なぁ、喰奈、ここから離れたいんだが…その、二人で話したいことがあって」

「分かった」

 

 私はコクリと頷くと、士道の手を掴んで大きく跳び【贖罪(ミヴツァル)】の上に乗る。魔法の絨毯というのを昔童話で見たけれど、それと同じだ。ただ、赤黒いけど。

 

 士道のナビで降りた先は森の奥深く。結構猛スピードで飛ばしたし、追撃できないように付着していた私の血を硬直させて動きを鈍らせてきたので、当分は大丈夫だろう。

 

「で、二人で話したいのは?」

「そうだな…単刀直入に言うぞ。明日、俺と一緒にデートしてくれないか?」

 

…………………?

 

「デート? 士道と?」

「そう」

「何で?」

「…なんでって…」

 

 デートといえば、親しい男女同士が行うものだ。確かに、私は士道を知っていた。けれども、親しくなんてない。それに、彼はきっと今日まで私を知らなかったろうから。

 

「…デートは、楽しい?」

「え、あ、も、もちろんだ! 絶対に楽しませる!」

「…なら、分かった」

 

 俯きながら、私は士道に答えた。

 あぁ、仮面があってよかった。もしなかったら、この真っ赤な顔を人に見せるところだったから。

 

「ほ、本当か!?」

 

 私は頷く以外の返しが出来なかった。

 

「そうか。よかった…。じゃぁ、駅前に集合な。分かるか?」

 

 再び私は頷く。

 

「おう。じゃぁ、10時に駅前にな!」

 

 そう言って、まるでヒーローのように、彼は去っていった。

 それを眺めて、それから少しして、私もその場から去った。

 

 

 

 

 目を覚ましたのは、いつもと同じ暗闇。どうやら私は眠っていたようで、体が何かに沈んでいる。目を開けているのか、目を閉じているのか、それすら分からず。

 よいしょ、とベッドか、それともソファから起き上がる。足を地に付けているが、音もしないし、感覚も無い。立っている、というよりかは、宙に浮いているっていった感じ。

 今日は扉があった。毎回、何かがあるんだ。真っ暗闇の中、唯一何かが見える。それは全くのランダムで、その中に『光』も入っている。扉は…唯一の友人に会える手段だ。

 そこへと歩いていき、がちゃりと扉を開ける。

 

「あらあら、お久しぶりですわね」

 

 そこはとある廃ビルの屋上。時刻は夕暮れだった。

 こちらが来るのを待っていた、といった風に、左右非対称の前髪をしたゴシックロリータの服を着た少女が立っていた。

 

「うん。久しぶり」

「…何かありましたの?」

「どうして?」

「そうですわねぇ…強いて言うなら、嬉しそう、だから、ですわね」

 

 そんなっ!? 私は仮面をつけているのに! どうして!?

 

 と、いつも通りのリアクションを見せた後、やれやれと肩を竦めて、唯一の友人、『狂三』の指摘に頷いた。

 

「貴方の言ってた、士道と会った」

「あらあら! まぁまぁ。どうでしたの? 彼は」

 

 心底楽しそうに、手をパンと打ち鳴らしてこちらにぐいと顔を突き出してきた。

 

「面白い…と思う。初日でデートに誘われたから」

「まったく、それは心底面白い人ですわね」

 

 くつくつ、と笑う狂三。仕草一つ一つが愛らしい。

 私もこうなれたら、きっと顔を隠す必要もないんだろう。

 

「それで、どう答えたんですの?」

「…受けた。狂三の言ってた人だったから」

「あらあら、まぁまぁ。いいじゃありませんの。彼は素敵な男性ですわよ」

「そう、なんだ。じゃぁ、私はまた眠るから。また、呼んで」

「えぇ、えぇ。分かりましたわ」

 

 私は通常の睡眠、と違う眠りをとった。指から血を出して、それをカプセル状にして私を包む。簡単に言えば、仮眠だ。外からノックされればそれがアラームとして機能する。

 

 ここまで明日が楽しみなのは、いつぶりだろうか。




お待たせして申し訳ありませんでした!

 なにぶん新しい空間が慣れないものでしてね。色々と整理してたり、お祝いとして親族の方々から頂いたお祝い金を漫画に費やしていたりしましてですね。
 まぁ、どれもこれも言い訳になってしまうので、あまり言いたくはありませんわい。

では、次は極力早めに投稿いたしますので、そのときは、お暇でしたらお読みください。
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