デート・ア・ライブ 喰奈モンスター   作:事の葉

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素顔

‐side 士道

 

 喰奈との約束をして、その日の翌朝。俺は、ジーンズにちょっと英字の入ったシャツ、その上からコートを羽織って家を出た。

 天気は晴天。けれども、夜に降った雪のせいで、積雪が酷かった。ザクザクと足音が鳴る。子供や犬がはしゃいでいる姿を見て、なんだかほんわかとしながら、足を進める。

 

 途中から少し面倒になって琴里に頼んで転移させてもらった。さて、と路地裏から表通りに出て、駅の周りを散策する。

 

「ん? なんだ、人だかりが…」

 

 噴水の設置されている中心部。大道芸でもやっているのか、何十人と人だかりが出来ている。

 

「いや、まさかな…」

 

 脳内に過ぎった考えを否定するようにして、ひとりごちった後、その人ごみへと入っていく。

 背伸びをしてその中心にいる人物を目視する。

 それを見て、俺の予測が的中してしまい、呆れと、それから羞恥が俺を襲った。

 

 人ごみを掻き分け、その中心人物を路地裏へ引っ張り出す。

 ぜぇ、ぜぇ、と息を切らす俺とは裏腹に、そいつはポカンとした様子で小首を傾げていた。

 

「どうしたの?」

 

 その狐の面は自分が間違えているということすら分かってないようだ。

 

「あ、あのな喰奈。一つだけ大事なことを教えてやる。現代の人類は顔にお面をつけたまんま外を出歩かないんだよ。それに、和服を着る人もあまりいないんだ」

 

 あぁ、なるほど。と狐の面を被っている少女、喰奈は頷いてみせたが、一向に面を取る気配がない。

 というより、取りたがらない…?

 俺は、面の向こうにあるだろう瞳へと目を向けて、心臓を落ち着かせてから、口を開いた。

 

「だから、面を取ってくれないか? その、デートを楽しむために。ずっと人の目線に晒されるのは嫌だろうし」

「…………ん」

 

 暫く悩んだ喰奈だったが、小さく頷いて、後ろにある紐へと手を掻けた。

 喰奈は、少しの抵抗の後、ゆっくりと面を取った。

 その後ろにあったのは、白い肌に、少し怯えた紅い瞳だった。

 喰奈は右手に持った面を胸元辺りまで上げて、少し上目遣いに、その困ったような、怯えたような目を向けて一言。

 

「…怖い?」

 

 ポツリ、小さな声は、面があったときからは想像できないほど怯えていた。

 しかし、そういったのが男の理性を奪いかけるのだ。

 もしもこれが俺じゃなくて殿町や、失礼だけど、神無月さんや<フラクシナス>のクルーの皆さんだったら、耐えられなくて『怖くないから、さ、お兄さんと一緒に大人の世界へ行こうか』と言いかねない。

 

「…士道?」

 

 ふらつく足を自立させるため、ビルの壁に手をつき、頭を抱える俺に、当の本人はさらなる追撃を加えた。

 

「だ、大丈夫。大丈夫だから」

『士道! ちゃっちゃとデート始めなさい!』

 

 どうやら嫉妬したらしい、妹・琴里からの怒鳴り声をインカム越しに聞いて、理性が戻ってきた俺は、ふぅ、と高鳴る心拍数を鎮めて、いまだ面を胸元で抱えている喰奈へと目を向ける。

 と、そこで、今まで気づかなかったことに気づいた。

 

「…あ、そういえば、その服って霊装か?」

「そう、だけど」

 

 質問の意図が分かっていない喰奈は、小首を傾げながら答えた。仕草一つ一つが可愛いなチクショウ。

 

 俺が言いたいのは、『霊装なら形を変えれるんじゃないか?』という旨だったが、それには一回…その、抽象的に言うのであれば、服をパージさせなければいけない。それを自分の口から言うのはなんとも失礼なことだ。

 どう伝えようか、と熟考していると、どうやら察してくれた喰奈は、一度自らを黒い布で包んだ。否、黒い布、というよりかは、指先につけた傷口から流れた血で包んでいる。

 

 それから少しして、それが再び傷口の中に戻っていくと、彼女は黒いワンピースに、灰色の膝下まであるコートを羽織った姿で現れた。ワンピースの下から伸びる黒のタイツがまた美しい。

 

「こんな感じ?」

「あぁ、そんな感じだ。じゃぁ、デートに行くか」

 

 うまく言葉が見つからず、頷いた俺は、喰奈の手を握って、表通りへと出た。

 

 三が日明けということで特別なセールをしていたり、期間限定メニューを開いていたり、または福袋があったりと、街は結構な賑わいを見せていた。

 

「喰奈は行きたいところとかあるか?」

「士道のオススメの場所」

 

 そう来たか…

 経験者は分かると思うが、『何でもいいよ』に次ぐ高難易度な返しなのだ。勿論、何でもいいよ、よりかは楽ではあるが…

 

「そういえば、少し向こうにスイーツ専門店あった気が…」

「行こう」

 

 一瞬の迷いすらなく、スイーツのワードが出た途端、俺を引きずる勢いで行き先すら聞かず直進した。

 

「逆だ逆!」

「……行く」

 

 少々顔を赤くさせ、反対へと歩いていく。

 

 

 行き着いた先では、<<偶然>>シュークリームフェスが開かれていた。全くの偶然だ。裏でラタトスクが手を回してるなんてことなんて全然無い。

 フェスの内容は、今から一時間だけシュークリーム食べ放題なる、本来であれば大赤字前提なフェスだ。しかも、味は何でもいいのだから、余計に…

 

 まぁ、とりあえず喰奈が喜んでくれるならいいか、と。脳内の邪念を振り払い、一緒にこのフェスを堪能することにした俺がここにいた。




現実で一度としてみたことないですが、こういう女子っていいですよね。私大好きです。その、ちょっと躊躇ってるところが。たまらなく。
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