デート・ア・ライブ 喰奈モンスター   作:事の葉

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【最終回】愛情と大戦争

-side 喰奈

 

 世界が暗い。黒いレースカーテンから外を見ているみたいだ。

 けれども、解る。解る。全部、全部。

 

「<世界愛好(ロフォカレ)>―――【侵愛(アガム)】」

 

 壊れた世界など、死んだ世界など、いらないよ。

 

 見える物がどんどんと黒くなってく。赤黒い、赤黒い。

 それが沼みたに広がって、上で飛んでる蝿を飲み込まんと大口を開けて出向く。

 

 私は沼から出てきたか細い、本当にか細い腕で捕まれ、そのまま上空へと、蝿と同じ場に立った。

 

「反転しましたか」

 

 はんてん? 何だろう、点々のこと?

 ぐるんぐるん。ぐーるんぐーるん。解らないや。

 視界が回る。まわる。 まわってるの? まわってるのは私?

 

「どーでもいい。【旧愛(ラヴァー)】」

 

 

 

-side 士道

 

「何だって…?」

 

 目を開け、琴里から開口一番に聞かされた現実を俺の脳は受け入れることを拒否した。

 確かに、死んだっていう自覚はある。

 

「全部本当よ。あの悪魔は、あのまま放置したら世界よりも喰奈の体の方が危ないの」

 

 拒もう、としていた脳にねじ込まれた言葉。

 琴里と令音さんの話によると、喰奈の首筋に切り傷があり、そこから延々と血が流れ続けているらしい。それを動力に、周囲全てを支配下にするということだそうだ。液体は血とは違うらしい。

 

 最悪。否、最悪と呼べる時はまだ最悪ではない。

 

「まだ、打開策はあるはずだ…」

「えぇ。幸い、喰奈の士道に対する愛情は消えてないわ。まだ現実を受け止めてないのか、それとも何かのバグなのか…、どちらにせよ、タイムリミットは多く見積もっても十五分。十分したら、封印は出来ても、命までは保障できないと思いなさい」

 

「…解った」

「士道…いいえ、やっぱりいいわ」

 

 パイプベッドを立ち上がり、向かわんとする俺の脚を、何かを含んだ琴里の言葉がとめた。

 

「なんだよ、気になるな」

「言わない。頑張ってね、おにーちゃん」

 

 なんだ、心配か。

 和んだ気がして、俺はグッド! と親指を突きたてた右手を彼女へと突き出す。早くいけ、というように苦笑で返してきた

 そうだ。目の前に広がる問題は一刻も無駄に出来ない。

 

 

‐side 喰奈

 

 くらりんくらりん。くらくらりん。

 

 昔聞いた幼児向け番組のワンフレーズが突然頭の中に入ってくる。

 

「厄介ですね」

「こーっちのセリフー」

 

 蝿の足が私の腕と交差する。大きくてか細い腕。でも、力なら十分。

 

「【旧愛(ラヴァー)】。自らを溶かしますか」

 

 せーかい。せーかい。

 けーれーど。

 

「意味ないよ」

 

 溶けた腕が、蝿を捕らえる…捕らえたいんだけど、どうもバリアが張ってて私の腕が弾かれてしまう。まぁ、生えてくるんだからいいんだけどさ。

 

「邪魔だなー」

 

 どうやらそれは溶けないみたいで、どれだけ侵食しようとしても、雫一つ入る隙がないから、全然ダメなの。

 

 それに、蝿が蝿を呼んできた。四方八方から私の体に穴を開けようと試みる。けれども残念でした。全部この腕が守ってくれる。大きな手が、私を包んでくれる。

 

 あ、そっか。私はそれを望んでいたのか。

 でも、もう遅い。

 

 私は首にある切り傷を撫でて、また目をそちらに向ける。

 

 また来る斬撃。周りからはマシンガン。再び腕で食い止めよう。

 

「やめてくれ! 喰奈!!!」

 

 怒号…いや、悲しんでるのかな。一つの叫び声が、周囲全ての行動を留める。

 

 理解は出来ないけれど、体が動いた。おかげで蝿の足は私の頭上スレスレを横切った。

 

「士道?」

 

 私は地面に降りて一番、彼の名前を呼んだ。

 暗い視界では人の顔も分からないけど、なんでか士道だって分かった。

 

「なぁ、喰奈。その悪魔で、俺とお前を守ってくれるか?」

「…任せて」

 

 こくり、頷く。

 士道を殺した私の【秘密(デレット)】で今度はふたりを守る。内側で。

 

「喰奈、どうしたんだ?」

「…分からない。でも、士道が死んでたら、悲しくて。私が、もっと早く」

 

 頭がクラクラする。グラグラと揺れる。痛みに耐えかねて頭を抑え、その場にへたりこんだ。

 

「でも、俺はこうやって生きてて、今、喰奈と話してる。それに、俺はこれっぽっちも喰奈のせいだとは思ってないぜ?」

「…でも」

「でもじゃない。事実は事実だ」

 

 顔を上げると、そこには元気な笑顔でこっちを向く士道がいた。

 ああ、死んでない…?

 

「ほら、こんなくらい仮面なんかつけてたら全部暗く見えちまう」

 

 カラン。私のつけていた面がまた外された。

 目の前に、彼の顔があった。元気で、愛嬌があって。

 

「士道。許して」

「ん? なにを…」

 

 それは野暮な話。

 

 私は彼に、ありがとう、という想いをこめて、唇を重ねた。

 やっと、できた。愛情表現。ちょっと、怖いや。

 

 

 

‐side 士道

 

「士道」

「は、はい」

 

 現在時刻20時30分。俺は断頭台に立たされている。

 

「何であそこにいたの?」

「いえ、あのですね。喰奈を助けようと思いましてですね」

 

 何で俺は喰奈からこんな尋問というかもう裁判みたいなことを受けているんだろうか。しかも、全員の前で。

 いや、本来ね。俺はパーティを開こうとしてたんだよ。だから皆を招集したんだよ。精霊の皆、令音さん。何か勝手についてきた神無月さん。

 

 それが何がどう歯車がふざけたらこんな怒られてるんだ?

 

「助けてくれたのはありがとう。でも、もっと安全な」

「と、とはいいましても、お前の…」

「お前の?」

「い、いえ。喰奈さんの身が危険だと聞きましたら居ても立ってもいられず」

 

「さすが色男ね」

 

 おい聞こえたぞ琴里。後でケーキの大きさを小さくするという刑罰を下してやろうか。

 

「…へぇ。士道、こっち」

「え?」

「こ・っ・ち」

「はいっ!直ちに!」

 

 俺は喰奈の言われたとおり、ソファに座る。ピシッと足をつけ、拳を膝の上に置く。

 なんだこれ、面接でも始まるの? なんか喰奈さんもこっちによって着てますし。無表情で。なんか、折紙とは違うんだよ。威圧があるんだよ。怖いんだよ。

 

 

 ぽすっ、と音がして、俺の上に喰奈が座る。俺含めて全員がポカンと口を開ける。そりゃもう、顎が地面に付くんじゃないかっていう、ほどに唖然と。

 

「えっと、喰奈サン?」

「手」

「はい?」

「手を差し出せ」

 

 怖い! やっぱ怖い!

 

 言われた通り、手を前に突き出す。

 ガシッと握られた両手…引き抜くのかと思ったが、その両手は自然な流れで喰奈を包むようにして置かれた。

 

「これで許す」

「あ、ありがとうございます…?」

 

 何が何だかよくわからないけど、とりあえず大満足でおられるらしいので。何とか、この愚民は喰奈殿下に許していただけたようだ。

 

「って、ちょっと! そこは私の席なんだけど!?」

 

 数分か、数秒か経った後、琴里が怒鳴りだす。

 

「違う。私の席」

「ちょーっと聞き捨てならないなー。少年は私のアシだよ?」

「わ、私の…です」

「そうよ! 私と四糸乃の席なんだから!」

「いいや、シドーは私のだ!」

「フッフッフ、忘れたか貴様ら。我ら八舞姉妹が占領していることを」

「翻訳。私達のものですから皆は引っ込んでて」

 

「ま、まぁまぁ」

 

「「「「「士道は黙ってて!!!!」」」」

 

「はい…」

 

 なんでだろう。なんでなんだろう。

 

 え、待って。今回一番活躍したの俺だよね? っていうか、人間の天敵とか呼ばれてる精霊が、霊力こそ封印しているものの、精霊御一行に喧嘩を引き起こさせた張本人はルンルンで体を揺らしながら俺の上で座ってんの? 動こうとするとめっちゃショックそうに肩を揺らすんだけど。

 

「なんだか大変そうだね。シン」

「いや、分かってんなら助けてくださいよ」

「精霊達が望んでいるならそれでいいじゃないか」

「そうですよー。士道クン。こんな美少女達から望まれることなんて普通じゃ味わえないんだから」

「た、確かにそうですね…」

 

 言われてみれば…ま、いっか。

 

 

 

 結局。家は崩壊。パーティは後日マンションでやることになりました。




ありがとうございました。
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