天職『波動生命体』 作:アイアムノットバイド
今日も今日とて学校だ。
学校とは地獄である。
行きたくもない所に行かされて、やりたくもない交流をやらされて、知りたくもない知識を知らされる。
学校とは天国である。
行きたい場所だから行くのだし、やりたい交流だからやるのだし、知りたい知識だから知ろうとする。
まぁ何が言いたいかと言うと。
「よぉ、キモオタ!また、徹夜でゲームか? どうせエロゲでもしてたんだろ?」
「うわっ、キモ~。エロゲで徹夜とかマジキモイじゃん~」
南雲にとっては地獄だし、俺にとっては天国だってことだ。
俺の名前は
そんな俺の後ろの席に座ってるのは南雲ハジメ。そして南雲にイチャモン付けたのが檜山大介とその一派。
「南雲くん、おはよう!今日もギリギリだね。もっと早く来ようよ」
今南雲に話しかけたのが、学校で二大女神なんて呼ばれてる者の片割れ、白崎香織。
その白崎に南雲が受け答えして、クラスの男子どもが南雲に嫉妬の嵐を浴びせるという日常が、また始まる。
昼休み。昼飯も食ったので本を読んでいる。
読んでるジャンルは転移チートファンタジー。公式だと転生だが、どう考えても転移だろうこれは。
俺は本を読んでいるわけだが、俺に話しかけてくる友達なんざ居ない。ぼっちだぼっち。
強いて言えば、南雲関連で騒がしい限りである。
さて、次のページを。……と、捲ろうとしたところで、視界の端に光があることに気付く。
その光は……魔法陣だな。その魔法陣はあっという間に教室全体に広がった。
そこまでいって漸く悲鳴が起こり、担任の愛子先生が叫ぶが時すでに遅し。俺たちは光に呑まれたのであった。
あ、こりゃヤバいなと思って事前に視界を塞いでたが、光を感じなくなったので顔を覆っていた腕を下げる。
そうしてまず目に入ったのは、女神っぽいのが描かれてる巨大な壁画。それから目を離して周りを見てみれば、今居る場所が神殿っぽい場所の広間で、俺含むクラスメイトら(+担任)の目の前で神職者らしき集団が跪いて居るのが分かった。
クラスメイトの状態を確認すると、未だ混乱している様だが、南雲はある程度冷静なようだ。周りを観察する余裕がある。
そうしていると、神職者集団の中から70代程度のジジイが進み出てきた。
「ようこそ、トータスへ。勇者様、そしてご同胞の皆様。歓迎致しますぞ。私は、聖教教会にて教皇の地位に就いておりますイシュタル・ランゴバルドと申す者。以後、宜しくお願い致しますぞ」
手にした錫杖を鳴らしながら、胡散臭ぇ笑みを浮かべてそいつは言ったのだった。
イシュタルに案内された先は、長テーブルが幾つも並んだ大広間で、そこに設置された椅子に座るように勧められた。
椅子に座るのはカースト順で、担任が1番上。その次に白崎が所属するグループとなっていき、最後尾が南雲。その1つ上が俺だ。
全員が着席すると同時に、メイド集団がカートを押してやってくる。クラスの男子どもはそれに釘付けになるが、南雲は意外にもメイドの方は見てなかった。
やがて全員に飲み物が行き渡ると、イシュタルが口を開きだした。
「さて、あなた方においてはさぞ混乱していることでしょう。一から説明させて頂きますのでな、まずは私の話を最後までお聞き下され」
長いので端折ると、このトータスという世界は北に人間、南に魔人、東に亜人が暮らしており、そのうち人間と魔人は数百年間戦争中。人間と魔人は量対質の争いをしてきたが、最近魔人が魔物を使役して量を増やしてきたため、人間は敗北の危機。それを知ったエヒト神とやらが俺たちを召喚、魔人を倒して人間を救え。
とここまで来た所で、担任の堪忍袋が限界を迎えた。
「ふざけないで下さい!結局、この子達に戦争させようってことでしょ!そんなの許しません!ええ、先生は絶対に許しませんよ!私達を早く帰して下さい!きっと、ご家族も心配しているはずです!あなた達のしていることは唯の誘拐ですよ!」
見た目は合法ロリだが中身は立派な大人。子供たる生徒のことを思ってそれを言ったのだろう。
だが……
「お気持ちはお察しします。しかし……あなた方の帰還は現状では不可能です」
「ふ、不可能って……ど、どういうことですか!?喚べたのなら帰せるでしょう!?」
「先ほど言ったように、あなた方を召喚したのはエヒト様です。我々人間に異世界に干渉するような魔法は使えませんのでな、あなた方が帰還できるかどうかもエヒト様の御意志次第ということですな」
「そ、そんな……」
まぁ、テンプレだな。俺がここにくる直前に読んでいた本の内容もこんな感じだった。
これにより担任は脱力。クラスメイトはパニック。南雲だけは平静を保ててる様だが、それも余裕は無さそうだ。
パニックは収まらず、不安は広がるばかり。そんな時、天之河がテーブルを叩きながら立ち上がる。
必然、大きな音が鳴るためクラスメイトらは天之河に注目する。
天之河は全員が注目しているのを確認すると、話し始めた。
「皆、ここでイシュタルさんに文句を言っても意味がない。彼にだってどうしようもないんだ。……俺は、俺は戦おうと思う。この世界の人達が滅亡の危機にあるのは事実なんだ。それを知って、放って置くなんて俺にはできない。それに、人間を救うために召喚されたのなら、救済さえ終われば帰してくれるかもしれない。……イシュタルさん? どうですか?」
「そうですな。エヒト様も救世主の願いを無碍にはしますまい」
「俺達には大きな力があるんですよね?ここに来てから妙に力が漲っている感じがします」
「ええ、そうです。ざっと、この世界の者と比べると数倍から数十倍の力を持っていると考えていいでしょうな」
「うん、なら大丈夫。俺は戦う。人々を救い、皆が家に帰れるように。俺が世界も皆も救ってみせる!!」
甘い男だな。それに傲慢だ。
自分に力があると信じて疑わず、他人に自分の考えを強要しようとする。典型的なクズの思考だ。
だが周りはそうは思わないらしく、天之河に賛同する奴が大半だ。
恐怖は吹き飛び、女子は天之河にお熱で、1番目を向けなきゃいけない所には見向きもしない。
それでヤツはご満悦らしく、この話を切り上げた。
「ではまず、ここ聖教教会本山である【神山】の麓、【ハイリヒ王国】にて勇者様方をご紹介せねばなりません」
そう言ってイシュタルは立ち上がり、「着いてきてください」と言って歩き始める。
クラスメイトらは椅子から立ち上がってイシュタルに着いて行き、俺もそれに続く。
やがて正門を通り荘厳な大門を潜ると、そこには雲海が広がっていた。
今立ってる場所が雲より上ということで、最低でも富士山クラスの山だということが分かるが、高所の息苦しさというのは感じていなかった。
「こちらです」
壮大な景色に見蕩れていたクラスメイトらが、その声ではっとなり、イシュタルと距離が離れているのに気付いて慌てて近付く。
そんなクラスメイトらを見て満足気なイシュタルに続いてくと、柵に囲まれた円形の白い台座が見えてきた。イシュタルはそれに乗るように促す。
大きさは、ここに居るクラスメイトら30人を乗せても余裕がある程大きいが、柵の外側は足場が無いので中央に身を寄せて乗っていく。
「彼の者へと至る道、信仰と共に開かれん、“天道”」
イシュタルがそう唱えた途端、台座に刻まれていた魔法陣が光り出し、台座がヌルっと動き出しそのまま斜めに降下していく。
体感的にも相対的にもかなりゆっくりと感じるが、速さはあるようでみるみるうちに雲海に近付く。
俺は雲海に突入するまでの間柵に寄り掛かり、
多分続かない