OVERLORD~るし★ふぁーサマご帰還の時~   作:≪原動天の熾天使≫

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説明回――の前の雑談回。


天使と話し災いがまどろみから覚めた日のこと(1)

 世界征服。

 実際、アインズ・ウール・ゴウンの全盛期には一つのワールドぐらい征服しないかと話合ったこともある。その野望は冗談である一方で、方法論自体はいかにもなその目的が楽しかったのもあり、真面目に議論されていたものだ。

 かつてのアインズ自身、悪の魔王をロールするにあたりその野望にそそられなかったといえば嘘になる。

 

「悪くはない……いえ、むしろいいですね。実に“我々(アインズ・ウール・ゴウン)”らしい。いえ、我々(プレイヤー)らしくはないのかもしれませんが、それでもやっぱり我々(ロール・プレイ)としては実にらしい目的です。いいでしょう。るし★ふぁーさんの提案に載るのはなんだか癪ですが、やりましょう」

 

 だから、アインズは存外乗り気であった。それは前述の通り世界征服に憧れがあったこともそうだし、これまでの経緯から一部例外はあるとはいえ平均的には著しく現地のレベルが低いという実現可能性の高さもある。

 ――それに、どうせ再開が()なら、みんなに誇れる武勇伝の一つも欲しいと思ったのだ。アンデッド(アインズ)には現世に留まるに足る執念(目的)が必要だった。

 ともあれ、そんなアインズの発言にるし★ふぁーは鷹揚に頷いた。そしておもむろにアイテムボックスから巨大な布に覆われた物体を取り出し、円卓の上に置いた。

 

「だろ。モモンガさんならそう言うと思った。で、そんな引きこもり系魔王から攻撃型魔王に昇格したモモンガさんのためにちょっとした移動要塞を用意しておいたんだ。名付けて、グレート・スカイ・モモンガ・ギョクーザ――」

 

 そう言って、るし★ふぁーは布を取り去った。なるほど、それは見れば確かに飛行する玉座だ。玉座の間の諸王の玉座にも見劣りしない見事なディティールでありながら、それでいて飛んでも違和感のないよううまくデザインが作りこまれている。ご丁寧に禍々しいオーラまで放つそれは、まさに前線に立つ魔王のための玉座だ。

 

「とりあえず《道具上位鑑定/オール・アプレイザル・マジックアイテム》っと……、よし。

 わあ、かっこいい。先日のリザードマン侵攻の際にあれば倍は格好ついたでしょうね……。防衛力も十分実戦級ですし、それにデザインのセンスも相変わらず嫌味なぐらいイカしてます。

 ……これで身に覚えのない七色鉱がこんなに使われていなければ手放しで褒められたんですけどね。何処から盗りました?」

 

 アインズはそんな感想を述べた。実際、アインズの中では嬉しさと怒りのどちらを取るべきか悩ましいところなのだ。確かにこの玉座は十二分に実用に耐えうる品だし、すごくかっこいいのだから。

 ともあれ、るし★ふぁーはアインズのそんな反応におもむろに泣き出した。

 

「ひどいやモモンガさん! せっかくモモンガさんのために用意したのに、なんか無言で鑑定するしさ、それにまるで俺がナザリックのどこかから七色鉱をちょろまかしてきたみたいな言い方……」

 

 しらじらしい、という言葉を擬人化して死ぬほど悪堕ちさせればあのような姿になると後のアインズは語った。

 だが、それも慣れたものだ。慣れたくなかったが。

 

「いいから吐け」

「ニダヴェリールで闇精霊狩りした時にドロップした杖やら剣やらをちょっとちょろまかしておいたのを分解したものがこれの主な原料である」

 

 だから、こうやって問い詰めるのも、それをあっさり吐くのも二人の間ではお決まりの流れだ。

 それを具体的に覚えているかどうかはアインズ次第なのだが、生憎とユグドラシル以外何もない人生を送ってきたアインズのこと覚えている方が多いのが二人の不幸であった。特に、その時は火力筆頭の二人が娘の運動会と激務を理由に不在だったためアインズはよく覚えていた。

 

「……それその時の狩りの目的のアイテムじゃなかったですっけ。106体目でようやく1個手に入ったはずですが一体いくつちょろまかしてたんで?」

 

 ちなみに正解を言うと公的な入手数の220%である。天使であるが故幸運であると定められているるし★ふぁーにはそれなりに優先的にドロップテーブルが回ってきたし、そうでなくともゴーレム・クラフターであり多数のゴーレムを操るるし★ふぁーは手が多かった。

 

「嘘だろ、なんでまだそんな細かいこと覚えて……じゃない。そんなこと全くない。それは君の記憶違いだモモンガさん」

 

 アインズがよく覚えている日のるし★ふぁーはこうしてわざとらしい弁明をすることが多かった。半分ぐらいはテンプレネタとして遊んでる部分もあるのだが、半分は素で驚いているというのは彼の終生の秘密である。もっともアインズは図らずとも一度終生を迎えた身(アンデッド)なのだが。

 ここで軽くお小言をいうのが普段の彼なのだが、今回に限っては違った。小さく笑ったのだ。曰く、

 

「まあ、終わったことですし責めてるわけじゃないです。むしろこういうやり取りも懐かしいですし。世界征服始動の景気づけにはちょうどいいぐらいでしょう」

 

 とのこと。これにはさしものるし★ふぁーも毒気を抜かれた。からかうなら相手に穏やかな感情になられても困るし、実際、同じ感想を思わなかったわけでもないのである。……まあ、その後に小さくつぶやいた「……よし、これぐらいなら抑制されないのか。だとすれば、ある意味こいつでよかったのかもな。複雑だが」という言葉は聞こえなかったようだが。

 それとは別に、るし★ふぁーには先の発言に気になることがあった。

 

「……あれ?なんだかこれから始めるみたいな言いぶりだけどさ。今までもしてたことはしてたんじゃないの?」

 

 少なくとも、るし★ふぁーはそう聞いていた。いつどこで誰にといえばアインズが来るまでの間氷結牢獄で治療をしてくれたペストーニャにである。なお玉座はその時にアイテムボックスから材料を取り出して作っていた。

 

「世界征服ですか? いやー、そんな大それたこと。ただちょっとギルドを安定させようとしてただけですよ」

 

 アインズはあっけからんという。どうやらこれまでの蹂躙はアインズにとっては征服活動ですらなかったようだ。

 

「なんだ、相変わらずの天然魔王だったか。でもペスでもそう思ってたみたいだし、きっとみんなそう思ってるよ」

 

 事前に聞いていた話と違う。……とはいえ、ナザリックのしもべは多くのことを深読みするので、ソースとしては信憑性はあまりないかもしれない。

 

「え? そうなんですか? で、でもデミウルゴスとか頭いいしそんなみんなとか……」

 

 アインズが真っ先にデミウルゴスの名をあげたのは、単にナザリックの中で一番知恵者のイメージが強いためで他意はない。いい感じに一を聞いて十を知ってくれるので『とりあえずデミウルゴス』はアインズの最近の癖であった。

 

「たぶん主犯だからなソイツ。アイツの親父(ウルベルト)だって世界征服派だったろ? しかも聞く限りアルベドとツートップで思いっきり誤解スパイラルだからな。悪ノリしてるぷにっとさんより数倍性質が……いや、そんなことはないか」

 

 るし★ふぁーは客観的にこれまでの事実を知っている分アインズより冷静で、正しく事態を把握していた。ただ、誤解については特段晴らそうとは思ってないのだが、何かを信じてるみたいな話をすると脊髄でついNOを叩きつけたくなるのがるし★ふぁーという人物である。

 

「むぅ、確かに彼らはちょっと深読みしすぎるところがありますからね。でもまあ、どっちもるし★ふぁーさんほど厄介じゃないですよ。……さっきから嫌に詳しいですけど、それもペスから聞いたんですか?」

 

 そういった衝撃の真実に対して冷静に反論できるのは、ひとえにるし★ふぁーの人柄であった。それが真実で何であれ、だいたいは話に真面目に取り合うと疲れるというのがアインズの主な人物評だったからだ。アインズはるし★ふぁーと話をするとき脳を6割ぐらいの力で働かせる――、警戒のいるとき以外は。

 それらの区別がつくようになったのも、ひとえに付き合ってきた年月の長さだろう。

 

「ふっふっふ。それよりもさ、こっちの事情はだいたい話したと思うけど、そっちの事情は?」

 

 意味深に笑い声をあげるるし★ふぁーだが、それが意味がある時はそんなにない。そのふわっとした感じがウルベルトの9割がカッコつけ(ふくみわらい)との違いだと、アインズは考えている。

 

「そうですね……」

 

 問われると、アインズは朗々と話し始めた。たとえあの(・・)るし★ふぁーとはいえ、一応は友人であり、人恋しかったのだ。もっとも、この場合の人とはギルメンに限られるのだが。

 アインズの口は、まるで物語の冒頭を紐解いたかのように多くのことを語った。

 異世界に転移したこと。カルネ村のこと。この世界のこと。冒険者モモンとしての活動のこと。シャルティアを洗脳した未知の脅威。リザードマンとの攻防。多くのこと。

 そして、扉の機能が作動し、るし★ふぁーが出現する原因となったあの日のこと――




まだ財政破綻もいたずらも先なんだ。すまない。作者も早く財政破綻させたい。パンドラーはやくきてくれー。(無認可の七色鉱から目をそらしつつ)
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