OVERLORD~るし★ふぁーサマご帰還の時~ 作:≪原動天の熾天使≫
「なるほど。つまりオレはモモンガさんのことモモンガさんだと思ってたけど実はぺロロンだった……ということでいい、モモンガさん? いや、それともぺロロンとモモンガでモロロンガさんっていったほうがいいかな……?」
すべてを聞いた堕天使は、ニヒルな口調でそう言った。アインズの否定の声が、むなしく円卓に響き渡った。
***
その日、アインズはすこぶる上機嫌だった。
何故かといえば、先日さんざんナザリック大墳墓のことを誉められたからである。
彼としてもそれぐらいで機嫌が良くなるのはどうかと思わなくもないのだが、生憎機嫌というものは気紛れなものであり、また、持続的な喜びであるところのそれはうまいこと感情抑制に引っかかることもなかったのだ。
もっとはっきり言ってしまうならば、浮ついていたといってもよい。
だから、ついあんなことを許してしまったのだとアインズは語る。
そもそもの事の発端はカルネ村の姉妹であるエンリとネムがナザリックを訪問したことだ。彼女らの友人であり薬師であるンフィーレアが新たなポーションを開発した折に、ついでに招待したのだが、そのおりにネムがあまりにナザリックを誉めるものだから、つい言ってしまったのだ。
「何なら、私の玉座も見てみるか?」、と――
確かに見せるだけなら問題はなかったかもしれない。ただの少女に諸王の玉座の真価が分かるはずもないから。
しかし、玉座の間の扉を本人に開かせたのはまずかった。
……普段のアインズならそんなことはしなかっただろう。シズのお墨付きとはいえ、あのるし★ふぁーの作った扉をレベル70にも満たないか弱い人間種の少女に触れさせるなどといった暴挙は。
だが、その日のアインズは非常に浮かれていた。普段の冷静さはどこへやら、アインズは存外やらかすときはやらかす天然の人である。結局のところ元が一般人のアインズは極端に自制心が強いわけではない。これまでは
ともあれ、アインズはまんまと玉座の扉のギミックの引き金を引いてしまった。つまり、アインズ・ウール・ゴウンの関係者ではない人間種がその手で玉座の間の扉を開く時が――、ナザリックの最後の決戦の日にのみ起こるべきそれが起きてしまったのだ。それで、ちょっとしたいかさまでログイン判定だけが通ってるるし★ふぁーが当初の計画通り不可抗力でナザリックに召喚されたというわけである。
その後は、るし★ふぁーも知っての通り、付き添いできていたシモベの何人かが歓喜の涙を浮かべながらひれ伏したり、ネムがオーラにあてられて倒れたり、ついうっかり<現断/リアリティ・スラッシュ>を当てたりした……というわけである。
***
時は現代。
「まあ、モロロンガさんがペロロンなのはいいや。で、YesロリータGoたっち・みーのモロロン。ギルドの危機かと思って駆け付けたオレに非情にも<現断/リアリティ・スラッシュ>をしかも三重最大化して当てたモロロン。オレが倒れた後、その現地嫁はどうしたの?」
るし★ふぁーが、からかい交じりに尋ねる。さりげなく途中で呼称がよりペロロンチーノに寄ってるのがポイントだ。
「ちょっと! 良くないですよ! 人をロリコンみたいに言わないでもらえます? あとその懐かしいフレーズやめてください。それと<現断/リアリティ・スラッシュ>を当てられたのはお前の日頃の行いが悪いせいだ!」
アインズがからかいに丁寧に反論しながら、感情に任せて円卓を叩く。だがしかし、ウルベルトの挑発に乗った
「あー、あー!やっぱり口では親友だなんだ言っても影じゃロリコンって思ってたんだー!ひっどーい!」
微塵もひどいと思っていなさそうな声で、るし★ふぁーは糾弾する。実際思っていない。
「ペロロンチーノさんはロリコンでも親友です。それに、ペロロンチーノさんは紳士ですから変態扱いしたぐらい怒りませんしむしろ喜びますよ」
だが、それは悪手だった。ペロロンチーノはロリコンで変態である――
それは、アインズにとって、それは揺るぎない真実だった。
「……そうだな」
るし★ふぁーにとっても、それは真実だった。何でもいいから屁理屈をつけて揶揄いたいのだが、さすがに曇りいっぺんのない真実に屁理屈をつける余地はなかった。天軍の三分の一を率いて神に挑んだかつての天使長が結局は神に敗れたように、名を同じくする彼もこの世の理にはさすがに勝てないのだ。
「……」
「……」
二人の沈黙はいつまで続いただろうか。やがて、口火を開いたのはるし★ふぁーだった。
「で、話戻すんけどさ。そのネムちゃんとやら、結局どうしたの?」
るし★ふぁーはうやむやになった同じ質問を繰り返した。ただし、今回はからかいなしだ。そのため、アインズも素直に答えた。
「今は適当な空き部屋で休ませてます。……あの、一つ聞きたいんですけど、るし★ふぁーさんって身体の影響受けてます?」
アインズにとって、それは不思議なことだった。異種族……特に生態すら離れている人間種のことを、なぜ異業種のるし★ふぁーが気にするのか。その理由はないはずだ。二つの理由、つまり、アインズのように異形種の身体に思想が引っ張られておらず精神が人間のままであるか、あるいは――ありえないとは思うが――アインズが人間の精神のままだと思って引かれないよう遠慮しているのか。
そんな風であったから、先の質問の答えにるし★ふぁーが少し口角をゆがめたのにも気づかなかった。
「身体の影響? 特に自然体だけど……、どうかしたの?」
るし★ふぁーはあっけからんという。質問の意図が分からないといわんばかりだ。
「その、思想的なものというか……同族意識ですかね。今は人間種とも異種族ですし、以前からかかわりのあった私はともかく今のるし★ふぁーさんが気にするようなことではないのではってことです。正直、私はそう言うの感じなくなっちゃったんですけど、るし★ふぁーさんはどうです?」
これが、るし★ふぁー以外ならアインズは決してここまで踏み込んで聞くことはなかっただろう。相手が言い出すのを待ったはずだ。……もし本当にそうで、それを知られて嫌われたくはないから。
るし★ふぁーが答える。
「ああ、そのことか。そう思ってるなら世界征服なんて持ち掛けないだろ? まあ、そういうことだ。でも一応天使だし、人間に嫌悪感があるわけでもないよ。だから、モモンガさんのお気に入りらしいから気にかける気になったってぐらいだな。オレいいヤツだし。
あるいは俺がみか☆えるだったりじぶり~るだったりしたら違ったのかもしれないけど、生憎るし★ふぁーだしさ。でも、今だって堕天してないわけだしきっと変わんなかっただろうな」
いいヤツとはお世辞にも言えないだろう彼だが、生憎と彼に限ってはその
なるほど、確かにカルマ値が低くなければ、ある程度人間に好意的とまでいかなくとも悪意的に接することのないシモベも少数だがいる。そういうことなのだろう。……意外な話だが。
「ミカエルは四大天使の一人ですよね。ジブリールってのは何でしたっけ」
まあ、実際、疑問さえとければあとはどうでもよかったのだろう。それぐらいなら衝突するようなことでもない。アインズはたわいもないことを尋ねた。
「ガブリエルって言った方が分かりやすかったか? まあ、その辺のぶれについては気になるならアッシュールバニパルででも調べてくれ。オレも詳しくはないけど、ミカエルは神に忠実だしガブリエルは人間に優しいらしい。そう考えると、ホントみか☆えるじゃなくてよかったわ」
るし★ふぁーが答える。案外、質問にはよく答える男なのだ。もっとも、天使は古くは両性具有とされるから真実そう呼ぶのが正しいのかは若干怪しいのだが。
「え、みか☆えるに改名しません? <星に願いを/ウィッシュ・アポン・ア・スター>ぐらい使いますから」
ナザリック地下大墳墓において、もっとも神の座に相応しい男が言った。
「やだよ。まだじぶり~るのほうがましだよ」
即答だった。
「まあ、そっちにして本当に人間側につかれても困りますし、やめときましょう。シモベたちも悲しみますしね」
特に、手ずから創造されたシモベはそうだろうから。それに、なんだかんだるし★ふぁーはるし★ふぁーでいいのだ。きれいなるし★ふぁーなんて吐き気がする……言外にそんな思いを込めながら、アインズはその話題を止めた。
「やっぱペロロンじゃなくてモモンガさんだな、うん」
「……?」
アインズは疑問に思った。今のどこにそれを再認識する部分があったのだろう?
「あーいや、オレはレトロなそれに詳しいわけじゃないんだ。ただ、たまたまペロロンのやつが『るし★ふぁーさんって天使ですよね』とか言いながら薦めてきたから……ほら、一応マイスター自称するだけあって薦めてくる奴は質いいじゃん? いや、本当だって」
一瞬、アインズは「そっちこそペロロンチーノさんじゃないですか!」とからかおうかと逡巡した。だが、ペロロンチーノとの数々の思い出を振り返って、やはりやめて、かわりに無言でるし★ふぁーの肩を叩いて言った。
「わかります」
「……わかってくれるか」
歴史的和解であった。
ナザリック史に詳しいものなら、そう形容しただろう。もっとも、ちょくちょく和解してはすぐに破棄されるのがナザリック三大対立の他二つとの違いなのだが。ちなみに他の二つはそもそも和解しないか、実際のところ一方的にイニシアチブを握られている。
「あ、そういえばるし★ふぁーさん。るし★ふぁーさんがあまりこれなくなってから預かっている
そう、そういえば預かっているのだ。返したくないが、一応本人の持ち物だし訊かねばならない。最も、答えは予測できるが。
「いるから返して」
「はい、了解です。まだほかに何か聞いておきたいことはありますか?」
そして、実際嫌ではあるが阻止しようとは思っていないアインズの答えもあっけからんとしたものだ。他に聞くことがないか、アインズは尋ねる。
「いや、特にないな。聞きたいことは聞けたし。……あぁ、今のナザリックで注意しないといけないことってある?」
ナザリック地下大墳墓は極めて堅牢である一方、危険でもある。100レベルでも普通以上に死ねるのがナザリックなのだ。伊達にユグドラシル最後の秘境とまで呼ばれていない。
「知っての通り、フレンドリーファイア判定が解除されてダメージを受けるので、るし★ふぁーさんのトラップですかね。すべてのトラップを知っているハズのシズも、玉座の扉のトラップのこと知らなかったみたいですし。あと、オーラ系のパッシブって結構漏れやすいので、うっかり漏れると危ないですしなるべく動き回らずじっとしていてください」
アインズが言外に非難しながら説明する。とはいえ、助言としてはそれほど間違ってないだろう。
「……ゴメン、それ多分ちょくちょくシズに『モモンガさんには、ナイショだぞ☆』って言ってたせいだわ。だから知ってても黙っていてくれたんだと思う」
るし★ふぁーは白状した。
「……まあ、こんなことになるとは思ってなかったですし、それは不問にしましょう。それで、るし★ふぁーさんの処遇とか、世界征服計画とかはもう少し整理したいですし、ひとまず解散して1時間後ってことでいいですか?
アインズが提案する。実際のところるし★ふぁーから目を離すのは少し不安なのだが、それ以上に、るし★ふぁーとパンドラズアクターを会わせてはならないと強く感じたのである。アインズは冷静なようで、やはり少々冷静さを欠いていた。
「いや、2時間後にしてくれ。いろいろ試したいこともあるしな」
るし★ふぁーが言った。とはいえ、1時間目を離すのも2時間目を離すのも大して変わらない。どちらも危険だ。そう思ったアインズはそれを了承した。
「……? まあ、いいですけど。では2時間後ということで。とりあえず部屋に戻っていていいですよ」
おうよ、と答えたるし★ふぁーが、去り際に言った。
「ああ、それと、嫌に詳しいけどどうして詳しいのかって質問だけど、《内なる告解》で視ただけだ。シモベが拒む理由もないし、あれは見るだけだからMPも大して使わないしな」
「わざわざ話す必要なかったじゃないですか!」
アインズの声が、またしてもむなしく円卓に響き渡った。
実際のところるし★ふぁーの作ったシモベって誰なんですかね。
恐怖公説とるぷー説が有力ですが、トラップ関連でシズもワンチャンあるのかな、でもシズ人気者だしやっぱりないかなとか思ったりします。
■本日の楽しい捏造解説コーナー
《内なる告解》:
一定レベル以上の天使が強制的に取得する特殊技能。
設定上は『記憶を覗くことで対象を理解する』効果だが、実際のゲーム上ではコンシールされた効果やスキルが発動する5秒前に発動時の演出を視る効果として働いた。
発動するまでかかっているかどうかわからないのと幻視してる間に発動してるのとで頼りにしにくい。あくまで保険以上のものではない。
YesロリータGoたっち・みー:
41あるアインズ・ウール・ゴウンジョークの一つ。相手がロリコンである時に使われる。意味は「お巡りさんこいつロリコンです」。
ナザリック三大対立:
たちウル、姉弟、モモるしの3つである。
ちょっとしたイカサマ:
ログイン判定を繋いだままログアウト状態になる……というとなんだかよくわからない上にすごくややこしいが、実際のところ少しだけ席を外すけどすぐ戻ってくるとき用の判定状態。郵便を受け取ったり、水分補給したり。でも専ら最大の用途の名を借りてトイレモードと呼ばれた。
この際、HMDのサブ端末を通して、転送魔法の確認だとか簡単な応答はできるようになっている。
通常5分で自動的にログアウトするが、るし★ふぁーはこのゲートアウト時間をごまかしていた。
詳しくは次回……、次回かな。多分。