うたた寝から目を覚ましてみると、目の前には見たことのない少女が立っていた。その見た目は綺麗な白銀の髪に血液のような紅い瞳、薄っすら紅色の唇の隙間から見える牙にパタパタと揺れている尻尾。アーシュと似て年端も行かぬ少女……いや何処からどう見ても幼子にしか見えないが、その少女からは殺意などは感じられずただ自分に警戒しているようだった。
少しでも動きを見せれば良いのだろうが、その瞬間に向こうが何をしてくるか分からない。なので、少しだけ様子を見てみようと思う……が、暫くの間2人共黙りこくったままだった。そんな重苦しい空気に耐えきれなかった雪咲は、言葉を口にする。
「えっと……まず色々と聞きたいことは有るけれど、君は?」
首を傾げ優しく微笑む雪咲、だがそれが逆に少女の警戒を強めてしまった。
「……名なんて無い」
「そっか、じゃあ何でここに居るの?ここは俺の敷地であり、家なんだけど」
「……貴方はさっき私の縄張りに入った、けど何もしなかったから忠告しに来ただけ」
「縄張り……もしかして、ここの山頂付近の森?」
「そう、貴方の魔力はとてもじゃないけど多すぎる……それが危険だと感知したから最初は殺そうかと思ったけど、私じゃ手も足も出ないのは明らか……」
「物騒だな……」
たははと苦笑いする雪咲だが、少女は微動だにせずまるで凍りついているみたいに一ミリも動こうとしない。恐らくだが、少しでも動いたら殺られると思われているに違いない。
(はぁ……どうしたものかな、アーシュが居ればまた話は違ってきたんだろうけど……)
そんな事を思いながらもよっこらせと立ち上がり、居間の奥へと雪咲は消えていく。少女は緊張から少し解かれたかのように、その場にへたり込む。
ーーー
”怖かった……話している分には優しそうに見えたけど、感じる魔力が……まるで闇の底に沈められたみたいに冷たく、静かで暗かった。”
私は滲み出る冷や汗をさっと拭い、もう一度立ち上がろうとする。だけど膝が笑ってしまい、まともに立つことすら出来なくなっていた。もしあの魔力で発動する魔法が自分に向けられたら……そう思うだけで泣き出したくなる程に恐怖を覚えてしまっていた。全身も震えだしてしまい思うように力が出せず、気が付けば私は……その場で静かに泣いてしまった。
それは決して怖くて泣いている訳じゃない、いや……恐怖もあるだろうけど一番泣きたくなったのは、私はこのままこの場所で殺されてしまうのではないかと言う不安。そして極度のストレスに私は、うまく感情を抑えられなかったのかも知れない。
「うっ……うぅ……」
必死で涙を止めようと試みるも、無尽蔵に溢れ出てきてしまう。それこそ体中の水分が枯渇してしまうのではないかと言うほどに……。もうどうすれば良いのか分からない、だからこの感情に身を任せてみることにした。
ーーー
雪咲が2人分のお茶を入れ戻ってくると、少女が蹲りながら泣いていた。それは怯えているようでもあり、何かを悲しんでいるようにも見えた。
「……。」
小さくため息を零し、お茶の入った湯呑2つを乗せたお盆をそっと座布団の隣に置く。そしてそっと少女の真ん前にそっと座り込み、優しく頭を撫でる。それでも少女は泣き止まず、どうすれば良いのかと雪咲は正直途方に暮れていた。
「何で泣いてるの?俺何か泣かせるような事をしたかな?」
「ぐすっ……貴方の……その膨大な魔力が……溢れ出すぎてて怖い……」
「……もしかしてかなり溢れてる?」
「……全然抑えれてない」
「……」
一頻りの沈黙の後、雪咲は
「ごめんね……」
と言って優しく頭を撫でる。そして小さく目を瞑り、どうすれば魔力を溢れさせず抑えきれるのかと考えた。その結果、ある一つの考えが脳裏を過った。
「そうか、その手が……」
早速イメージを頭の中に浮かべ、実行に移してみる。すると、先程まで震えていた少女の体が少しずつ震えが消えていくのを感じた。先程まで感じていた魔力が収まってきたからであろうか、ようやく泣き止んでくれた。
「……一体何をしたの?」
「いやぁ……まぁ適当?」
「……」
たははと雪咲は苦笑いするが、少女はジト目で雪咲の事を睨んでいた。
お久しぶりでございます、秋水です。
最近色々とやらなければいけないことが立て込んでおりまして、中々小説を考える時間がありませんでした。ですので、うp出来る内にと思いまして今上げております。
次はもうちょっと早く更新したいものです……まぁがんばります!(何を