秋水です。
最近はやることも色々多くなり、小説に割く時間がどんどん消えていってしまいました。
周期的ではありませんが、気が向いた時にでも投稿していくスタンスにしていこうかなと思っております。
最後にお知らせがございますので、お楽しみに!
謎の少女に”ティル”と名付けてから2日後、雪咲はツァイの手紙通り正装にてアルザース帝国城の控室に来ていた。執事に案内されてから数分、何をするのだろうという緊張と不安が雪咲の胸を締め付けていた。すると……
”雪咲様、準備が出来ましたので王の間へどうぞ”
兵士がそれだけを言い残し、その場を去ってしまう。
「考えていても仕方ないか。」
小さくため息を付き王の間へ歩を進める、閑散とする場内を歩きながらも。
(それにしてもおかしい、こんなにも人が居ないなんて)
そう思いながらも歩みを進めていると、いつの間にか王の間の前まで到着していた。今一度衣服に乱れがないかを自身で確認し、音を出さぬように小さく咳払いをしてから大きく胸に空気を入れ込む。
「……お待たせいたしました、雪咲ここに出頭いたしました!」
閉ざされた扉の前で大きく声を出す、そして暫くすると中から
「よくぞ参った、入れ」
というツァイの言葉を聞き、すっと扉を開ける。すると……その向こう側に居たのはこれでもかという程の人工、玉座に座りながらも拍手をしているツァイ。この城のメイドや執事達も、兵士や騎士団長達も拍手をしていた。
「えっと、これは一体……」
「まぁ良いではないか、疾く我が前に来るが良い」
「は、はぁ……」
戸惑いながらもツァイの前まで歩き、後少しで触れられそうな位置で動きを止め膝を折り傅く。
「ではこれより、魔王を倒した英雄を表彰する式を挙げる!」
その言葉に雪咲は。
(成程……まぁいいか、ここは乗っておこう)
とそのまま式を続行することを決意、して雪咲は無事に式を終え英雄として全世界に名が広がることとなったのだった。
ーツァイの私室ー
式を終えたツァイは雪咲を私室へと招いていた、そして雪咲が入ってくるなり”楽にしてもらって構わん”と言って身につけていた仰々しい物を全てポイッと床へ投げ捨てる。
「それで、何でこんな式を開いたんですか?」
「決まっているだろう、雪咲の名を全世界に広めるのと同時に後世に伝えるべきかと思ってな」
ドカッと椅子に座るツァイ。
「本当は穏便に済ませたかったのであろうが、そうでもしないと他の皆が納得しないと思ったのでな……特に隣国に関しては、本当に魔王を雪咲が倒したのかを疑っている始末ときたものだ」
「は……ははは……」
苦笑している雪咲だが、内心ではこの式典が今後どういう展開に発展していってしまうのか不安で仕方なかった。だがそんな事を今気にしていられるはずもなく、ツァイの言葉は続く。
「魔王を倒したということはそれだけ一大事ということなのだ、今までずっと世界を脅かし続けてきた”あの”魔王が討伐されたのだぞ?それは喜ばしい事と同時に危うい状況でもある」
「……といいますと?」
「反乱する危険性ありとみなされ、国家反逆の罪で逮捕し処刑……なぞと表向きでは発表され、その事実単に王が勇者の素質に怯え処分するというつまらん結果になり得る可能性だってあるということさ」
「でも、ツァイさんはそんな事をする小心者では無いのでしょう?」
「さぁな、正直雪咲の素質に怯えてるやも知れぬぞ?」
「ふふっ、ご冗談を」
静かな部屋に二人分の小さな笑い声が反響する、それは他愛もない冗談と共にツァイはそういう事を一切する気がないと言う意志の表れでもあった。
雪咲から見てツァイは、この世界ではたった一人の同族の友人でありこの世界で初めて”この人になら……”と思えた人でもある。絶対に壊したくない関係であるし、失いたくない大切なものになっている。
(……決めた、俺は)
そう思い瞳をそっと閉じ、座っているツァイの隣へと移動する。
「俺決めました、これからの事を」
「ほう、教えてはくれぬか?」
「いいですよ」
そう言って雪咲は自身の心の中で固く誓った事を口にする、最初はどんな反応をするのか少し怖かった雪咲だったがツァイの反応を見るなりホッと胸を撫で下ろす。
「はっははは!そうか、それは面白い!」
大変愉快そうに笑い、腹を抱えていた。
「そうか、確か雪咲は死ねぬのであったな」
「まぁそのような感じです」
「そしてその特性を活かしこの街を護っていきたいと……ふっ、確かにお前以外には叶えられぬ決意であるな」
「その為にはもっと力をつけなければと思いまして……」
「否、お前がすべき事はそんな事ではない」
「え?」
先程まで抱腹絶倒していたツァイがいつの間にか感情が戻っており、何時も通りの凛とした皇帝の顔をしていた。
「お前が今するべきことなのは力を付ける事ではなく、この地を深く学び、学を高め、我の右腕として共に道を切り開く他無かろう?」
「右腕……ですか?」
「そうだ、正確に言えば我の副官として力になって欲しいという事だ。我を護る護衛として、国を護る皇帝補佐……どうだ?」
雪咲を見据えるツァイの瞳は決して逸らされることはなく、まるで釘付けにされたかのように一ミリすら動かすことない。
「……俺にそんな大役が務まりますかね?」
「だからこそ学を高め、この地を学べと言っておるのだよ。最初から完璧に補佐出来る者など一人とて居らん、努力してこそ限りなく完璧に近づくというものなのだ。少し厳しいことを言うようだが、最初からそんな弱腰で恐れている者が務まるか等の疑問を抱く資格は無い。」
静かに言い放つツァイ、雪咲はぐっと服の裾を握り締める。
「我とてなりたくて皇帝になったわけでは無い、この体に今も流動している皇族の血と民の声によるものだ。だがそんな我でさえ一国を任された時……言わば皇帝の座についた時、今にも逃げ出したくなるような緊張と使命というか責任感みたいなものに駆り立てられていた」
ポツリとツァイは語り始める。
「幾度も失敗を繰り返し、時には失望に近い感情さえ抱かれたこともある。だがどうしてそんな我が未だに皇帝の座から降りぬか分かるか?それは努力したからだ。分かりきっていたことでも何か見落としがあるのではないかと一から学び直し、皆が床につこうが何をしてようが国と皆の事を思いひたすらに努力をした。」
「時には血反吐すら吐いたこともある……だがそのお陰で我は今も皇帝として皆を導き、全てを護ることが出来ている。では何故ここまで出来たのか、思いが強かったから?違う。意地?違う。最初から出来ると踏んで躊躇わなかったからだ」
「本当にそれだけで……」
「あぁ出来るとも、個人差はあるがな」
「……」
雪咲は顎に手を当て、考える。
「……まぁ今すぐに結論を出せとは言わぬ、じっくりと考え込むが良い」
「分かりました」
こうして一日が過ぎ、雪咲は尚も考え続けていた。
ここまで読んでいただき、誠にありがとうございます。
さてまえがきにも記載したお知らせですが、実は……この作品を100話丁度で完結させるのと同時に、最新作を作成中でございます。
内容に関しては、気が向いた時にツイッターの方で呟きますので、乞うご期待!