チートを貰ったが、異世界では……。   作:月詠 秋水

28 / 108
前回(第20話)の終わりと、閑話2の終わりの話しの続きみたいなものです。

という訳で、本編再開です!!


第21話 少女は永き眠りにつく。

少女の遺体を抱き抱えながら静かに泣いていると、複数人の足音が聞こえこち何向かっていることが分かる。足音に混じり少し鳴る異様な音から、鎧を着込んだ連中だということが分かった。

 

「……」

 

少し様子見に、少女の遺体と共に身を隠す。その数秒後、勢いよくドアを蹴飛ばしながら考察どおり鎧を着込んだ男達が入ってきた。その風貌は宛ら冒険者っぽく、色んな者を壊しながら入ってくる。1人の鎧男が崩れた天井の木材の下敷きになっている大男の遺体を見るや、何処かへと持ち去っていってしまう。そこからか、鎧男達の捜索の仕方が荒くなっていく。

 

「生きてるやつ居んのかぁ!!」

 

「居るんなら出てこいや!!」

 

激昂している男達は、どんどんドアや壁を蹴破りながら建物の奥へと入り込んでくる。数分間捜索している内に、少女の遺体を抱き抱えた雪咲は1人の鎧男に見つかる。

 

「お前、何でこんな所に居んだ?」

 

「……」

 

仮面は予め外し異次元袋に仕舞っておいたため、変に詮索はされずに済みそうだ。しかし少女の遺体を目にした途端、鎧男の目の色が変わるのがすぐ分かった。

 

「おい、この女まさか……ギルドに居た商人娘か!?」

 

「はい」

 

頷いた瞬間、突然胸ぐらをつかまれる。

 

「てことは、あいつを殺したのもお前かぁ!」

 

「……」

 

この鎧男が指す”あいつ”が、大男のことだとすぐ分かり黙り込む。何も喋らず、だが視線だけは逸らさず……黙秘していると、胸ぐらを掴んでいた手を離し剣の柄に手を置く。

 

「あいつは俺の親友だった……のに、何故殺されなきゃいけないんだ!!」

 

剣を抜きながら叫ぶ鎧男、すると騒ぎを聞きつけたのか他の鎧男達も次々と合流する。まる最初から話を聞いていたかのように雪咲を敵視し、剣を抜き構える。そんな中冷静にゆっくり立ち上がり、まるで生気を失ったような無気力な視線を向けると鎧男達は少し怯む。怯えているわけではない、ただどう思ったのか数歩後ろへと下がっていく。だがそれも束の間、全員束になり雪咲に襲いかかってくる。

 

「相手は1人だ、やっちまえ!!」

 

「あいつの恨みだぁぁぁ!!!」

 

他にも罵倒を口にしながら斬り込んでくるが、誰一人雪咲に傷をつけることは出来なかった。それもそう、雪咲が少し魔力を込めるだけで薄い壁みたいなのが剣の刃を通さない。

 

「……さよなら」

 

小さくそう呟くと、一瞬にて辺り一面……と言っても、少女の遺体を残し廃墟だけを素粒子レベルにまで分解する。先程まで刃を向けていた鎧男達は当然、建物や他の人達の遺体までもが消え去っていた。

 

「さてと……」

 

フードを深く被り、狐面を付け、遺体を魔法で周りから一切見えないようにしてその場を立ち去る。大通りの方へ出ると、先程の大きな音を聞きつけた野次馬達が一斉に押し寄せてきていた。野次馬達をかわし、町の外へ出ようと少し早足で歩いていると、偶然か必然か一台の馬車とすれ違う。

 

「……っ!」

 

向こうは気付いているか分からないが、雪咲はしっかりと気付いていた。中に乗っていたのは、皓達3人だという事に。だが気のせいだと心の中で決めつけ、さっさと村の外へ移動する。

 

暫く歩いていると、見晴らしの良い所に出る。辺り一面何もなく、穏やかな風が吹く草原のど真ん中だった。そこに雪咲は人一人入れる位の穴を掘り、そこに少女の遺体を寝かせる。そしてその周りに魔法で作った花を敷き詰め、少しずつ土を被せていく。途中何度も涙を流し狐面を取りフードを脱ぎ、それでも黙々と土を被せていく。大体少女の姿が見えなくなるくらいにまで土を被せ少し息抜きとして立ち尽くしていると、背後から思い切り肩を鷲掴みにされる。驚きながらも魔力を高め手を弾き、掴んできたやつの方に向き身構えていると……そこに居たのは皓と、冬望と眞弓の3人だった。

 

「な……何で此処に……!?」

 

「話は後だ、早く少女を掘り起こして治癒魔法をかけてやれ!」

 

「!?!?」

 

意味が分からず思考停止するが、皓が無茶を言う時は十中八九なにかあるという事を雪咲は知っていた。その上で少女を掘り起こし、治癒魔法で肉体の傷を全て癒やす。途中皓が独り言みたいに何かを呟いていたりもしたが、取り敢えずは治癒に専念していた。

 

少女の全身の傷が治り、次はどうするのかと皓に聞いてみる。

 

「どうすればいい?」

 

「……反魂の魔術って知ってるか?」

 

その言葉に、一瞬血の気が引くのを感じた。反魂とはその名の通り死者の魂をあの世から呼び戻し、肉体に定着させる魔術の一つ。これは公では禁術としてされていて、使用が発覚した場合厳罰に処される。しかし反魂を使ったかどうかは背中を見ないと分からなく、反魂の紋様がしっかりと浮き出ているのを見られない限りは知られる可能性は限りなく薄い。

 

「だけど……!」

 

「これは彼女の意向なんだ」

 

「この子の……?」

 

観念したのか、皓はこれについての経緯を全て話してくれた。どうやら皓の所に少女の魂が行ったらしく、反魂のことを雪咲に伝えてほしいと頼み込んできていたそうだ。その事を初めて聞いた眞弓や冬望は、納得したようにゆっくりと頷いていた。

 

「……本当にいいんだな?」

 

「構わない、責任は俺が……」

 

「いや、責任は実行する俺が負う……そのことじゃなくて……いやいい、最終確認的なものだ」

 

そう言い、雪咲は結界を張る。中にいるのは少女含め5人だけで、外からは中の事情を一切見ることが出来ない結界を張った。だが、誰にもそれには気付いては居ないようだった。

 

仕方ないと腹を括り、少女の心臓部……胸にそっと手を当てる。眞弓と冬望の視線がとてつもないほど痛かったが、気にせず魔力をつぎ込む。

 

「……戻ってこい!」

 

その言葉を叫ぶと、少女が寝ている地面に魔法陣が浮き出る。突如眩い光を放ったかと思えば、一瞬で砕け散る。どうなったのか分からず皓の方に視線だけを向けると、悔しげな表情をしていることに気が付く。それを見て察したのか、雪咲は魔力を注ぎ込むのを止める。

 

「……」

 

少しの間誰も喋らずに静かな空気になったが、絶えきれなかったのか眞弓が口を開く。

 

「どうして……生き返らないの……?」

 

その声は糸よりもか細く、今すぐにでも泣き出しそうなほどに震えている。皓はただ黙っていたが、やがて目を閉じ首をゆっくりと横に振る。

 

「……申し訳ないが、時間切れだ」

 

「……っ!」

 

皓の言葉を聞いた瞬間、眞弓はその場で泣き出し冬望は泣いている眞弓を慰めている。皓も悔しさの余り涙を目元に溜め、拳を固く握りしめながら震えていた……のだが、一番ショックが大きかったのは雪咲のようだ。項垂れながら何かをつぶやき、よく聞いてみると只ひたすら”助けてやれなくて……ごめんなさい……”と繰り返しているだけだった。

 

「ごめんな……もっと俺が早く伝えてやれれば……」

 

「皓の……せいじゃない……」

 

必死に泣きそうなのを堪えているのか、雪咲の声は震えていてずっと俯いたままだった。そんな中そっと肩に手を当て、優しく抱き寄せる。

 

「我慢するな……」

 

その言葉で吹っ切れたのか、雪咲は一気に泣き出した。声をあまり出さずだったが、泣いている時ずっと少女にずっと謝罪をしていた。眞弓だけでは無く冬望も涙を流し、皆して雪咲の所へ集まってきた。眞弓は雪咲を抱きしめながら泣き、冬望は雪咲を慰めつつも泣いていた。

 

その後、泣き止んだ後に少女の墓を作った。現実世界風の立派な墓にはしてやれなかったが、近くの少し大きめな石を削って磨いたら大理石みたくなった。それを少女の眠る土の上にそっと起き、そこの前に花束を置き手を合わせ冥福を祈る。皓達3人も並び、全員で手を合わせる。




大理石っぽくツルテカの大きめな石を想像していただくと分かりやすいかと思います、それが一番の埋葬法だと思ったからです!

次の話は明日の夜に投稿致します!
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。