チートを貰ったが、異世界では……。   作:月詠 秋水

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チートな能力を授かりアルザース帝国近辺に落とされた雪咲、しかしそこで出会った謎のおっさんの兵士。話しながら街を歩き、何やら違和感を感じる雪咲。

一体どうなっているのか……?


第2話 ようやく再会出来たと思ったら

「所で坊主、名前は?」

 

「風間 雪咲です」

 

「ふーん……珍しい名だな」

 

「貴方の名前は……?」

 

「俺はグレン・フォータスだ、グレンでいい」

 

おっさんの兵士ことグレンと、街中を歩きながら他愛もない会話をしていた。

 

……何故か、周りの雪咲を見る視線がおかしいと何となく感じていたが、あまり気にしないようにしていた。

 

ついでに、この街や周辺諸国の事も聞いてみた。

 

どうやらここは、大陸の中央であり最も人間が盛んな場所。他にも獣人や亜人等が住んでおり、皇帝は他種族を嫌わぬ温厚な人だと伺える。しかし度重なる魔物や魔獣の侵略により、苦渋の決断の末に英雄召喚を行使したの事。

 

「へぇ、魔獣や魔物なんて居るんですね」

 

「まぁな……皇帝は昔趣味で魔物狩りしててな、かなり強かったんだがな」

 

皇帝が魔物狩りしてたと言う事に、驚きを隠せなかった。そんなの趣味でやれる範囲では無いし、万が一の事があったら一大事だ。

 

「誰も止めなかったんですか?」

 

ズバッと言ってみると、グレンは苦笑を浮かべながら他所に視線を移し言い淀んでいた。

 

「……」

 

二人とも黙りこくって数分後、とても大きなお城の門の所まで着く。城はとても大きく、前にやったゲームの国王の城とまるで同じだった。

 

「グレン隊長!」

 

女性の声が聞こえそっちの方へ視線を移すと、ブロンドヘアーで鎧を着込んだ女性を筆頭に十数人近くこちらへ向かってきていた。

 

「おー、リィナ!どうした?」

 

グレンが彼女の名を呼ぶと、一瞬だけ嬉しそうな表情をする。だがすぐに気を引き締めて敬礼をする。

 

「いえ、巡回お疲れ様です!」

 

「おう」

 

グレンは笑いながらリィナの頭を優しく撫でると、みるみると顔が赤くなっていってるのが傍から見ててとても分かりやすい。そんな光景を見てると、リィナが雪咲に視線を向けた。

 

「隊長、彼女は?」

 

ん……?聞き間違いかな、今"彼女"って聞こえた気がする。

 

難聴だと信じ、首を傾げた。

 

「こいつは雪咲だ、言っておくがこいつは男だぞ?」

 

「はい……?」

 

まるで嘘だと言いたげな表情で、雪咲の方を見てくる。そしてツカツカと間近な場所まで歩み寄ってきて、雪咲の胸板に軽く触れた。

 

「……っ!!」

 

擽ったさと気恥しさに、少し顔を赤くしながらも少し後ろへ飛び退こうとした……刹那、信じられない事態が起きた。

 

軽く足に力を込めて後ろへ飛んだのだが、その速度は宛ら高速道路を走る車の如く。とてつもない速度で背後に飛んでいき、気が付けばかなり離れた……街の門の所まで飛んでいた。

 

「!?」

 

グレン・リィナはその場から動けずに唖然としていた。当の本人ですら放心していた。すぐにハッと意識を戻し、雪咲は二人の元へ少し小走りで戻った。さっきのように加速しないように、力を抜いて。

 

「貴方、一体何者よ!」

 

2人の元へ戻るなり、第一声がこれだった。

 

「お、俺もよく……」

 

「まぁまぁ、いいじゃねえか。雪咲は恐らく、皇帝……いや、下手したらそれ以上に強いかも知れねぇぞ?」

 

「……!」

 

今にも掴みかかりそうな剣幕で迫ってくるリィナの仲裁に入った筈のグレンの言葉で、雪咲は面倒な事に巻き込まれた。……と言っても、リィナは雪咲に質問攻めしていただけなのだが。

 

主にどうやって強くなったのか……とか、そんなのだが。そんなこんなで門の前で質問攻めにあってると、背後からとても聞きなれた声が聞こえる。

 

「……雪咲?」

 

その言葉に反応して振り向くと、そこには皓が居た。神様が皓達が飛ばされた世界に送ってくれると言っていたが、まさかこれほど早く会えるとは思っていなかった為に虚をつかれて唖然としていた。

 

「雪咲……なのか?」

 

その言葉に返すことも無く、ただゆっくりと頷いていた。そして皓が雪咲と確信した瞬間、思いっきり抱きしめてきた。

 

「よかった……突然居なくなるし、何故か変な世界に来てるし、お前だけあそこに取り残されたのかと不安で……!」

 

「……えっと……取り敢えず、大丈夫だったか?」

 

「んな訳あるか!いきなり英雄って言われても……実感湧かねーってか、現実味が……取り敢えず、王の間に来てくれ。二人ともかなり心配してっから、安心させてやらなきゃ」

 

そう言って皓は、雪咲の腕を引っ張り城の中へと消えてく。その場に取り残されたグレンとリィナは、二人の後を追うように城の中へと入る。

 

「そう言えば雪咲、お前少し見ない間に……その……随分と可愛らしくなったな……?」

 

「はぁ……?」

 

「あ、あははははは……」

 

質問の意図が分からなかったため、適当に受け流した。だが皓の視線は、何故か少しおかしく感じた。

 

 

王の間に入ると、そこはとても広い空間があった。まるでロープレに出てくる王の間まんまだった。一番奥の派手な装飾の施された椅子に座ってるのが、恐らく皇帝であろうとすぐ察する事が出来た。

 

「……皓殿、そちらは?」

 

皇帝の言葉に全員が雪咲の方に視線を向けてくる、するとこれまたよく見知った顔が二人、駆け寄ってきて力一杯抱きしめてきた。

 

「雪咲くん……!」

 

「よかった……無事なのね……!」

 

二人とも雪咲を抱きしめながら、泣きじゃくっていた。周りの兵士達はポカンとしているが、そんな事お構い無しだった。

 

「何処に居たのよ……馬鹿……!」

 

眞弓が嗚咽を堪えながらも訪ねてきた、雪咲はここに来た経緯を神様やステータスの事を無しで全て説明した。

 

……

 

「……つまり、この街の近くの森の中に飛ばされてたと言う事ね?」

 

「うん」

 

ようやく泣き終え、涙を拭ってた冬望がこちらを見てきた。内心何されるんだろうと思っていると、王の座から咳払いが聞こえた。それに反応したように、4人の視線は王に向いた。

 

「……それで、お主は何者だ?」

 

これで何度目の自己紹介だろうと思いつつも、ゆっくりと王の御前に立ち、傅く。

 

「俺は皓達の友人の風間 雪咲です」

 

「ふむ……私はアルザース帝国皇帝、ツァイ・ルグトラ・アルザースだ。…………うーむ」

 

皇帝は何か含みのある唸り声を上げながら、背もたれにもたれかかり天井を眺めていた。そして少しの静寂が過ぎ去った後、楽にして良いと言われたから普通に立ち上がる。

 

「……おかしいな、英雄は3人と文献に書いてあったんだがな……」

 

「それはつまり……」

 

最も最悪な自体、召喚事故である。国王の傍に居た人の話によれば、何らかの要因で召喚ゲートの転移先が一人分だけおかしくなったのこと。何故あんな所に居たのかは大体検討はついてるが、敢えて真摯に受け止めてるふうに聞いていた。

 

「……所で、ひとつ確認したい。ステータスを見せてはくれないか?」

 

その言葉に一瞬だけ固まった、あんなチートな能力を見られたらどんな反応されるか正直怖かった。しかしどう足掻いても逃げられそうにないし、何より皓達に迷惑がかかるかもと思い観念してステータスを表示する。自分からはやはりぶっ壊れた数値しか見えないが、他の人から見た感想が

 

ふ……普通……

 

だった。その言葉に考えを巡らせると、ある一つの要因が浮かぶ。それは神様が言ってた、その他全てのスキル……だ。恐らくその中に、ステータス詐称のスキルがあったに違いないと思った。

 

「う……うむ……これは……」

 

「雪咲……もしかしてお前……」

 

「雪咲くん……」

 

「あんた、巻き込まれただけなんじゃ……」

 

まるで可愛そうな物を見る目でこちらを見てくる、そんな視線に耐え切れそうにないと思っていた瞬間……グレンとリィナが王の間に入って来た。

 

「グレンさん……?リィナ……さん?」

 

「おう雪咲、丁度よかった……英雄も揃ってるな?」

 

グレンが辺りをぐるりと見渡し、不敵に微笑む。刹那、リィナはいつの間にか国王の御前へと移動していて、傅いていた。

 

「何事だ?」

 

「皇帝、グレンと英雄……雪咲で、軽く腕試しをさせて頂きたいのですが!」

 

その台詞に、誰もが騒然とした。

 

「おいおい、大丈夫かよ」

 

「隊長が、あの子と……?」

 

兵士はざわめき、皓や眞弓や冬望は固まっていた。

 

「な……何でですか?」

 

「ちょっとさっきの話を立ち聞きしてな……覗いて見たんだが、どうにも信じられん。だから、実力を見させて貰うぞ」

 

こうして、雪咲は言うも虚しく泣く泣く闘技場へと連れていかれた。




次のお話は、明日か今日の夜にでも投稿したいと思います!
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