チートを貰ったが、異世界では……。   作:月詠 秋水

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今回の話は、若干の胸糞要素が含まれています。

苦手な方は観覧を控えたほうが宜しいかと……(書いた自分でもイライラするほど)




第36話 一時の安穏と理不尽

雪咲が目を覚ますと、最初に目に写ったのは見慣れない天井だった。体を動かそうとするが全く動かないため、視線だけで辺りを見渡そうとした。その瞬間、両肩の所から不意に柔らかいものに包まれている感覚がする。しかも暖かく、微かに吐息だと思われる風も感じ取る。幸いなことに首だけは動くので思い切って左右を見てみると、右腕にしがみついて寝ているアーシュと左腕にしがみついて寝ているユリナが目に入る。

 

「え……えぇ……?」

 

小さく声を漏らしながら困惑していると、ベッドのすぐ近くに椅子を用意して座って居たのだろうコーネリアとジュリアが雪咲の方へと。

 

「お目覚めかしら」

 

「良かったわ……目が覚めて」

 

2人共とても安堵したようで、小さく溜息を零していた。

 

「えっと……どういう状況?」

 

雪咲は2人に尋ねる、2人は可笑しそうに微笑みながら顛末を聞かされる。

 

まず雪咲が寝込んでいたのは丸一日、医者が言うには体の傷が酷すぎて目を覚ますか不安がっていたらしい。それを聞いて何を思ったのか、その日の晩からアーシュとユリナが雪咲と一緒に寝たいと駄々をこね出したらしい。アーシュ曰く

 

”……雪咲に限って万が一なんて無いかも知れないけど、もし目が覚めた時に一人ぼっちだったら可哀想”

 

なんて言うものだから、コーネリアとジュリアも同伴で雪咲が眠っている部屋にずっと居座っていたらしい。

 

「……そうだったのか」

 

優しく頭を撫でてあげたい衝動に駆られたが、体が動かせないため断念した。すると、とある疑問が脳裏を横切る。

 

「……反乱軍はどうなったの?」

 

コーネリアとジュリアは最初言うのを躊躇っていたが、雪咲が後添えで”誤魔化すとかは無しでお願い”と言ったら何か複雑そうな顔をする。

 

「……反乱軍はほぼ死亡、死亡した殆どがアルステン王国に籍を置いている人達だった。父である国王はこの件を内乱とは悟られたくないらしく……その……」

 

「父上はこの件に関わった雪咲達を……国家転覆罪とでっち上げて処刑するつもりらしいわ」

 

「っ……!?」

 

余りの予想外な展開すぎて思わず我が耳を疑う状態だった、どうして助けたのに有りもしない罪を着せられて殺されなくてはいけないんだと。

 

「大体、国王はあんな大変な時に何を……!」

 

雪咲の焦りを含んだ問に、誰も答えられなかった。だがいつ起きたのか、腕を抱きしめながらアーシュがもぞもぞと動く。そのまま顔を少しだけ上げ、恐らくは推測であろう言葉を口にする。

 

「アルステン国王は……恐らく他国に内乱の事を言われるのを恐れている。その事による物流の頻度を減らされることや、国の品位や威厳を失うことが何よりも怖いのだと思う」

 

アーシュは続きを言おうとしたが、言葉を遮るように誰かが大きな音を立てて部屋に入ってくる。2人の兵士と間に立ちながら雪咲をみてニヤついているヒゲおやじ、そのヒゲおやじは多少恰幅は良いが顔立ちは何処か残念で、兵士達は槍の矛先を雪咲に向けつつヒゲおやじと共に近付く。そして何を思ったのか、いきなり高く足を上げたかと思えば雪咲の顔面を踏みつけてくる。布団の中から見ていたアーシュは飛び出そうとしたが、雪咲は腕に力を込めてそれを抑える。

 

「始めまして……だな、盗賊のクズくん」

 

上機嫌なのか少しだけ笑いを堪えているような声のトーンで言葉を吐き、足で頭をグリグリと踏みにじる。兵士達もくすくすと嘲笑っていたが、コーネリアとジュリアは無表情だったが内心怒りではちきれそうなのか手が震えていた。

 

「手伝ったのにクズ呼ばわり……か」

 

雪咲がそう呟いた瞬間、ヒゲおやじは雪咲の顔面に何度も何度も踵落としと蹴りを連発していた。

 

「このクズがっ……!誰が発言を許したかね??ん??」

 

この調子で一方的なリンチはヒゲおやじの体力が切れるまで行われた、勿論雪咲は顔面に魔力を込めていたため出血はするものの痛みなどは一切感じない。

 

「はぁ……はぁ……まぁいいさ、真実なんてどうだってな。俺の娘達と仲良くなったんだってなぁ?だが娘達の人生にこんなクズなんざ要らねぇ!!おい、誰かこいつを地下牢にでも打ち込んでこい」

 

ヒゲおやじがニヤニヤしながら雪咲の顔面から足を退けると、横に居た兵士二人が雪咲を布団から引きずり出す。だがアーシュは決して離れまいと、必死に雪咲の腕にしがみついている。ユリナも途中から起きていたのか、二人共決して諦めようとはしてなかった。

 

「ん……?待て、この女二人は後で俺の所に連れてこい。クズはクズだが女だ、タップリと楽しませて貰おうじゃないかね」

 

「…………!」

 

手をワキワキとさせながらアーシュとユリナに手を伸ばした瞬間、二人同時にヒゲおやじの手を払い除ける。そしていつでも受けて立つと言わんばかりに、雪咲を庇うようにして前に出る。少し呆気に取られたヒゲおやじだが、それでもニヤニヤした顔からは一変もしなかった。

 

「あれれぇ?良いのかな~……?後数日後に英雄殿がこの街を訪れる、その彼に国家転覆罪の事を話したらどうなるか……そして俺が全世界に言いふらしたらどうなるか、分からない訳じゃないよねぇ??」

 

 

ヒゲおやじは捲し立ててきた。

 

「なら、逆らわず従ったほうが懸命な判断じゃないのかなぁぁ??ん?どう思うかね?」

 

その傲慢な態度に腹を立てたのか、アーシュの魔力がふつふつと膨れ上がっていくのをいち早く誰よりも察した雪咲。小さく魔力で、アーシュに魔力を送る。その微量な魔力に反応し、雪咲に視線を向ける。

 

「こんなのに構うな……早くグラン達を連れて逃げろ……」

 

体力がまだ戻ってないのか、息切れみたいな症状を起こしながら逃げろと言う。兵士達はそんな雪咲を床に放り投げ、ヒゲおやじ含め3人で蹴り続ける。

 

「このクズが、誰が口を開いていいと言った……?あぁ?」

 

「まっ、英雄の眼の前で処刑されるだけ光栄に思うこったなぁ?」

 

ヒゲおやじの言葉に続いて兵士達も

 

「所詮クズは利用されて終わりなんだよ」

 

とか

 

「クズは喋んじゃねーよ!」

 

とかも言っていた。痛くは無いが、やはり屈辱的だった。それでもアーシュとユリナを逃したのは、きちんと策があるからだ。

 

散々蹴り終えて満足したのか、兵士達に連れられ雪咲は地下へと投獄されることになった。その現場を見ていたコーネリアとジュリアは、ただ怒りと恐怖に支配されその場で震えていることしか出来なかった。




次話ではスカッとさせたいです!

果たして、次回はどうなってしまうか……?
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