チートを貰ったが、異世界では……。   作:月詠 秋水

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皓・冬望・眞弓がアルザース帝国を発つまで、後2日に迫っていた。そこで知り得たのは、眞弓と冬望の想いだった。

だが、雪咲は今は答えられないと返す。

思いが募っていく中、無事に魔王を討伐することができるのか……。

そして、英雄達は旅立ちの日を迎えるのだった。


第6話 英雄達の旅立ち

「それではこれより、英雄達の旅立ちの儀を執り行う!」

 

国王ツァイは、王の間にて英雄達の旅立ちの儀式を執り行っていた。ツァイの前に英雄3人が傅き、周りに集っている兵士達は固唾を呑み見守っている。雪咲はこの儀には参加してはいない、ただ周りの兵士達に混ざって見届けているだけだ。

 

皓・眞弓・冬望の順に英雄の証をツァイから与えられ、髪留めや胸や腕の部分に英雄の証をつけていた。証と言っても、傍から見ればただのバッチみたいなものにしか見えない雪咲であった。

 

「……本当に行くんだな……」

 

周りの兵士達が騒がしくなっていく中、雪咲は一人何とも言えぬ複雑な表情をしていた。

 

旅立ちの儀は無事に終わり、3人は馬車に乗りアルザース帝国を出ていってしまった。最後の最後に何の言葉もかけることはなく、ただしっかりと見送っただけだった。

 

「……」

 

中庭にごろんっと寝転び、大の字になり目を閉じる。そこに浮かぶのは、昨夜の出来事だった。

 

~昨夜~

 

眞弓・冬望の2人が雪咲のベッドで寝てしまった後、掛け布団を優しくかけてあげた後その部屋を後にする。薄暗く静かな廊下を歩いていき、気が付くと中庭の方に出ていた。月明かりの照らす暗闇の中、草木を揺らす風の音だけが鳴る。それに耳を澄ませていると、隣に誰かが来たのが分かる。

 

まぁ、大体検討はついてるんだけどな……。

 

ちらっと横目で見てみると、皓がいつの間にか雪咲の隣に腰を下ろしていた。

 

「どうした、眠れないのか……?」

 

「そういうお前もだろ」

 

2人で笑いながら冗談を言い合っていると、そこで会話は途切れ再び静寂が辺りを包み込む。皓の様子を見ていると、特に緊張や恐怖を抱いている様子はなく、落ち着いているように見えた。

 

じっと横目で見つめていると、不意に目が合う。

 

「……っと、悪い。そこまでジロジロ見るつもりは……ただ、緊張とかしてないのかなってな」

 

はっと目を逸らし、呟くように口にする。すると、小さく笑う声が聞こえてくる。

 

「あはは……大丈夫……と言ったら嘘になるけど、何とかなるさ」

 

少し自信の無いような表情を見せたかと思えば、返しもあやふやだった。

 

「……」

 

雪咲は少しだけ息を深く吸い込み、パァンっと良い音がなる程度の力加減で皓の背中を叩いた。

 

「……?!?!」

 

何が何だかと言う顔をしている皓に、思わす笑いが込み上げてきた。だが、何とか耐えきって笑いかけていたと怪しまれぬように空を見上げた。

 

「……きっと大丈夫だ、お前ならあの2人を守れるさ」

 

何の根拠も無い言葉だが、それでも今の皓にとっては励ましの言葉にはなっただろう。そう思っていると、皓の口から大きなため息が溢れた。

 

「お前な……見た目は女っぽいのに、中身はそのまんまなのな」

 

その言葉に、少しだけムッとくる雪咲。

 

「女っぽいってどういうことだよ、髪が少し長くなっただけだろ?」

 

「い~や違うね、後で全身を鏡で隈なく見てみれば分かるさ」

 

「はぁ?」

 

このまま行くとヒートアップし過ぎてしまうと思った2人は、互いに月を眺めたまま深呼吸をする。皓とこんな時間を過ごしていられるのも今の内か……そう思っていると、不意に皓が話題を変えてくる。

 

「そういえば、お前は俺らが旅立った後どうするつもりなんだ……?」

 

「あぁ……その事か」

 

あの事はまだ誰にも言っていないと思い、あの戦いの後からずっと考えていた事を話し始める。それを聞いている時の皓の顔は、ちょっと心配そうだったが……全て話し終えると、納得したかのように頷く。

 

「そうか……お前がそうしたいなら、きっとそれが正解なんだろうな」

 

「なんだよ、きっとって……まぁ、どれが正解なんて俺にはわかんないがな」

 

ぼやくように言いながら、拳を皓の前に突き出す。何をするか察したのか、コツンっと雪咲の拳に合わせてくる。

 

「うまくやれよ……」

 

「はっ、お前こそな」

 

……

 

 

 

1人昨晩の思い出にふけっていると、1人の女性が近づいてくる。そっと起き上がり女性の方へ視線を向けてみると、その女性は雪咲の傍まで歩いてきた。

 

女性と言うには幼く、少女と言うには大人びている不思議な子だな……そう思っていると、女性はすぅっと息を吸い込み、言葉を口にする。

 

「はじめまして、私はアルザース帝国第1皇女”ユリアナ・ルメール・アルザース”です。貴方が英雄様のお連れだった、風間 雪咲様ですね?」

 

柔らかく微笑み、軽く会釈をしてくる。座って見ているだけも失礼だと思った雪咲は、そと立ち上がり会釈をする。

 

ユリアナ・ルメール・アルザース……まるでゲームに出て来る、お姫様の様な少女だと雪咲は思った。プラチナブロンドの髪に透き通るような白いきめ細かな肌、海のような深い蒼の瞳に華奢な体を派手すぎないドレスがふわりと包み込んでいる。

 

観察するように見つめていると、ユリアナの表情は何処か困惑しているようにも見えた。それに察し、急いで視線を逸らす。

 

「……それで、俺に何か?」

 

気まずさを少しでも和らげるため、そっと会話を持ちかけてみる。

 

「そうでした、お父様がお呼びになられてますわ」

 

クスクスっと笑いながら答えてくれるのを見てると、そこまで気にしてないと思い少しは気が楽になった。

 

「そうか……後これからは雪咲って呼んでくれ、ユリアナ様。どうも様付けで呼ばれるのはむず痒いというか……」

 

後頭部をボリボリと掻きながら笑いかける雪咲。

 

「分かりましたわ、雪咲。では私の事も、ユリアとお呼びください」

 

「あぁ……」

 

国王の娘をこんなに気安く呼んでも良いのかと内心思っていあのだが、まず先に終わらせなければいけないことを思い出す。

 

「そう言えば、国王が呼んでるんだっけか?」

 

「えぇ、なので王の間に来ていただこうとお探ししていたわけですわ」

 

ふふっと微笑みながら、そっと手首を掴まれ引っ張られる。

 

「さぁ、行きましょう」

 

「お、おい……?!」

 

若干どころか、かなり戸惑う雪咲。面識もないのに何故こんなに気軽に接してきてくれるのか、まだ雪咲には理解できなかった。

 

王の間に着くと、雪咲は真っ先にツァイの座っている王座の前に傅く。その隣に、ユリアはそっと立つ。

 

「おぉ、ユリアナ。ご苦労だった」

 

「お安い御用ですわ、お父様」

 

多少の親子の会話を楽しんだ後、ツァイは改めて雪咲に問う。

 

「それでは聞かせてもらおう……お主、この後どうするつもりだ?」

 

ツァイは言葉を良い終え、少しの間黙っている。周りの兵士達も、黙って見守っている。そんな中、雪咲は物怖じせず面をゆっくりと上げる。

 

「……俺は、この街を出ます」

 

はっきりと告げられた言葉に、誰もが騒然としていた。




次の話は、明日の夜に致します。

この話はかなり悩み、悩み抜いた結果がこれです。
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