「暑い」
学校への通学路をトボトボと歩いている。地球温暖化は割りと深刻な問題なようで7月の上旬にも拘らず今日は猛暑日だそうだ。更に今日は風が弱いのか道路から陽炎がのぼっている。
以前、学校説明会で総武高校は海風があり夏でも涼しいと先輩が宣っていたがあれは嘘だったのだろうか。
こういう暑い日はやる気が出ないが、今日の私は違う。昨日入って謎の部活『奉仕部』に行くのが楽しみだからだ。そう言えば、何する部活か聞いてなかった。まぁ、名前から大体は想像はできるが、一応後で雪乃に聞いておくか。
そう思っていると、学校にたどり着いた。此処からが勝負だ。なるべく知り合いに会わないようにしないと。比企谷君達だったら良いけど他の人だったら気まずいしね。
下駄箱から教室までは以外と近いので直ぐに教室に到着した。コードネームブルー今日も無事学校に着きましたであります。いつもはそんな感じに現実逃避するが今日は普通に扉を開いた。今日の扉はいつもより軽かった。
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「テスト勉強をしよう」
時は放課後。奉仕部について一息ついていると、結衣がいきなり言い出した。
「私はいいけど雪乃はどうするの?勉強しなくていいでしょ」
「そうね、私は必要無いわね。それと、あなたにファーストネームで呼ぶ許可はした覚えないわ」
「え?…………い、嫌だった?」
上目遣いプラス涙目で雪乃を見つめる。
「……………嫌ではないけれど」
「チョロいな」
「何か?」
「いや、べっつにー」
結衣と比企谷君が引いてるが気にしたら負けだ。
「あ、そうじゃなくてね、ゆきのんがみんなに勉強を教えるみたいな」
それは良い案だが一つ問題がある。
「それだったら雪乃、結衣にずっと付きっきりになるんじゃないの?」
「確かに、誠に遺憾だけど私のキャパシティにも限界があるわね」
「ひどいこと言われてる⁈」
勢い良く突っ込んだかと思うと、露骨にしょんぼりする結衣。
「まあ、でも代替案ならあるわ。私が由比ヶ浜さんを教えて、比企谷君と青葉さんがお互いに教えあえばいいじゃない。幸い、比企谷君の得意科目は文系て青葉さんの得意科目は理系なのだから」
「俺は一人で勉強できるんだが」
「あなた、数学やらないでしょ。数学の勉強しないと本当に留年するわよ?それに青葉さんだったら問題無いと思うわ」
「え、あおっちも勉強できる系?」
「まぁ、赤点をギリギリ取らないぐらいかな」
「駄目じゃん⁈」
「それは定期テストの話でしょ。あなた、模試なら結構良い成績じゃない」
それはそうなんだか、さっきから気になっている事がある。私と雪乃、昨日会ったばかりだよね。成績の話なんか勉強した記憶無いんだけど。
「あのー、雪乃はどうして私の得意科目とか模試の成績とか知ってるのでしょうか?」
「平塚先生が貴方の更生の参考資料として渡してきのよ。勿論、比企谷君のもね」
私と同様に比企谷君が驚愕の表情を浮かべている。情報保護法が反故にされている。
「じゃ、決まりだね。ゆきのん、いきなりだけど英語のここがわからなくてね────
勉強を始まる結衣と雪乃。若干距離近くないですか?大丈夫ですか?百合始まらないよね?
「私達もやろっか」
それを聞いて、結構露骨に嫌そうな顔をする比企谷君。ちょっと傷ついた。
あと、この流れでやろっかって言うとなんか意味深ぽいけど他意はありません。
「いや、本当俺一人で出来るから。寧ろ、一人じゃないと効率が落ちるまである」
「でも、留年するかもしれないんでしよ?私か教えてあげるよ。おねーちゃんに任せなさい」
比企谷君になら元ネタがわかるだろうと思ったが何故か盛大に吹き出した。
「そ、その見た目でお姉ちゃんって」
あぁ?何だこいつ喧嘩うってんのか?っていうかそれは触れない約束でしょ?次は戦争だぞ。
「まぁ、とにかく留年のチャンスってことは数学壊滅してるんでしょ?絶対自分じゃやらないよね。それに今回、期末だから範囲いろいよ。前のテストで赤点だったら今回も多分赤点だよ。留年しちゃうよ。」
「ぐっ……。確かに正論だ。だが今回は俺には──
「言い訳はいいから。はい、じゃあ話は終わりね。比企谷君どうせ数学の教材もってないでしょ?私、数Bならあるし貸すから、公式見ながらでいいからどんどん解いていって。文系科目苦手得意なら覚えるのは得意だろうから解き方さえ覚えれば公式は一夜漬けでいけるしなんとかなるよ」
「いや、俺まだやるって言ってない──
「早く」
「はい」
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今回の数Bの範囲はベクトルだからコツさえ押さえたら赤点は取らないだろう。と思っていたんだけど……。
「重症だね」
「……すまん」
私は面倒くさいから丸つけはバツしかつけない主義だが、比企谷の解答は中々真っ赤だった。
「でも、大体わかったよ。比企谷君は数学いつからやらなくなった?」
「中学ぐらいでリタイヤしたな」
「やっぱり。比企谷君は頭良いけど、数学の思考ができてないんだよ。現に公式を当てはめるだけの問題は解けてるけど、少し捻った問題は解けてないよ。数学は暗記とか才能とか色々言われてるでしょ?でも、私的には数学は経験だと思うんだ。経験が足りて無いから解けないんだよ」
「でも、それって今更どうしようもなくねぇか」
「そうだね。でも、矛盾するかもしれないけど考え方を180度変えれば意外と解けるようになったりするんだよ。」
「考え方って?」
口で言ってもあんまし伝わりずらいよね。紙に書いたほうがいいか。
「うーん、答えから逆算していくっていうのが比企谷君には向いてるっぽい。例えば、三角形の面積を求める問題だとしたら、三角形の面積→二つの辺と間の角を求める→余弦定理。こんな感じで解いていったらワンチャンあると思うよ。まぁ、やってみ」
「わかった」
そう言い、比企谷君は問題を解き始めた。私が言ったのは気休め程度だがもしかしたら上手くいくかもしれない。一応、手は動いているがどうなんだろなう。
「解けた」
「お、合ってるよ」
「おぉ。じゃあ、次も解くわ──
「そう言いたいとこだけど、今日はもう終わりかな。ね、雪乃」
結衣に教えつつも此方の会話はちゃんと聞こえていようで
「そうね。では、由比ヶ浜さん続きは放課後にしましょう」
「うん!あ、そうだ。ゆきのんとさっき話してサイゼで続きするんだけどあおっちも来る?」
「私はいいや。私って定期テストの勉強しない主義だし」
それに、結衣にそんなつもりは無いのだろうが一人だけハブなのはあれだし。
「あなた、何時も赤点ギリギリなのでしょ?なら、あなたも来なさい」
「いや、本当に大丈夫だよ。大体どの位で赤点逃れられるかわかるし。そもそも、普通に授業聞いてたら赤点取らんでしょ。実際に今まで取った事無いし」
「はぁ、なんだが平塚先生が言っていたあなたの問題について少し分かった気がする」
どいうこと?全く分からん。
「そっかぁ、残念だけどまた今度ね、あおっち」
「うん。そういえば、鍵って雪乃がいつも返してるの?」
「ええ」
「だったら、皆で返しにいこうよ。勿論、比企谷君もだよ」
さっさと帰ろうとしている比企谷君に言う。
「いや、それ効率悪いだろ」
「結衣はいいよね」
「うん、あたしはいいよ」
「じゃあ、決定ね。しゅっぱあーつ」
「あのー、俺の意見は」
比企谷君は何か言っていたが無視して、私達は職員室に向かった。
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それから奉仕部での活動はテスト勉強がメインだった。そして、今日はその結果報告会。つまり、テスト返却日だった。結衣の表情がどんどん悪くなっていったが気のせいだと思いたい。
「それで結果は比企谷君が理科で一つ、由比ヶ浜さんは数学で二つと理科で一つというわけね」
数学ばかりやって理科をするのを忘れるというコントみたいな落ちを見せる比企谷君。まぁ、私の所為でもあるが。
結衣もどうやら理系が壊滅的なようだ。でも、30点台が多いから次はもう少し前から準備すれば大丈夫だろう。
雪乃は相変わらず、総合一位の成績だ。全教科出来るなんて唯々凄い。
「青葉さんどうだったのかしら」
「私はゼロだよ。あと、比企谷君にここ最近ずっと数学教えてたから数学はかなりできたよ」
「へぇー。やっぱ、あおっち頭いいんだね。数学何点だったの?」
点数を人に言うのは自慢してるみたいで気が引けるな。それに雪乃に悪いし。
──と思ったが作成変更だ。
最近知ったことだが雪乃は煽り耐性が無く極度の負けた嫌いだ。ここは少しからかうか。
「えぇーでも、雪乃に悪いし」
すると、雪乃が肩がピクリと動いた。
「どいうことかしら」
掛かった。もう既にちょっと怒ってるけどもう少し大丈夫だろう。
「だって、数学両方100点だし」
「えぇっ、あおっち100点なの⁈凄っ!」
雪乃が肩がまたピクリと動く。
結衣みたいに素直に褒められると少し罪悪感が湧いてくるがと止まるんじゃねぇぞ私。
「あ、そういえば雪乃の数学の点って何点だっけ?教えてよー。どうしたの数学の点数だよ?ん?あれれぇ、もしかして私が勝っちゃったの?だから、教えててくれないのー?」
雪乃は最初は口角が引き攣っているだけだったが、次第に肩がプルプル震え、終いには涙目になっていた。
「…………」
雪乃は此方を涙目で結構本気で睨め付けてくる。比企谷君はガチでビビってるし、私は大笑いしてるし、結衣はそんな私にドン引きしている。
やばい、雪乃が可愛いすぎる。
──あぁ、そんな可愛い反応見せられるともっといじめたくなってきちゃう。
「ゆっきのー」
私は雪乃の背後から抱きついた。
「…………」
結衣だったら煩わしそうにしつつも満更でもなさそうだったが、私がやったら無言でポカポカ叩かれた。結構痛いけど、可愛い。
「じゃあ、雪乃成分補充完了したし、今日はそろそろ終わりかな。ね、雪乃」
「……そうね」
雪乃がそう言うと各々、帰る支度の準備をした。
──準備が出来ると私達は特に示し合せる事無く、一緒に職員室に向かった。