お待たせしました。最新話です。
長くなりそうなので、前後編にしました。
「い~ち~か~!」
「どわっ!?」
放課後となった小学校のとある教室で、帰りの支度をしていた一夏は
後ろから誰かに抱き着かれて机に突っ伏される。
「いたたた……。何すんだよ、鈴……」
「にししし♪さあ一夏、遊びに行くわよー!」
一夏に飛びついた少女は、凰鈴音。
5年生に進級したと同時に、中国からやってきた転校生だ。
小柄な体格にツインテールと人懐っこい性格も相まって、好奇心旺盛な
ネコを連想させる。
「鈴!貴様、何をしている!!!」
「ん~~~?コアラごっこ?」
「自分からやって、何で疑問形なんだよ?」
一夏の背中に飛びつきながら腕を突き上げる鈴に、箒が怒鳴り声を上げる。
箒の気持ちを知ってか知らずか、鈴はわざとらしく首を傾げてかわいらしい声を
上げる。
「~~~っ!いいから、とにかく一夏から離れろっ!!!」
「え~~~、いいじゃん。別に~」
「ぐ、ぐるじぃ。は、ばなぜ……」
一夏から鈴を引き離そうとする箒だったが、その鈴は一夏の首を絞めて
きれいな花畑が広がる川へ送ろうとする。
『お~い、一夏。迎えに来たぜって、何してんだ?』
「ゲホゲホっ。パ、パワージョー……」
昼ドラの修羅場まがいの痴話げんかは、窓の外に現れたパワージョーに
よって、収まった。
『あ~なるほどな。いつものことか』
「いつものって何だよ?」
「パワージョー、やっほー♪」
『よう!相変わらずだな、鈴。
箒もちょっとは、素直にならねぇとこいつに盗られちまうぞ?』
「ふん////////////」
せき込む一夏を怪訝に思うパワージョーだったが、傍にいる箒と鈴を見て
どういう状況か瞬時に察して、呆れ顔になる。
パワージョーに元気よくあいさつをする鈴に返事をすると、
ふくれっ面の箒へ、からかいがてらの助言を送る。
「盗られるって、箒?お前、誰かに何かを狙われてるのか?」
「……はぁ~~~~~」
「あははははは!元気出しなって!」
『お前は、そろそろ女心を勉強した方がいいぞ。マジで』
『じゃれ合うのは、それぐらいにするのであります』
一夏の見当違いの鈍感に箒は、小学生とは思えない深いため息をし
その背中を鈴が笑いながらバシバシと叩く。
放課後のやり取りの中、ダンプソンが止めに入った。
『パワージョー、早く一夏をデッカールームに。
みんなが、待っています』
『っと!いけねぇ。それじゃあな、みんな!
今度また来るからな。
行こうぜ、一夏!』
「おう!」
教室の窓から一夏は、パワージョーの手に乗り学校を後にする。
『さてと。では、箒どうするでありますか?
このまま、もう少しみんなとおしゃべりでもしますか?
それとも帰りますか?』
「今日は、帰って稽古をするよ。
いつもすまない、ダンプソン」
『気にする必要は、ないでありますよ』
申し訳なさそうにする箒に、ダンプソンは笑顔で応える。
何故、ダンプソンが箒を迎えに来たか。
それは、重要人物保護プログラムというものが関係している。
ISの生みの親である篠ノ之束の身内となれば、よからぬことを企む者が
出てくる可能性は極めて高く、身を守るために名前を偽ったり住居を
移したりすることを政府が提案してきたのだ。
最も、それは箒達の身の安全というより束とのコンタクトを
取りやすくしたいという政府の思惑からである。
だが、事態はそんな大人の下らない考え通りにならなかった。
冴島がブレイブポリスを、篠ノ之家の護衛につけることを
提案したのだ。
ブレイブポリスが護衛をすれば、それだけで篠ノ之家を脅かす者達への
牽制になり、プログラムを実施する必要もない。
無論、反対する者達もいたが、最終的に束が政府よりも
ブレイブポリスの方が信頼できるし、何より箒も一夏と離れなくて
済むからそっちの方がいいと打診してきたので、ブレイブポリスに
一任されることとなった。
ここで、束の機嫌を損ねれば日本のISだけ機能停止になってしまうことに
なりかねないからだ。
「ねえ、ダンプソン。一夏は、どんな事件を解決しに行ったのよ?」
『違いますよ、鈴。一夏は、事件が起きるのを“防ぎ”に行ったのですよ』
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『しっかし、鈴は外国からの転校生だってのに、学校にすげぇ馴染んでるな』
「元々親が日本の料理が好きだったとか何とかで、
日本に馴染みがあったみたいだぜ?」
ショベルカーに変形したパワージョーの中で、一夏は鈴がうまく日本に
溶け込んでいる理由を述べる。
所々で、日本についての知識が間違っていたりしたが、それが
かえってクラスに打ち解ける要素になったようだ。
『それで?お前としては、どっちが好みなんだ?』
「好み?」
『素直になれない不器用な大和撫子な幼馴染か、
元気いっぱいで世話焼きクラスメート。
お前の本命は、って話だよ』
「本命って、二人はただのクラスメートで友達だよ」
『お前って奴は……』
いつも通り平常運転の一夏に、パワージョーはため息をつく。
箒と鈴、どっちが本命かを尋ねたパワージョーだったが、鈴は箒と
違って一夏のことを友達としてしか思っていない。
ただ、一夏に絡んだ時の箒の反応がおもしろくて世話が焼けるから、
箒をからかっているだけなのだ。
それは、パワージョーも分かっているが、彼には確信があった。
いずれ鈴は箒と一夏を巡るライバルになると――。
『わりぃ、遅くなっちまった』
「ごめん、みんな!」
『遅いぞパワージョー』
「まあまあ、マクレーン。
箒の護衛に出たダンプソンを除いて、これでみんな揃ったんだから
早速始めよう」
デッカールームに到着したパワージョーと一夏は、勇太に促されて
自分達の席に座りメインスクリーンへと体を向ける。
「さて、諸君。明日、日本に親善のためにツイール国の国王と王女が
来日される。
ツイール国は、小さな島国だが貴重なレアメタルの輸出国だ」
『訪問の途中で、テロリストによる誘拐や襲撃の可能性は十分に
あり得る』
「二人は、対談の後日本の観光地をいくつか回る予定になっている。
デュークの懸念が当たるとしたら、そのタイミングになる可能性が高い。
護衛もそうだが、市民に被害が及ばないようにも十分気を付けてほしい」
「「了解です!」」
冴島の言葉に勇太と一夏は、敬礼しデッカード達もそれに続く。
『にしてもよ~』
「うん。世の中、そっくりな人が3人はいるって言うけど……」
パワージョーと一夏が苦笑すると、勇太達も何とも言えない笑いを浮かべる。
メインモニターには、鈴に瓜二つなツイール国の王女が映し出されていた。
『だけど、王女様って一夏と同じ歳だよね?
それなのに、国王様の外交のお手伝いをするなんてすごいよね~』
『ところが、そうでもないみたいだぜ?ドリルボーイ』
『何でも、早くに妻を亡くしたからか、国王は
一人娘の彼女を溺愛しているらしいです。
今回、日本に連れてきたのも王女様が京都やスカイツリーを見たいからだとか
なんとか』
『こりゃあ、明日は相当難儀な護衛になりそうだぜ』
ドリルボーイがまだ子供と言える王女に感心すると、
ガンマックスとシャドウ丸が語る情報に一同は肩をすくめる。
そんな一同の心情を代弁するように、ガンマックスが明日の護衛任務が
厄介なものになるとぼやいた。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
『……とまあ、何か起きるだろうとは思っていたけどよ~』
「俺達、何かに憑かれているのかな?」
「じゃあ、今からお祓いにでも行く?」
「冗談を言っている場合じゃないだろ……鈴!!」
護衛当日。
人目のつかないビルの裏側でパワージョーと一夏は、天を仰いで
現実から目を逸らしたくなるのをこらえていた。
そんな頭を悩ます二人に元凶である鈴は、ケラケラと笑いながら
冗談を言うが、その姿は昨日確認したツイール国の王女とそっくりであった。
「いや~、こっそり抜け出した王女様がばったり出会ったのは、
自分のそっくりさんで、一日だけ入れ替わって思い出作りなんて、
マンガみたいなことを体験する日が来るなんて夢にも思わなかったわ~♪」
「何呑気にしてるんだよ、お前はっ……!」
能天気に状況を解説してみせる鈴に一夏は、本気で頭が痛くなっていく。
空港へやってきたツイール国の国王を出迎え、
会談地へ無事にたどり着いたまではよかった。
だが、しばしの休憩時に付き人がスケージュールを王女に
確認しようとしたら、王女は姿をくらませていたのだ。
その知らせを受け護衛のために残るデッカードとデュークを除くメンバーが、
王女の探索に出たのだが、子供ながらにしっかり脱走ルートを考えていたのか
なかなか見つからなかった。
服を着替えた形跡はなく、王女は日本に着た王族の服をそのまま着ていると思われ
そんな目立つ格好なら目撃者もいると思われたが、思うように情報は集まらなかった。
だが、一夏が王女は人目を避けるのではなく、逆に人目に付く場所を移動して
目立たないようにしているのではと考え、付近のドレスを着ても目立たない場所を
手分けして探したところ、とあるマンガのイベントがあった。
近くにいたパワージョーと一夏がそこに向かうと、コスプレをした人の中に王女
を発見してこの騒動は終わりと思われたのだが……。
二人が見つけたのは、王女の服を着た鈴だったのだ。
一夏の推理通り、イベントにまぎれた王女はたまたま来ていた鈴と出会い
身代わり作戦を思いついて、服を交換したのだ。
鈴もおもしろそうだと、入れ替わり作戦に賛同し一夏達に見つかって
現在に至る。
『それで?王女は、どこに行ったんだ鈴?』
「うん?一人で、日本の下町っていうのを見たいんだって~」
「見たいって、お前……」
『どうする、一夏?
王女だけじゃなく、鈴もほったらかしにって訳にはいかないぜ?』
「う~ん……待てよ?
鈴に、このまま王女のフリをしてもらった方がいいかも……。
そうすれば王女は俺達といるってみんな思うし、外でうろついている
王女も誰も王女ってわからない……」
『鈴も一人にするより、俺達と一緒にいた方が安全ってわけか』
「探索はシャドウ丸に任せて、俺達は一端戻ろう。
というわけで、お前にも責任はあるんだから付き合ってもらうぜ、鈴?」
「まっ、しょうがなわいわね~」
面倒ごとを起こした張本人である鈴は、楽しそうにケラケラと笑い声を上げるのを
見て一夏とパワージョーは深くため息をはくのであった。
前回から一年経ち、一夏は小学5年生になっています。
ブレイブポリスが護衛をするということで、箒は家族が散り散りになる
こともなく転校もしていません。
鈴は、この時点では一夏のことをからかうとおもしろいぐらいの
認識で、箒とはじゃれ合う友達です。今のところは(ニヤリ)