只々、残酷なだけのお話   作:異教徒

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 初めに。

 この小説はアンチ・ヘイトどころの騒ぎではないです。瑞鳳、響が嫁艦の方はブラウザバック推奨です。
 また、グロが苦手、鬱展開が嫌いな人も同様です。

 それ以外の方たちだけお楽しみください。


プロローグ

 

 そこは、黒い空に覆われた絶海。その原初の母なる深淵たる海に、そこに雨あられと降り注ぐ砲弾に、今まさに一人の少女が沈みかけていた。

 

 少女は着ている衣服も、持っている弓ですらボロボロにちぎれて原形を保てていない。

 そしてその白い体のいたるところから赤い雫が絶え間なく流れ出ていた。

 

 もはやそこに希望は亡く。只々残酷なまでの現実があるのみだった。

 

 それでも彼女は必死に語り掛ける。ノイズ交じりの断末魔を。爆音交じりの遺言を。鮮血交じりのその思いを。

 

 

 

 「ザザッ...ていと...? 大...夫...?泣ザザザッ...いで。きっと、また...会え...」

 

 「瑞鳳っーーー!」

 

 

 

 

 

 

 

                 こうして私は、瑞鳳を喪った。

 

 

 

 

 

 

 

 ...。 

 ......。

 .........。

 

 目が覚める。頬にはどこからか零れた雫の跡が残っていた。

 

 

 今日も同じ夢を見た。手の平から零れ落ちた夢が私の中に残っていた。 もはや叶わない夢だというのに。

 

 

 しかし、泣き言も言っていられない。私にはそれを言う時間も、権利すらもない。

 ただ笑顔を取り繕って、ただ仕事をこなして、ただ場を和ませて。

 

 ただ、贖罪を続けなければならない。それが私に残された一つの任務。

 

 それで、せめて瑞鳳が嗤ってくれるなら。

 

 私はこの命だって捨て去ろう。

 

 

 

 こうして私の一日は始まりを告げる。そしてそれは同時に自らの死を続ける行為でもある。

 

 自己を殺し、笑顔を振りまく。

 

 「おはよう!電ちゃん。よく眠れた?」

 「はいなのです!」

 「それはなにより。よーし、じゃあご褒美にぎゅーってしてあげるね♬」

 「はわわっ!?びっくりしたのです。」

 

 明るい仮面をかぶって日々を過ごす。

 

 「あっ、そうそう。秋津洲ちゃんに頼まれてた大艇1/1プラモデルのパーツが仕上がったから取りに来るよう伝えてくれる?」

 

 「あっ...。はい、なのです!」

 

 しかし、やはり少女の感は誤魔化せない。

 

 所詮、いくら取り繕っても仮面は仮面。そっくりであっても決して本物ではない。

 私は贋作に過ぎない。滑稽な人形に過ぎない。

 

 けれど、この喜劇を見て笑ってくれる観客のために今日も私は道化を演じる。

 

 

 そして、執務室。

 

 そこは私に与えられた領域。

 

 そこは大切な人との思い出の場所。

 

 そこは______夢の残骸。

 

 

 私は部屋に入ってそっと戸を閉める。

 

 そこは足の踏み場もないほどの荒れ模様だった。

 

 服は脱ぎ散らかり、ゴミは山となってあふれている。書類の束はいたるところで雪崩を起こし、アルバムはびりびりに破かれている。

 

 ふと、足元に落ちていた一枚の写真が目に留まる。

 

 そこには、お揃いの指輪をはめる私と瑞鳳の笑顔が写っていて______

 

 「うわあああああああああああっっっっ!!!!!!」

 

 腰から拳銃を抜いて写真に向けて発砲する。何度も何度も引き金を引く。穴が開いて顔が消えて笑顔が消えて指輪が消えて思い出が消えて消えて消えつくしてもなお引き金を引く。弾がなくなっても引き金を引く。

 拳銃を思い出の残骸に向かって投げつけ、足で踏みにじる。そして千切れた記憶をまとめて灰皿に投げ入れて火を放つ。黒い煙が線香のように、窓から外へ流れ出る。

 

 「司令官。また、やってたのかい?」

 

 「ん?響居たんだ。ごめんね、見苦しい所見せちゃって。」

 

 「別に、かまわないさ。もう慣れっこだしね。」

 

 肩をすくめて応じる響は確かに慣れた様子でゴミにまみれた部屋から器用に書類を引き出してくる。

 

 「いい加減部屋を掃除したらどうだい?そうすれば少しは気分も落ち着くだろうに。」

 

 「いやあ。一回やろうとしたんだけどね...」

 

 部屋がハチの巣になったのでやめた。ここは危険物が溢れすぎている。

 

 「まあ、いいや。それより今日の書類はこれ。こことここに印鑑と署名を。それとこっちの書類にも目を通しといて。」

 

 そうやって指示を飛ばす響の姿はこの一年ですっかり板についた。今立派な秘書艦だ。

 

 そう。秘書艦。かつてはここに瑞鳳が立っていた。そして今よりきれいな執務室で二人で笑顔で執務をこなしていた。いやな書類仕事も苦ではなかった。

 

 

 「っくうううううっつううう!!!」

 

 

 最近、瑞鳳のことを考えると頭痛がする。もはや頭は思い出したくないのか。しかし、私には義務がある。

 

 栄光と幸せを捨て、絶望と贖罪の日々に身を置くと。

 

  

 

 それが、私が自分に課せた誓いだから。

 

 

 「司令官。大丈夫かい?」

 

 「うん。大丈夫。さあ、執務を続け...」

 

 「いや、駄目だ。司令官は無理をしている。 ...ことを考えるのはわかるけれど、もう一年も経つ。

 そろそろ別なことにも_______」

 

 

 

 「駄目。」

 

 

 

 私は低い声で打ち消す。

 

 

 そう。私は人に甘えてはならない。

 

 

 「ねえ、司令官。」

 

 

 

 私は誰かに頼ってはならない。

 

 

 「実は、ずっと前から言いたいことがあったんだけど。」

 

 「なあに?」

 

 

 私は誰かに心を開いてはならない。

 

 

 

 「私は、司令官が好きだ。その、私と付き合ってほしい。」

 

 

 

 

 

 私は誰にも恋をしてはならない。

 

 

 

 「うん、いいよ?」

 

 

 けれど、そうだ。一つだけ方法がある。

 

 

 「付き合ってあげる。デートも、キスも、その先も、全部自由にしていいよ。」

 

 

 「!? ほんとうかい!?」

 

 

 「うん。だけどね______」

 

 

 

 「心だけは渡さない。この心は、傷は、絶望は瑞鳳のためだけのもの。」

 

 

 

 「それでもいいなら、付き合ってあげる。」

 

 

 

 

             これは、只々残酷なだけのお話。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 これの更新はかなり気まぐれです。正直言ってひと月に一回更新出来たら上出来です。

 なので、続きが読みたいという方々はしばしお待ちください。
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