只々、残酷なだけのお話   作:異教徒

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 カウントダウン、あと2。


 次回こそ戦闘入ります。



9日目(前編)、純黒の絶海

 

 三つの陰が相対する。

 

 一つは黒く染まった緑の少女。

 

 一つは黒く歪んだ白銀の少女。

 

 そしてもう一つは透明に嗤う白の少女。

 

 

 ____さあ、あの日の再現と行こうか。

 

 

 白の少女は口を歪めて嘲笑する。

 

 

 その時は、もう目前に迫っていた______

 

 

 

 

 時は戻り7時間前。

 

 

 その日、鎮守府は過去最大の敵勢力からの侵攻を受けていた。

 

 少なく見積もっても優に1000を超える敵艦たち。そしてわずか150程度の艦娘たち。その戦力差は明らかだった。

 

 「入渠ドックに全員詰め込め!バケツはいくら使っても構わない!」

 

 「長門さん、南勢方面から機動部隊第4波確認しました!至急救援求ムとの電報が。」

 

 「水雷戦隊に対空装備を満載して向かわせろ。その間にこちらで回復した者たちで部隊を再編する!」

 

 「了解しました!長門さんもお気をつけて!」

 

 伝令役を任された白雪は敬礼すると再び来た道を走り去っていった。すると今度は蒼龍が満身創痍の状態でこちらに歩いてきた。

 

 「どうした!?その傷は早く入渠しなければ...」

 

 「一つ、報告が...」

 

 「分かった。落ち着いて話してくれ。」

 

 装備は大きく深呼吸すると、持ち帰った敵の新情報を伝えた。

 

 「鎮守府沿岸海域最奥部に北方棲姫と戦艦レ級フラグシップ2隻確認。至急駆逐艦と航空機動部隊を撤退させて。」

 

 「ばかな!北方棲姫がここまで南下してきたのか!?」

 

 「ええ。これ以上はいたずらに戦力を消耗するばかりよ。今引き返さないと轟沈が出る可能性も...」

 

 「くっ...。仕方ない。私が動けない以上、陸奥に行かせる。早急に部隊を再編する。蒼龍も入渠が終わったらこの部隊に参加してもらう。...大変だろうが、すまない。」

 

 「いいわよ。みんなだって頑張ってるんだから。それに、提督も。」

 

 「...ああ。きっと彼女も自分と向き合っているころだろう。彼女のためにも、ここで負けるわけにはいかない!」

 

 

 

 

 「敵機動部隊第7波確認。突っ切るよ。」

 

 「了解。水上戦は任せて。」

 

 私たちは、瑞鳳たちがいると予測される地点まで最短距離を突っ切っていた。エンタープライズ___司令官と私。二人で敵の猛攻を蹴散らしながら強引に道を創り、合間を縫うように武蔵たちが追い付いてくる。

 

 「......第7波、減ったよ。今!」

 

 「ああ。みんな、着いてきて!」

 

 「________」

 

 もはや後ろの面々は息も絶え絶えに軽く手をあげることしかできない。...そろそろ休憩のころ合いかな。

 

 「司令官。ここを抜けたらしばらく休憩しよう。みんな疲れてる。」

 

 

 司令官はそれでも目を暗く輝かせたまま進撃をするか悩んでいたが、後ろを見てため息を吐くと一つうなずいた。

 

 「そうだね。休憩にしよう。」

 

 

 

 「司令官、ここを抜けたらいよいよ敵主力艦隊が見えてくると思うけれど、どうする?」

 

 「決まってる。一隻残らず殲滅。情け容赦なく皆殺しにして。そして二度と生き返らないように念入りに頭と心臓を狙い撃ち。出来れば手足も破壊しときたいね。最善は肉片にすることだけど、そこまで余裕はないと思うから頭と心臓で十分だよ。」

 

 「______。みんなに、そこまではできないと思うよ。」

 

 「なら私がやる。みんなは致命傷を与えてくれるだけでいいよ。」

 

 「...私の方が解体向きだと思うけど?」

 

 「出来るの?自分を守ってくれたをばらばらにするなんて。」

 

 「司令官のためなら。」

 

 「そっか。ならよろしく。他のみんなは足止めに専念。響と私でとどめを刺すから。」

 

 司令官の言葉にみんなは沈黙で返す。...当然だ。目の前でかつての仲間を細切れにする話をされたのなら。あの武蔵ですら青い顔をして黙っている。

 それでもだれも反対しないのは___今の私たちの状況にあるのだろう。

 

 私たちは、共に深海棲艦姫級壊に似通った姿になっている。

 

 それは先の出撃の時よりもさらに近いオーラを放っている。

 

 ___私たちはいったい何者なのか?深海棲艦とはいったいどういう存在なのか?

 

 ___きっと、司令官はその答えを知っている。だからこそ自殺しようとしたんじゃないか?

 

 

 答えはすべて司令官が握っている。

 

 

 「司令官。一つ、質問が。」

 

 「なに?」

 

 「艦娘と深海棲艦の違いって何なんだい?」

 

 その問いに込められた意味は大きい。だからこそ司令官も素直に答えてくれた。

 

 

 「本質的には全く同一存在。ただ、存在の発生が異なるだけだと思うよ。」

 

 「これは私の推測で、公式の見解とは必ずしも一致するようなものじゃないということを念頭に置いたうえで聞いてほしい。」

 

 「まず、先の第二次世界大戦があった。私たちはその海戦で使用された軍艦たちの名前と特徴、そして一部は記憶を継承している。」

 

 「対して深海棲艦は言語能力を持った存在が極端に少ないのと、明確に意思疎通した例がほぼゼロ。ただ、実在した海戦をなぞるように作戦を展開することから敵も何かしらの本能によって行動してる可能性が高い。さらに、一部艦娘が持ち帰った記録によると、鉄塊海峡などに執着を見せたことから敵も過去に存在した軍艦をモチーフにした可能性が高い。」

 

 「ただ、そうなると一部艦娘たちと敵深海棲艦が同時に存在する矛盾が発生することになる。だけど、私はそこを別な解釈をすることにした。」

 

 「つまり、艦娘と深海棲艦は一つの存在を別側面から観測した存在じゃないのかって。」

 

 「かつて大本営は旧連合国側の軍艦が深海棲艦はではないかと疑っていた。けれど、私をはじめとして多くの連合国籍艦娘は存在した。それも、単純に考えればよかった。」

 

 「正と負。この二つで戦ってるだけ。私たちは今までに仲間たちの半身を殺してきたのも同然なんだよ。」

 

 

 「ちょっと待って。それだと、あちらは数が多すぎやしないかい?駆逐艦イ級なんて星の数ほどいるだろう?」

 

 私の素朴な疑問に対して彼女はあっさりと答えた。

 

 「憎しみってのは、いつの時代も生まれ続けるものでしょ?」と。

 

 

 「深海棲艦は怨念で動いてる。旧時代っぽく言えば幽霊船ってやつかな。そして私たちは人類の生きたいという願いをもとに動いている___なーんていえば、私たちが正義の味方っぽいんだけどね。」

 

 それはまるで自嘲するかのように、黒くて紅い海に響いた

 

 「私たち、正確には人間たちが先の戦争で人々を死に至らせた。そして、軍艦(私たち)を沈めたのもまた人間なんだよ。」

 

 「だから私たちの根底にある、『人間のせいで』っていう恨みをあっちが持って行ってる。そして私たちには『与えられた人々を守った』という誇りだけが残った。」

 

 「じゃあ、どちらが悪でどちらが正義なのか?」

 

 

 「私の答えは、深海棲艦が正義だと思う。」

 

 

 思ってもみなかった答えに私たちは硬直する。彼らが正義?なら今までの私たちの努力や犠牲は何だったんだ?

 

 

 「考えてもみなよ。隙あらば戦争を仕掛けてこの星を滅ぼそうとする人間と、少しでも人間を減らして戦争にならないようにするあちら側と、どちらが正しいと思う?」

 

 ___深海棲艦が、戦争を止めようとしている?

 

 

 「現に、民間船舶の被害は主に貿易船と漁業用の船に限定されてる。少し泳いでいるだけの一般人には無用な手出しは避けてる。まあ、戦闘になればその限りではないけど。

 おまけに。沿岸部への侵略はごくわずか。その気になれば南極あたりにでも基地を立てればいいのに、まるで領土には興味がないかのようにふるまってる。つまり、私たちがいなければ彼らはおとなしくしてくれるってこと。」

 

 「そ、そんなことはあり得ない!だって、それじゃあ、暁たちの努力は...」

 

 「無意味。むしろ、邪魔だね。」

 

 

 「___________」

 

 

 私の足元がガラガラと音を立てて崩れ去っていく。暁は常に命がけで戦ってきた。それが、無意味だなんて____!」

 

 

 「提督。」

 

 「武蔵?話せるの?」

 

 「ああ。大丈夫だ。それより、先ほどからお前は深海棲艦は正義だと言っているが、ならばなぜこの作戦を決行した?」

 

 

 「そんなの決まってるよ。」

 

 

 「瑞鳳を殺すためだよ。そのためなら私は悪魔に魂を売ってもいい。ううん。魂を売り渡して今、ここにいる。」

 

 

 嗚呼。

 

 

 自分のエゴのためにすべてを切り捨てた彼女はその純黒に染まった瞳を昏く光らせる。

 

 その姿は、今までで一番きれいだった。

 

 

 「司令官___」

 

 

 「2時方向に敵影確認!敵影は_____主力艦隊。旗艦、瑞鳳を確認しました。」

 

 

 その報告に司令官は嬉しそうに口を歪める。

 

 

 「全艦抜錨。これより、決戦に入る!暁の水平線に、勝利(殺戮)を刻め!」

 

 

 

   もはやそこに救いは亡く。 

 

 

ただ、狂った正義が揺蕩うのみ。

 

 

 

 

 

 これは、只々残酷なだけのお話。

 

 




 本文中にあるように、世界観の解釈はすべてオリジナルであり、公式のものとは一致しません。それもかなり異端派かと思います。あらかじめご了承ください。
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