只々、残酷なだけのお話   作:異教徒

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 遅くなってすみません。

 今回もヤンデレ成分は抑えめ?かも?

 ではでは、どうぞ。


3日目。暗緑色の墓石

              鎮守府の中庭にその墓石は建っている。

 

 

 春にはお花見、夏にはバーベキュー。秋には紅葉狩り、冬には雪合戦。

 みんながお気に入りだった場所には、今や誰も近づかない。そこにはつらい記録しかないから。

 

 私の部屋からそこを見下ろすことができる。そしてそのたびに胸が締め付けられる。

 

 しかし、そこに私は毎日通っていた。そして今日も。

 

 

 「ねえ、瑞鳳。生きてたって本当?みんなも無事なの?」

 

 「きっとみんな私を恨んでるよね。だって瑞鳳が恨むくらいだもん。みんな、きっとわたしを殺したいぐらいに思っているよね。」

 

 墓石を磨きながらそっと話しかける。その墓石は瑞鳳の緑をあしらったものだったが、今では黒く変色してしまって落ちない汚れとなった。

 

 それは、きっと瑞鳳の心なんだと思う。どれだけ広い心でも広がってしまう、憎しみ、悲しみ、恨み。

 

 それを落とそうとしても落ちない。きっと一生かけても落ちない。

 

 この色が落ちるのは私が死んだとき。それか瑞鳳が死んだとき。

 

 

 私はそっと天山を取り出す。瑞鳳が最期にくれたお守り。

 

 「私は、これを使うよ。私が持ってても意味がないって思ってた。私には、使えないって思ってた。」

 

 「けど、瑞鳳のために、私は、もう一度だけ戦うよ。瑞鳳を殺すために。この手で、もう一度、瑞鳳を沈めるために。」

 

 

 私は、墓石をなでる。愛しい人との思い出を抱きしめて、笑う。

 

 「だから、さ。」

 

 

 「あと、ちょっとだけ、待っててね。」

 

 

 「私も、すぐそっちに行くから。」

 

 

 「それまで、絶対に死んじゃだめだよ?だって_______」

 

 

 

 

 「瑞鳳を殺すのは、私だから。」

 

 

 

 そして墓参りが終わってしばらくすると、今回の作戦の許可をもらいに大本営と直接交渉する。_____って言っても知り合いに頼んでコネで押し通すだけだけど。

 

 

 「司令官。大本営と連絡がつながるよ。準備はいいかい?」

 

 「うん。知り合いと話すだけだから大丈夫。そんなに緊張しなくていいよ。」

 

 「い、いや。しかし、大本営だから。それなりに、身だしなみは整えなきゃ。」

 

 「そんなこと気にしないよ。第一、今日は幾つか報告をして許可もらうだけだから。」

 

 

 そして通信機を点ける。ザザザッというノイズ音がだんだん人の声を成してくる。通話の相手は昔の私の上司。今は昇進してもう少し上の階級についた人。

 

 

 『やあ、久しぶりだね。元気かい?』

 

 「ええ。おかげさまで。もっとも、今は少し微妙ですけれど。」

 

 『ああ。瑞鳳君の件かね。それに関して君は一切の裁量権を与えてほしいから説得を頼む___ってところかな?』

 

 「察しが早くて助かります。本作戦は『RF作戦』と称した我が鎮守府の総力戦です。そのため、レイテ沖海戦からの我が鎮守府に撤退も許可願いたいのですが。」

 

 『ん。許可する。』

 

 「早いですね。」

 

 『なあに。あらかじめ決まっていたことさ。何かあったら、君に任せれば大抵の件は解決する。だから満場一致で可決されたよ。』

 

 「信頼されてるのか押し付けられているのか...まあ、都合はいいのでありがたく承ります。これより、正式に『RF作戦』作戦発動します。」

 

 『うん。健闘を祈る。ところで、一ついいかな?』

 

 「はい?なんでしょう?」

 

 『君の後ろにいるのは誰だい?同じ銀髪でまるで姉妹に見えるんだが...』

 

 「あ、暁型二番艦、響、です。司令官の、秘書艦を、やっています。」

 

 『ああ。そうか。いや。髪の色が同じで分からなかったよ。ははは。』

 

 「まあ、私の髪も珍しいですけどね...ここじゃ別に普通ですよ?」

 

 『そうなのかね?ぜひとも一度行ってみたいものだ。観艦式なんてやらないのかい?」

 

 

 「これが終わったら、考えときます。」

 

 『...そうかい。じゃあ、期待してるよ。』

 

 「ええ。では、私はこれで...」

 

 『ああ。最後に一つ。』

 

 『本作戦において、君に、無制限の艤装の使用を許可する。以上だ。』

 

 

 

 「...ありがとうございます。では、失礼します。」

 

 『ああ。健闘を祈る。』

 

 プツッと音を立てて通信は切れた。

 

 ひとまず、これで根回しは完了。あとは作戦を実行するのみ。

 

 「響ー?ちょっと今から必要な艤装のリスト作ってくれない?なるべく早く発注したいから。」

 

 「.........」

 

 「響?どうしたの?」

 

 「えっ?ああ、何でもない。うん。わかった。今から聞き取りをしてくるよ。」

 

 「うん。よろしくー。あっ、それとついでに、F6F‐5とSB2CとTBFも発注しといてくれる?」

 

 「ん?よくわからないけれど、それは海外のものかい?だったら間に合わない可能性があると思うけど...」

 

 「ううん。あっちに保管してあるのは確認済みだよ。補充が大変だし量産はできてないからあまり知られてないけどね。」

 

 「ふうん。わかったよ。じゃあ、行ってくる。」

 

 「よろしくー。」

 

 

 

 響が部屋を出ていくと、部屋は途端に沈黙に包まれる。

 

 

 響は気づいたかなあ。きっと気づいてないだろうけど。もしかしたら瑞鶴あたりが気づくかも。

 

 

 まあ、気づかれたところで別に問題ないんだけど。

 

 

 

 私は窓から中庭を眺める。空は快晴で突き抜けるように真っ青だ。

 

 

 そして、暗緑色の墓石が立っている。

 

 

 そしてそこに赤と白の椿が供えてあるさっき私が置いてきたものだ。

 

 

 風が一際強く吹く。すると赤の椿は皆まとめて落ちて散ってしまった。

 

 

 後には、一面真っ赤な椿の中に立つ、暗緑色と白色が残った。

 

 

 

 きっと、私と瑞鳳もああなるんだろうなあ。

 

 

 

 窓の外を眺めていると、ふと卵焼きが食べたくなった。

 

 前に作ったときは塩辛かったっけ。主に涙のせいで。

 

 じゃあ、今作ったらどんな味だろう。

 

 やっぱり塩辛いか、それとも苦いか。

 

 

 だけど、それはきっと甘いのだろう。

 

 それはまるで、溶けてしまうほど甘くて。

 

 きっと、私は何度でも求め続けるのだろう。此処ではない何処かで。いつまでも待ち続けて、その甘さを抱きしめる。

 

 そのために、私はここにいるんだから。

 

 だからね、瑞鳳。

 

 

 これはきっと恋なんだと思う。

 

 

 瑞鳳と一緒にいれば、すべてが輝いて見える。

 

 苦いのも辛いのも、すべてが甘く感じる。

 

 瑞鳳を想うだけで心が満たされた。

 

 離れてしまったときは、抑えようのない渇きに満たされた。

 

 だから片時も離れずそばにいた。

 

 そうやって互いを想い続けてきた。

 

 

 私はそれが恋だと思う。

 

 

 

 だからね。瑞鳳。私は今、あなたを想うだけで胸が締め付けられる。

 

 そこにいないせいで私はどこまでも空虚に支配される。

 

 それを埋めるための最期の思い出。

 

 

 それが何かは、分かるよね?

 

 

 

 ふふっ。楽しみだな。瑞鳳の顔を見るの。

 

 

 だって、それはきっと、私の大好きな顔をしていて。

 

 

 いつまでも、いつまでも。その顔を見ていたくて。

 

 

 だって私は_____________________________

 

 

 

 

 

 

               瑞鳳の、絶望した表情が大好きなんだから!

 

 

 

 

 ねえ、瑞鳳?また、前みたいに殺しあおう(愛し合おう)ね?

 

 

 そして、一杯素敵な顔を見せてね!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

           もはやそこに生者は亡く。歪んだ想いが募りゆくのみ。

 

 

                これは、只々残酷なだけのお話。

 

 




 次回から、戦闘シーン突入(予定)。


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