只々、残酷なだけのお話   作:異教徒

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 遅れてすみません。

 代わりに4000字越えで戦闘シーンとヤンデレ永台詞突っ込みましたのでご容赦ください。

 ではではどうぞ。


4日目。漆黒の来襲

 

 さて。突然だがここで残念な報告がある。

 

 

 私の思惑は外れた。計画は失敗だ。

 

 

 彼女たちは、鎮守府に帰還する艦隊を襲撃した。

 

 これにより、我が艦隊は7隻轟沈、3隻大破、6隻中破、4隻小破。史上空前の被害を被った。

 

 主な原因は遠洋練習艦隊及び潜水艦作戦に従事する艦娘たちの練度が足りなかったこと。

 

 そして敵艦隊の想定外なほどの練度の高さ。

 

 

 なにより、私の作戦ミスにある。

 

 

 相手が悪かった?そんなの分かり切っていたことだろう。相手は瑞鳳達、主力艦隊なんだ。

 

 空母棲姫の存在も知っていた。にも拘らず私は切って捨てた。それが最大の痛手。

 

 

 いや、それ以外にもある。そうだ。相手はあの瑞鳳なんだ。私の考えぐらい読んでいて当然だろう。

 

 私は瑞鳳を過小評価しすぎていた。

 

 

 私は瑞鳳を信頼していなかった。それが今回の最大の敗因。

 

 

 嗚呼。嗚呼嗚呼嗚呼!

 

 

 瑞鳳は今でも私を信頼してくれていたというのに。

 

 私はそれを裏切った。

 

 その結果がこのざまだ。

 

 仲間まで私の喜劇に巻き込んで。こんなの、提督失格じゃないか。

 

 

 そうか。私に初めから提督なんて向いてなかったっけ。

 

 

 それを無理やり努力とチートで押し切ってこうしてなってみて。

 

 これで十二人目。一年もしないうちに十二人!

 

 

 全く呆れるほどひどい戦績だ。

 

 これが終わったらきっと解任だろうな。

 

 

 

 なーんて。私は初めから提督の地位なんてどうでもいい。

 

 私は、ただ一つの目的のためにすべてを踏み台にしてきた。

 

 それなら、何をいまさら命の十や二十を気にすることがある。

 

 そうだ。

 

 初めからそうすればよかったんだ。

 

 全軍進撃。歴戦だろうが初陣だろうが関係なしに放り込む。

 

 

 玉砕戦法。

 

 

 嗚呼。いい響きだ!私の命も投げ捨てて。所詮艦娘なんて一時の命。

 

 

 なら、なぜこの作戦をみんな取らないのか______________________?

 

 

 

 「そんなの、決まってるじゃないか。みんな、大事な仲間だからだよ。」

 

 その仲間に弓引く形になっている今はどうなの?それでも戦うの?

 

 「うん。敵と協力しているなら戦う。けれど、できるなら命は救いたい。」

 

 そんなの、理想論だよ。

 

 「そう...かもしれないね。だとしても。」

 

 「私は、あなたのためにみんなを救うよ。」

 

 「司令官は命を粗末にしすぎる。瑞鳳の時だって、ほかの娘たちには目もくれなかった。そのことを根に持っている子だって大勢いる。」

 

 だったらなに?今更追悼しろと?それでみんな救われるの?そんなの非合理的じゃない?

 

 「じゃあ、あなたは艦娘を人だと思ってないのかい!?私たちだって人間だ!こうして普通ではない力を持っているけれど、それ以外は普通の人間だ!」

 

 あなたたちは。人間の体を持っているけれど、それはただの仮初にすぎないんだよ。

 

 「そんなことない!私の司令官への想いは本物だ!心があるならそれは________」

 

 感情を持った化け物、だよ?

 

 「                                          」

 

 

 そう。これが私の本心。艦娘なんてどれも人間のふりをした化け物。その点では正々堂々と人外を名乗る深海棲艦のほうがよっぽどましに思える。

 

 「響。出撃命令。これより鎮守府近海に精鋭艦隊とともに出撃し、敵哨戒部隊の排除を。同時に艦載機群の空襲も予測されるため全艦隊に対空装備の徹底を通達。」

  

 「っく...了解...響、出撃する...っ。」

 

 

 唇をかんで立ち尽くす響に私は冷酷に命令を告げる。それが、正しい鎮守府の在り方だから。

 

 

 

 

 ザザザザザザッザザザザザザッ

 

 

 そこは、鎮守府にほど近い海域。本来そこには駆逐艦か軽巡洋艦しか出没しない安全な海域であったはずだ。

 

 それが、今では______

 

 

 「くらいなさーい!」

 

 「愛宕!後ろからも敵が!」

 

 「響は私から離れるな!この程度の空母、私が轟沈させてやる!」

  

 長門の41センチ連装砲二門から爆発的な炎が上がる。それと同時に敵の空母ヲ級flagshipが悲鳴を上げて沈んでいく。

 が、それでも周りにはまだ大量の空母たちが残っている。そしてその中心には空母棲姫が無傷で君臨する。

 

 おまけにその周囲は空母ヲ級改flagshipが複数体輪形陣で守りを固めている。今ので一体沈めたが、逆に言えば一体しか沈めれていない。

 

 練度90越えの長門と武蔵がそろっていてもやっと一体。隣に立つ千歳と千代田はとうに中破して動けなくなっている。いや、開幕時点で制空権を奪われてなすすべもなく蹂躙されたのち放置されただけ、まだましかもしれない。

 

 長門や武蔵はとうに中破していた。愛宕は辛うじて小破。響は奇跡的に回避がうまくいっていまだ健在だが、それでも一撃食らったら小中破は免れない。

 

 「くっ!どうだ愛宕!退路の確保はできそうか!?」

 

 「ギリギリ1分稼げるかどうかってところよお!それでも大破は免れないわあ!」

 

 「なら、せめて私とお姉が攻撃をひきつけます!私たちは軽空母でもトップクラスの耐久値だから、しばらくは持ちます!」

 

 「いや、そうはいってもお前たちは軽空母だ。危険すぎる!」

 

 「なら、私が囮になろう。」

 

 「響。今のお前は少し冷静でない。考え直せ。少し提督と仲違いしたからといて自分の命を捨てるような真似は...」

 

 「長門に何がわかるっていうんだ!?私は司令官がすべてだったんだ!その司令官に否定された今、私に何の価値があると!?長門、君は確かに戦闘では強い。それは私では足元にも及ばないくらいに強い。

 だけど、君に司令官の気持ちがわかるかい!?彼女がどれだけ苦しんで、どれほど涙を流したか知っているのかい!?私はそのすべてをこの目で見てきた。そしていつもそばにいて一緒に支えて歩いてきた。それが今、全否定されたんだ。じゃあ私の今までは何なんだったんだ!私にだけは素顔を見せてくれた。私にだけは傷をのぞかせてくれた。私だけが彼女と一番深い思い出を共有していた!それでもだめだった!彼女は瑞鳳でなければ駄目だったんだ!その瑞鳳が敵に回った今、彼女の最期に一番近かった私はどうなるんだい!?瑞鳳に救われて、司令官を愛して、その両方に背いて生きていくなんて私にはできない!だったら今、ここで死んで司令官の中に一生残り続けたほうがいいに決まってる。そうさ。彼女に言えない傷を残せばいいんだ!そうすればきっと私のことを思い出してくれる私のことで涙してくれる私を愛してくれる!だからもう関わらないでくれ!そうすれば私は救われる。みんなも救われる。これ以上ないハッピーエンドじゃないか!それに所詮艦娘なんて兵器なんだ。一人ぐらいなくなってもすぐに代わりがき______________________」

 

 響の言葉が途切れる。武蔵が響を胸元を掴み上げたからだ。その身長差から響は苦しそうに顔をゆがめるが、それでもその絶望にとらわれた瞳だけは揺るがない。

 

 

 「いい加減にしろ!お前が死んだところでそれは提督を余計に追い込むだけだ!今ここで提督がなくなると、世界が終わるんだぞ?お前ひとりの想いで、提督ごとこの世界を手放す気か!それにお前は兵器なんかではない。誰が言ったのかは知らないが、そんなこと真に受ける必要はな___________」

 

 

 「言ったのは司令官だよ。」

 

 「な、なに?」

 

 「だから、私たちは兵器だって、司令官が言ったんだ!」

 

 「ば、馬鹿な!そんなことを言うわけが...」

 

 「...それは、私も聞いたわあ...」

 

 「愛宕まで...!?じゃあ、まさか本当に...?」

 

 「だから最初からそうだと言っているだろう?結局、司令官にとって特別なのは瑞鳳だけだってことさ。それ以外はみんな消耗品に過ぎない。瑞鳳以外のメンバーの墓がないのもその証拠だろう?」

 

 「それは...」

 

 立ち尽くして何も言えない武蔵の手から抜け落ちた響は、愛宕たちに背を向ける。

 

 「さあ。早くいったほうがいい。これ以上増援を呼ばれたらさすがにどうしようもないからね。」

 

 「まて、響き!」

 

 「...武蔵。もう行こう。響はもう意思を固めている。それを邪魔するのはよくない。」

 

 「長門!あいつは血迷ただけだ!今引き返せばまだ仲直り出来る可能性だって_________」

 

 「武蔵。」

 

 長門は武蔵の肩をぎゅっとつかむその手は心なし震えていた。

 

 「(わかってくれ。あいつに今抵抗したら...私たちが沈められる!)」

 

 「(何を言って...)」

 

 長門の視線の先にある響を見て、武蔵は戦慄した。

 

 

 響の体や艤装からは、黄色のオーラが立ち上り、その目からは蒼い光が伸びているようだった。

 

 

 

                その様は、まるで深海棲艦のようで。

 

 

 もはや誰も何も言わなかった。あれほど激しかった敵の攻撃すら止んでいる。

 

 響が空母ヲ級改flagshipに連装砲を向けた。それだけで、皆は自らが殺されるという本能的な恐怖を抱いて動けなくなった。

 

 

                       発砲。

 

 

 本来、彼女の攻撃ではかすり傷がいいところだ。むしろダメージが入らない事すらある。

 

 

 にもかかわらず。

 

 

 彼女の攻撃は一撃でヲ級を轟沈させた。それだけでなく、周りにいた他のヲ級や空母棲姫にまで大きな傷を与えた。

 

 それは、まぎれもなく『鬼』であった。否。それすらも超えた何か。『姫』ですらないそれはもはや名をつけることすらはばかられた。

 

 

 ヲ級たちの悲鳴を合図に止まっていた時が動き出す。一斉に響に艦載機が集中する。しかし、それを悠々と交わして、響は真っすぐに空母棲姫を目指す。立ちはだかろうとしたヲ級たちは突然轟沈した。

 

 訳が分からないという様子のヲ級たちを捨て置いて、只々突進する。空母棲姫が逃げようとしたところを、連装砲で撃ちまくる。

 

 只々引き金を引いて、無表情に、海と同じ真っ暗な瞳で。

 

 

 その命を奪おうとする。それはまさに悪魔のようですらあった。

 

 

 

 

                    「Умрите(死ね)。」

 

 

 

 

 

 その一言とともに放たれた一発の銃弾は空母棲姫を貫き、彼女に意識を霧散させる。

 

 

 死の間際になって、空母棲姫は初めて真の絶望というものを知った。

 

 

 それは、やがて真っ暗な海の中に溶け込んで_________消えた。

 

 

 

 後には、煌々と燃え盛る紅蓮の炎が。

 

 

 

 

 そして、無表情にいまだ連装砲を水面下に向けて撃ち続ける響だけが残された。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

          もはやそこに未来は亡く。叶わぬ想いが立ち尽くすのみ。

 

 

               これは、只々残酷なだけのお話。

 

 

 




 次回は一週間ぐらい空くかもとあらかじめ予告しておきます(震え声)

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