大変遅れてごめんなさい。
GW中は少しでも多く投稿します。
「は、はははははは、あははははははははははは!!!!!!」
私は高らかに哄笑する。目の前で空母棲姫があっけなく沈んだ。それも、私ごときの一撃で。
なるほど。戦意高揚は戦果にも影響する。これは司令官も知っている事実だ。だから定期的に間宮さんのアイスなどを食べさせてくれる。
だが、この感情が影響する余波、果たして知っているのだろうか?いや、きっと知らないだろう。
絶望。喪失。別離。
なんだ。感情にはこんな力もあったのか。
今の私ならきっと、瑞鳳だって沈めれる。
彼女は特にだ。私の司令官の隣を独り占めして、いつもべったりでほかの娘たちに付け入る隙を与えさせない。司令官は気づいてなかったかもしれないが、私は特に遠ざけられていた。私が司令官を慕っていることに気づいていたのかはわからない。けれども私が戦果の報告に行こうとするのをことごとく阻んできた。おそらく警戒していたのだろう。そのせいで私は彼女と司令官がケッコンカッコカリをするのを防ぐことができなかった。それに、一度彼女の目を盗んで司令官にあった時など、彼女は真っ先に私だと気が付いてすぐにその痕跡を消そうとした。具体的には私の目の前でいちゃついてみたり、私の知らないところで私以外のみんなを誘ったイベントを行ってみたり。とにかく彼女は自分以外の人と司令官が接触するのを嫌った。そのせいで私は司令官に会えなくてとてもさみしくて辛くてもどかしくて瑞鳳が憎くて憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎憎憎憎憎憎憎________
だから、最初は彼女が私をかばった理由が最初は理解できなかった。
だが、今ならわかる。きっと彼女は司令官の中で永遠になることを望んだんだ。そうすることで司令官は永遠に彼女のことを思い続けて、私を見るたびに瑞鳳のことを思い出す。
「はははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははははは!!!!!!!!!!!!」
私は愚かだ。彼女の考えをただの献身だと勘違いしていた。
私は彼女の陰に遠慮していた。彼女への裏切りになるから、想いを封じ込めようとしていた。あの時までは。
けれどこうして蓋を開けてみれすべて彼女のお思い通りだ。私も司令官もこの所の手の内で踊るマリオネット。
本当に道化もいいところだ。そのせいで私は貴重な時間をみすみす不意にしてきたのだから。
しかしそれも今日で終わりだ。
目の前に敵機動部隊の第二波第三波が押し寄せる。
ここが私の死に場所だ。せめて瑞鳳には一矢報いたい。直接戦えないというのならその思いを踏みにじるまでだ。
連装砲を構える。同時に高角砲も照準を合わせる。目標は敵艦隊中枢にいる空母棲姫たち。
発砲。連射。連射。そして連射。
空母群が瞬く間に沈んでいく。しかし、わずかながら私も被弾する。艦載機など無視してひたすら打ち続けているから当然だ。いくら強化されているとわ行っても所詮駆逐艦。あと5分もしないうちに沈むだろう。
けれど。
私は笑う。この激戦のさなか、狂ったように笑い、敵を嬲り殺しにする。
「くくくっははははははははははははははははははははははは!あはははははははははははは!!!もうおしまいかい?そんなんじゃあ私は殺せないよ?ほら、早く私を殺してくれっ!!!」
いつしか敵はいなくなっていた。響に沈められたか撤退したかして、目の前には空母棲姫しかいなくなっていた。
「...ソンナニモシニタイカ?」
「ああ。もう私にい生きている意味はなくなったからね。...君は私を殺せるかい?」
「アア。イマノオマエナラ、コロセル。」
「なら殺してくれよ。君ならできるんだろう?今の私には君しか頼れる相手がいない。皮肉なことにね。」
「アア。テキニカイシャクヲタノムナンテマッタクオロカダ。」
「...感謝するよ。頼めるかい?」
「アア。ワタシガセキニンヲモッテキサマヲコロソウ。」
「ありがとう。...感謝するよ。」
「テキヲコロシテカンシャサレルトハオモシロイコトモアルモノダナ」
...最後まで空母棲姫は皮肉気に首を振っていた。
「カクゴハイイカ?」
「ああ。いつでも。」
そして、その時はやってきた。空母棲姫の放った艦載機たちが私に爆撃を仕掛けてくる。
私はそれをよけようともせず一身に受ける。
________ああ。死ぬっていうのは、こんな感じなんだな。
ついに死ぬことなく終戦を迎えた私には新鮮な感覚だった。
真っ暗な深海に飲み込まれて、私は何処までも堕ちて____________________
「駄目っ!」
突然私は強く突き飛ばされた。
そして、爆撃地点には私を突き飛ばした存在がいて___
「...暁?」
呆然と呟いた瞬間、目の前が真っ白に染まった。
轟音。
時が止まったかのような一瞬ののち、私は暁のもとへ駆け寄る。
「なん、で。どうして暁がここにいるんだ!どうして...?」
「決まってるでしょ?レディーの感よ。」
そう言って誇らしげに胸を張って見せることすら辛そうで。その体はあちこちが黒焦げ、血が絶え間なく流れ出して。今にも沈みそうなところを気力で持っているようなもので。
「なんて馬鹿なことをしたんだ!私の代わりに死ぬなんて...電や雷がどれだけ悲しむか...!」
「響が死んで誰も悲しまないなんてあるわけないじゃない!私だって傷付く!響は司令官のことで辛いかもしれないけど、周りだって十分に辛いの!そのうえ響まで沈んだりしたら、みんな、壊れるに決まって...」
「っ...。だけど、私にはもうこれしか方法がないんだ!司令官が私に振り向いてくれないなら、死んで一生彼女の思い出に残るしかないじゃないか!」
「そんなの間違ってる!振り向いてくれないならずっと話しかけたらいいじゃない。そうすればいつかは_____」
「死人の思い出に、勝てるわけないじゃないか...」
私は胸の内をぶちまける。せめて死の際に誰かに話したかった、積年の想いを、恋を、絶望を。
「私と瑞鳳ではそもそも立場が違うんだ。彼女はもう何もしなくても勝手に美化されていく。時間がたてばたつほどそれは強くなっていく。最後には彼女にとらわれてしまうんだよ。彼女の記憶の海に、永遠にね。
そんな理不尽な相手にどう対処しろと?同じ場所にいるだけで司令官は瑞鳳を思い出す。そのせいで私を見ているようで司令官は私を通して瑞鳳の現影を見ているだけなんだ。どれだけ私が尽くしても、愛しても、それはすべて瑞鳳のものになってしまうんだ...っ!私の努力はすべて空回って。それでも瑞鳳だけは愛されるなんてもう耐えきれないんだ!ああそうさ。私だって死ぬのは愚かだってわかってる。それでも!彼女の幻影を上書きして永遠になるほかに道はないんだ!」
ああ。本当に私は愚かだ。最期まで暁に愚痴を聞かせるだなんて。
「そう。響も大変だったんだね。」
「...もう、素直に嗤ってくれよ。私はおろかだって、嘲笑してくれっ...!」
「ううん。響はずっと頑張ってきたんだから。笑ったりなんてしない。代わりに、最期にレディーとしてアドバイスをするわね。」
暁は、最期までレディーであろうとする。妹の愚痴を聞いて、闇を覗いて、それでも笑顔を崩さない。
「いい?響は瑞鳳を勝てない幻影だって言ってた。確かに、瑞鳳は司令官の中では幻影かもしれなかった。
けれど今は違う。瑞鳳は肉体をもって生きている。それを司令官に証明して、理解させれば、きっと響を響としてみてもらえる。そこからは、今までの私みたいにレディーとしてふるまうの。しっかり司令官を支えて、癒して、愛してあげたらきっと響に振り向いてくれるはずよ。」
暁は最後までやっぱりレディーだった。こんな私でもしっかり支えてくれている。心の傷をいやしてくれた。私を、愛してくれた。
「私に、できるのかい?レディーだなんて、到底...」
「大丈夫よ。だって響は私の妹なのよ?だからきっとできる。」
「.........ああ。きっと、できる。」
「そうよ。響なら、きっと立派なレディーになれる...。ううん。もう、なってるわ。」
その言葉に私は力強くうなずく。
「ああ。私は暁と同じ『レディー』だ。瑞鳳の幻影なんかには、負けない。」
私の言葉に安心したかのように暁は微笑むと、その体がぐらりと傾く。
「...ごめん、ね。私はもうダメ見たい。...本当はレディーらしく帰ってもっと話したかったんだけど、ここでお別れね。」
その言葉に、こらえていた涙が一滴零れる。
「暁...。」
「もう。レディーは泣かないのよ?ほら、笑って。...最後ぐらい、一番の笑顔を見せて?」
「うん...。」
私は、にっこり笑って見せる。うまく笑えてたかはわからない。だって大粒の涙がとめどなくボロボロ零れるから。
「...うん!いい笑顔ね。それなら、きっと、大...丈、夫...。」
暁は最期まで笑ってくれていた。それが、きっと彼女なりのレディーなのだろう。絶対に泣かない。最期までみんなを支え続ける、レディー。
「...ふふっ。今なら、ここで沈むのも、悪くはない、かも...ね?」
常にレディーであり続けた私の自慢の姉を、私は最期まで見送った。言われた通り、一番の、笑顔で...。
「うっ...。笑うなんて、無理に、決まってるじゃないか...。」
こぼれ落ちた雫は暁に照らされて波紋を残した。
そのときの光景を、私は一生忘れないだろう。
気が付けば私のいる海は暁色に染まって。
そこにあった悲しみさえも消してしまうかのように輝いて。
まるで悲しいことなんてなかったかのように明るくて。
私は、いつまでも涙を流していた。
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