最終章突入です。
カウントダウンしときます。あと、3。
これは、すべてを終わらせる戦いだ。
願わくば、どうか、少女の願いが成就せんことを。
その日、鎮守府は沈黙に包まれていた。
信頼していた提督の突然の告白。
「私はあなた達と同じ
そして何より、あれだけ思いを寄せていた瑞鳳を自らの手で殺すという宣言。
最後に、もう、この鎮守府に戻ることはないと別離の言葉。
それが何を意味するのか。皆口に出さないだけではっきりと理解していた。
きっと、彼女は自ら命を絶つ。
瑞鳳を追って?それとも、今回の責任に耐えかねて?人それぞれに考えを巡らせる中、響はそれらの答えに否を下す。
彼女は被害なんて気にしてない。艦娘は所詮使い捨ての兵器としか思っていない。
それに、彼女の願いは、きっと「瑞鳳を殺すこと」にある。別にそれを苦に後追い自殺するわけがない。
じゃあ、なぜ?
ほかの鎮守府に移籍する?否。もうその理由がない。どこか遠い場所に隠居する?確かに、お金はあると言っていた。けれど、目的を果たした今となっては隠居してもすることがない。
わからない。
たった一つだけわかるのは、明日の出撃が別れの日だということだけ。
...結局、うまくいかなかったな。
駄目。そんなのじゃだめ。
どこかでそんな声がした。
諦めないで。まだ、今ならまだ間に合うから。
その声は懐かしい誰かのようで、声の主を探して部屋を飛び出す。
その声は私を励まし続ける。
頑張って。勇気を出して。
私は走り出す。声の方向に。そして提督の元に。
響の想い、ちゃんと伝えるのよ?
「うん。わかったよ。...暁。」
「司令官?いま、いいかい?」
「どうしたの?何か異変でもあった?」
「ねえ、司令官は、この戦いが終わったらどうするんだい?まるでこの鎮守府から去るような雰囲気だけれど。」
「え?そんなの決まってるよ。だってここにもう用はないわけだし。しばらくしたら代わりの提督がやってくるから、だいじょうぶだよ。」
「司令官。君はこの後、死ぬつもりなのかい?」
私の言葉に、彼女は薄く微笑むと懐から拳銃を取り出した。
そのままこめかみに当てようとしたところを私は艦娘の反射神経で叩き落とす。
「なにを、しているんだい。」
「なにって、自殺に決まってるじゃない。」
まるで反省していない様子の司令官に、私は初めて怒り、そして____
そのまま床に押し倒した。
「あはは、響って意外と大胆?」
「ああ。そうだろうね。私はあなたのことになるとまるで見境が付かなくなるから。」
「怖い怖い。」
「だから、今ならあなたをここで蹂躙することだってできる。瑞鳳が忘れるようなことだってできる。そのもっと先だって。」
「.........瑞鳳は、絶対に消えないよ。」
「知ってる。だから私はもっと別な方法であなたを振り向かせる。」
私の瞳をじっと覗き込んだ司令官は無表情に嗤った。
彼女の瞳は、どこまでも真っ白で何も映していないようだった。
その瞳に、私が映る方法は_______?
『ガシャン』
私の手首と彼女の手首が銀色の鎖でつながれる。
それは誓約のリングではなく制約の枷。
手錠だ。
「これで、私と司令官は離れられない。カギはさっき捨ててきた。そしてこれは艦娘を縛るための専用の手錠。私にも、あなたにも、二度と解けない。ねえ?これでずっと一緒にいられるだろう?」
私の瞳からは絶対に逃れられない。私の記憶からも逃れられない。朝も夜も食事も仕事も移動も呼吸も全部全部一緒。裸も瞳の奥も髪の毛の一本一本もすべて私のもので瑞鳳に触れられた汚い部分なんてすぐに私で上書きして二度と瑞鳳の片りんなんか見せないように微塵も欠片も一滴も全くもってこれっぽっちも残らないように駆逐してきれいにしてふき取って舐めとって私一色に染め上げて私以外のことはすべてどうでもよくなって私だ絵を見てくれる私だけの司令官でその為ならこのつながってる右腕以外いらないよね全部動けなくしようかそうして私が一生面倒を見てあげて瑞鳳の見ていないところまで全部全部ひとり占めして吸い尽くして司令官は私のもので私だけのもので私しか見ない私専用の彼女で私だけを愛してくれる司令官に書き換えてあげるねそしていつかは瑞鳳の思い出よりも私との思い出が勝る日が来るそれまではずっと一緒死ぬまで一緒。
だから、
「司令官。私と結婚を、してほしい。この戦いが終わってもずっとそばにいると誓ってほしい。そうでなければ、私は_______」
あなたと瑞鳳を殺すから。
そこにもはや迷いは亡く。握った愛を捕らえつけるのみ。
その手の銀の輝きは不朽。
永遠に破れぬ想いとなって二人を閉じる。
これは、只々残酷なだけのお話
あと3話で終わります。
次回、戦闘突入です。
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