とある教師は、   作:to110

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第11話、開幕。


ようやく時間を進める。

みんなへの誤解が解けたのかよくわからないような状態で、俺たちの泊まるところに着いた。

弁を費やしたが、実際のところ解けたかどうかはわからん。

とりあえず部屋に入って荷物を置こう。疲れた。

 

「それでせんぱーい。私たちはどこに荷物置けばいいんですか?」

 

俺の弁解中に妨害を幾度となく繰り返していた一色は、さもあっさりとした仕草で聞いてきた。

いやお前まじでなんなん………。

 

「あーっと、そうだな。部屋は2階に2つ、1階に1つもらってるからなー」

 

部屋の広さはそれなり。女子は前田しかいないし大人と一緒でいいか。っとすると、2階の2部屋には俺と男子生徒諸君、1階の1部屋には女性お三方でいいな。

さてと、まぁこの分け方なら特に問題もないだろう。強いて言えば俺のせいでその部屋にいる生徒が気まずくなる可能性があることだが、まぁ中畑と鎌田を入れればいいか。

 

「ところでせんぱい」

「あの、比企谷先生」

 

ーーそう思っていた時期が、俺にもありました。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

口が渇く。

手が震える。

脳が痺れる。

俺を拘束するのは、名のない呪縛だ。過去の俺は、こんな未来の俺を、どう評価するだろうか。そして、どう予想しているだろうか。

あとにあとにと引き伸ばした、結果だ。

 

「なんて誘えばいいんだ………」

 

いやほんとこれね。時間経っちゃうと誘えないんだよ。ていうか向こうが忘れてるかもしれな、いやそんなわけないな言い訳するなよ俺。

行くと約束したじゃないか。いやでも別にいつ行くとか約束してないしなぁ案外じっちゃんばっちゃんになってから行ったとしてもいいんじゃ、いやそんなわけないなさすがにない。ていうかそもそもそんな歳になってからあんなところ行きたくない。

どうする、どうするよ俺ー。マジやばいっしょ⁉︎どうすんよ俺⁉︎

………だめだ、戸部が頭に出てきても全然落ち着かない。いや戸部で落ち着くってのもそれはそれでどうなんだよ、いやてかそもそも頭にあいつが出てくる時点でもう相当やばい。

あぁ、戸塚。俺は汚れてしまったよぉ。

そんなことを考えに考えているおかげで、俺はぐるぐると床を転がりまわっていた。あぁ、リビングってこんなに広かったんだ。全然壁にもソファにも当たらない。あぁ、俺は自由じゃ〜。そうだ、このままどこかに行ってしまって、行方をくらましてしまって、全てをうやむやにして消えてしまおう。

そう、ぼっちはいつでも消えるのが得意なんだぜ。どのくらい得意かと言えば小学生のときのクラス名簿に俺の名前がないくらいに消えるのが得意。いやそれアウトだろ教師。俺の担任まじでなんなの。許すまじ。

 

「………なにしてんのお兄ちゃん」

 

はっ!この声は!世界の妹・小町のものだ。そんな、俺の妹と言ってしまうのもおこがましいほどの素晴らしい妹が、今、俺を蔑んだ目で見下している。きゃー小町ちゃんまじ鬼畜!そんなふうにいじめられたら快感が!

いや俺なに言ってんの。

 

「ちょっと困ったことがあって、ちょっとな」

 

どんだけちょっとなんだよ俺の悩み。そんなちょっとのことでこんな悩まねぇよ。ちょっと、ちょっとちょっと。

 

「はぁ、ごみいちゃんが悩み事しないときなんてないでしょ?志望校受かってついにおかしくなったの?」

 

そうなのだ。俺たち大学受験生たちは私立大学という1つの試練を終えて、その結果を受け取った。いやネットだから直接受け取ったわけじゃないけど。

そして、俺は志望校に受かった。毎年相当の倍率であり、いわゆるいいところの大学と言えるところだ。ふっ、これで人生勝ち組だぜ。でも実際東大の人ってニートになりやすかったりするから大学のレベルとかは大してあてにならんかったりもする。東大の人に関してはただ単にわがままが過ぎるだけだとは思うが。

んでまぁ国公立を志望していない俺はそれで終わったのだ。センター試験も一応受けてはいるが、まぁ正直対策してなかったしとる気なかったしでなかなかにひどかった。国公立受けない、センター利用で志望校行くためには9割必要、志望校の入試問題がセンター形式(マーク形式)じゃない、というコンボがあるから対策する時間すら無駄だよね仕方ないね。

ちなみに由比ヶ浜は無事私立大学に合格、浪人がなくなった。やはりガハマさん、伊達に総武高校受かっただけのことはあってうまく流した。雪ノ下は国公立志望だからまだまだ勉強中で、あいつの周りの温度はえげつなく低くなってる。地球温暖化が止まるぜ!

まぁその辺は置いといて。それにしても、俺ってばそんないつも悩んでるのかね小町殿?俺ほどのうのうと生きてる人もいないんじゃない?

 

「しっかたないなーお兄ちゃん。去年は小町が助けてもらったし、今度は小町がお兄ちゃんを助けてあげるよー」

 

「おぉ、さすが小町」

 

いやー、俺はなんと素晴らしい妹を持ったのだろうか。さすが小町、略して小町。そう、つまり小町の中に賛辞の言葉は入っていたのだ。

いやなんだそれ。

 

「んでんで?なににそんなに悩んでいるのかね?」

 

「あーっとだなー………」

 

いざ言うとなると、こう、恥ずかしいものがある。むむむっと唸っていると、小町は目でとっとと言えと促してきた。それができてりゃ苦労せんての。

はぁと一息ついて、それに続く。

 

「由比ヶ浜と、その、なんだ。出かけようと思ってるんだが、どう誘えばいいのかと思って、な」

 

言葉を重ねるにつれて小町の目がだんだんとピッカンピッカンしていった。

 

「おぉおぉおぉ!ついに!ついにあのお兄ちゃんが誰かをデートに誘う日が来るだなんて、小町感動だよ!」

 

「いや待て別にデートじゃ」

 

「いやー結衣さんルートかぁ。包容力のあるゆったりとしたお義姉ちゃん、うんうん、ありだね」

 

いやいやなにこれなんか小町の脳内がすごい回ってるよ。なんでその回転力を自分のために使えないんだ。

はっ、お兄ちゃんのためにしか使えないってことか。なるほど、それはいい。愛ゆえに、というやつだな。

違うね、ただ単に俺を追い出したいだけだよね。うん知ってる。

 

「いやだからちょっと待」

 

「なにが決めてになったんだいお兄ちゃん?」

 

小町はいつの間にやら俺に馬乗りしていた。小町ちゃん、はしたないよ!他の男には絶対やっちゃだめだよ!もちろん親父にも。

いやーあれですね。こう、妹に乗られて、その、嫌な気はしませんな。ぐへへへ………。

っと、いかんいかん。ついつい小町のことを120%考えてしまった。意識を戻すためにも(お互いの)、叩いておこう(小町を)。

 

「とりあえず話聞け」

 

「へぷっ」

 

さてと、さすがに話をするのに寝っ転がったままというのも悪かろう。

まぁ、ソファがいいだろうな。

 

「とりあえず誤解は解いておく。俺は別に由比ヶ浜と付き合おうとかそういうふうに思っているわけではない。デートのつもりもない。向こうがなんて言うかは知らんけど」

 

誤解って、ちゃんと、解けるよね?大丈夫だよね?

あれ、なんか今の時間じゃない、未来の時間で、誤解は解けるんだー、きっとそうだー、頼むよーみたいなことやってる気がするぞ。まるで成長がないな。ついに俺にも予知能力が目覚めたようだな。成長してない未来予知とか絶望すぎる。

それにしても、女子のデートという単語の出番の多さは異常。だれかと出かけるだけでデートデート行ってる。日付的な意味でデートを使い出したのではないだろうかと思わざるをえない勢い。

 

「ふむ、じゃあなんで行くの?卒業記念とか合格祝いとかならお兄ちゃん絶対やらないよね?」

 

よくご存知で。

 

「そりゃな。まぁあれだ、一年くらい前に約束したんだよ由比ヶ浜と。ネズミーなところのシーに行こうって。まぁ約束とは時期が違うが」

 

「ほうほう、やりますな結衣さん。ちゃっかりお兄ちゃんとデートの約束をしているとは。小町だって受験終わってからのお兄ちゃんとまだ出かけてないのに………」

 

なにやら小町がぶつぶつ言っている。最初から大して聞こえてなかったが、後半に関してはまったく聞こえてない。小町が少し頰を赤らめているあたり、きっといつも通りごみいちゃんと罵られるのだろう。小町様のお怒りじゃ。

 

「あ、でもこうすれば別にいいのか、よしっ。じゃあね、だめだめなお兄ちゃんのためにも、小町が結衣さんに話しといてあげるよ」

 

「え、まじで?」

 

なにそれすごく魅力的。さっすが小町。さす町。前半のよしってのがすごく気になるけどね!よしっの前にボソボソと呟いてたのもね!

 

そうして、由比ヶ浜と出かける日程が俺の知らないところで作られることになった。まぁ別に、もういつでも暇だからいいんだけどね。でもね、頼んでる俺が言うのもあれだから言ってないけどさ、少しくらい俺のことを考えてもいいんとちゃう?

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

千葉村は2泊3日の日程だ。

そのうちの1日はもう終わった。去年と同様、夜ご飯には普通にカレーが作られた。そう、普通に、だ。やはり由比ヶ浜結衣の名を持つ人がいないだけですごく気が楽。

そうなんだよなー。そこまでは気が楽だったんだよなー。幸せだったなー。

それなのに。なーんで、なーんで。こうなったん?

 

「私はここに寝ますから竹本先生はこっちで寝てくださいよー」

 

「いえいえ一色先生。私がここで寝るので向こうで寝るといいと思いますよー」

 

あぁ、後ろでとてつもないことが起きてるよぉ。

 

ーー事の経緯としてはこうだ。

 

「ところでせんぱい」

「あの、比企谷先生」

 

当時に同じ内容を発した2人、一色と竹本先生。同時に言ったからといって、別にわざわざ揃えたわけではないだろう。なんだろうね、2人して共通するものがあるってことだよね。

んでさ、なんで俺呼ばれたの?こういうときどっちに反応すればいいかわからんから困る。こういうときはみんなどうしてるん?

 

「むっ」

「んっ」

 

なんで?なんで睨み合っとるのん?

 

「せんぱい一緒に寝ましょうよ!」

「比企谷先生一緒の部屋にしましょう!」

 

いや、あの、え、え?

なになにどしたの2人とも。

 

「修羅場ですねー」

 

「いやーそうですねー」

 

「大変そうだなー」

 

ぽけーっと他人事のごとく生徒たちはしている。いやまぁ他人事なんだけどさ実際。俺もそっち行きたかったなぁ………。

 

「いやとりあえず落ち着いてください竹本先生。一色はどっか行け」

 

「せんぱいひどくないですか⁉︎」

 

いやだってうるさいんだもん。

 

「私は落ち着いてますよ比企谷先生」

 

いやそれ言ってる人は大抵落ち着いてませんって。犯人はみんなそう言うんだってのと同じですよ。

 

ーーということがあった。

いや待てなんの説明にもなってなくない?大丈夫?察した?

それと、なんやかんやあって前田が他の奉仕部のやつらと一緒に寝ることになった。一色がごちゃごちゃ言ってた。

いや、あの、ね?たしかに大人3人って結構場所取るけどさ。それでいいの?だってあれだよ?年頃の男女が同じ部屋だよ?前田大丈夫?いやまぁ他のやつらが襲うとかは思えんけどさ。

 

それにしても、あーもう後ろの2人がうるさいなぁまったく。

早く寝てくれないかな?

もうどっちでもよくない?俺の真後ろで寝るとなにかあるの?

 

………さてと、あの3人の中だと誰が気まずくなるんかね。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

っと、そんな感じに静かになるまで待とうとしたのだが、さすがに無理だった。

 

「すみません2人とも。寝れないので外出てきます」

 

それだけ言って出てきた。

怒ったつもりはないんだが、それでも睡眠を妨害されていたせいでどうしても語気が強くなってしまったという自覚はある。

 

「はぁ………」

 

全然だめだなぁ俺も。まったく。

お前はどうなんだろうな。なぁ、

 

「鎌田」

 

木々の繁るなか、月の光を一身に浴びて、そこに立っていた。鼻歌は歌っていなかったが、な。

 

「どうしたんですか?比企谷先生」

 

「いや、なんか部屋でちょっとな」

 

「あ、あぁ。確かに大変になりそうですよね。お疲れ様です」

 

「あぁ、どうも」

 

………なんだこの社会人の挨拶は。

別に部屋がうるさいからというのが理由で出てきたわけではない。いやうるさいのは事実なんだけどね?でも、できれば外に出たいって思ってたし、都合が良かったといえば良かった。いやでもあのうるささはさすがに許容できない。だって寝たかったもん、少しくらい。

まぁそれはいいとして。なんとなく、誰かしらは部屋から出てくる気がしてたからな。まぁ会えるかは別問題だったが。

 

「なぁ、少し話さないか?どうせまだしばらく起きてるんだろ?」

 

「………そうですね。どんなこと話しましょうか?残念ながら僕は話題なんて作れませんよ?」

 

わかっている。話題くらいは振ってやるさ。そのくらいは俺の役目だ。

しかし、その話題は、お前の、お前たちの話だ。

 

「あいつらと、昔なんかあったのか?」

 

形としては質問ではあるが、この質問はする気がない。意味を成さない。

そんなもの、

 

「よく、見ていますよね。さすがです」

 

聞くまでもない。

俺はこいつの、そしてあいつらの、教師なのだから。




いやー、あれですよね。とりあえず言っておきますよ?
やっと次で千葉村編は終わります。そうです、やっとです。(予定)

過去編では、ついに八幡が誘おうかというところですね。
なんか小町とのやりとりやら1人で悶々としているところが楽しくて結局ガハマさんは出てきませんでしたね。

物語についてなんですけど、正直ネタがきつくなってきましたね。
終わりはもう決めてるんですけど、そこにどう繋ぐか、そこまでにはなにがあるのか、などなどなかなかに難しいです。
まぁ楽しいからやるんですけどね?

ふむふむ、まぁいろいろと早いですけど、今日はこんな感じに終わりましょうかね。
最後に一つ。12巻の内容は絡める予定はありません。なかったことにしてこの話は進みます。そのあたり、思っといてね。
ではでは、また再来週!
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