とある教師は、   作:to110

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第2話、開幕。


彼らを引き合わせる

特に意識をしていたわけではないが、俺は平塚先生のよくやっていた格好で部屋の中を伺っている。たしかにこの格好でたばこ吸うとかっこいいな。俺は吸わんけど。

 

『とりあえず、座ったら?』

 

『あぁ、そうさせてもらう』

 

うわーなんか懐かしいぞ。中の様子見てないのに浮かんでくる。うん、絶対イメージ通りの状況だわこれ。と思ったけど、中畑の場合はコミュニケーション能力高いわけだからわりと前田の近くに座ってたりすんのか?だとしたらなぜだろう。とてもむかつくな。

 

『とりあえず、ここはなんなんだ。部活って比企谷先生言ってたけど』

 

『そうね、ならクイズでもしましょうか』

 

あれ、この流れも同じなの?おーい、誰か台本渡してたりしない?もしかしてどこかに書いてあるのか?いやそんなわけないんだけどさ。いや、でも、なんなんだよこの流れは。

 

『ここが何部かを当ててみなさい。答えられなかったらここから出て行きなさい』

 

『一体なんなんだお前………」

 

『私は前田由那。この部の部長よ』

 

『あーこりゃどうも。俺は中畑恵介だ』

 

うわっ、こいつらさらっと自己紹介を済ませやがった。なんなんだ、こいつらは一体………⁉︎

 

『それで、答えはわかったかしら?』

 

ヒントなし!まじで追い出そうとしてるな前田のやつ。頑張れ中畑、ここで追い返されたら俺が恥ずかしい。楽しみにしとけとか言っておいてそうなったら超恥ずかしい。

やばい、頭を抱えたくなってきた。助けて小町!あのときみたいに俺を踏んでくれ!………いや違う、俺はなに考えてんだっての。

 

『はぁ、奉仕部、でどうだ』

 

よくやったぞ中畑ー!

というかよくわかったね。というかよく知ってたね。部活動紹介欄になかったはずだぞ。なんでないのに部として存続してんだよ。一体裏でなにが動いているというのだ。いや、理由は知ってる、昨日言った通り。でも、正直納得するのは難しい。てか納得したくない。

 

『………正解よ。よくわかったわね』

 

こいつ絶対不正解って言おうとしてたわ。うん、わかるわ、今めっちゃ悔しそうな顔してるわ。とりあえず嘘つきたくないんだろ?わかるよ、前田、お前まじで初期雪ノ下だな。

 

『女子しか入部できない茶華道部以外は一回見た。だからそれらは外れる。さらにその茶華道部も明らかに違う。ということは新しくできた可能性だが、これもない。今年で増えた部活はなかったからな。ということは普通は知られていないような部活ということだ、怪しさ満天だが。そして、いつも昼放課などは比企谷先生の机にある鍵が一つなかった。そこには奉仕部と書かれた鍵があったはずだ。そのことも考えると比企谷先生は奉仕部の管理をしている。自分の管理している部活なら自由にしやすい。よって、この部は奉仕部である。以上』

 

前半の全部活制覇の話必要?絶対最後だけでよかったよね?こういう見栄の張り方には見覚え、というかやり覚えがある。それっぽい理屈くっつけて結論をごり押そうとする俺だわ。前半適当にそれっぽいこと言って誤魔化すのも手だし、今の中畑のように余計なことを言うのも手だ。

ちなみに、それについては未だにやってる。アホ系にはとても通用する。主に由比ヶ浜。

しかし、前田はそのアホ系ではない。残念だが。ただむかついただけではなかろうか。

というか全部活制覇とかやるやつ本当にいるんだな。たしかにどの部活も一度来てくださいとか言うわけだが、それを実行するやつとかいたんすね。ちなみに俺は一つも行かなかったな。え、そんなこと知ってるって?

 

『長ったらしいことを言ったくせに必要だったのは最後だけよね。しかも全部活見学に行くなんて、そんなばかがまさかいるなんて』

 

俺とまったく同じ感想やないですか前田よ。

ん?こいつと同じ考えってことはいつの間にか俺は雪ノ下思想になっていたということか?なにそれ怖い。おっと、冷えてきたな。そろそろあいつのことを考えるのはやめておこう。

 

『まぁなんにせよ正解したんだ。報酬はあんのか?』

 

『はぁ、私の負けよ。私を好きにしていいわよ』

 

なぬっ………⁉︎おいおい、いくら男子高校生が常に卑猥なことを考えてるわけではないとはいえ、それはやばいんじゃないのか?当てられて悔しいからってこれはやばくないか?さすがにこれは止めるべきか?

 

『じゃあ3つ質問するからそれに答えてくれ』

 

おう、さすが俺間違えた、葉山ってこれも違う。さっすが中畑。

 

『そんなことでいいの?私を好きにしていいなんて言われたら、することなんて決まってるかと思っていたけれど』

 

『男子高校生がいつでも卑猥なことを考えていると思ったら大間違いだ。他にも考えている。世界平和とか。まぁあとあれだ。これから一緒に部活やるやつにそんなことしたら気まずくて仕方ねぇ』

 

さらっと入部を認めたぞこいつ。俺なんてしばらく入る気なんてなかったのに、逃げたかったのに。順応性高いのね。

それと、きっとこいつにも葛藤はあったんだろうな。世界平和の話題を出してるからにはそうに違いない。慎ましい胸とか見てたに違いない。あれ、なんか冷えてきたな。雪ノ下この辺にいないよな?

 

『すごいわね、あなた』

 

感心したと言わんばかりにそう告げた前田。まぁそりゃな、俺だって感心してるもん。

 

『ふっ、まぁな』

 

………はぁ、そういうことか。

きっと本人はきちんとやってるつもりだ、やれているつもりだ。だが、俺にはわかった。中畑の声が渇いたことに。一枚壁を隔てているからわかったのか、直接聞いていてもわかったのかはわからんが、とりあえず俺はわかった。

こいつあれだ。嫉妬だ。才能に嫉妬している。天才に嫉妬している。すごいとか言われることが、どうしても許せないらしい。言ったやつがむかつくんじゃなくて、言われた自分にむかついている。自分を自分で褒めるという行為に意味を求めるなら、それはさまざまだ。俺の場合は誰も言ってくれなかったからだったしな。そして、中畑の場合は、きっとーー

 

「原因見っけ」

 

俺の口からぼそっとそんな言葉が漏れた。

 

『それで、質問というのは?』

 

『あぁそうそう。一つ目、お前友達いんの?』

 

『そうね、まずとこからどこまでが友達なのかを定義してもらってーー』

 

『オーケー。それは友達いないやつのセリフだわ。二つ目、友達を必要と思ったことは?』

 

『昔は思っていた、こともあったかもしれないという程度よ。そんなもの必要ないわ。私はもう群れる必要はない、他人と』

 

『三つ目、その理由を俺に言えるか?』

 

『可能か不可能かの話であれば可能ね。別に記憶が飛んだわけじゃないのだから。でも、言いたくはないわね、あなたなんかに』

 

『オーケー。四つ目だ。これにお前の返答義務はない。無視してくれて結構だ』

 

『そう、なら無視させていただーー』

 

『俺と友達になってくれ』

 

だめだ、笑いが抑えられない。いや音出したらいるのばれるから出さないけどさ。じゃあ抑えられなくないじゃんとか言わない。ぼっちスキルは未だに健在だ。このくらいできる。ただ、我慢した分家でとてつもなく爆発するというだけだ。

ほんと、こいつらのやりとりっていいわ。

あと中畑。俺はそのセリフ最後の最後まで言い切れなかったんだぞ。くっそ。やっぱりむかつく。そしてそのセリフは質問ではなく提案や勧誘だ。

 

『………お断りよ』

 

『………そうか』

 

前田、即答しなかったな。中畑の雰囲気にでも当てられたかな。

それから2人には会話がなかった。あったのは、2人の本をめくる音だけ。さすがは中畑、本をいつでも携帯しているとは。まぁ常識か。別にさすがでもなんでもないわ。最近の子どもがおかしいだけだな、うん、そうに違いない。暇なときができた用に持ち歩くよな?え?友達と話すからいらないって?そんなご冗談を、ははは。

 

平塚先生は中に入って行ったが、どうやら俺にはそれは必要ないらしい。まぁゆっくり距離を詰めればいいさ、2人とも。2人の距離、他人との距離。詰めるものはたくさんあるが、まぁそこは頑張るしかないだろうな、あいつらが。

そうなってくれることを願いながら、俺は職員室に戻っていった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

性善説、性悪説。これらは古代中国の思想家が唱えたもので、端的に言えば生まれたときに人は善なのか悪なのかということだ。

だが、俺からしたらどうでもいいことだ。なぜなら、生まれたときに善悪など人には判断できないからだ。結局は生きていく過程でどっちに染まるか、もしくはどちらとも持つのか、ただそれだけだ。まぁ基本的に人間はどっちも持つんだろうが。完全なる善人なんていないし、完全なる悪人もいない。

 

しかし、中畑から見た前田は、きっと、善だ。真っ白に見えているのだろう。そして、自分を、きっと、悪だとしている。真っ黒に見えているんだろうな、自分が、そして周りも。自分の生きてきた世界とは別の世界の住人に会った気分はどうだ?これはお前の人生を変える、かもしれない出会いだぞ。

前田の目に中畑はどう映ったのだろうか。それだけが心配だ。中畑びいきをして、前田の成長になんの影響ももたらさなかったり、悪影響を及ぼしたりなんて、してはいけない。こればっかりは本人に聞くしかないか。もし悪影響なら引き離すしかない。残念なことではあるが、同時に仕方のないことでもある。

 

「失礼します。比企谷先生、鍵を返しに来ました」

 

「あぁ前田。お疲れさん」

 

「いえ別に、なにもしませんでしたし。それでは失礼します」

 

「一つだけいいか前田」

 

「なんですか先生?」

 

「中畑は、どうだった?」

 

「いやなやつ、でした。私に対しての行動の意味がわかりません。今まであんな人いなかったから。けれど、楽しかったですよ、なぜか。中畑君は、そういう人でした」

 

「そうか」

 

「それでは、失礼します」

 

「あぁ」

 

そうか、そうか。

前田にとっても初めてか。違う世界の住人は楽しいだろう。楽しめ、青春を。

 

「せんぱい、そのにやけ顔は正直引きますよ?」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「一色いろはと言います。今年から教師になりました。不束者ですが、よろしくお願いします」

 

突然、あざとい後輩の一色いろははやってきた。久々に見た、というわけじゃないから見た目では驚かなかったが、きちんとしていたことに驚いた。

 

「っと、それじゃあ比企谷先生。先生は一色先生に学校の案内をしてあげてください。お願いしますよ」

 

「え、比企谷⁉︎」

 

「はい、わかりました。それじゃあ一色先生、行きましょうか」

 

「え、あ、はい。よろしく、お願いします………」

 

教室のある棟を一通り回り、次は特別棟というところで彼女は口を開いた。それまでは最低限の情報を俺が伝えてただけだった。

 

「比企谷先生は、その、2年目なんですか?」

 

「どうしてそう思うんですか?一色先生」

 

「え、いや、その、だって………」

 

どうしてもなにもない。年齢的にそうだとしか言いようがないし。というかそもそも彼女がそんなことを聞いてくること自体が不毛だ。まぁ聞いてくる理由は、俺がやたらと他人行儀なところだろうな。職員室でならまだしも、出てからもそのままだ。

それに戸惑っている一色がおもしろくてついついやってしまった。そして、ぷっと笑いが漏れてしまった。

 

「え、あの、もしかして………」

 

「あぁ悪いな一色。お前がおもしろくてな、つい。わざとだ」

 

「せんぱい………」

 

………あれ?なんか、あれ?これ、まずいぞ?

やばい、泣かせた。やりすぎた。

 

「あ、えっとだな、一色」

 

「………私がさっきまでどんな気持ちだったかわかりますか?」

 

はい、アウトですねこれ。

 

「いや、そのだな」

 

「せんぱいに素っ気なくされて、私がどんな気持ちだったかわかりますか?」

 

「………悪い、一色と同じところで働けることに舞い上がった」

 

「っ………!じゃあせんぱい、抱きしめてください」

 

「は⁉︎いやお前なに言ってんの?ここ学校だよ?」

 

「せんぱーい、私の気持ち考えてくださいよー」

 

「うっ………、わかった。してやるから泣きやめ」

 

「はーいせんぱいはそれでいいんですよー」

 

はめられたー!くっそ、まさか一色の嘘泣きに引っかかるとは。俺の目よ、活躍してくれよ。いつの間に節穴になってしまったんだよ。

 

「やってくれるんですよねー?せ・ん・ぱ・い?」

 

「ちっ、わーったよ、ほら来い」

 

「はぅわ………」

 

あー恥ずかしい。周りに人がいるわけではないが、恥ずかしい。いや、たぶんいたら一色はこんなことさせんけど。前に女の人抱いたのっていつだったっけ。

っと、あれは抱いたに入んのかね。二年弱前のこと。

 

「せんぱい」

 

「なんだ」

 

「やっと、追いつきましたよ」

 

………ったく、こいつは。

 

「そうだな」

 

しばらく抱きしめて、自然と離れたときにちらっと一色の目が見えたが、まぁ、あれだな。俺の目はまだ節穴ではないということがわかった。

 

それから校内探索を再開した。いや、もう他人行儀にする必要がない以上案内とかしなくていいんじゃないのと提案したんだが、さぼっちゃだめですよと言われて残念ながら続行。というかあそこへは行きたいということらしい。まぁそれなら仕方ないと従った。

そしてその場所についた。もちろん鍵を持っているわけではないから中に入ることはできない。しかし、なんか、やたらと落ち着く。ここには去年、結局来なかったしな。

 

「ありがとうございます。せんぱいとここに来たかったんですよ今日、どうしても」

 

「………そうか」

 

「それじゃあ、戻りましょうか」

 

「あぁ、そうだな」

 

「ところでせんぱい」

 

「なんだ?」

 

「奉仕部って今誰かいますか?」

 

「いや、いな………い?」

 

いやまて、ちょっとまて。なんでこいつ奉仕部があることを前提で話をしてんだ?俺ですら未だに存在していることに驚いたんだぞ。雪ノ下や由比ヶ浜だって知らないはずだ。そういう会話をしていたんだから。報告したらめちゃくちゃ驚いてたんだから。なのになんでこいつはそういう話し方を。まさかこいつ、

 

「お前、一体なにをした」

 

「なんですかせんぱーい、その言い方はひどくないですかー?」

 

「で、なにをした」

 

「私と小町ちゃんが生徒会やってるときに、ちょっとした伝統を残しておきまして。奉仕部という部活は部活紹介欄には載せないが、部活としては残しておく。ということを後輩に強せ、お願いしまして。それを伝統にしてもらいました」

 

こいつの後輩は一体なにをさせられたというのだ。というか小町、お前も共犯か。あとひどいことされた後輩って小町のことじゃないよな?こいつにそのうち聞かねばならんな。

しかし、まぁなんだ。嬉しいことをしてくれるな、こいつも。だから、そんな彼女、奉仕部の一員たる彼女には、この言葉を送るのが適切だろう。

 

「お前、ほんとあざといな」

 

「せんぱいに言われたくありませんよーだ」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

最寄り駅に着いた俺たち。

金曜の夜というのはなんとも心地よい。特に仕事が片付いているときの金曜ほどの至福はないのではないだろうか。至福って言ってるしね、うん。

 

「よかったですねーにやけ顔を見られたのが私だけで」

 

「いや、もうそれだけで死にたいんだけど」

 

「そんなことはいいとして、せんぱい」

 

「俺の死がそんなこととはお前ずいぶんな口だな。それでどうした」

 

「明日、行きますか?」

 

「あぁ、久々に仕事が片付いてて土日ゆっくりできるからな。そのうちの1日くらい使っても問題ない」

 

「それじゃ、今日はここでいいですよ。また明日ですね、せんぱい」

 

「あぁ、また明日な」

 

手を振って別れを告げる。

明日はあいつらに会う日だ。まぁ同窓会だ。ちょっとした話題のネタが手に入ったから、それを肴にでもしよう。




過去にあったこととかは今回みたいにちょくちょく挟んでいくという感じでやっていきます。
物語の進行に関してはたぶんずっとこのペースなんで相当ゆったりだと思います。

それと、この物語の主人公は、あくまでも八幡です。もちろん奉仕部も大事ですけど、あくまで主人公は彼です。彼の話がメインです。だからこれから先で「は?」みたいなこと(高校生しばらく出番なしとか)起こるかもしれませんが、なんか、こう、どうにかしてください(なげやり)。

ではまた来週会いましょう。
次もよろしくお願いします!
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