とある教師は、   作:to110

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第9話、開幕。


彼女らと始まりを始める

………まぁ、だろうな。

そんな感想が真っ先に生まれた。中畑の連れてきた人というのは、どうやら鎌田のようだ。

そりゃね、話の流れ的にここで新キャラ登場させてもって感じだけどさ。でもさでもさ、予想通りすぎてつまんなくね?

学校に着き、来た人物の確認をして、車の中へ入れる。前田、中畑、鎌田の3人だ。

 

「僕が来て大丈夫でした?」

 

「大丈夫だ、問題ない」

 

そうやって聞かれて、やっぱ無理って答える状況ってあるのだろうか。

みんな乗り込み、その後前田が言う。

 

「一色先生、今回はよろしくお願いします」

 

それに続き中畑、鎌田と続く。

 

「一色先生、お願いします」

 

「一色先生、ありがとうございます」

 

………俺の存在感よ。

 

という最初の件はとうに過ぎ、今はよくわからん道にいる。いや、別に迷子というわけではない。ちゃんとカーナビちゃんの導いたルート上にいる。さすがの俺でももう千葉村への行き方を忘れてしまっていた。覚えてても仕方ないけど。年一だからな。

それと、去年は同じ国語教師であり、2年F組の担任である竹本先生に運転をやってもらった。参加した生徒数は5人だった。募集の方で勝手に集まっていた。そしてみんな口を揃えずに言うのだ。キャンプがどうとかキャンプがどうとかキャンプがどうとか。みんな揃ってるじゃん。なんだ、ただの戸部か。

そして今回は奉仕部以外には鎌田を除き4人来ることになっている。奉仕部の面々には伝えていない。正直めんどかった。向こうで見たら紹介すればよかろう。学年違うから知らない人だろうし。

ちなみにその4人は竹本先生によろしく頼んだ。今年も付き合わせてしまった。いやはや、いい人で助かる。一色みたいにぐちぐち言ってきたりしないし、ちゃんと仕事してるし、俺なんかに頻繁に話しかけてきてくれるし。交換の条件としては、一日買い物に付き合うということとなった。そんなんでいいならいくらでも付き合いますよねまったく。

………あれ、条件一色と同じじゃね?

 

と、そんな思考をしている俺に、暇つぶし相手をお願いしてきた一色は、べちゃくちゃ喋っている。基本的にへーとかほーとかへいほーとかよっしーとか言って相槌を打っている。よっしーは違うな。

 

「せんぱい聞いてます?」

 

「へー」

 

………やばい、返答ミスった。くそっ、一色め。この俺をひっかけにくるとは。なかなかやりおる。まぁ俺がへっぽこなだけだったけどね今回のは。

 

「さっきから適当に相槌打ってなにも聞いてないのはわかってますからね?」

 

帰ったあとになにかしら科せられるよね、罰ゲーム的なやつが。

いやーあれですね。楽しみだなー、ははは………。はぁ。

 

そんなことをして、われわれ奉仕部+α一行は、千葉村へと着くのだった。

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

「では、発表する」

 

ノックをせずに現れ、俺たちの前に来た平塚先生は、高らかに叫んだ。

今日は卒業式だ。今、奉仕部の部室には、俺、雪ノ下、由比ヶ浜、平塚先生の4人がいる。さすがに空気を感じ取ったのか、今日という日を意識したのか、あのあざとい後輩とか、俺の俺だけの俺のためのかわいい妹や、材木座は遊びに来てはいない。つまり、今ここは奉仕部だけの空間となっている。まぁクラスのホームルームとかけっこう前に終わってるから案外帰っただけかもしれんが。

 

「あの、なにをでしょうか」

 

雪ノ下は当然の疑問を口にする。由比ヶ浜に至っては「え、どしたのいきなりこの独身教師は」みたいな哀れみの目を向けている。その目、やめたげてよ!ちなみに俺は本から目を離さない。

 

「いやな、今日でお前たちも卒業だからな。勝負の結果発表をしに来た。まぁもちろん他にもいろいろと話したいことはあるのだが」

 

そう言いながら、俺たち3人の目を順に見る。

ーーあぁ、この人は俺たちの顧問だったな。そんな感じがしないほど少年の心を持っていた人だったからその認識がなくても仕方ない。まぁその分、いやそれ以上に、その、なんだ。いい先生だった。

そう、俺たちの、先生だった。だから、そんな顔をしているのだろう。卒業を惜しむような、できる限り留めておこうとするような、いつまでも一緒にいたいような、そしてそれ以上に見送れて誇らしいような、そんな、複雑な顔を。

 

「それで、どうなったのでしょうか?」

 

声音は落ち着いている雪ノ下ではあるが、その両手は強く握りしめてられている。ほんとに負けず嫌いさんだな、雪ノ下よ………。

由比ヶ浜はといえば、ようやく状況に追いついてこれたのか、「そんなこともあったような………?」と呟いていた。それ思い出せてないやつやん。追いつけてもいなかった。

 

「それで結果はどうなったんですか?」

 

おいおいおい、思い出せてないなら思い出してから参加しろよ。

 

「結果から言えば、比企谷の勝利だ」

 

空気が、割れた………?

平塚先生が告げると、ピキッという音がした。誰も手にはなにも持っていなかったから、そんな音を鳴らすなんてできないはずだ。

だから、空気が割れたと思われたのだ。主に雪ノ下のところで。雪ノ下の、ところで。

 

「それは、なぜですか」

 

雪ノ下が両手をさきほどよりもぐっと握りしめて平塚先生に問う。けっこう睨みつけてますね、あれ。その平塚先生はと言えば、特に目も逸らさずに自信満々に答える。

 

「まぁ落ち着け雪ノ下。勝敗のつけ方は私の独断と偏見だと言っただろ?ふっ、つまりこの場では私がルールだ」

 

ほんと、今になっても思うけど、とんでもないルールだよな。先生が好き勝手できるわけだからな。アドリブしかないゲームマスターってところだな。

まぁ、そのおかげで助かるわけだが。

しかし、それだけでは引かないのが彼女、雪ノ下だ。由比ヶ浜のおかげで丸くなっていた上に、陽乃さんとの仲も良くなり相当丸くなったわけだが、それでも根っこはやはりそのままというか。勝ちへの拘りやら執念やら、そういうのは消えていない。ついでに言えば本人が丸くなりたかったであろう部分も丸くはならなかった。

 

「でも先生、さすがに判断基準くらい教えてくれないと私たちもわからないですよ?」

 

ゆ、由比ヶ浜、お前………。

俺に、いや俺たちに、衝撃が走った。

 

「4文字の漢字の熟語を由比ヶ浜が使った、だと………」

 

「どういう意味だ⁉︎」

 

机をドンと両手で叩きながら立ち上がった由比ヶ浜は俺に向かって抗議を始める。そんな目で睨まんといてください。そう思ってるのは俺だけじゃないんですよ。

 

「私としたことがつい頭に血が上ってしまったみたいね。どうやら脳が正常な聴覚処理ができていないようね。だって、由比ヶ浜さんが、まさかそんな………」

 

「ちょっ、ゆきのん⁉︎」

 

まさかそんなところに伏兵が⁉︎という感じの反応をした。伏兵の意味わからないだろうけど。

あと雪ノ下さん。あなたは基本的に勝負事だと頭に血上ってるんでそこだけは正常ですよ。

 

「そうか、由比ヶ浜も成長したんだな」

 

「先生まで⁉︎」

 

平塚先生の慈愛に満ちた目で見られた由比ヶ浜は泣きかけだ。

いやはや、由比ヶ浜の反応はやはりおもしろい。いやー、いい反応するよね。うん。そしてその度に揺れ、いやなんでもない。

あれ、ちょっと寒くなってきたな。まだこの時期は冬の寒さを残しているからな。

 

「まぁ裁定くらい言っておこうか」

 

仕切り直し、というようにそう言う。

 

「とりあえず、依頼のほとんどが部全体の功績であると私は思っている。例えば、由比ヶ浜の依頼。比企谷が解決案を出したが、その前に雪ノ下が由比ヶ浜にあの厳しいことを言わなければああはならなかっただろう」

 

まさにその通りだろう。結局、3人しか舞台にいないバトルロワイヤルでその3人が協力していたんだ。勝敗なんてそうそうつかないだろう。

 

「ただ、この時点で比企谷と雪ノ下に一勝がついているわけだ。由比ヶ浜の変化も含めて、な。そして、雪ノ下の変化。これはもちろん、由比ヶ浜と比企谷によるものだ。以上をもって、比企谷が1つ勝ちが多い」

 

由比ヶ浜が「ほへぇ」とか呟いていて納得しているようではあるが、これで納得しないのが雪ノ下であろう。

 

「いえ待ってください。それを言うなら比企谷君にだって変化はありました。なら私たちにも勝ち点がついて引き分けになるはずです」

 

「残念だが、比企谷を変えろという依頼は私のものだからな。ノーカウントだ。比企谷は自分で依頼したわけではないしな。たが、雪ノ下は自分で依頼したのだろう?」

 

「し、しかし」

 

「『これから君たちの下に悩める子羊を導く。彼らを君たちなりに救ってみたまえ。』1巻で私が言ったことだ。ちなみに43ページだ。つまりはこれからの依頼内容がこの勝負だ。私の依頼は除かれる。まぁもちろん私の知らないところで依頼があったとしても、それはもちろんカウントしないからな」

 

「くっ………」

 

1巻とかそういう言ってはいけないことを持ち出した平塚先生の前に、なす術のない雪ノ下。ついに言葉が詰まる。

 

「そういうことだ。じゃあ比企谷、あとは好きにしていいぞ。私の話は、まぁ、明日でいいだろう」

 

そう言うと、平塚先生は部室から出て行く。うむ、どこまでもかっこいいぜ平塚先生!

明日というのは、まぁいつものことながら由比ヶ浜の提案でパーティをすることになった。んで、それには平塚先生も参加するからそのときになにか言うのだろうな。

ということはいいとして。さて、お二人さんには言うことを聞いてもらいましょうかね。ひっひっひ。

 

「じゃあ、まず由比ヶ浜」

 

「な、なにする気なの、ヒッキー………」

 

「比企谷君、通報の準備はいつでもしているわよ。わかってるわね?」

 

えーなにこの扱い。なんでもしていいんじゃないのん?いやまぁ変なことはしませんよ?いやほんとだよ?

 

「お前はもう今日は帰って、小町たちと明日の用意をしてくれ。俺と雪ノ下じゃやることないし。お前にしか頼めないことだしな」

 

「え、あ、うん。わかった………」

 

なんでちょっと残念がってるんだよ。ちなみに雪ノ下は案の定ほっとしている。そんなに心配でしたか。

 

「じゃあまた明日ね、ゆきのん!ヒッキー!」

 

たったったっ、という効果音が似合うように去って行く由比ヶ浜。

ふぅ、これでよし、と。きっと、これが、俺が由比ヶ浜に返せる礼の最高値だ。人を、由比ヶ浜を頼るということが、きっと。

まぁそのうち2人でシーには行くとして。

 

「それで、私とこんなところで2人きりになって一体なにをしようとしているのかしら?」

 

身をよじりながら、それでいて少し弾むような、そんな声音が耳に届く。まったく、男子高校生がいつでも卑猥なことを考えているわけじゃないっての。

 

「今から下行って飲み物買ってこい」

 

「………は?」

 

え、なに言ってんのこいつ。みたいな顔して言われた。声は間抜けな感じ。なんだこいつ………。

 

「もうここには紅茶ないしな。まぁとりあえず、なんか買ってこい」

 

「そんなことでいいの?この私を好きにするせっかくのチャンスよ?」

 

「はっ、お前にそんなことしたらそのあとが怖いっての」

 

「ふふっ、それもそうね。では、行ってくるわね」

 

部室には1人。

別に1人だからといってなにかするわけではない。

ただ、俺にとって、俺たちにとって、いろいろとあった高校生活からの卒業を、俺らしくなくしみじみと感じているだけだ。

みんながみんな、嘘をつく。それは辛い嘘かもしれない。苦しい嘘かもしれない。けれど、優しい嘘もある。誰かを想っての嘘もある。少しの嘘で固められた繋がりを、もう俺は否定しない。そうでもしないと、負けたくないやつに負けてしまう。もちろん、俺がその関係を彼女たちに望むわけではないが。

俺は下の人間だ。しかし、下の人間は常に敗者ではない。負けることにおいて最強なら、それすらも手札にして勝てる。それが俺の強さ。

同情も憐れみもさせはしない。させては敗者だ。

 

………はぁ、葉山うぜぇ。

 

なんやかんだで結局、あいつとは3年生になっても関わってしまった。

そういえば、雪ノ下と葉山の不仲の原因はなんだったのだろうか。結局聞かなかったな。

まぁそのうち聞けばいいか。もう当人たちはそれを引きずってないようだし、いつでも聞けるだろう。

 

「戻って、きたわよ」

 

少し息を切らして雪ノ下が戻ってきた。あの距離でもだめなんですか………。

 

「どうも」

 

そう言って、俺は雪ノ下の手にあったスポルトップを奪う。

当の雪ノ下はといえば、いつもの席に戻り、野菜生活を飲む。

 

「どうして、由比ヶ浜さんを残さなかったのかしら?」

 

これらの飲み物を買ってきた雪ノ下にはもうわかっているのだろう。

 

「まぁなに、お前と2人きりで話したかったからな。由比ヶ浜にはあれだけできっと伝わるし」

 

「そ、そう」

 

目を外へやった雪ノ下は、陽の光を受けて顔を少し紅くしている。

ずずっと、雪ノ下の方から音がした。おそらくは野菜生活を飲み終えたんだろうが、なんでずっとストローを加えたままなのでしょうか。

 

「それにしても、よく考えたわね。あなた」

 

「まぁそりゃ、抜け穴見つけるのが得意だからな」

 

「ええ、ほんと。そういうことは思いつかなかったもの」

 

「だろうな」

 

「まさか、平塚先生に直接言いに行くだなんてね」

 

勝負が独断と偏見で決まり、なおかつ先生は依怙贔屓することに自覚を持った先生だ。なら、勝たせたい人を勝たせることも可能だ。だから、俺を勝たせるようにお願いをしに行った。

最初は驚いた表情をされたが、そのあとすぐにそれが笑いに変わった。それも大笑い。

 

「なぁ雪ノ下。俺と」

 

「ごめんなさい。それは無理」

 

最後の最後でもこのやり取りである。まったく、笑えて仕方ない。

それは雪ノ下も同じのようだ。

そして、雪ノ下は続きを言う。

 

「だって、私たちはもう、その関係だもの」

 

陽を浴びて、笑顔を咲かせる雪ノ下。

一枚の絵のような美しさという評価は同じだが、その内容は初めのころとはまったく違う。

そんな彼女から、俺は目をそらす。

まだ昼であるにもかかわらず、この部屋にはもう夕陽が染み渡っている。そんな光景が重なっている。

俺はきっと、これからもきっと、彼女には敵わない。

 

「そう、だな」

 

「ええ、そうよ」




あ、あれれ?千葉村編は?
おっかしーなー。この話で千葉村編終わる予定だったんだけどなー。未だに導入だけってどういうことですかね?んんん?
まさか二話使って導入しかできないとは。一体、誰がこんな妨害を………。メソラシ

とりあえずこれで過去編はひと段落かな?
まぁもちろんまだあるんですけど、まぁそのなんというか。ところどころの日常的なところの取り上げになるのかな?いやまぁわかんないんですけどね。
メインになってきそうな話はあと1つの予定ですね(矛盾)。

さてと、では内容の方に行きましょうか。
皆さん竹本先生は覚えていますかね?たぶん覚えてませんよね?
ということでもう一度、一から読み直してきましょう!自分も行ってきます。

最後の2人のやり取りは、これが一番すっと入ってきました。高校生活の終わりはやっぱりこれだなって感じです。
本物云々、会話に出てきてもいいかなと思ったんですけど、ない方が自然だなと思ったので入っていません。彼らのほしいものは手に入ったのでしょうか?

ではでは、こんなところで今週は終わりましょう。
また再来週お会いしましょう!
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