リリカルチート物語   作:抹茶ミルク

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にじファンから来ました。
これからよろしくお願いします。


プロローグ

 あ、死んだ……。

 そう確信して俺は目を閉じた。

 身体全体に当たる風がとても強くて瞼を下ろすのも大変だったけど、それ以上に目を開けたままなのは怖かった。

 

 だけど……いつまで経っても思っていた衝撃は襲ってこなかった。

 

 それどころか、先程まで感じていた風も感じない。

 そして数瞬――身体の下に地面の感触があった。

 恐る恐る目を開けてみる。

 

「…………は?」

 

 思わず惚けた声を上げてしまった。

 

「え……なんで?」

 

 俺は地面にうつ伏せになっていた。

 あり得ない。

 だって、俺はさっきまで――――"落ちていた"んだから。

 

 

 ○

 

 

 今日、俺は家族で旅行に来ていた。

 紅葉で有名な山に紅葉狩り。

 インドア派で大して興味も無く親に言われるまま着いてきただけなのだが、なかなかに見ごたえがあった。

 

 山を歩き、紅葉を見る。

 

 それだけなら普通に何万人もの人が行う普通の旅行なのだが……俺はどうやら嫌な意味で"特別"になってしまったらしい。

 紅葉狩りのコースにある全長一〇〇メートルはあろうかという吊橋。

 インドア派である俺はここまで来るのに体力を消耗し、一緒にいる家族から大分離れてしまっていた。

 

 吊橋の丁度真ん中辺りに俺が辿り着いたときには皆はもう橋を渡りきっていた。

 橋には俺一人。別に高所恐怖症ではないが、これだけ高く、さらに細い端の上では若干恐怖を感じ、急いで渡ろうと足を速めたとき……なんだか上手くバランスが取れなくなった。

 

 後ろを見るとロープが切れ橋が落ちていく光景が随分とスローになって目に映る。

 勿論半分以上ある橋を落ちる前に渡りきることなど出来ず、ほとんど動くことも出来ない間に、俺は空中へ放り出された。

 

 

 ○

 

 

「で、気付けばこうなっていた……と」

 

 俺は立ち上がり体の無事を確認した。

 どこも怪我はしていない。

 自身の無事を確認するととてつもない安堵感と先程の恐怖が襲ってきた。

 

「うおおぉぉぉぉっ!」

 

 叫ぶ。

 

「よっしゃぁぁぁぁぁ!!」

 

 絶対死んだと思った。

 でも、まだ俺は生きている。

 

「はぁ~……良かった……マジで良かった」

 

 言いながら拳を握ると、ちゃんと感覚がある。

 

「ホント生きてるよ。にしても……何でだ? つーかここ何処だ?」

 

 落ち着いてきたところで頭の中は疑問だらけになる。

 普通あの状況で助かるはずがない。もし奇跡的に生きていたとしても無傷なんてことはあり得ないはずだ。

 

 とりあえず俺が落ちる前にいたはずの上を見上げる。

 

「…………橋が……ない」

 

 いや、それどころか先程までいた紅葉の綺麗な山ですらない。

 山のように傾斜になってないし、見渡す限り葉が緑の木々が続いている。

 

 森……あるいはジャングルと言った方がしっくりくる景色だった。

 

 こんな場所に見覚えはないし……何よりどうして橋から落ちた俺が無事で、しかもこんな所にいるのか。

 

「なんだよ、この状況……くっそ」

 

 一人悪態を吐く。

 そりゃあ、インドア派な俺は二次創作も好きだし、その中のジャンルであるオリ主物なんか読みながら俺もそんな世界行きたいとか思ったりもしたけどさ。

 

 でも、それと同じような体験をしてみても、ここがそんな世界だなんて楽観視できないし、大体そんな話ではテンプレだった神(笑)にも会ってない俺は何の能力も無いわけで無事に生き延びれる保証も無い。

  

 よしんばそんな都合のいい世界だったとしても俺はオリ主のようになれないだろうと思う。

 

 オタクで卑屈。

 読んでいた二次創作も傍若無人、好き勝手にやって神に貰った力で威張ってんのに何故かモテモテハーレムみたいな所謂最低系が好物だった。しかも俺はそのオリ主に自分でも引くぐらい感情移入して読んでいた。

 

 俺の嫁に認定したキャラは軽く百人は超えてると思う。

 

 そんな俺が何の力も無くアニメとかの世界に行ってオリ主? あり得ない。精々モブキャラか真っ先に殺される役なんじゃないだろうか。

 多分原作キャラとかに会っても話しかけることすら出来ないと思う。

 

 そう思うとあのまま死んでしまっていたほうが良かったんじゃないかとも思えてくる。

 

「グルルルゥゥゥゥッ」

 

 と、思考の海に沈んでいた俺の耳に何かの鳴き声のようなものが聞こえ、意識を戻す。

 前を見ると――

 

「っ!?」

 

 目の前、ほんの二めーとる程の位置に自分と同じぐらいの大きさの狼に似た何かが牙を剥き出して威嚇していた。

 

 声も出ないとはこの事だ。

 突然の恐怖に身体が動かない。

 

「グルルッ」

 

 そんなことなどお構いなしに狼はジリジリと距離を詰めてくる。

 そして――

 

「グルォ――――ッ!!」

 

 口を開けて飛び掛ってきた。

 

「く、来るな来るな来るなぁ――っ!!!」

 

 俺は腰を抜かして尻餅をついて喚きちらしながら無意味な抵抗だろうけど腕をぶんぶんと振り回す。

 

「――ギャンッ!」

 

 振り回して手に何かが当たる感覚とそんな鳴き声。

 目を開けると、

 

「うげ……ゲェェェッ」

 

 数メートル先の木に付いたおびただしい血と肉片、その下辺りに飛び散った狼だったと思われる"もの"の塊。グチャグチャで中のものが飛び散って……それを見た瞬間、吐いた。

 

「…………ひぃっ!?」

 

 吐くときに地面についた手を見ると真っ赤に染まっていた。

 

「これは……俺が?」

 

 あり得ない。

 また、あり得ないことが起きた。

 俺が振り回した手に当たって数メートルも吹っ飛んだ? グチャグチャになるほどの衝撃?

 

「な、なんだこれ!?」

 

 自分の頭の中なのに勝手に言葉が浮かんできた。

 

『あらゆる"力"を操る程度の能力』

 

 そんな言葉が。

 

「と、東方!? え、これが……俺の能力?」

 

 じゃあさっきのは能力で"力"を上げて吹っ飛ばしたのか?

 

 というか……ここって、

 

「東方の世界……なのか?」

 

 そう呟いた時だった。

 地面が揺れ、何かとても強大な存在が現れるような空気が辺りに満ちて、

 

『グオォォォォッッッ』

「なんだ……あれ」

 

 とんでもない音量の声を上げて白い翼の生えた竜が数十メートル先に現れた。

 

「やめて! フリード――――ッ!」

 

 その方角から幼い女の子の叫び声。

 

 フリード? 

 って、リリカルなのは?

 

 え、東方じゃないの?

 

『グオォォォォッ!!』

 

 え? マジでリリカル?

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